接客業に従事している人にとって、「お客様とどう接すればリピーターになってくれるのか?」というのは、永遠のテーマです。
接客のコツと一口に言っても、世の中には実にさまざまなタイプの性格を持った人であふれていますから、「こういう接客をしておけばいい」という絶対確実な唯一の方法というものはありません。
世の中の人々に色々なタイプがあるのなら、接客のコツにもそれぞれのタイプに応じたものがあるはずです。
ここでは、お客様の性格を9つのタイプに分類し、それぞれに適合する接客のコツをご紹介します。
目次
1 接客のコツはお客様のタイプによって使い分ける
2 お客様のタイプ別接客のコツ9選
2-1 秩序を大切にされるお客様
2-2 優しさや愛を大切にされるお客様
2-3 時間や効率を大切にされるお客様
2-4 感性や独自性を大切にされるお客様
2-5 情報を大切にされるお客様
2-6 安心感を大切にされるお客様
2-7 新たな可能性を大切にされるお客様
2-8 影響力を大切にされるお客様
2-9 平穏なつながりを大切にされるお客様
まとめ
1 接客のコツはお客様のタイプによって使い分ける
あなたは、「エニアグラム」または「エニアグラム性格論」というものを御存知でしょうか?
エニアグラムとは、ビジネス・教育などの分野で活用されている「性格分類法」で、世界でも最も優れた性格タイプのシステムのひとつとして知られているものです。
エニアグラムでは、人々の性格を全部で9つのタイプに分類しますが、そのタイプ分けは驚くほど詳細かつ正確で、人間関係の改善・仕事におけるポテンシャルの発揮・自己啓発などにおいて有効だとされています。
ピンポイントで正確な接客をしたい方は、エニアグラムによる9つの性格タイプごとに接し方を変えることで、これまで以上の結果を出せるようになるかもしれません。
それでは、さっそく性格タイプごとの接客テクニックを見ていきましょう。
2 お客様のタイプ別接客のコツ9選
エニアグラムでは、人間は9つのタイプに分かれるとされています。ここでは、お客様の性格をエニアグラムにならって以下の9つに分類し、それぞれのお客様への対処法をご紹介します。
(2)優しさや愛を大切にされるお客様
(3)時間や効率を大切にされるお客様
(4)感性や独自性を大切にされるお客様
(5)情報を大切にされるお客様
(6)安心感を大切にされるお客様
(7)新たな可能性を大切にされるお客様
(8)影響力を大切にされるお客様
(9)平穏なつながりを大切にされるお客様
それでは、上から順番に接客のコツを学んでいきます。
2-1 秩序を大切にされるお客様
●秩序を大切にされるお客様の性格
秩序を大切にされるお客様とは、
このような性格の方です。このお客様がよく口にされる言葉は、「○○であるべきだ」「○○でなければならない」「きちんと○○したい」「ちゃんとした回答を○○」などです。
こういった言葉をよく遣われる方は、このタイプである確率が高いでしょう。
●秩序を大切にされるお客様の接客のコツ
秩序を大切にされるお客様に接客する時のコツは、まず、お客様の求めている高い基準に応えることです。
「言葉遣い」「礼儀正しさ」には当然気をつけて接客してください。また、最も重要なのが「正確さ」です。あいまいな対応で濁したりすると、その方のあなたへの信頼感が損なわれていくでしょう。「おそらく○○です」などの表現は避け、何でもはっきりと明言することが良い結果につながります。
また、責任の所在を明確にすることも重要ですので、お客様にとって不利になることも含め、きちんと全ての情報を伝えるようにしましょう。どこからどこまでがお客様の責任で、どこからどこまでがこちらの責任なのかを明らかにするだけでも、そのお客様は安心感を持てるようになります。
また、このタイプのお客様は「一貫性」を重んじる傾向にあるため、接客の最初の方でした発言を、あとになって撤回したりすると、信頼感が損ねられるきっかけになります。仮に、お客様の機嫌を損ねてしまうかもしれないようなことでも、どうしても会社の方針として必要なことならば、首尾一貫してお伝えすることもむしろ好印象を与えることがあります。
できるだけ首尾一貫した接客をするように心がけましょう。また、このタイプのお客様が嫌うのは、「いい加減な対応」ですから、接客の前に事前に準備ができることがあれば、念入りに行ってください。
2-2 優しさや愛を大切にされるお客様
●優しさや愛を大切にされるお客様の性格
優しさや愛を大切にされるお客様とは、
このような性格の方です。このお客様がよく口にされる言葉は、「日頃お世話になっている○○さんに旅行を計画したい」「○○さんにプレゼントを贈ってさしあげたい」など、ご自分よりも他者を優先されるような発言が多いでしょう。
●優しさや愛を大切にされるお客様の接客のコツ
このタイプのお客様と接する際には、お気遣いいただいたときに「感謝の気持ちを伝える」ということが必要不可欠です。お客様から向けられたのと同じ程度、同じ質の「優しさ」と「愛」を返して差し上げてください。単なるお礼を言うだけでなく「お客様のおかげでどのように助けられたか」を具体的に伝えましょう。
また、ビジネスライクな淡々とした口調よりも、気持ちの交流を重んじたコミュニケーションを取るようにしてください。ガチガチの敬語ではなく、時には丁寧語を交ぜてみたり、笑顔が伝わるように早口になりすぎないスピードで話すようにしたりしましょう。
このタイプのお客様は、こちらの話も聞いてあげたいと思っている方が多いのも特徴です。ですから、本来ならお客様のお話を伺うのが接客業の仕事ですが、ときには常識の範囲内で自分のプライベートなことを打ち明けて聞いていただくことで関係がより深まることがあります。
このように、一方通行ではない双方向の、気持ちのつながりを重んじたコミュニケーションを取るように心がけることが、このタイプのお客様との間の信頼関係をより強固にしてくれるでしょう。
2-3 時間や効率を大切にされるお客様
●時間や効率を大切にされるお客様の性格
時間や効率を大切にされるお客様とは、
このような性格の方です。このお客様がよく口にされる言葉は、「臨機応変に」「効率的に」「一度にまとめて」「目標とする時間は」など、時間を意識したものが多いでしょう。
●時間や効率を大切にされるお客様の接客のコツ
このタイプのお客様に接客する際には、「簡潔」に「手際よく」説明することが大切です。まず用件を伺う段階で、要領よく正確に受け取り、テンポ良く対応してください。
また、必要以上のムダな言動は控え、どうすれば最も効率的にできるかを考えるようにします。二度手間を嫌う方が多いため、回答は一度にすべて行うよう準備しましょう。
このタイプのお客様は、効率や時間を気にされる方が多いため、さまざまな選択肢に関心を示されます。「それ以外にもっと早い便はないのか」「もっと早く届けられる方法は」など、常に最善・最短を求めている方が多いため、接客する側もさまざまな選択肢を提供しながら、なるべく短い時間で最善策に到達するようにしましょう。
ちなみに、このタイプのお客様は「ご自分が周囲からどう見られているか」を意識されている方が多いのが特徴です。ですから、「○○様は皆さんから頼りにされているんですね」「○○さんはいつもスマートですね」など、お客様の有能さ、輝かしい成果などを称賛してさしあげましょう。
また、そうしたお客様のイメージをアップできるアイデアがあるなら積極的に提案していくと好印象を持たれるでしょう。
2-4 感性や独自性を大切にされるお客様
●感性や独自性を大切にされるお客様の性格
感性や独自性を大切にされるお客様とは、
このような性格の方です。このお客様がよく口にされる言葉は、「自分らしい」「人はどうであれ」「みんなにはわからない○○」「人にはない」など。マイペースで自分の世界観をしっかりと持っている方が多いでしょう。
●感性や独自性を大切にされるお客様の接客のコツ
このタイプのお客様に接客する際には、そのお客様の「こだわりのポイント」「そのお客様らしさ」を把握することが大切です。
商品やプランを提案するときにも、他の方が持っていないものや、他の方が行ったことがない場所などを探しましょう。そして、提案するときには「○○様に気に入っていただけるかわかりませんが、他にはない、少し変わったものをご用意しました」と一言添えるのです。
あなたは「オンリーワンの存在」「特別な存在」なのだということを、さりげなく伝えるようにするといいでしょう。
また、このタイプの方は繊細で人の気持ちに敏感な方が多く、言葉でコミュニケーションを取るよりも、言葉の裏側にある心にフォーカスしていくことが重要になります。そのお客様が強い愛着やこだわりを抱いているものに対して、心からの興味を示し、相手を理解するようにつとめ、その個性を尊重するようにするといいでしょう。
ただし、このタイプのお客様は繊細なため、こちらの感情に応じて先方の感情も変化しやすいという特徴があります。そのためできるだけ平常心で接することを心がけてください。
2-5 情報を大切にされるお客様
●情報を大切にされるお客様の性格
情報を大切にされるお客様とは、
このような性格の方です。このお客様のよく口にされる言葉は、「それはどういうこと?」「もう少し詳しく教えてください」など、情報を集めようという気持ちが強いのが特徴です。
●情報を大切にされるお客様の接客のコツ
このタイプのお客様に接客する際には、趣味や天気の話など雑談をしてもほとんど効果を発揮しません。
先方が求めているのは一にも二にも「情報」なのです。そして、お客様は「自分で調べるよりも専門家に聞く方が有効な情報を得られるのではないか」と考えたからこそ、こちらへ足を運んでくださっている(または電話をかけてくださっている)わけです。ですから、その期待にお応えできるよう、お客様が求めている情報を正確に伝えることを意識しましょう。
また、このタイプのお客様は、必要な情報を収集してからじっくり時間をかけて検討し、決断することがほとんどです。そのため、「急かす」ことは禁物。また、公私を分けて考えることが多いため、こちらからあれこれと質問したり詮索したりすることも嫌がる方が多いでしょう。
つまり、お客様の「ペース」と、「スペース」を大切にする姿勢が求められます。
2-6 安心感を大切にされるお客様
●安心感を大切にされるお客様の性格
安心感を大切にされるお客様とは、
このような性格の方です。このお客様がよく口にされる言葉は、「これなら安心できる」「安心できる○○ですね」「慎重に」「コツコツと」「どうしよう」「困ったな」などです。物事を確実に進めていくのを好まれる一方で、同時に何かに対して不安や心配を抱えている方が多いのが特徴です。
●安心感を大切にされるお客様の接客のコツ
このタイプのお客様に接客する際には、相手の不安材料を取り除いてさしあげることが大切です。
用意周到で慎重に事を進めることを好み、そのためさまざまな可能性や不安材料を考慮に入れていることが多いため、接客する際にはその不安材料をひとつひとつ取り上げて解消してさしあげることを意識してください。
また、このタイプの方は、「こまめな連絡」を好みます。細かく区切りながら連絡し、ともに一歩ずつ進んでいくイメージで接しましょう。突然何かが変更されることに不安を感じる方が多いため、それまでに決めたプランが変更になる場合は、事前にきちんと連絡して同意を得ることが大切です。
お客様の不安感があまりにも強く、優柔不断な状態に陥ってしまった場合は、「何の問題も無い」ということをお伝えし、お客様の背中を押して差し上げるイメージを持って、その商品やプランのメリットをこと細かく説明しましょう。
2-7 新たな可能性を大切にされるお客様
●新たな可能性を大切にされるお客様の性格
新たな可能性を大切にされるお客様とは、
このような性格の方です。このお客様がよく口にされる言葉は、「楽しいこと」「前向きにいきたい」「ついてるね」「ポジティブな○○」などです。
●新たな可能性を大切にされるお客様の接客のコツ
このタイプのお客様に接客する際には、明るく接することが何よりも大切です。人生を楽しまれている先方に対して、暗い声は禁物。相手と同じような元気で明るい声で応対するよう心がけましょう。
また、サービス精神旺盛なお客様ですから、「仕事だから」と肩肘を張りすぎず、相手の冗談やトークを心から楽しむつもりで接するほうが信頼関係を築きやすいでしょう。
ひとしきりお話が終わったら、「○○様とお話しさせていただくと、とても元気になります」など、素直な気持ちを伝えてください。そうすると、さらに明るく元気に接してくれるようになります。
商品を売り込む際に大切なのは、お客様の可能性を広げられるような選択肢を選ぶこと。そのためには、日頃からお客様の欲求や興味がどこにあるのか、これまで経験されたことがあることと、まだ経験したことがないことについて覚えておくようにします。そして、お客様がまだ経験したことがないことを提案できるのなら、それを優先して伝えると上手く行くことが多いでしょう。
2-8 影響力を大切にされるお客様
影響力を大切にされるお客様の性格
影響力を大切にされるお客様とは、
このような性格の方です。このお客様がよく口にされる言葉は、「徹底的に○○」「今すぐに」「私に任せて」などです。何事にも主導権を握り、自分の考えによって突き進む意志を持ち、他人に対する影響力も強いというタイプです。
●影響力を大切にされるお客様の接客のコツ
このタイプのお客様に接客する際には、こちらの考えを押しつけるのではなく、お客様の意志や思いを尊重してお客様の判断に委ねることが大切です。周囲に影響力を持ち、職場でも力強いリーダーシップを発揮されている方が多いので、そういう相手として立てるように接するといいでしょう。
物腰が力強く、自信に満ちあふれている人が多いので、はじめのうちは接客のペースが掴めないかもしれませんが、元々面倒見が良く頼もしい一面のある方なので、思い切って相手に頼ってみる、委ねてみると信頼関係を築きやすいでしょう。
例えば、相手がすでにある商品やサービスに対する知識をお持ちの場合、その知識をありがたく頂戴するとともに、こちらの知らないことを知っているようであれば「勉強不足で申し訳ございません」と正直に伝えることで、むしろ可愛がってくれるようになることもあります。
このタイプのお客様と話をするときに気をつけるべきポイントは2つ。まず、1つ目は受け答えに「お客様の言葉を使う」ということ。反論するにしてもお客様の言葉を上手く使いながらすることによって、相手を尊重していることを伝えることができます。
2つ目は、「お客様のお話を受けとめる」ということです。正義感が強く、何事も自分の考えで進んでいく人が多いため、そのことをまず肯定し、受け止めて差し上げるほうが良いのです。
2-9 平穏なつながりを大切にされるお客様
●平穏なつながりを大切にされるお客様の性格
平穏なつながりを大切にされるお客様とは、
このような性格の方です。このお客様がよく口にされる言葉は、「のんびりと」「なんとなく」「どちらでも」です。自分自身の欲求や要望よりも、他人といかに協調するかに重きを置く人が多いでしょう。
●平穏なつながりを大切にされるお客様の接客のコツ
このタイプのお客様に接客する際には、時間をかけて関係性を築くことが大切です。たいていの場合、このタイプの方は何かの必要に迫られているときに、話しかけてくるでしょう。なぜなら遠慮がちな方が多いため、自分の要望があったとしても人の手を患わせること自体を嫌がるからです。
しかし、そういったタイプのお客様とはそもそも接点を持つチャンスが少ないため、信頼関係を築くにはじっくりと時間をかける必要があります。
また、のんびりと穏やかな口調で話される方が多く、早口でまくしたてるように話す人を避ける傾向が強いでしょう。ですから、相手の話し方に「同調」するように、こちらもゆっくりと穏やかに紳士的な口調で話すよう心がけてください。
そして、このタイプのお客様は、ご自分の要望をストレートに伝えてこないことが多いため、じっくりと外堀を埋めるように質問をしながら、相手の要望を「明確化」するようにしましょう。
このお客様が最も避けたいと思っているのは「他人と揉めること」ですから、そのことを踏まえた対応をしてください。
まとめ
エニアグラムによってお客様を9つのタイプに分類すると、接客のアプローチにもこれだけの違いが出てくるものなのです。
ご自分の顧客ひとりひとりを頭に思い浮かべ、それぞれがどのタイプに当てはまりそうかを考え、これからの接客に活かしてみてはどうでしょうか。
予想以上に早くお客様と信頼関係を築けるかもしれません。
【参考書籍】
『期待以上に応える技術』網野麻理著(フォレスト出版)