不安な気持ちでいっぱいになり、いてもたってもいられない状態になるのは辛いものです。
「なんとかして早く不安を解消させたい…」
不安で体調を崩すほど悩む人がいる一方で、不安な気持ちになっても、ごく短い時間で立て直しが効く人もいます。
そこで今回は、不安の正体から自己認知を利用した不安の解消方法を見ていきます。この違いが起こる原因を知ることで、誰でも不安をコントロールすることができるようになります。
目次
1 不安を解消できない正体を知ろう
1-1 不安とは、どうなるかわからない時に起こる感情
1-1-1 先の予測がつかない状況が不安を起こす
1-1-2 不安はネガティブな要素だけじゃない
1-2 自分に関係ないことには不安を感じない
1-3 不安をはかる判断基準は「日常生活」
2 不安を整理して解消するステップ
2-1 不安があると認める3つのステップ
2-1-1 不安を解消する第一歩は認めること
(1) 不安を判断しているのは自分自身と認識する
(2) 不安を「見える化」する
(3) 不安に思っている自分も見つめてみる
2-2 行動を起こして不安を解消する
(1) 挑戦がなければチャンスもない
(2) 自分の限界を広げる負荷を与える
(3) 他人の要望に振り回されない
(4) やらないよりは「やる」、どうせやるなら徹底的に
(5) 何かを得るなら、今あるものを捨てる勇気も要る
(6) 不安になりやすい場面は「ルーチンワーク」で乗り切る
(7) 自分を勇気づける「言葉」を持つ
(8) 積極思考でポジティブ・スパイラルをつかむ
(9) 不安に背を向けず、正面から取り組む
(10) 生産性のあるアクションで自信をつける
3 解消できない不安を対処可能にする方法
3-1 不安を心配へ変換する
3-2 不安を逆手にとって武器に変える
3-3 どうしようもない問題と不安を手放す
まとめ
1 不安を解消できない正体を知ろう
不安という言葉からは、なにやらモヤモヤ、漠然とした得体のしれないイメージを感じさせます。なぜ不安を感じるのか、不安の正体を探ってみましょう。
1-1 不安とは、どうなるかわからない時に起こる感情
1-1-1 先の予測がつかない状況が不安を起こす
不安とは、「どうなるかわからない」という状況です。
仕事が、どうなるかわからない……
老後が、どうなるかわからない……
などどのような単語を前に据えてみても、この次が明確でない状況になったとき、人は不安を覚えます。
このような先の予測ができない状況を、見通しが暗いと心理学では表現します。先の予測がつかない状況が、不安を起こす一番の原因なのです。
1-1-2 不安はネガティブな要素だけじゃない
不安は、ネガティブな要素だけで起こるとは限りません。もう少しで実現しそうなことや、手の届きそうなところにある期待、他人から自分へ向けられる期待を不安に感じる場合もあります。どちらにしても、どうなるかわからないという点では共通しているからです。
1-1-3 無意識の予測が不安をなだめる
こういわれると、未来のことなんか誰でも予測できないし、ほとんどの人が不安を感じないで過ごせているじゃないかと思われるかもしれません。
しかし、これは私たちが普段、無意識の予測で不安をなだめているためです。私たちは日常生活において、さまざまな学習や経験をし、その範囲を超えない出来事には、さほど不安は覚えません。
それよりも不安を招く要因は、自分の経験値では測ることができないことなのです。
1-2 自分に関係ないことには不安を感じない
私たちは、自分に関係ないことには不安を持ちません。現実味があって、自分とのかかわりが強い事柄ほど不安になる可能性が高くなります。
同じ出来事を見ても、自分の置かれている状況で不安になるか、ならないかも変わります。
たとえば、あなたが会社員で、台風接近のニュースを知ったとします。そのとき、「交通網は大丈夫かな?」と不安を感じます。ところが、あなたが交通機関を使う必要のない在宅ワーカーだったら、電車やバス等のダイヤの乱れに直接的な不安は感じません。
このように不安は、自分にも何か起こるかもしれないとわが身に置き換えが可能な場合に起こるのです。自分には全然関係ないと思える出来事からは不安が起こりません。
1-3 不安をはかる判断基準は「日常生活」
不安になる・ならないの第一判断基準になっているのが、日常生活です。良く言えば平穏、悪く言えば平凡な日常が続いている時は、不安は感じません。
不安に感じるのは、日常に挟まってくる、ちょっと規格外なモノ、人、出来事です。
しかし、規格外といっても大規模災害などの場合は、生存本能が働いて、生き延びなければという意識の方が不安よりも優先されます。そして、どうにか生きていられそうだという見通しが立ち、日々の生活サイクルが戻ってくると、これからどうなるのだろうといった不安を抱きはじめます。
これは、不安を感じる基準が、私たちが日常と認識している経験則だからです。そのため、あまりにも規格外すぎる出来事には現実味がなく、不安は後になって現れます。
2 不安を整理して解消するステップ
教育コンサルタントの嶋津良智氏は、著書『不安をなくす技術』で不安を「夕暮れ時にぼんやり見える影」と表現しています。
ぼんやりだけれど見えるから気になる、けれど、はっきりしない、状況がつかめないというわけです。
この訳がわからない、モヤモヤした感じを取り除く方法として、3つの対処方法があることを「影=不安」に例えて提示しています。
(2)行動を起こす
(3)不安があっても仕方ないと認識を変える
これは、不安を整理して、その実情に応じて具体的に対処するための優れた方法です。次から個々のステップについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
2-1 不安があると認める3つのステップ
不安になっていると、「早く何とかしなければ!」と焦るばかりで、具体的な解決の糸口が見つからないことがよく起こります。
こんな時は、不安な状態が辛いために、自分で意識しないまま、不安から目を背けている可能性があります。
けれども、不安から目を背けると、状況が把握できないせいで、かえって不安の解消は長引いてしまいます。
2-1-1 不安を解消する第一歩は認めること
不安を解消する第一歩は、不安を認めるところから始まります。次の3つのステップで不安を認めるコツをつかみましょう。
(1) 不安を判断しているのは自分自身と認識する
不安は、先が見通せない、自分と関係がある、日常から少しだけ外れている、という外的な要因が元になって起こります。そして、不安になることは、ほとんどコントロールができません。
また、同じ出来事でも、初めての時よりも、2回目の方が不安になりません。なぜなら、一度経験したことは予測がつきやすい分、不安にならないのです。ただし、失敗したことがあると、2回目以降の出来事でも「また、失敗するかも…」と不安になります。
つまり、不安になる、ならないという判断をしているのは、たった今、不安と向き合っているあなた自身なのです。ですから、あなた自身が「大丈夫!」という判断を下すことができれば、不安は簡単に解消することができます。
加えて、不安の感じやすさには身体的なコンディションや、置かれている状況が大きく影響します。ストレスを受けている時は、誰でも不安を感じやすくなります。不安と同時に、「ちょっと疲れているのかな?」と感じるときは、無理せず休むことも、不安を速やかに解消するのに役立ちます。
(2) 不安を「見える化」する
不安を認識できたら、次は不安をはっきりと見てわかる形に変えていきます。
物事や先行きが、モヤモヤと見えそうで見えない状態だと、ますます不安は強くなります。面白いことに、この状態のままにしておくと、さらに気にかかって不安が大きくなってしまいます。まず気になり始めたら、「何が」「どうして」不安なのか、きちんと把握しましょう。
不安の見える化には、2つの方法があります。
不安を時系列に沿って日記のように記録する方法です。
嶋津良智氏は、不安があるなと気づいた時、日ごとに毎日感じた不安を記録していく方法の「不安ログ」を提案しています。毎日の不安を記録して、しばらく置いてから読み返してみます。
不安に感じていることを文字にして書き出します。書き方は、文章でも箇条書きでも構いません。
実際にやってみると、なかなかスムーズには書けません。書けないということは、何が不安なのか自分でもよく分かっていないということです。考えを言語化する行為は、心の棚卸になり、気持ちの整理を助ける働きもあります。
不安ログを実際に3年間実行した人の興味深いエピソードが、考案者である嶋津良智氏の著書に出てきます。
書きだした不安の半分以上は解決できていて、残りの半分は忘れていました。不安は時間が解決してくれるものなんだと気づきました。それだけでも『不安ログ』をつけた甲斐があったと思います。(出典『不安をなくす技術』フォレスト出版株式会社)
と話しています。このエピソードからも、不安はほとんどは何もしなくても消えてしまうか、何か解決の方法があると分かります。
(3) 不安に思っている自分も見つめてみる
心に不安がある状態が好きだという人はあまりいません。
多くの人は不安でオロオロする状況を嫌だと感じます。それは、同時に不安に振り回されている自分、問題を解消できない自分の姿に対する嫌悪感の現れともいうことができます。
不安は、「自分の姿を投影する鏡」でもあるのです。
不安に思っている自分をそのまま受け止めて、なぜ不安に思っているのか、丁寧に理由を解きほぐしていくのも良い方法です。詳しく見ていくうちに、心細さや寂しさ、恐れといった不安の裏側にある本心が見えてくることがあります。この場合は、本心と折り合いがつけば、不安は自然と解消されてしまいます。
2-2 行動を起こして不安を解消する
不安を解消する方法は、行動を起こすことと言われます。
座ったまま「不安だ、不安だ」と手をこまねいていたのでは、問題が解決しないばかりか、時間の経過とともにかえって状況を悪化させることがあります。また、考えれば考えるほど行動できなくなり、不安解消までの時間が長引いてしまいます。
不安にとらわれていると、情報に振り回されて右往左往する状態に陥りやすいものです。これを防ぐのに有効なのは、行動を起こす姿勢です。不安を解消するための行動は、効果的で、的確でなくてはかえって不安を増してしまいます。気を散らさずに一つのことに集中してアクションを起こすことがポイントになります。
不安を解消するのに効果的な「心の姿勢」を10例挙げてみます。
(1) 挑戦がなければチャンスもない
「ここぞ!」という決断を迫られる時、得られそうな結果が大きいほど、同時に不安も大きくなります。攻めるか、引くかの駆け引きの場面でも、内面で葛藤があるほど失敗の恐怖も強くて当然です。
こういうときは、リスクを取ってでも挑戦することで、初めてチャンスが巡ってくるものです。思い切って挑戦して失敗したとしても、不安を乗り越えたことが大きな収穫になります。
(2) 自分の限界を広げる負荷を与える
安定したパターンの繰り返しに収まっている日常は、危険もない代わりに成長もありません。最初から自分の能力の限界を決めてしまって、それ以上を望まないからです。
時には限界を広げるために、より難度の高い課題に取り組むことで、あえて負荷をかけてみます。「自分にできるだろうか?」という不安は、成し遂げた時に大きな喜びと自信に変化すること間違いなしです。
(3) 他人の要望に振り回されない
仕事や人間関係の中では、どうしても顧客、上司、同僚、友人等、周囲の人からの要望を聞いて、物事を進めなければならない状況が生まれます。そんなとき、自分なりの納得がないまま、相手の意見に振り回されて動いてしまうと、「これでいいのだろうか?」という不安も強くなります。
自分の中で「本当は、嫌だったのに…」などの不満をため込むことは、不完全燃焼を生む原因になります。自分なりの納得、自分のスタイルを貫いた結果であれば、失敗しても悔いは残りにくいものです。
(4) やらないよりは「やる」、どうせやるなら徹底的に
やる、やらないで迷うときは、失敗という不安が付きまといます。けれど、何もしなかった後悔は、何かをした後の後悔よりも始末に悪いものです。やらない選択よりは、やって後悔のほうが遥かにマシです。そして、やるならやるで徹底すれば、「これだけやった!」という満足感も得られます。
(5) 何かを得るなら、今あるものを捨てる勇気も要る
捨てるという行為は変化を伴うため、意外に勇気がいるものです。捨てた結果、望ましくないことが起こるのではと不安になります。
しかし、人間がこなせる仕事の量や、対処できる事態には限界があります。どう頑張ってもこれ以上は無理というとき、あるいは、新しいことに集中してアクションを起こす必要があるときは、今ある何かを手放す勇気も必要になります。
(6) 不安になりやすい場面は「ルーチンワーク」で乗り切る
苦手なことに取り組むとき、かつ、過去に失敗した経験があると、誰でも不安を感じます。そういうときに効果的なのが、決まったパターンをこなすルーチンワークです。
苦手なことに対して、決まりきったパターンを儀式的にこなしていくことで、安定感を引き出すことができます。たとえば、おまじないです。おまじない自体は、問題に直接的な解決策を与えるわけではありませんが、おまじないは効くという自己暗示と、おまじないをやったから大丈夫という行動が支えとなって、難所を乗り切る力が沸いてきます。
(7) 自分を勇気づける「言葉」を持つ
認知心理学や行動心理学では、言葉には動機付けや、行動を支配する力があると言われます。
先の見通しが立たない場面でも、「私は失敗しない」「ここまでやってダメなら撤退する」など、自分で自分を鼓舞する言葉や目標を明確化する言葉を使うことによって不安が軽減されます。
(8) 積極思考でポジティブ・スパイラルをつかむ
認知心理学によると、ネガティブな考え方をすると行動が消極的になります。心がけてポジティブな考え方をするようにすると、それだけでも行動が積極的になり、攻めの姿勢で物事に対処できるようになります。
(9) 不安に背を向けず、正面から取り組む
不安を紛らわすためにギャンブルや酒など、気を紛らわす何かに頼るのは逆効果です。これは不安に背を向けているだけで、一時的には気が晴れても、すぐまた不安を大きくしてしまいます。
ささやかであっても、目の前の不安を直接小さくする効果のある行動をしたほうが、結果的に不安解消を早めることになります。
(10) 生産性のあるアクションで自信をつける
不安を解消するのに、自信をつけることは効果的な予防にもなります。行動はスモールステップで、現実的な課題を解決することができ、生産性のあるアクションほど、不安解消の効果が高くなります。
不安の原因にダイレクトな解決ではなくても、その周辺を解決できれば、中心的な課題に見通しを与える効果が期待できます。
3 解消できない不安を対処可能にする方法
先のことが見えないといった不安は、人に高いストレスを与えます。過剰なストレスは心身に悪影響を及ぼす反面、上手に受け流す、あるいは違った意味づけをすることで、現実的に対処可能なものへ変換することができます。
ここでは、不安を変換するとも言うべき、もう一つの不安解消法についてご紹介します。
3-1 不安を心配へ変換する
不安を自分でコントロールすることはできません。気がつくと、ふわりと忍び寄ってくるように現れるものです。反対に、心配は、心配すると表現されるように、自発的に自分の意思で行うことができるものでコントロールが可能です。
不安は、どうなるかわからないから不安なのです。不安の原因となっているものをできるところから整理し、「ここが心配だ」という形に置き換えてしまえば、漠然としていた不安は、具体的で目標の定まった心配へと形を変えることができます。
3-2 不安を逆手にとって武器に変える
不安の解消方法で最もポジティブで効果的な方法が、不安を武器に変えてしまう方法です。不安はそれまで保たれていた安定が崩されることで起こりますが、同時に不安を積極的に背負い込むことで、「負けてたまるか!」という反骨精神を引き出して積極性を得る方法があります。
これは前述した、不安を解消する心の姿勢を更に積極的にすることにより、よりアクティブな生き方を進めていく方法とも言い換えられるでしょう。不安になっている自分を素直に認め、「不安だから頑張ろう!」と活動のきっかけに変えることができれば上級者です。
3-3 どうしようもない問題と不安を手放す
何より行動を起こすことが、不安を解決する上で効果があります。しかし、中には行動を起こしても解決ができないような問題もあります。
たとえば、大規模災害や世界的経済不況などは、いくら「不安だ、不安だ」と感じていても、個人の力で変革させることはできません。このような大きすぎる不安は、手に負えないものとして手放してしまうのも解消方法としては有効です。
また、大きすぎる不安に対しては、不安に思っていても仕方ないという気持ちを切り替えるのと同時に、何か自分でできそうな備えを検討しておくのもよいでしょう。たとえば、災害に備えて防災グッズを用意する、ボランティア活動に参加するなど、自分でできることを実行することで、少しは役立ったかもしれないという意味づけが不安を軽減するのに役立ちます。
まとめ
不安は、先の見通しが立たない、どうなるかわからないという状況から生まれてきます。不安を感じるのは自分自身であり、認知のコントロールによって意味づけをすることができます。
不安を解消する手段は、積極的行動が一番です。ただし、やみくもに動けばいいのではなく、行動を起こす時の心の姿勢が良い結果を生むためには不可欠になります。
また、不安は受け流す、積極的に戦う、手放すことでも解消できます。これらは不安を現実へと変換させ、時には積極的に生きるための武器にすることで、結果的に不安を解消する効果があります。
【参考図書】
『不安のしずめ方』(加藤諦三著・PHP文庫)
『不安をなくす技術』(嶋津良智著・フォレスト出版株式会社)