家で簡単にできる体幹トレーニングの方法があったら知りたいですよね?
ここ数年、健康維持やひきしまった体づくりを目的として始める人が多い「体幹トレーニング」は、多くのスポーツ選手がパフォーマンスアップのために取り入れたことから注目を集めました。
女性に人気のあるピラティスやコアリズムといったエクササイズも、体幹の強化を目的としたものです。
そもそも体幹とは身体のどの部分を指すのか?
体幹を強化するとなにが変わるのか?
そうした基本的な疑問にも答えるべく、ここでは、まず体幹トレーニングとはなにかということを解説し、自宅でできる10種のトレーニング方法のコツを紹介します。
目次
1 体幹トレーニングとは
1-1 体幹は手足を除いた胴体部分
1-2 体幹を強化して正しい姿勢を保持する
1-3 深層筋を鍛える2種のトレーニング
2 体幹トレーニング方法で体をひきしめる10のコツ
体幹トレーニング方法1 腹筋を割るコツ
体幹トレーニング方法2 美しい胸板をつくるコツ
体幹トレーニング方法3 肩の位置を正しくするコツ
体幹トレーニング方法4 ヒップアップのコツ
体幹トレーニング方法5 はみ出したお腹をなくすコツ
体幹トレーニング方法6 腰まわりのぜい肉をとるコツ
体幹トレーニング方法7 脚の長さを取り戻すコツ
体幹トレーニング方法8 お腹とヒップをひきしめるコツ
体幹トレーニング方法9 ガニ股やO脚を治すコツ
体幹トレーニング方法10 正しい歩き方のコツ
まとめ
1 体幹トレーニングとは
「体幹」を理解しないまま体幹トレーニングをしても効果は上がりません。それどころか腰を痛めてしまうケースも多いのです。
・体がひきしまる
・内臓機能が強化される
・太りにくい体になる
・質の高い睡眠がとれるようになる
・腰痛やケガの防止になる
・便秘が解消される
巷で語られているこうした体幹トレーニングの効果は、いったいどこから生まれるのでしょうか。
まずは、基本的な体幹トレーンングの知識を身につけましょう。
1-1 体幹は手足を除いた胴体部分
体幹は、体から頭、腕、脚を除いた前側の「胸部」「腹部」、後側の「背部」「腰部」という4部位から構成されます。頚部(首)は体幹に含める場合と含めない場合があります。
体幹は動くときだけでなく、姿勢を維持する「立つ」「座る」「歩く」といったことにも重要な役割をもっています。
もっとも重要になるのは、幹ともいえる脊椎(背骨)です。脊椎がゆがんでしまうと、肩こり、猫背、頭痛など様々な不調を引き起こし、ケガもしやすくなってしまいます。
1-2 体幹を強化して正しい姿勢を保持する
体幹部の筋肉を強化するのが体幹トレーニングです。
筋肉には、体の表面近くにあって瞬間的なパワーを生み出すのに必要な「表層筋(アウターマッスル)」と、体の奥の骨に近い部分にあって姿勢の維持や関節の動きをズムーズにするといった役割をもつ「深層筋(インナーマッスル)」の2種類があります。
体幹の強化で重視されるのは深層筋です。
体幹トレーニングと同じようなイメージをもたれている「コアトレーニング」というのは、この深層筋を鍛えるトレーニングを意味します。
体幹トレーニングでは、脊椎を本来のゆるやかなS字状態に戻し、骨盤を正しい位置に戻すことも目的となります。
人間は正しい姿勢でまっすぐ立っているだけも、体重の1.2~1.4倍の負荷が腰にかかっているといわれます。猫背や骨盤のズレなどで姿勢が悪くなると、さらに大きな負担がかかることになります。
体幹トレーニングを続けると、正しい姿勢を保持できるようになることと連動して、次のような効果が現れます。
・筋肉の連動がよくなるので、動きがしなやかになる。
・血液循環が改善されて基礎代謝が上がり、太りにくい体になる。
・深層筋の内側にある内臓の働きが活発になるため、便秘の解消につながる。
・手足に多くのパワーが伝わるようになり、スポーツのパフォーマンスが上がる。
1-3 深層筋を鍛える2種のトレーニング
深層筋を強化するトレーニングは、「リセット」と「アクティブ」という2本立てで行います。
姿勢が悪い場合などは、体を支える体幹の深層筋が疲労して硬くなっており、表層筋に頼って働かなくなっています。そこにいきなり負荷をかけると、筋肉や関節を痛めてしまいます。
そのため、まず深層筋の代わりとなって負担がかかっていた表層筋をゆるめてやり、深層筋の弾力を取り戻すことが必要です。これが「リセット」もしくは「リセット・コンディショニング」と呼ばれるトレーニングです。
リセットされた深層筋は働きだすので、表層筋と同時に動かしてやり、正しい反応ができるようにトレーニングします。これが「アクティブ」もしくは「アクティブ・コンディショニング」と呼ばれるものです。
1-3-1 リセットのポイント
【1】トレーニングという言葉には「頑張る」というイメージがあると思いますが、リセットは「脱力」することが重要になります。緊張した筋肉はゆるめることで元の状態に戻るからです。
【2】リセットは筋肉を意識せずに、体を揺らすくらいの気持ちで関節を小さく動かす微動が大切です。筋肉を意識してしまうと、ゆるめることが難しくなります。筋肉をゆるめてから、関節をフリーの状態にして小さく動かすことにより、関節内の小さな筋肉の動きを引き出します。
【3】「手のひらでさする」「指で圧する」といった動作は重要です。さする動作は、表層筋をゆるめて筋肉内に溜まった老廃物を押し出し、圧をかける動作にはリンパ節のつまりを解消するといった目的があります。
1-3-2 アクティブのポイント
【1】正しいフォームで行って筋肉の正確な動きを引き出すことにより、効果が高くなります。姿勢や体の動かし方には人それぞれ癖があり、癖は簡単に改善できない場合もありますが、回数よりも正しいフォームを意識して続けましょう。
【2】使っている筋肉をイメージしながらトレーニングしましょう。筋肉の動きをイメージすることが大切です。頭の中でどこの筋肉がどのように伸縮しているのかイメージすると、筋肉が動き出した瞬間を感じとれるようになります。
2 体幹トレーニング方法で体をひきしめる10のコツ
ここからは基本的な体幹トレーニングを目的別に解説します。
筋肉には、大きな衝撃が加わると、ギュッと縮むという特性があります。これは、筋や腱が切れないようにするための防衛反応です。
体が冷えているときや筋肉が硬い状態で急にストレッチを行うと、筋肉は余計に緊張して硬くなりますので、気をつけましょう。
リセットはこうした緊張をとることが目的です。
体幹トレーニング方法1 腹筋を割るコツ
リセット | 横隔膜呼吸
【1】仰向けに寝てヒザを三角に立て、両足は腰骨幅に開いて、両手の平ひらを肋骨の下あたりに置く。
【2】鼻から大きく息を吸って肋骨の下部が横に広がることを実感する。
【3】お腹がいっぱいに広がったら、口を細めてゆっくりと息を吐く。両手は肋骨を少し押し下げていくようにして、お腹の動きをサポートする。数回くりかえす。
アクティブ | 強制呼気
【1】リセットの姿勢から上体を起こし、丸めたタオルを腰の下に置いて上体を少し後ろに倒す。首に力が入らないようにして頭は背骨の延長上にあるイメージ。
【2】両手をお腹の上にそえて息を吸い、お腹を横に広げる。
【3】息を吐きながらお腹をえぐるようにへこませて硬くする。
【4】お腹に意識を集中して息を吸ったら、小刻みに5回吐きながらお腹を中央へと集めていくイメージ。5回くりかえす。
体幹トレーニング方法2 美しい胸板をつくるコツ
リセット | 小胸筋フローリリース
【1】まっすぐに立って体の力を抜く。
【2】右手の人差し指と中指で、左の小胸筋(胸を覆っている大胸筋の奥で肋骨と接している筋肉)を胸の中央側から肩口に向けてさすっていく。
【3】さすりながら硬い部分が見つかれば、そこを覚えておき、アクティブを済ませたら確認する。反対側も同様に行う。
アクティブ | リバースプッシュアップ
【1】床に座って膝を三角に立てる。指先を体のほうへ向けた状態で両手を体の後方に置き、お尻は少し持ち上げた状態にする。
【2】両ヒジを後ろへ軽く曲げ、腹圧をかけた状態で姿勢を保つ。頭は背骨の延長上にあるイメージを持ち、まっすぐ座る。
【3】息を吐きながら両ヒジを伸ばす。腕の力だけでなく、体の軸でお尻が持ち上がるイメージ。
【4】息を吸い、吐きながら(2)の姿勢に戻し、数回くりかえす。
体幹トレーニング方法3 肩の位置を正しくするコツ
リセット | 烏口(うこう)突起刺激
【1】楽な姿勢で立ち、腕と肩の力を抜く。
【2】右手を左肩にもっていき、鎖骨と肩の骨が交わる位置にある烏口突起という骨を2本の指で押す。
【3】左腕はだらっと下ろして力を抜き、小さく前後にふったりクルクル回りしたりする。肩の位置が下がったら、反対側も同様に行う。
アクティブ | 肩関節外旋伸展
【1】背筋を伸ばしてまっすぐ立ち、肩の力を抜く。
【2】左ヒジの裏側に右手の甲をあてる。左手のひらは前向きにしてヒジは伸ばしておく。
【3】左ヒジを少し後ろへ引き、指を伸ばした右手の甲を軽く押す。
【4】肩が開いた感覚をもったら、反対側も同様に行う。
体幹トレーニング方法4 ヒップアップのコツ
リセット | ヒップボーンターン
【1】仰向けに寝て両ヒザを三角に立て、骨盤上部の出っ張っている骨とヒザ、足の人差し指が一直線になるようにする。
【2】右のかかとを床の上で滑らせながら、右ヒザを伸ばしきる。
【3】脚の力を抜いたまま、右足のつま先を内側へパタンと倒す。
【4】つま先を倒したまま右足のかかとを滑らせながら、左ヒザ方向へ引き寄せる。
【5】両ヒザが当たったら右ヒザを外側に倒し、かかとを滑らせながら伸ばして(1)の姿勢に戻す。数回繰り返したら反対側も同様に行う。
アクティブ | バックエクステンション
【1】うつぶせに寝て、両手を額の下に重ねて置く。
【2】両足のかかとをつけて、ヒザをのばしたまま両足を床から浮かす。息を吐いてお腹をへこませ、3秒静止。
【3】息を吸いながら足を下ろす。腰が反らないように注意して数回くりかえす。
体幹トレーニング方法5 はみ出したお腹をなくすコツ
リセット | 腸骨リンパ
【1】仰向けに寝て両ヒザを三角に立てて、両足は腰骨幅に開き、両手をL字にしたら両側の腰のあてて、腰骨上部にあるくぼみを圧する。
【2】両手を腰骨に沿うようにしてお腹中央部へと圧しさすっていく。数回くりかえす。
アクティブ | 強制呼気
【1】仰向けに寝て両ヒザを三角に立てて上体を起こし、丸めたタオルを腰の下に置いて上体を少し後ろに倒す。首に力が入らないようにして頭は背骨の延長上にあるイメージ。
【2】両手をお腹の上にそえて息を吸い、お腹を横に広げる。
【3】息を吐きながらお腹をえぐるようにへこませて硬くする。
【4】お腹に意識を集中して息を吸ったら、小刻みに5回吐きながらお腹を中央へと集めていく。5回くりかえす。
体幹トレーニング方法6 腰まわりのぜい肉をとるコツ
リセット | そけいリンパ
【1】床に座って脚全体を脱力し、右脚だけ伸ばして前に投げ出す。
【2】右足のヒザの上あたりに左手をあて、右手はL字にして右脚の付け根に圧しあてる。
【3】右脚を股関節から引き抜くようなイメージで、足の先が両側に倒れるくらいに左手でクルクル回す。
アクティブ | アブダクション
【1】横向きに寝て、頭の下に丸めたタオルを入れて頭が背骨の延長上にあるようにする。
【2】下側の脚は楽な状態で曲げ、腹圧を入れながら、伸ばした状態の上側の脚を床から浮かせる。
【3】息を吸いながら、上の脚を水平より少し高い位置まで上げて、吐きながら下ろす。数回くりかえしたら反対側も同様に行う。
体幹トレーニング方法7 脚の長さを取り戻すコツ
リセット | そけいリンパ
【1】床に座って脚全体を脱力し、右脚だけ伸ばして前に投げ出す。
【2】右足のヒザの上あたりに左手をあて、右手はL字にして右脚の付け根に圧しあてる。
【3】右脚を股関節から引き抜くようなイメージで、足の先が両側に倒れるくらいにい左手でクルクル回す。
アクティブ | サイドライン
【1】横向きに寝て下側の腕のヒジを立てて上体を少し起こし、上側の脚のヒザを立てて姿勢を安定させる。上側の手と下側の脚は楽な状態で曲げておく。
【2】上側の脚を床から浮かせ、息を吸いながら伸ばすようにして水平より少し高い位置まで上げる。
【3】つま先を内回し外回ししたら脚を元に戻す。3回くりかえしたら反対側も同様に行う。
体幹トレーニング方法8 お腹とヒップをひきしめるコツ
リセット | 骨盤アップダウン
【1】仰向けに寝て両ヒザを三角に立てて、ヒザと足は揃えておく。両手のひらは肋骨の下あたりに置く。
【2】ヒザを曲げたまま、太ももが床に対して垂直になるまで両脚を上げる。
【3】息を吐きながらゆっくりと両ヒザを胸に向けて小さく引き寄せる。息を吸いながらヒザを戻し、数回くりかえす。
アクティブ | 低姿勢強制呼気
【1】仰向けに寝て両ヒザを三角に立てて上体を起こし、丸めたタオルを肩甲骨の下に置いて上体を後ろに倒す。首に力が入らないようにして頭は背骨の延長上にあるイメージ。
【2】両手をお腹の上にそえて息を吸い、お腹を横に広げる。
【3】息を吐きながらお腹をえぐるようにへこませて硬くする。
【4】お腹に意識を集中して息を吸ったら、小刻みに5回吐きながらお腹を中央へと集めていく。5回くりかえす。
体幹トレーニング方法9 ガニ股やO脚を治すコツ
リセット | 股関節とヒザの微動
【1】床に座って脚全体を脱力し、右脚だけ伸ばして前に投げ出したら両手で右脚の太ももあたりを持つ。
【2】ガニ股の人は右脚を斜め内側に、O脚の人は斜め外側に伸ばして、右脚を股関節から引き抜くようなイメージで、足の先が両側に倒れるくらいに左手でクルクル回す。
【3】【1】の姿勢に戻したら、右ヒザの両サイドに手をあてて小さくヒザの曲げ伸ばしをする。数回繰り返したら、反対側も同様に行う。
アクティブ | ストレートカーフレイズ
【1】まっすぐに立って付け根から両脚を外側に回すイメージでつま先を広げる。両方のかかとはつけておく。
【2】両手は自然に腰下へそえておき、両方のかかとをつけたまま床から浮かせてつま先立ちになる。
【3】かかとをつけたままストンと床に戻し、数回くりかえす。
体幹トレーニング方法10 正しい歩き方のコツ
リセット | 股関節伸展回施
【1】腰幅に足を開いて立ち、両手はL字にして腰上にあてておく。
【2】右足を半歩後ろへ引いたら伸ばしたまま、右足のつま先を支点にしてかかとを内側へ回す。かかとは床から浮かせずに滑らせるようにする。
【3】次に右脚のかかとを外側に回し、テンポよく内、外と数回繰り返したら、反対側の足も同様に行う。
アクティブ | 拇指球ウォーク
【1】両足を腰幅に開いて立ち、腰骨、両ヒザ、両足のつま先を正面に向ける。両手はL字にして腰上にあて、背筋を伸ばす。足裏は、親指の付け根である拇指球、小指の付け根である小指球、かかとの3点で立っているイメージ。
【2】右足のかかとを床から離し、右足の拇指球に重心をかける。
【3】右脚のかかとを床に戻すと同時に、左足のかかとを床から離し、呼吸を止めないようにして足踏みの要領で数回くりかえす。
まとめ
体のゆがみは、筋肉のバランスが崩れたせいで骨格がゆがんでしまうことが原因です。猫背の人の多くは骨が変形しているのではなく、体幹を支える深層筋がうまく働かなくなっているのです。
この状態を放置して骨自体が変形するまで悪化すると、柔らかい軟骨部分から崩れていき、神経を圧迫して激しい痛みを発するようになります。
そうなる前に、深層筋の働きを取り戻しましょう。
ここで解説したトレーニングは全てを行う必要はありません。自分の体の状態に応じていくつかを組み合わせ、1日2回、週に3回続けてみましょう。
すべてのトレーニングに言えることですが、痛いところまで筋肉を使うのは逆効果です。痛みがある場合は、リセットからやり直してみてください。
【参考資料】
『「体幹」を鍛えるとなぜいいのか?』(PHP研究所・2012年)
『体幹を鍛えるコアトレ スタートブック』(学研パブリッシング・2011年)