疲れが取れない日が続くと、ストレスがたまりますよね?
「休んでも疲れが取れない」
「しっかり睡眠時間をとっているのに起きるとだるい」
疲労回復によいとされることをしているのに疲れが取れないのは、なぜなのでしょうか。
それは、疲れの取り方が間違っているからです。
現代は、テレビやインターネットによって大量の健康情報がもたらされ、疲労回復の方法やアイテムがたくさん紹介されます。
しかし、それらの情報には、科学的な根拠をもたないものも多く、商品の宣伝や話題性を目的としたものも多いのです。
ここでは、疲れが取れないときのために知っておきたい、6つの対処法を紹介します。
科学的に実証された確かな方法から自分に合ったものを選び、疲労回復に役立ててください。
目次
1. 疲れが取れない理由を探る
1-1. 疲れが抜けない原因は自律神経の乱れ
1-2. 疲労を起こすのは活性酸素
1-3. 疲れがとれない、だるいは脳疲労のサイン
2. 疲れが取れないときの食事
2-1. 朝食で自律神経のバランスを整える
2-2. サラダチキンで疲労回復
2-3. 梅干しのクエン酸で疲れを防ぐ
3. 疲れが取れないときの睡眠対策
3-1. 横向きで寝るとイビキをかかずに熟睡できる
3-2. クーラーをつけっぱなしで夏バテ対策
4. 疲れが取れないときの環境づくり
4-1. 遠くを見ることで自律神経を整える
4-2. 休日は遠出をせずに近くのキャンプ場へ
1. 疲れが取れない理由を探る
疲れが取れない理由を知るためには、まず「疲れ」とはどのような現象なのか知らなければいけません。
私たちが「疲れた」と感じるとき、体内では何が起こっているのでしょうか。
英語で「疲れが取れない」は、「疲れを取り除くことができない」という表現になり、“I can’t shake off my fatigue”や、“I can’t get rid of my fatigue”となります。
最新の疲労医学で解明された「疲れ“fatigue”」の正体と、取り除くことができない理由を解説しましょう。
1-1. 疲れが抜けない原因は自律神経の乱れ
日本疲労学会では、疲労を「一般的に運動や労力などの身体作業負荷、あるいはデスクワークなどの精神作業負荷を連続して与えられたときにみられる、身体的あるいは精神的パフォーマンスの低下現象」と定義しています。
よく、身体的疲労と精神的疲労といういい方をしますが、まったく別のように思えるこれらの疲労は、実は同じ原因によって起こっています。
肉体疲労というと、筋肉がダメージを受けて疲れたと感じるのではないかと思われがちです。
しかし、身体が疲れたと感じるのは、脳内の自律神経中枢がダメージを受けているときだということがわかっています。
自律神経は、主に昼間優位になる交感神経と、夜に優位となる副交感神経の2つが、常に40~60%のバランスで働いています。
交感神経が優位な状態を続けて、休息をとらないと、自律神経中枢は疲労します。
1-2. 疲労を起こすのは活性酸素
筋肉が疲労する原因は、かつていわれていたように乳酸が溜まることではなく、活性酸素が過剰に増えるためであることが解明されました。
活性酸素は酸素が体内で使われたときに必ず発生する、強力な酸化作用をもつ物質です。
細菌やウイルスを攻撃して免疫力を維持すために必要な物質ですが、過剰になると正常な細胞まで酸化させてしまいます。
細胞の酸化は、「細胞がサビる」といういいかたをし、酸化した細胞は核が損傷したり、死滅したりするので、様々な病気や老化の原因になります。
筋肉や、脳内の自律神経中枢が活性酸素によって攻撃されると、細胞内から老廃物が排出され、それが引き金になってタンパク質の「疲労因子FF(fatigue factor)」が発生します。
この疲労因子FFこそが、疲労感という自覚症状を起こさせる物質なのです。
疲労因子FFが増えると、「疲労回復因子FR(fatigue recovery factor)」と呼ばれる物質も増加して、酸化ストレスを受けた細胞を修復するのですが、疲労回復因子FRの働きには個人差があるので、疲れが取れない人は疲労回復因子FRのパワーが弱いということも、ひとつの要因になっています。
1-3. 疲れがとれない、だるいは脳疲労のサイン
筋肉の細胞が活性酸素によって酸化ストレスを受けていても、それだけでは「疲れた」とは感じません。
自律神経中枢の細胞に活性酸素が増えて酸化ストレスを受けたときに、脳はアラームを発するのです。
精神的疲労でも身体的疲労でも、疲労感は脳が疲労することによって発せられるサインなのです。
疲れがとれない、だるい、ボーっとする、頭痛やめまい、眠気、耳なりといった症状は、自律神経がバランスを崩しているサインであり、この状態が続くと、自律神経失調症という病気になってしまいます。
ですから、疲れが取れない理由は、脳からアラームが発せられているのに自律神経が乱れた状態を続けていることや、活性酸素を過剰に増やしてしまう生活を続けていることなのです。
疲労のアラームが発せられたら、まずやらなければいけないのは、すぐに休息や睡眠をとることです。
2. 疲れが取れないときの食事
疲れが取れないときの対処は、自律神経を整えることと、過剰になった活性酸素の働きを抑える抗酸化物質を摂ることの2つがポイントになります。
生活習慣の中でも、食生活は身体を健康に保つ第一の要素です。
食事の摂り方しだいで、疲労回復力を高めることにも、逆に疲れをためてしまうことにもなるのです。
2-1. 朝食で自律神経のバランスを整える
朝食を摂ることによって、自律神経の調節と大きな関係がある体内時計がリセットされ、交感神経が優位になって日中の活動に必要なパワーがみなぎります。
朝食を抜いてしまうと、副交感神経から交感神経への切り替えができなくて、細胞が寝ている状態がダラダラと続くので、疲れが取れない感覚が起こるのです。
午前中に疲れが取れないと感じる人は、少しでも朝食を摂ることによって、交感神経を優位にすることができます。
昼間に交感神経がパワーを発揮すると、夜間に副交感神経がその疲れを回復させるという正常なリズムが取り戻せるのです。
2-2. サラダチキンの抗酸化作用で疲労回復
コンビニで販売されているサラダチキンが人気なのは、鶏むね肉に多く含まれるイミダペプチドという物質の疲労回復効果が、とても高いからです。
日本で1991から始まった「抗疲労プロジェクト」で解明されたイミダペプチドは、鳥の羽を動かす筋肉に大量に含まれています。
渡り鳥が小さい体で長距離を飛び続けることができるのは、イミダペプチドが強力な抗酸化作用をもっていて、筋肉疲労を解消しているためであることがわかったのです。
イミダペプチドは、鶏のもも肉やササミ肉、豚肉、牛肉、回遊魚のカツオなどにも含まれていますが、鶏むね肉の含有量が圧倒的に多く、鶏むね肉であれば1日100gで、疲労回復に効果的な量が摂取できます。
お昼を手軽に摂りたい日は、ファストフードを避けて、サラダチキンと緑黄色野菜などで疲労回復をはかりましょう。
2-3. 梅干しのクエン酸で疲れを防ぐ
イミダペプチドとともに疲労回復に効果があると実証されている成分には、クエン酸、コエンザイムQ10、リンゴポリフェノールなどがあります。
クエン酸には、体内でエネルギーをつくる「クエン酸サイクル」を活性化する働きがあり、エネルギー効率を高めるので疲労回復に効果があるのです。
さらに、鉄分やカルシウムなどのミネラルを吸収しやすくして、骨や細胞の老化を予防する「キレート作用」という働きもあります。
酸っぱいものが疲労回復に効くということは、昔からいい伝えられてきました。
レモンや梅干しなどは、疲れたときにいいといわれる食品の代表です。
疲労回復に効果がでるとされるクエン酸の量は、1日にレモンなら2個、黒酢なら大さじ1杯、梅干しなら2個が目安です。
鶏むね肉や梅干しと、コエンザイムQ10が多く含まれるイワシやサバ、リンゴポリフェノールが含まれるリンゴなどを組み合わせて、疲労回復をはかりましょう。
3. 疲れが取れないときの睡眠対策
睡眠は、疲労因子FFを減らし、脳の細胞を修復する重要な時間。
十分な量や質の睡眠をとることが、疲労回復の最善策といわれる所以です。
まず、睡眠に入るための環境づくりで大事なのは、寝る1時間前から液晶モニターやLEDの強い照明を避けて、暖色系の照明で副交感神経を優位にすることです。
快適な睡眠をもたらす寝具も重要。
自分に合ったものを探しましょう。
3-1. 横向きで寝るとイビキをかかずに熟睡できる
睡眠の質にはイビキが大きく関係しています。
イビキは、空気の出入り口である気道が狭くなっていて、呼吸が難しい状態で起こります。
脳の酸素不足を防ぐために、自律神経は心拍を早めて血圧を上げるので、自律神経中枢は疲労します。
疲れを取るために寝ているのに、イビキをかいていると、運動しているときと同じような疲労感を覚えることになるのです。
仰向けで寝るよりも横向きで寝たほうが、気道が広がってイビキが少なくなることがわかっています。
イビキがひどいと、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を起こす可能性が高くなるので、治らない人は疲労クリニックや睡眠クリニックで相談してみることをおすすめします。
最近は、鼻から酸素を送り込む「CPAP(シーパップ)」というマスクによる治療が、効果を上げています。
3-2. クーラーをつけっぱなしで夏バテ対策
夏の熱帯夜は寝苦しいからとクーラーをつけたまま寝て、体調を崩してしまう人が多いですよね。
でも、実は、寝る前にクーラーを切ったり、タイマーをセットするよりも、クーラーをつけっぱなしにした方が、疲労回復には効果的なのです。
温度の変化は自律神経に影響を与えるので、睡眠時は温度を一定に保つことがポイントです。
たくさん汗をかけば、これもまた運動しているのと同じ状態になって脳は疲れてしまいます。
ですから、熱帯夜は寝室を25~26度に保つように設定をして、クーラーをうまく使いましょう。
副交感神経の優位を保つためには、そよ風のゆらぎ感が効果的ですから、風が直接当たらないようにして扇風機を使用するのもおすすめです。
4. 疲れが取れないときの環境づくり
ちょっとした生活環境の工夫で、驚くほど疲れは取れるものです。
前項で、そよ風のゆらぎ効果を紹介しましたが、木漏れ日や小川のせせらぎ、波の音など自然界の「ゆらぎ」は、脳の疲労を軽減します。
木造の日本家屋はゆらぎをうまく取り入れた造りになっています。
しかし、現代の西洋的な造りのマンションやオフィスビルには、ゆらぎがなくなっているので、意識してゆらぎを取り入れる環境づくりを心がけましょう。
4-1. 遠くを見ることで自律神経を整える
仕事中は集中力を高めようとしないことが、ポイントです。
集中力を高めると交感神経を活性化させるので、その状態が続けば脳は疲労します。
ですから、仕事の能率を上げるためには、ひとつの事に集中せずに、複数の事を同時進行させて、意識を分散させるほうがいいのです。
目の疲れが取れないという人は、できるだけ窓から遠くを見る時間をつくりましょう。
目のピント合わせを行っている水晶体の周りにある毛様体筋は、交感神経が優位になると緩んで遠くにピントが合うようになり、副交感神経が優位になると縮んで近くにピントが合うようになります。
ところが、仕事でパソコンのモニターなど近くのものを見続けると、交感神経が優位にあるのに近くにピントを合わせ続けることになるので、自律神経中枢が混乱して疲労するのです。
仕事中は、意識を集中しないようにし、遠くにピントを合わせる時間をつくって自律神経が乱れることを防げば、疲労は軽減できます。
4-2. 休日は遠出をせずに近くのキャンプ場へ
飽きるのは、自律神経中枢が疲れたサインですから、そこでがんばろうとせずに休息をとるべきです。
休息の取り方は、自律神経を整えて、活性酸素を増やさないことがポイントです。
休日は、ちょっと遠出をしてリフレッシュしようと考える人が多いのですが、これは逆効果になって、余計に疲れてしまう可能性が高くなります。
移動で運転をすれば交感神経の活性を高めますし、運転をしなくても、知らない場所や初めて訪れる場所は、無意識のうちに緊張するので脳は疲労します。
どうしても疲れがとれないときは、外出せずに家でリラックスして過ごすのが最善策です。
外でリフレッシュをしたかったら、近くで自然のゆらぎが感じられる森林やキャンプ場が適しています。
もし、近所に自然を感じられる場所がなかったら、森の中の小鳥のさえずりや海の波音などの自然音を収録したCDを聴いてみるのもいいでしょう。
紫外線を浴びると活性酸素を増やしてしまうので、外出時は紫外線対策をしっかりしましょう。
5. 疲れが取れないときのスピリチュアルワールド
スピリチュアルとは、霊的であったり、言葉では説明できない力であったり、超自然的なことなどを意味します。
科学とは相反すると思われる「スピリチュアルアイテム」や「スピリチュアルワールド」ですが、実は疲労医学で実証された疲労回復効果があります。
それは、リラックス効果による副交感神経の活性化です。
「お守り」をもったことがないという日本人は少ないでしょう。
お守りは日本人にとってもっとも身近なスピリチュアルアイテムであり、八百万の神が宿る自然や神社は、誰もが信じるパワースポットといえます。
スピリチュアルワールドに科学的な根拠があるかどうかということは、まったく関係ありません。
宗教では「信じるものは救われる」といわれますが、大事なのは「落ち着く」「リラックスできる」「何か力がわいてくる」と感じる自分を信じることなのです。
6. 疲れが取れないときに効くビタミン系市販薬
疲労回復をうたう市販薬やサプリメントはたくさんあります。
糖分補給でパワーアップさせるもの、ビタミンやミネラルでエネルギー変換を助けたり、抗酸化作用で活性酸素による酸化ストレスを軽減したりするもの、アミノ酸やタンパク質を補給して損傷した細胞を回復させるもの、生薬(漢方薬)を配合して体質改善をはかるものなどが、よく知られています。
また、目の疲れ、筋肉痛、腰痛、関節痛などの症状に特化した疲労回復薬もあります。
ビタミン、ミネラル系の売れ筋には、ビタミンB群で筋肉や神経のダメージを修復して中枢神経の働きを整える「アリナミンA」、11種のビタミンと3種のミネラルを配合してとくに女性の栄養補給を目的とした「ポポンSプラス」、脂肪の代謝を助けてエネルギーに変えるビタミンB2などで疲れた身体を元気にする「チョコラBBローヤルT」などがあります。
ビタミンやミネラルは、サプリメントで摂取するのも効果的で、食品のところで紹介した「イミダペプチド」「クエン酸」「コエンザイムQ10」「リンゴポリフェノール」などは、すべてサプリメントとして販売されています。
7. 疲れが取れないときに効く漢方系市販薬
疲労回復薬の中でも漢方薬の効果を利用したものの代表が、「キューピーコーワゴールドα-プラス」です。
漢方薬系でもっとも売れ筋の「キューピーコーワゴールドα-プラス」は、疲れによく効く4種の滋養強壮生薬を配合し、血液循環の改善やエネルギー代謝の改善によってからだ全体の疲れやだるさを軽減します。
キューピーコーワには、3種のビタミンと血流促進成分を配合して、眼精疲労や肩こりの症状を緩和する「キューピーコーワiプラス」や、腰痛、筋肉痛、神経痛を緩和する「キューピーコーワコシテクター」、コンドロイチンや生薬を配合して、ヒザなどの関節痛に効く「キューピーコーワコンドロイザー」などがラインナップされています。
薬は、漢方薬といえども副作用が必ずあるので、できるだけ摂取せずに、食事で必要な栄養を摂るようにしたいものです。
市販薬を1週間ほど試しても疲れが取れないときには、クリニックの受診をおすすめします。
まとめ
疲れが取れないときには、自律神経を整えることと活性酸素の酸化ストレスを軽減することがポイントであることが、おわかりいただけたと思います。
ここでは、脳の疲労によって疲労感が起こることを中心に、対処法を紹介してきました。
精神的疲労も、もちろん脳が疲労することで疲労感が起こるのですが、その要因となるのが精神的ストレスです。
ストレスを軽減するもっとも有効な方法は、好きなことや心地よいことをして、ストレスを忘れることです。
疲れが取れないと感じるときは、細胞の酸化ストレスとともに、精神的ストレスのケアも忘れないでください。
【参考資料】
・『すべての疲労は脳が原因 2』 梶本修身著 集英社 2016年
・『なぜあなたの疲れはとれないのか?』 梶本修身著 ダイヤモンド社 2017年
・LOHACO web site
・興和 web site