仕事をしていればストレスは避けて通れないものですが、男と女でストレスに違いがあることを知っていましたか?
現代社会はストレスの原因となる出来事で溢れています。ストレスを溜め込むと身体や精神の病状となって現れることも多いので、誰しも溜めないほうがいいことはわかっていますよね。
しかし、うまく浄化できなければ、ストレスを抱えたまま仕事を続けることになります。負担がかかっている心身にさらなるストレスが重なると、負の連鎖に陥ってしまい、深刻な状態を招くことも多いのです。
ここでは男女の性差に焦点を絞って、仕事で生まれるストレスのしくみや特性を紹介します。今日からできるストレスチェックも紹介しますので、自分のストレス度を知って、健全な生活に役立ててください。
目次
1. 男女のストレスの違い
1-1. 仕事ストレスと対人ストレス
1-2. 内向する男性と共感を求める女性
1-3. 男性に効果的なストレスケアとは
1-4. 女性に効果的なストレスケアとは
2. ストレスとはなにか
2-1. 恒常性とストレスの関係
2-2. 悪いものとは限らないストレス
2-3. ストレスには個人差や性差がある
3. 男性と女性の脳の違い
3-1. 脳の構造
3-2. 左脳優位の男性と右脳優位の女性
3-3. 男女の脳の構造の違い
3-4. 男性脳と女性脳
4. 男性脳と女性脳の特性
4-1. ひとつのことに集中する男性脳
4-2. 情報を共有したがる女性脳
4-3. 狩猟本能や闘争本能が残る男性脳
4-4. 人間関係のバランスを重視する女性脳
4-5. 職場における性差の一例
5. ストレス度を自己診断する
5-1. 40項目のストレスチェック
5-2. 診断方法
5-3. うつ病を引き起こす怖い脳疲労
6. まとめ
1. 男女のストレスの違い
厚生労働省の平成27年労働安全衛生調査によると、仕事を持つ男女における「仕事や職業生活に関する強いストレスの原因(3つ以内の回答調査)」は、男性、女性ともに「仕事の質・量」がともにトップとなっています。
仕事や職業生活に関する強いストレスの原因(3つ以内の回答調査)
数年間までの調査では、「仕事の質の問題」と「仕事の量の問題」が別項目として設定されており、それぞれ30パーセント代の回答となっていましたから、ひとつの項目になれば男女ともに1位となるのは当然の結果と言えます。
1-1. 仕事ストレスと対人ストレス
2位以下を見てみましょう。
男性の2位は「仕事の失敗、責任の派生等」、3位が「対人関係」、4位が「役割・地位の変化等」と続くのに対して、女性では2位が「対人関係」、3位が「役割・地位の変化等」、4位が「仕事の失敗、責任の派生等」となっています。
この統計から、男性は仕事全般にわたってストレスの原因が広く分布しているのに対し、女性では「対人関係」の比率が非常に多く、「仕事の失敗、責任の派生等」が少ないことがわかります。
1-2. 内向する男性と共感を求める女性
一般的に、男性は闘争本能や論理的思考が強いために、仕事の失敗などがストレスとなって問題を抱えると、自分で解決しようとして殻に閉じこもる傾向があります。
女性はコミュニケーション能力に優れ、人の共感を得ることに価値を見出すので、何か問題を抱えたときには人と話すことによって解決しようとする傾向があります。
女性は共感の輪を広げようとするあまり、情報が混乱したり、感情的になってしまって、対人関係がストレスの原因になることも多いのです。
1-3. 男性に効果的なストレスケアとは
一般的に知られる仕事のストレス解消法として、男性の場合は自分ひとりでできる趣味や飲酒など、女性の場合はおしゃべりや買い物、甘いものを食べることなどが挙げられます。
男性は闘争本能が強くてコミュニケーションが苦手なため、誰かと話すことよりも自己解決が基本的な手段となります。
ドライブや釣りなどの個人的な趣味や、ゲームで疑似勝利を味わう、非日常に自分を置くといったことなどが脳をリフレッシュさせます。
熱中できる趣味を持つことが一番のストレスケアと言えるでしょう。
1-4. 女性に効果的なストレスケアとは
共感を得ることでストレスを発散できる女性は、なんといっても仲の良い人間とのおしゃべりが脳のリフレッシュになります。
しかし、しゃべり相手は誰でもいいというわけではありません。一方的にしゃべって発散する女性同士が集まれば、余計にストレスを溜めてしまうこともあります。
価値観の共有ができて、自分がストレスを溜めている時には聞き役に回ってくれ、逆の立場になったら話を聞いてあげられるような友人を持つことが理想的です。
また、男性よりも感情に敏感な女性は、泣いたり怒ったりして自分の感情を解放することも、よい脳のリフレッシュになります。
2. ストレスとはなにか
生物が環境の変化などで身体に受ける刺激を「ストレッサー」、その刺激に対する反応を「ストレス」と言います。
現実に普通の生活を送っていれば、ストレスのまったくない環境というものはありません。適度なストレスの中で暮らしながら、過大なストレスは溜めずに解消していく必要があるのです。
2-1. 恒常性とストレスの関係
すべての生物には、外部の環境変化に対して内部環境を一定の状態に保とうとする恒常性(ホメオスタシス)という機能があります。人間の体も、ストレッサーに対して無意識のうちに身体が反応し、健康な状態を維持しようとします。
しかし、過大なストレスを受けたり、何らかの理由によって身体が防御反応を抑えたりしてしまうと、恒常性が機能しなくなり、心や身体に異常をきたしてしまいます。
2-2. 悪いものとは限らないストレス
こうした現状からストレスは悪いものと捉えられていますが、良いストレスも存在します。
良いストレスとは、目標や困難に向かって自分を奮い立たせてくれたり、元気づけてくれるもので、適度な緊張感をともなうストレスは健康を維持するために必要なものと考えらえています。
ストレスのない状態が続くとストレッサーに対する抵抗力がなくなってしまい、その状態でストレッサーが発生すると大きなダメージを受けることになるからです。
2-3. ストレスには個人差や性差がある
同じ刺激を受けても、それを負担と感じる人と感じない人がいるように、ストレスには個人差があります。
一般的に、生真面目な人や頑固な人はストレスを溜めやすいとされています。物事を柔軟に考えることができる人間はストレスが少ないということですね。
こうした個人差は脳の働き方が違うために起こるものですが、男女間におけるストレスの違いも、最大の原因は脳にあるのです。
3. 男性と女性の脳の違い
現代の脳科学では、男性と女性で脳の構造とその働きに違いがあることが解明されてます。
3-1. 脳の構造
脳は大きく分けて、
・大脳
・脳幹
・小脳
から構成されており、大脳は、
・創造、企画、感情を司る前頭葉
・記憶や判断の働きをする側頭葉
・視覚情報から位置関係や方向などを認識する頭頂葉
・視覚情報を判断する後頭葉
に分類されます。
上部から見た大脳は右脳と左脳に分かれており、脳梁と呼ばれる2億本もの神経線維が双方をつないでいます。
3-2. 左脳優位の男性と右脳優位の女性
左脳は、思考や論理、計算などを司って文字や言語を認識する人間的な脳。
右脳は視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった五感や直観、感情などを認識する動物的な脳と言われています。
男性はどちらかと言えば左脳優位で一つのことに集中する傾向があり、女性は右脳優位で、感情や人間関係を大事にする傾向があります。
3-3. 男女の脳の構造の違い
男女間の最も大きな構造的な違いは、右脳と左脳を繋ぐ最大の神経である脳梁が、女性のほうが太いことにあります。
日本人の脳の重さは男性が1350~1400グラム、女性が約1200~1250グラムと男性のほうが8パーセントほど重いのですが、これは知能の優劣とはまったく関係ありません。
3-4. 男性脳と女性脳
脳梁が太い女性の脳は、右脳と左脳の結合が強いために、より連携してバランスよく機能します。
脳梁が細い男性の脳は、右脳と左脳の結合では女性の脳に負けますが、前後の脳を結合させる脳神経が発達していると言われています。
そうした特徴から、それぞれ「女性脳」「男性脳」と呼ばれます。
4. 男性脳と女性脳の特性
男性脳と女性脳には、構造と働きの違いからいろいろな特性が現れます。
その特性の違いによって、男性脳と女性脳ではストレスの原因が変わってくるのです。
4-1. ひとつのことに集中する男性脳
左脳優位である男性脳は、一つのことに集中するオタク的な傾向があり、素早く獲物を捕るという本能から処理速度を優先する反面、人間関係をおろそかにしてしまいがちです。
複数のことを同時に処理できる女性脳は、コミュニケーション能力に優れる反面、情報が混乱して感情的になりやすいという特徴があります。
コンピューターに例えるならば、シングルタスクだけど処理速度の速いマシンと、処理速度は多少落ちるものの、マルチタスクが可能で安定しているマシンということになるのでしょうか。
4-2. 情報を共有したがる女性脳
会話をする場合、男性脳は言語中枢がある左脳だけを使っています。
一方の女性脳は左右の数カ所に言語中枢が存在していて、左脳と右脳をバランスよく使っている場合が多いと言います。
その結果、男性脳が理論立てて話す内容を絞ろうとし、空間認知力に優れるのに対して、女性脳は相手の感情を汲み取って共感を得ようとし、記憶力や洞察力に優れています。
多くのオタクがそうであるように、自分だけが持っている情報を自慢したいのが男性脳であり、「かわいい」「きれい」というような感情を自分だけのものにしておくのではなく、他人と共有したいのが女性脳なのです。
4-3. 狩猟本能や闘争本能が残る男性脳
進化の過程で構築されてきた本能的な部分では、男性脳が勝負事や危険なことを好むのに対して、女性脳はそういったことに興味を示しません。
太古から、狩猟や他部族との戦いは男の仕事であり、そういう日常の中で強い男が生き残って優秀な遺伝子を残そうとしてきました。
男が出かけている間、女には住居の周りで植物を採取したり、子どもを育てたりという役割がありました。
危険なことや戦いで命を落とせば、子孫を残すことができなくなってしまうので、女性脳にはリスクを避ける傾向があるのです。
4-4. 人間関係のバランスを重視する女性脳
さらに男性脳には、
・不公平な環境であっても、その中で勝ちたいという願望があるために「物事に順位をつけたがる」
・目的を短時間に達成したいという本能的な欲求がるために「物事の結果を重視する」
という特性があります。
対する女性脳には、
・人間関係のバランスを重視するので「不公平を嫌う」
・共感や関係性に意味を求めるので「プロセスを重視する」
という特性があります。
4-5. 職場における性差の一例
会社で上司から仕事の業務報告を求められたとしましょう。
男性の上司であれば結論を早く聞きたがるでしょうし、女性の上司であればプロセスを詳しく聞きたがる傾向があります。
仕事の経緯に重きを置く女性の部下が男性上司に報告をしていて、「経過はいいから早く結論を言え」と言われたらストレスになるかもしれません。
逆に仕事の結果だけを短時間で簡潔に報告しようと考える男性の部下が、女性上司に「大切なのはプロセスよ。あなたにはそれが欠けている」と言われたらストレスを抱えることになるかもしれませんよね。
5. ストレス度を自己診断する
厚生労働省はうつ病予防対策の一環として、平成27年12月から労働安全衛生法を改正し、従業員50人以上の企業では、全従業員を対象に医師、保健師らによるストレスチェックの実施を義務化しました。
このチェックはストレス度を評価するだけでなく、ストレスの原因となっているストレッサーを判断する材料にもなりますから、是非行ってみてください。
ストレスチェックの項目は、国が推奨する57項目の質問票などを基に各企業が自社の環境に合わせて決められています。
ここでは日本ストレスケア病棟研究会会長の徳永雄一郎先生が作成された、男女共用で一般的に広く使用可能なチェックリストを紹介します。
それぞれの項目に「あてはまる」であれば○、「時々ある」は△、「ない」は×を記入し、○は2点、△は1点として合計点数を算出してください。
5-1. 40項目のストレスチェック
1 | 日曜日はぐったりしている。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
2 | 能率が悪くなり集中力が低下した。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
3 | いつも仕事に追われている感じがする。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
4 | 物忘れが増えた。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
5 | テレビや新聞を見ても内容が頭に入りにくい。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
6 | 物事の判断がつきにくい。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
7 | 頭痛がする。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
8 | 肩こりや肩の痛みがある。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
9 | 背中や腰が痛い。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
10 | 後頭部が詰まった感じや痛みがある。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
11 | 手や脇に汗が出やすい。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
12 | 手が震える。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
13 | 手足が冷たいことが多い。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
14 | 息苦しくなることがある。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
15 | 動機がすることがある。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
16 | 目が疲れる。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
17 | めまいや耳鳴りがある。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
18 | 音に敏感になった。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
19 | 好きな物も食べる気がしない。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
20 | 食事をしても味がしない。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
21 | いつも食べ物が胃にもたれる。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
22 | 吐き気や胃の痛みがある。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
23 | 下痢や腹痛がある。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
24 | 口が乾いたり、ネバネバしたりする。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
25 | 最近体重が減った。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
26 | 疲れやすい。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
27 | 寝つきが悪い。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
28 | 夜中に目が覚めやすい。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
29 | 夢を見ることが多い。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
30 | 朝、疲れが残り気持ちよく起きられない。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
31 | いつも眠い。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
32 | 風邪をひきやすく、治りにくい。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
33 | 家庭でゆっくりくつろげない。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
34 | 人と会うのがおっくうになった。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
35 | 人と会うと、イライラしたり腹立たしくなったりする。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
36 | 妻(夫)や家族にあたることが多い。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
37 | 仕事をする気が起こらない。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
38 | 身だしなみ整えるのが面倒になった。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
39 | 自分が弱くなった気がする。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
40 | 気持ちが晴れない。 | ◯(2点) | △(1点) | ☓(0点) |
*『「脳疲労」と社会』より引用
5-2. 診断方法
点数が14点以下であればストレスは高くなく問題ありません。
15点から24点の人は、中程度のストレス状態にあり、軽度の脳疲労を起こしています。
25点から34点までの人は脳疲労状態にあり、すでに仕事に支障をきたしているはずです。
35点以上の人は重度のストレスによって脳不調に至っており、うつ病の前段階と言えます。
このリストの中でも1から6までの項目は重要で、5点以上だと脳疲労の状態に、9点以上だと脳不調の状態にあると言われています。
5-3. うつ病を引き起こす怖い脳疲労
あなたのストレス度はいかがでしたか。
脳不調の状態と評価された方は、専門医の受診をお勧めします。
強いストレスが続くと脳は過活動状態となり、さらにその状態が続けば脳疲労が起こります。
脳疲労には、集中力や判断力の低下という症状が現れます。
この状態を放置すれば、脳の疲労が蓄積して「脳不調」に、さらには「うつ病」という病気に至るのです。
今や、男女を問わず、どの職業でも欠かせないものとなったパソコン作業は、情報刺激が目から脳へと直行するために脳疲労を起こしやすいので、とくにケアが必要とされています。
6. まとめ
ここでは男性脳と女性脳という性差をベースにストレスのしくみを紹介してきました。
しかし、これはあくまでも傾向です。
世の中には男性っぽい女性や女性っぽい男性もいますし、個人差もあることを理解して、自分に合ったストレスケアの方法を見つけてください。
男性が女性脳の特徴である共感力や直観力、コミュケーション能力などを理解すること、女性が男性脳の深い専門性や、新しいことや逆境に立ち向かうチャレンジ精神などを理解することは、お互いのストレス軽減につながります。
男性脳の探求心や闘争心と、女性脳のコミュニケーション能力や共感力を兼ね備える人間は、ストレスをケアも充実している最強の仕事人間ということになりますね。
【参考資料】
・『男脳と女脳』茂木健一郎著(総合法令出版)
・『「脳疲労」と社会』徳永雄一郎著(講談社現代新書)
・札幌秀友会病院
・Akira Magazine
・厚生労働省 平成27年労働安全衛生調査