自分で行うツボ療法で、目の疲れを解消できたらうれしいですよね?
ツボを刺激する指圧療法は、専門の知識がないと効果を出せないと思っていませんか?ツボの位置を見つけることは難しそうに思われますよね。
ところが、自分の指で文章に書かれているあたりを触ってみると、痛かったり圧迫感が感じられて、ツボを探し当てることが予想外に簡単だということがわかります。
ここでは、東洋医学で培われてきた指圧療法の基本を解説し、目の疲れを解消するツボ13ポイントを紹介します。
目次
1 ツボとは
1-1 東洋医学から生まれたツボ療法
1-2 世界中で注目されているツボ療法
1-3 ツボ療法の効果
1-4 ツボの探し方のコツ
1-5 ツボの押し方のコツ
2 目の疲れをとる15のツボ
●顔のツボ
目の疲れをとるツボ1 太陽(たいよう)
目の疲れをとるツボ2 睛明(せいめい)
目の疲れをとるツボ3 攅竹(さんちく)
目の疲れをとるツボ4 魚腰(ぎょよう)
目の疲れをとるツボ5 承泣(しょうきゅう)
目の疲れをとるツボ6 四白(しはく)
●腕と手のツボ
目の疲れをとるツボ7 合谷(ごうこく)
目の疲れをとるツボ8 手三里(てさんり)
目の疲れをとるツボ9 曲池(きょくち)
●首と肩のツボ
目の疲れをとるツボ10 風池(ふうち)
目の疲れをとるツボ11 肩井(けんせい)
目の疲れをとるツボ12 天髎(てんりょう)
目の疲れをとるツボ13 天柱(てんちゅう)
まとめ
1 ツボとは
ツボは正式名を「経穴(けいけつ)」といいます。
その経穴を刺激することで、病を治療したり予防したりする「ツボ療法」には、針で刺激を与えたりお灸で温めたりする「鍼灸」と、指で押す「指圧」があります。
西洋医学が普及する以前の日本では、この鍼灸と指圧による治療が一般的なものでした。現在でも多くの治療院が存在して治療を行っています。
ここでは自分で簡単にできる「指圧療法」を解説していきます。
1-1 東洋医学から生まれたツボ療法
ツボ療法は、中国で生まれた東洋医学の治療法のひとつです。
中国では2000年前にすでに鍼灸術を施すのに有効なツボが説かれており、日本に伝わったのは約1600年前といわれています。それ以来、日本でも独自の発展を遂げて、誰にでも親しまれる治療法となりました。
東洋医学では、人間が生きるために必要な3要素を「気、血、水」と考えます。「気」は生命エネルギー、「血」は血液、「水」は体液全般を意味します。この3要素が過不足ない量でスムーズに流れていることが健康な状態と考えるのです。
「気」は食べた物や呼吸から取り込んだ「大気」からつくられて、「経絡(けいらく)」と呼ばれる体中に張り巡らされた道を通ります。
「経絡」にはところどころに穴のような「気」の出入り口があって、体の中と外で気のやり取りを行っています。
この「気」の出入り口が「経穴=ツボ」です。
「気」が不足すると体の機能や活力が低下してしまい、「気」の流れが滞ると痛みや不調が起こります。それは「経路」にある「経穴=ツボ」に反応として現れるのです。
ツボに適度な刺激を与えることにより、「気」の流れをスムーズにして痛みや不調を改善するのが「ツボの指圧療法」です。
1-2 世界中で注目されているツボ療法
近年、鍼灸や指圧は世界中で注目を集めており、とくに西洋医学の発信地である欧米で関心が高まっています。
ツボは長年世界中で発展するうちに、数や位置、名称などが多様化してきました。中国では1000以上のツボが治療に応用されるといいます。
科学的な立場から世界標準となるツボの認識を定めようと考えたWHO(世界保健機関)は、1989年に361個のツボの名称を統一し、2006年にその位置を統一しました。
361個のツボは、体の左右に対となって走る12本と、お腹側と背中側にあって特定の臓器とつながりをもたない2本、合計14本の経絡上に存在します。ここで解説するのも、その中に数えらているツボです。
1-3 ツボ療法の効果
経絡上のツボを刺激すると気や血の流れが良くなって、つながっている臓器や組織が活発に動くようになり、体の不調が解消されます。
不調を起こしている臓器や組織から離れているツボを刺激して不調が解消されるのは、経絡でつながっているからなのです。
長年の研究により、ツボ療法の効果は筋肉疲労や痛みの緩和、内臓の不調だけでなく、メンタルヘルスや美容など多岐にわたることがわかってきました。
近年は、東洋医学と西洋医学を組み合わせて研究が進む「統合医学」においても、ツボ療法は、人間の体が生まれながらにしてもっている自然治癒力を高めて、体の機能を正常な状態に戻す作用が重視されています。
自律神経を構成する交感神経と副交感神経が正常なバランスにあると、自然治癒力が最大限に発揮されます。ツボを押すと、刺激を受けたという情報が神経を伝って脳へともたらされ、脳は自律神経の働きを整えようと体中に指令を出すのです。
ツボには交感神経に作用するものと副交感神経に作用するものがありますが、ふたつの自律神経は連動しているので、どちらかの働きを整えるともう一方も正常に働くようになります。
指圧療法は、継続して行うことによって穏やかに効果が現れ、クスリのような副作用がないので、誰でも安心して行うことができるのも特徴です。
1-4 ツボの探し方のコツ
ツボの位置は人によって微妙に違います。文章にある標準の位置を参考にしながら、自分の指で正確な位置を探し当ててください。
標準的な位置を参考にしてその近辺を軽く押してみましょう。
痛み、気持ちよさ、響く感じなどの反応がある部分がツボです。
反応があるのは異常のシグナルです。なにも感じないツボは異常がないということですから、とくに押す必要はありません。
1-5 ツボの押し方のコツ
ツボの押し方には次のようなコツがあります。
●できるだけ自分の指で押す
指先は温度やしこりなどを敏感に感じ取ることができます。背中などで自分の手が届かないツボは、ツボ押しグッズを使うのもやむを得ませんが、基本的には指の腹で押すようにしましょう。
●正しい強さで押す
「ちょっと痛いけど気持ちよい」が、押す力の限界と考えます。痛すぎると筋肉が緊張して逆効果になります。首や、骨に守られていない目の周りなどのツボは、やさしく押すようにしましょう。
●体の中心に向けて押す
指の腹をツボに当てたら、皮膚面に対して垂直に押し込み、組織や器官の中心に向かって押します。親指と人差し指を使うのが基本で、ときに中指も使います。
●1回3秒間で3~4回押すのが基本
指の腹を当てたらいきなり強く押すのではなく、少しずつ力を加えていきます。「1、2、3」と3秒間押したら「4」で力をゆるめ、指はツボの当てたままにして、また「1、2、3」と3秒間押して「4」で力をゆるめるようにします。
●揉む、さするという方法も併用する
刺激を抑えたいときや温めて血流を改善したいときは手のひらでさする、こり固まった部分はやさしく揉みほぐすというのも効果的です。
2 目の疲れをとる15のツボ
朝起きたときはスッキリしていても、仕事をしていると目が疲れてきて、充血する、目がしみる、視力が低下するといった症状が現れてきます。
そういったときに、どこでも手軽にできるのが指圧療法の良さです。ほとんどのツボ刺激には、即効性が期待できます。
●顔のツボ
目の疲れをとるツボ1 太陽(たいよう)
目尻と眉尻の中間からほんの少し後方に寄ったところにあるツボです。こめかみから目尻に向かって指を滑らせていき、目尻の斜め上にあるわずかなくぼみです。
太陽は、睡眠不足で目が充血してしるときや、目がショボショボする、かすむといったときに効果的です。
目の疲れをとるツボ2 睛明(せいめい)
目がしらのやや上、鼻の付け根との間にある骨のくぼみで、よく目が疲れると無意識のうちにもんでいるところです。
眼球の奥が痛むときには即効性があります。パソコン作業などで目が疲れたときに、時間がとれなくてなにかひとつというならば、この睛明のツボを刺激しましょう。
目の疲れをとるツボ3 攅竹(さんちく)
眉頭の内側にあるツボです。人指し指を当てて探ると、コリコリとした筋に触れる部分です。両手の人差し指か中指で持ち上げ気味にゆっくり押します。
激しい疲れ目や、目の痛みに効果があります。
目の疲れをとるツボ4 魚腰(ぎょよう)
眉の真ん中にあることから「眉中」とも呼ばれます。眉の中央あたりに痛みを感じるポイントがあります。
ここも激しい疲れ目に効果があり、両手の中指と人差し指を攅竹と魚腰に当てて、2カ所同時に刺激すると、眼精疲労全般に効果を発揮します。
目の疲れをとるツボ5 承泣(しょうきゅう)
眼球の中央部分の真下、ほお骨の上部にあるくぼみです。承泣とは「涙を受ける場所」という意味で、目の周囲のむくみをとり、涙の出をよくする効果があります。
ここは基本の指圧を2回行ったら、小さな円を描くようにグリグリ回してやりましょう。
目の疲れをとるツボ6 四白(しはく)
承泣から指の幅1本分下にあるくぼみのやや下です。疲れ目やかすみ目に効果があります。
ここも承泣と同じようにグリグリ回してやるといいでしょう。
●腕と手のツボ
目の疲れをとるツボ7 合谷(ごうこく)
人差し指と親指の骨が合流するところから、やや人指し指よりにあるくぼみです。目の疲れが激しくて、頭が重い、肩こりがひどいというときに効果を発揮します。
反対の手の親指で20~30秒間、押し込むように揉みほぐすと効果的です。
目の疲れをとるツボ8 手三里(てさんり)
ヒジを曲げたときにできるシワの親指側に反対の手の人差し指を置き、薬指の腹が当たっているところです。
疲れ目全般、まぶたの痙攣などにも効きます。胃腸の働きを整えるツボとしても知られています。
目の疲れをとるツボ9 曲池(きょくち)
ヒジを曲げたときにできるシワの親指側の終点にあります。曲池とは「曲がったところ」という意味です。
ヒジをはじめとした腕の症状全般に効果があるツボで、目の充血を改善する効能もあります。
●首と肩のツボ
目の疲れをとるツボ10 風池(ふうち)
後頭部の中央、骨の出っ張りの下にある「盆のくぼ」というくぼみから指2本分外側にあります。髪の毛の生え際の少しくぼんだところで、押すと痛みを感じるのでわかると思います。
この風池は肩こりにとても有効なツボで、目、耳、鼻のトラブルや頭痛にも効果を発揮する重要なツボです。
両手を頭の後ろで組んだまま、両手の親指で軽めに10回押します。
目の疲れをとるツボ11 肩井(けんせい)
ひどい肩こりをともなう眼精疲労には、首と肩のツボも刺激して血流の改善を図りましょう。
肩井は、首の根本と肩先の中間点にあって、肩がこると無意識に手をやるところです。乳頭から真上に指をすり上げていくと、肩の一番高いところに押すと痛みを感じるツボがあるので、すぐにわかります。
肩井の「井」と井戸のことで、「気」や「血」が湧き出る重要な場所を意味します。
肩こりに即効性のあるツボで、頭痛、目や耳のトラブルにも効果があります。
目の疲れをとるツボ12 天髎(てんりょう)
肩井から後方に指1~2本分下、肩甲骨上端にあるくぼみです。「天」は体の上部、「髎」は骨の端や角にあるくぼみを意味します。
首のこり、頭痛、目の充血に効果があります。
目の疲れをとるツボ13 天柱(てんちゅう)
「盆のくぼ」から指1本分外側、風池との中間点にあります。「柱」は身体を支える柱である頸椎を意味します。
血圧の安定に効果があり、目の疲れ、頭痛、首や肩のこりを緩和します。
まとめ
指圧は、指先の爪の生え際にある「井穴(せいけつ)」と呼ばれるツボから「気」が送り出されることによって、効果が最大限に発揮されるといわれます。
爪を立てずに、指の腹で念を送るようなイメージで、じっくり圧を加えるようにしてください。ツボを押すタイミングで息を吐くようにすると、気の流れを活性化できるといいます。
大切なのは、気持ちよいことが大前提であり、激しい痛みや苦痛をがまんして行ってはいけないということです。
ツボ療法で目の疲れを解消すると経絡を通じて気が流れ、身体全体の健康にもつながりますから、習慣化することをお勧めします。
【参考資料】
『症状改善! ツボ大全』(成美堂出版・2016年)
『眼の疲れをとる本』(講談社・2002年)
『目がスカッと!耳がスッキリ!のツボ』(ビックサクセス・2013年)