些細なことにも、ついイライラしてしまうときがありますよね?
イライラすることが多いと頭が痛くなったり、疲労感が強くなったりと健康にも影響します。
だから、できればイライラしなくてすむようにしたいと思いますよね。
しかし、イライラする感情を抑えつけることは、新たな問題を生んでしまいます。
イライラは怒りの感情ですから、むりやり抑え込むと、過剰なストレスを溜めることになります。
そうかといって、その感情を外に向けて誰かにぶつければ、嫌われることに。
ですから、イライラの感情をコントロールすることができれば、ストレスの軽減になるばかりでなく、対人関係にもよい影響を与えることになるのです。
ここでは、イライラを解消するヒントとして、怒りの感情をコントロールする方法を、生活習慣からと、行動や思考からという2つのアプローチで解説します。
目次
1. イライラの原因と影響を知る
1-1. イライラを起こす5つの状態
1-2. イライラは自律神経が乱れている状態
1-3. 交感神経と副交感神経のバランスが重要
1-4. イライラが体に及ぼす悪影響
2. 生活習慣からのアプローチ
2-1. ① GI値の低い食材を選ぶ
2-1. ② ビタミンB群を摂る
2-3. ③ ミネラル不足に気をつける
2-4. ④ 朝日を浴びてセロトニンを増やす
2-5. ⑤ ながら運動でイライラを予防する
2-6. ⑥ 快眠で自律神経のバランスを整える
3. 行動や思考からのアプローチ
3-1. ⑦ 色と香りで交感神経をしずめる
3-2. ⑧ 音楽で自律神経のバランスを整える
3-3. ⑨ 口角を上げて笑顔をつくる
3-4. ⑩ 苦手な人とは距離をおく
3-5. ⑪ 旅で自律神経を整える
1. イライラの原因と影響を知る
自分から好んでイライラしようとする人はいませんから、「イライラの感情は自分ではどうしようもないものだ」とか、「自分はイライラしやすい性格なのだ」と、あきらめることによって怒りの感情をやり過ごしている人が多いのではないでしょうか。
しかし、イライラが心身や対人関係に及ぼす影響は、とても大きいものです。
できれば、イライラしたくないというのが、本音ですよね?
あきらめる前に、イライラを減らす手段を考えてみましょう。
そのためには、まずイライラの原因や症状を分析してみる必要があります。
1-1. イライラを起こす5つの状態
怒りの感情が生まれるときに、心や体はどのような状態になっているのでしょうか。
それは、次の5つのどれかに当てはまります。
① 自分に自信がもてないとき
② 体調が悪いとき
③ 悪い環境にいるとき
④ 精神的な余裕がないとき
⑤ 想定外のことが起こったとき
こうしたイライラを生む状態をすべてなくすことは不可能ですが、努力次第である程度減らしたり、軽くしたりすることは可能です。
できるだけ、自分をこのような状態に置かなければ、怒りの感情を予防することができるのです。
1-2. イライラは自律神経が乱れている状態
イライラすることによって、自律神経のバランスが乱れます。
自律神経とは、普段、無意識に行っている呼吸や心臓の鼓動、消化吸収や排泄、血液の循環や発汗、さらにはホルモンの分泌調整といった、生きるために必要とされるいろいろな機能を調整している神経です。
自律神経は交感神経と副交感神経から成り立っています。
交感神経は全身の活動を高める神経で、「昼間の神経」と呼ばれるのに対し、副交感神経はリラックスモードを司るので「夜の神経」と呼ばれます。
自律神経は生命維持に必要な機能を調整するので、乱れると様々な病気の原因になります。
怒りの感情は、交感神経を活発にし、心拍や血圧を上昇させます。
急激に乱れた自律神経は、なかなか元には戻りません。
1-3. 交感神経と副交感神経のバランスが重要
交感神経と副交感神経は、体の内外の状況に応じてどちらかが活発になると、もう片方は鎮静化するという、アクセルとブレーキのような関係にあります。
交感神経が活発になると、血管は収縮、瞳孔は開き、心拍数は上がり、胃腸の働きは抑制されます。
副交感神経が活発になると、逆に血管は拡張し、瞳孔は閉じ、心拍数は下がり、胃腸の働きは活性化します。
交感神経と副交感神経は、ともに40~60%が望ましいバランスとされ、このバランスにあればほどよい緊張感とリラックスが保てるので、意欲や集中力も適度に高まるのです。
意識的に交感神経や副交感神経を高めることはできません。
しかし、気持ちを高揚させることで交感神経を活発にし、リラックスすることによって副交感神経を活発にすることができます。
1-4. イライラが体に及ぼす悪影響
「イライラしても我慢すればいい」と、簡単に考えてはいけません。
交感神経が優位の生活を続けると、寿命を縮めることになってしまいます。
急激な血圧の上昇や心拍数の増加は、脳梗塞や脳出血、狭心症の発作などを引き起こします。
さらに怒りが激しくなると、血管が収縮して全身に血液が行きわたらなくなるので、手足が震えて呼吸が浅くなり、ひどいときには卒倒することもあるのです。
交感神経の末端から分泌されるアドレナリンには血液を凝固させる作用があるので、イライラすると血液がドロドロの状態になります。
毎日この状態が続けば、血管がつまるリスクを高めます。
交感神経が優位の状態では胃腸の働きが抑制されるので、イライラが続けば腸内の環境が乱れ、便秘がちになります。
さらに、交感神経優位の状態が続くと、脳神経の働きや免疫力を低下させ、体内の活性酸素を増やして老化を進めてしまいます。
交感神経を活発にしすぎるイライラは、まさに万病の元といえるのです。
2. 生活習慣からのアプローチ
イライラによるストレスは、自律神経のバランスを整えることによって軽減することができます。
交感神経が優位にある生活が体に悪いからといって、副交感神経だけが優位になり続ける生活も望ましいものではありません。
人生には、達成感や充実感を生む適度なストレスが必要とされるのと同じように、適度な運動や、ほどよい緊張によって、交感神経を活発にする時間も必要です。
イライラによる過剰なストレスを抑制して、心身をリラックスさせるためには、生活のリズムを整えることや、リフレッシュと健康維持を兼ねた適度な運動が欠かせません。
そのほかにも、積極的に取り入れたい生活習慣があります。
2-1. ① GI値の低い食材を選ぶ
人間の体は低血糖の状態にあるとイライラしやすいので、血糖値を安定させることがイライラ防止につながります。
ブドウ糖を摂取したときの血糖値上昇率を100として、食品ごとの血糖値の上昇を表すのが「GI値」です。
GI値が高い食品を取った後は血糖値が急上昇し、それを下げるためにインスリンが分泌されます。
この血糖値の乱高下が心身にとって大きなストレスになるのです。
GI値が低い食材を選んで、血糖値を安定させることができます。
GI値が高い食パン、精白米、うどん、コーンフレークなどに対して、GI値が低いのは玄米、ライ麦パン、蕎麦、全粒粉パンなど、黒っぽくて未精製の食材です。
GI値が高い食材を食べるときは、野菜など食物繊維を多く含むものを先に食べ、肉や魚などのタンパク質をとり、最後に食べることで糖質の吸収をゆるやかにすることができます。
2-2. ② ビタミンB群を摂る
自律神経のバランスに大きな影響を与える、アドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質は、タンパク質からつくられます。
その合成過程には、ナイアシン(ビタミンB3)やビタミンB6、葉酸といったビタミンB群が必須とされます。
しかし、ビタミンB群は不足しやすい栄養素なので、意識して摂るように心がけましょう。
ナイアシンを多く含む食品は、カツオ、豚レバー、ピーナッツなど。
ビタミンB6を多く含む食品は、マグロの赤身、牛レバー、サンマなど。
葉酸を多く含む食品は、鶏レバー、菜の花、枝豆などです。
2-3. ③ ミネラル不足に気をつける
ビタミン類とともにミネラル類も、人間の感情に大きくかかわっています。
鉄が不足すると、疲労感や焦燥感、イライラ、集中力の低下などを招き、うつ病にまで悪化することさえあります。
また、亜鉛の不足は、イライラ、情緒不安定、食欲不振、性欲減退などを引き起こします。
そのほかのミネラルも、カルシウム、マグネシウム、銅、ヨウ素、セレンなどが、イライラする感情との関連性を指摘されています。
玄米が注目されているのは、こうした不足しがちなビタミンやミネラルを豊富に含む食品だからです。
2-4. ④ 朝日を浴びてセロトニンを増やす
ストレスに関係する神経伝達物質には、次の3つが知られています。
・緊張や不安、集中、積極性などをもたらす「ノルアドレナリン」
・喜びや快楽、意欲などをもたらす「ドーパミン」
・ノルアドレナリンとドーパミンが過剰にならないよう調節する「セロトニン」
ノルアドレナリンやドーパミンが不足すると、無気力や無関心といった状態を招き、セロトニンが不足すると、感情をコントロールすることができなくなって、イライラしやすくなります。
セロトニンには自律神経のバランスを整える働きもあります。
セロトニンは日中に多く分泌されて、夜は分泌量が少なくなります。
睡眠を促すメラトニンというホルモンは、セロトニンからつくられるのですが、夜間に多く分泌されるので、夜間はセロトニンの量が減るのです。
毎日、朝日を浴びることによって、メラトニンの分泌を抑制し、脳を覚醒させてセロトニンの分泌を促すことができます。
2-5. ⑤ ながら運動でイライラを予防する
適度な運動が体にいいことは周知の事実ですが、精神的な効果も大きいのです。
一定のリズムを刻む運動は、セロトニンの分泌を高めることがわかっています。
ウォーキングや水泳、サイクリングなどの有酸素運動は自律神経のバランスを整える効果があります。
しかし、定期的にまとまった時間をつくるのはけっこう大変。
そこで、歯磨きをしながらスクワットをしたり、家から駅まで大またで早歩きをしたり、デスクワークをしながら上半身をひねったりという、「ながら運動」を活用しましょう。
ひとつひとつの運動は、大したカロリーを消費しませんが、まめに行うことによって良質な睡眠がとれるようになり、イライラの予防に役立ちます。
2-6. ⑥ 快眠で自律神経のバランスを整える
眠りが浅い人は、イライラしやすい傾向があります。
質の良い深い眠りは、おだやかな精神状態をもたらします。
仕事でイライラが続いて帰宅したり、家族と言い合いになってしまって交感神経の働きが過剰になっていると、副交感神経が優位にならないので、なかなか寝付けなくて眠りも浅くなってしまいます。
睡眠不足になると、さらに自律神経のバランスを崩してしまいます。
快眠するためには、寝る1~2時間前から交感神経が活発になるようなことは避けましょう。
副交感神経を優位にするためには、白色系の強い照明を避けて暖色系の間接照明にする、39~40度のお風呂に15分間つかる、軽いストレッチで筋肉の緊張をほぐすことなどが有効です。
3. 行動や思考からのアプローチ
ここからは、行動や精神面からイライラを解消するヒントを解説します。
ポイントはやはり、自律神経のバランスを整えることと、セロトニンの分泌を増やすことです。
もっとも手早く交感神経を鎮める方法として、ゆっくり水を飲むという手段が知られています。
講演会などでレクチャー台に水が置かれているのは、ノドの渇きをいやすことよりも、緊張をほぐすという効果を狙ったものです。
水をゆっくり飲むことで胃が刺激され、副交感神経が活発になって交感神経を抑制する効果があるのです。
このように、セルフケアでイライラをコントロールする方法をいくつか紹介します。
3-1. ⑦ 色と香りで交感神経をしずめる
色は自律神経に影響を与えます。
一般的に青や緑は気持ちを落ち着かせ、赤やピンクは気持ちを高揚させるといわれます。
仕事で疲れたときに、窓の外の緑を眺めると副交感神経が活性化して、気持ちが落ち着きます。
また、気持ちが凹んでいるときなどに派手めの色を身に着けると、交感神経を活発にしてやる気を起こすこともできます。
色をどう感じるかということは個人差があり、環境や体調によっても変わるので、自分の状態を把握して自律神経のコントロールに使いましょう。
アロマオイルなどを使用して、香りで自律神経を整えることもできます。
ラベンダー、カモミール、サンダルウッドなどには気持ちを落ち着かせる作用や安眠効果があるといわれます。
アロマオイルもいろいろな種類があるので、自分が好きだ、気持ちよいと思えるものを探してみましょう。
3-2. ⑧ 音楽で自律神経のバランスを整える
音楽にも自律神経をコントロールする作用があります。
スポーツ選手が気持ちをアップさせたり、集中したりするために音楽を利用することは、よく知られています。
イライラしているときに、ゆったりしたクラシックミュージックや、穏やかなヒーリングミュージックがいいという人もいます。
しかし、音楽は人それぞれ好みがありますから、むしろヘビーメタルやパンクミュージックのほうが落ち着くという人もいるでしょう。
音楽を効果的に利用するためには、気分を上げる曲や、下げる曲をスマートフォンなどに入れておくとよいでしょう。
リラックスして副交感神経を優位にしたい場合には、いきなりスローテンポの穏やかな曲を聴くよりも、アップテンポの曲からじょじょにテンポを落とすほうが効果的です。
3-3. ⑨ 口角を上げて笑顔をつくる
笑顔には、セロトニンの分泌を増やす作用があります。
笑う気分になれなくても、口角を上げて笑顔をつくるだけで効果があります。
また、表情を変えることによって、副交感神経が作用して血行がよくなります。
怒りの感情がわいてくると、顔をこわばらせてしまうので、血行が悪くなって脳に血液がまわらなくなり、余計にイライラを募らせてしまうのです。
気持ちをムリやり変えるのは大変なことですが、表情を変えるだけだったら誰にでもできますね。
イライラしやすいときは、笑顔をつくって自律神経をコントロールしましょう。
3-4. ⑩ 苦手な人とは距離をおく
対人関係のストレスは、イライラの大きな原因になります。
苦手だなと思っている人と一緒にいると、自律神経のバランスを崩してしまうのです。
ですから、苦手な人とは付き合わないというのが、究極の対人ストレス解消法です。
しかし、仕事をしていればそうもいきません。
苦手な人とは、必要最低限の接触に抑えて、付き合いが悪いやつだと思われても、仕事以外では接触しないようにします。
会わなくてすむ相手だったら、会う必要はありません。
さらに対人関係で大切ことは、他人のペースに乗らないことと、他人に期待をしないことです。
自らアウェイに飛び込む必要はありませんし、他人に期待をしてもストレスを溜めるだけです。
対人関係も、自分でコントロールすることによって、ストレスを回避しましょう。
3-5. ⑪ 旅で自律神経を整える
旅は、自律神経を整える絶好の機会です。
それは、交感神経と副交感神経が、小刻みに優位になるような時間がもてるからです。
ワクワクする気持ちや感動を覚える出来事などは、日常では味わえない感覚が呼び起こされて、交感神経が活発になります。
のんびり森林浴をしたり、美術館で絵画を鑑賞したりすると副交感神経が優位に。
美味しい食事で交感神経が上がり、ゆったり温泉につかれば副交感神経が上がります。
自律神経が小刻みに変化することによって活性化し、バランスが整いやすくなるのです。
旅でリフレッシュできるのは、こうした効果が表れているからです。
まとめ
ここで解説した方法で、怒りの感情をコントロールしようと思っていても、イライラせずにはいられない場面もあるでしょう。
そのときは、とにかく自分と向かい合う時間をつくって、自分はなぜ怒っているのか、その怒りは誰に向けたものなのか、怒ることによってなにかメリットはあるのか、とイライラの内容を自分に問い正してみましょう。
案外、怒るのが馬鹿らしくなったり、イライラを消す要因が見えてきたりするものです。
怒りの感情を消せないまでも、一度冷静になることで、それ以上怒りをエスカレートさせずにすみます。
それでも怒りが収まらなければ、むりやり抑え込まずに怒りを吐き出したほうがいいのです。
ただし、怒りの感情は他人にぶつけるのではなく、モノにぶつけたり、自分で発散することで解消しましょう。
【参考資料】
・『対人関係のイライラは医学的に9割解消できる』 マイナビ出版 2016年
・『「怒らない体」のつくり方』 祥伝社 2014年
・花王ヘルスケアナビ