自分の中にある、人間関係がうまくいかない原因を探りたいと思いますよね?
人間の思考や行動において、無意識に行っていることはとても多く、一説には思考や行動の9割を占めているともいわれます
とくに悪い習慣は、無意識に行っているケースが多いので、なかなか改善することができません。
無意識を意識化することができれば、自分の中に眠っている未知の能力を呼び起こすが可能となり、コミュニケーションにおいても大きな進展が期待できます。
しかし、「無意識=気づいていない潜在意識」を変えるには、テクニックが必要です。
たとえば、自己分析と、人間関係の改善を目的としたツールとして、メンタルトレーニングや心理学の現場で活用されている「ジョハリの窓」。
ここでは、ジョハリの窓の概要と実施方法、効果的に使うポイントをわかりやすく解説します。
目次
1. ジョハリの窓の概要と実施方法
1-1. 4つの窓がもつ意味
1-1-1. 盲点の窓
1-1-2. 秘密の窓
1-1-3. 開放の窓
1-1-4. 未知の窓
1-2. ジョハリの窓の実施方法
1-2-1. お互いを知っている5~8人が最適
1-2-2. ジョハリの窓シート
1-2-3. あらかじめ要素を設定しておく項目シート
1-2-4. 記入と集計
2. 開放の窓を大きくする4つのステップと3つのポイント
2-1. 盲点の窓に気づく
2-1-1. 自分自身を見つめ直す
2-1-2. 他人のアドバイスを聞く - ①フィードバック
2-2. 秘密の窓に気づく
2-2-1. 秘密の窓を開いて楽になる
2-2-2. 自分自身をオープンにする - ②自己開示
2-3. 盲点の窓と秘密の窓を同時に開く
2-3-1. 自己受容から他者受容へ
2-3-2. 人間関係から逃げなくなる
2-4. 未知の窓に気づく
2-4-1. 新しい自分を発見する - ③チャレンジ
2-4-2. 自分らしくあるために
1. ジョハリの窓の概要と実施方法
「ジョハリの窓」とは、1955年にサンフランシスコ州立大学のジョセフ・ルフトとハリー・インガムという2人の心理学者が提唱した、人間関係における自己のあり方を示すフレームワークです。
2人の名前から、この名称がつけられました。
自分の性質や能力を、自分自身でわかっている部分とわかっていない部分、他人がわかっている部分とわかっていない部分の組み合わせによって、人間の心には4つの窓があると考え、自己分析をして人間関係を改善する指針にします。
1-1. 4つの窓がもつ意味
これが、ジョハリの窓のグラフです。
人間関係でストレスを感じやすい人は、「盲点の窓」や「秘密の窓」が大きい傾向があり、逆に人間関係が円滑な人は、「開放の窓」が大きいという傾向があります。
ジョハリの窓で、他人とのコミュニケーションにおける自分自身の現状を理解し、開放の窓を広げて未知の窓を狭めていくことが目的となります。
1-1-1. 盲点の窓
盲点の窓は、「自分は知らないが、他人は知っている」自分の性質を表す領域です。
この窓の項目が多いと、自分が自分の性質に気づいていない、もしくは自分のことを分析できていないのですから、良好なコミュニケーションをとることができません。
自分が気づいていなかった自分の性質を受け入れることによって、この領域は狭まっていきます。
1-1-2. 秘密の窓
秘密の窓は、「自分は知っているが、他人は知らない」自分の性質を表わす領域です。
この項目が多い場合は、他人に隠している自分の性質が多く、やはり良好なコミュニケーションを築くことができません。
盲点の窓は無意識のうちにつくり出している性質が多いのに対し、秘密の窓には、自分で意図的に表に出さない性質が多いという特徴があります。
自分をオープンにすることによって、この領域を狭めていくことができます。
1-1-3. 開放の窓
開放の窓は、自分が考える自分の性質と、他人から見えている姿が一致している領域です。
この窓の項目が少ないと、周りから本来の自分が理解されていない状態。
項目が多いと、自分の性質や能力を表に出して他人に理解されている状態だといえます。
この領域が大きいほど、良好なコミュニケーションが築けていることを意味します。
1-1-4. 未知の窓
未知の窓は、自分にも他人にもわかっていない自分の性質、あるいは未開発である潜在的な性質を表している領域です。
新しいことにチャレンジして、この領域の項目を開発すると、ほかの3つの窓に新たな項目が移り、開発の窓を広めることでこの領域は狭まっていきます。
自分が成長するためには、開放の窓を広げて未知の窓を狭めていくことが基本となるのです。
1-2. ジョハリの窓の実施方法
ジョハリの窓は、数人が集まり、紙とペンさえあれば実施することが可能です。
① 全員が、4つの窓をつくった集計用紙と、人数分の記入シートを用意する
② 自分用の記入シートに自分の性質や能力を書き込み、ほかの記入シートには各人に対して感じている性質や能力を書き込む
③ 人数分のシートに記入が終わったら、該当する人にわたす。
これで、参加者の手もとには、自分用の記入シートと、自分以外の人が記入したシートが集まります。
集計用紙に、自分用のシートと他人が記入したシートの内容を落とし込むのが、集計という作業。
集計が終わると、各人のジョハリの窓が完成します。
企業やセミナーなどで実施される場合は、専用のシートを用意するのが普通で、ここでは一般的に行われているジョハリの窓の効果的な実施法を紹介します。
1-2-1. お互いを知っている5~8人が最適
参加するメンバーは、お互いをよく知っていて信頼感のある関係でなければ、有効な結果は得られません。
人数は、2~3人では集計できる内容が少ないですし、あまり大人数になると逆に煩雑になってしまうので、5~8人程度が適しています。
また、自分をさらけ出すことに抵抗がある人や、他人の評価に対して大きな負荷を感じるような人は、ジョハリの窓に参加することがストレスになるので、別の方法で自己開発を行うほうがいいでしょう。
1-2-2. ジョハリの窓シート
用意するシートの1枚目は、4つの窓があらかじ作成されており、実施した期日や場所、参加者の氏名を記入できる欄がある「ジョハリの窓シート」です。
このシートには、最後に集計した内容が記入されて完成します。
1-2-3. あらかじめ要素を設定しておく項目シート
すべての参加者が、人数分の枚数を用意する記入シートです。
効率的にジョハリの窓を進めるためには、あらかじめ性質や能力などを項目としてピックアップし、番号をふった項目要素シートを作成しておくのが一般的です。
性質や能力は、必要に応じて20~40項目程度を編集します。
業種やポジションに応じて、専門分野の項目が入ってくる場合もあります。
一般的に使われる項目には、以下のようなものがあります。
①社交的である、②責任感がある、③根性がある、④信頼できる、⑤リーダーシップがある、⑥ユーモアがある、⑦プライドが高い、⑧頭がいい、⑨礼儀正しい、⑩慎重である、⑪判断力がある、⑫聞き上手、⑬協調性がある、⑭行動力がある、⑮交渉がうまい など。
「社交性がない」というネガティブな表現ではなく「社交性がある」というポジティブな表現にすることによって、参加者は丸をつけやすくなります。
「社交性がある」という項目にチェックが少なければ、「社交性がない」と判断することができます。
1-2-4. 記入と集計
まず、自分用の記入シートで、自分の性質や能力に当てはまる項目に〇をつけます。
次に、他人用の記入シートにひとりずつ、その人に当てはまると思う項目に〇をつけていきます。
全員の記入が終わったら、それぞれの記入シートを相手にわたします。
集計の手順は次ようになります。
① 自分用の記入シートに〇をつけた項目で、他人も〇をつけているものは、「開放の窓」に番号を記入します。
同じ番号が多い場合には、番号の後に正の字を書いていってもいいでしょう。
② 自分用の記入シートに〇をつけた項目で、誰も〇をつけていないものは、「秘密の窓」に番号を記入します。
③ 自分が〇をつけていなくて、他人も〇をつけているものは、「盲点の窓」に番号を記入します。
④ 自分も他人も〇をつけていない項目は、「未知の窓」に番号を記入します。
こうしてジョハリの窓シートが完成したら、参加者全員でお互いのシートを見せ合いながらディスカッションしてコミュニケーションを深め、自己開発の指針とします。
2. 開放の窓を大きくする4つのステップと3つのポイント
開放の窓を広げて、人間関係の改善と自己開発に取り組むためには、4つのステップで考えることと、3つのポイントが重要とされます。
2-1. 盲点の窓に気づく
盲点の窓には、他人とのコミュニケーションを円滑にするヒントが隠されています。
盲点の窓は、多くの思考や行動を支配している潜在意識がつくり出しています。
無意識のうちに盲点となっている項目に気づくことができると、他人とのかかわり方が変わってきます。
まずは、自分の盲点に気づくことが、自分を改善する第一歩となるのです。
2-1-1. 自分自身を見つめ直す
人は誰でも、自分の性質や能力を、自分ひとりでつくり上げたものだと思い込みがちです。
この思い込みも、盲点をつくり出している原因です。
人間は、多くの人とかかわって、お互いに影響を及ぼし合うことによって、個性が構築されていくのです。
そうして、人とのかかわりによって形成されてきたことを意識して自分自身を見つめ直すと、今まで無意識であったことが意識できるようになります。
2-1-2. 他人のアドバイスを聞く - ①フィードバック
無意識の領域を意識できるようになるヒントは、他人のアドバイスに隠されています。
他人のアドバイスを冷静に受け入れて、自分にいかすことが、ひとつめのポイントとなる「フィードバック」です。
2-2. 秘密の窓に気づく
他人に対して自分を隠しているということは、何かしらの原因があります。
ですから、容易には開くことができないかも知れません。
秘密の窓を外部からの力で開くことは難しく、自分が変わらない限り、開くことはありません。
外部からムリに開こうとすれば、逆にもっと閉ざしてしまうことにもなりかねません。
2-2-1. 秘密の窓を開いて楽になる
自分を隠す理由は、多くの場合、自分をさらけ出して嫌われたくない、相手によく思われたいという気持ちから生まれるものです。
そして、隠しているという自分に対して、ストレスを感じることも多くなり、この領域が大きくなってしまうと、人と接することが怖くなってしまいます。
この領域を狭めて開放の窓を広げるためには、まず、秘密の窓を開くことで、ストレスから解放されることに気づくことです。
秘密の窓には、本当は話してしまいたいのに、話したら嫌われてしまうのではないかという要素があります。
相手が受け入れてさえくれれば、話して楽になりたいと思っていることも多いのです。
2-2-2. 自分自身をオープンにする - ②自己開示
他人に対して隠していた自分をオープンにすることが、第2のポイントとなる「自己開示」です。
そうかといって、秘密の窓がなくなるということはありえません。
秘密にしていることが、ひとつもない人間などいないのです。
どこまでオープンにしてどこを秘めておくかというバランスは、人それぞれ違います。
このバランスの判断基準は、自分の性格を変えようと考えるのではなく、「こうありたい」という自分をつくるところにあります。
2-3. 盲点の窓と秘密の窓を同時に開く
ジョハリの窓の理論では、開放の窓が広ければ広いほど、良好なコミュニケーションを築くことができます。
初対面の人間同士は、自分のことを相手に知られていませんし、相手のことも知りませんから、開放の窓は開いていません。
自分のことをもっと知ってもらいたいと思い、相手のことももっと知りたいと思って情報を共有することにより、お互いの理解が深まり、開放の窓が開かれていくのです。
2-3-1. 自己受容から他者受容へ
人とのかかわりの中で、無意識の領域に押し込めていた自分を自覚し、あるがままの自分を受け入れます。
これが「自己受容」といわれる行為です。
そして、相手の欠点を指摘するのではなく、あるがままの相手を受け入れて認めるのです。
これが「他者受容」といわれる行為。
人間は自己受容ができて、はじめて気持ちを相手に伝えることができ、他者受容もできるようになります。
2-3-2. 人間関係から逃げなくなる
人とのかかわりの中で自分を見つめ直し、自分の盲点の窓に気づき、自己を受容すると同時に秘密の窓に隠してあった自分を表に出すことで、心が解放され、他者受容ができるようになります。
そうすると、人間関係から逃げる必要がなくなっていきます。
2-4. 未知の窓に気づく
盲点の窓と秘密の窓を同時に狭めて開放の窓を広げると、未知の窓に気づくことができます。
未知の窓に気づくことによって、自分を成長させるチャンスが訪れます。
変化を恐れて窓を閉ざしてしまうのか、解放して新しい自分を生み出すのかによって、人生は大きく変わります。
2-4-1. 新しい自分を発見する - ③チャレンジ
自分が本来もっている才能や能力を発見したとき、未知の窓は開かれて潜在意識は動き出します。
今まで知らなかった新しい自分を発見したら、こうありたいと思う自分に近づく努力をするのが、3つめのポイントである「チャレンジ」です。
人は誰でも自分に対するイメージをもっていて、無意識のうちにそのイメージを演じているものです。
そうした自己イメージと違うことをすると、脳は行動を抑制するので、新しいことにチャレンジするには葛藤がつきもの。
でも「こうありたい」という未来のビジョンがあれば、自ずと行動が変わっていくのも潜在意識の働きなのです。
2-4-2. 自分らしくあるために
無意識につくり上げている自己イメージを変えるのは、とても難しいことに思えますが、「こうありたい」という未来の自分像があれば、勝手に近づいていく力が働きます。
では、今の自分を変えて、こうありたい自分に近づくためには、具体的にどうすればいいのでしょう。
もっとも手っ取り早いのは、服装を変えてみることだといわれます。
慣れ親しんでいる「私らしいファッション」から、「私らしくあるためのファッション」に変えていくのです。
服装が変わると、意識が変わり、行動も変わってきます。
外見が変わると周囲の人たちがあなたにもつイメージが変わり、付き合う人も変わってくるはずです。
人間は、自分が変わりたいという意識によって、なりたい自分に近づくことができるのです。
まとめ
人間関係の改善と自己開発を目的とするジョハリの窓は、グループで行うだけでなく、自己診断のツールとしても使えます。
企業の人材育成を目的として、自己診断テスト「ポテクト」を実施しているポテンシャライズでは、グループでも使用できて、ひとりで自己診断ツールとしても使用可能な「ジョハリの窓Webアプリ」を無料で提供しています。
このアプリはPC用で、Twitter か Facebookで紹介するという条件で、ポテンシャライズのweb siteから無料でダウンロードできます。
興味のある方は、ぜひサイトにアクセスして、SNSでの紹介方法や使用法を確認してください。
【参考資料】
・『ジョハリの窓 人間関係がよくなる心の法則』 久瑠あさ美 朝日出版社 2012年
・『自分を超える勇気』 久瑠あさ美 KKベストセラーズ 2014年
・ポテンシャライズ web site
・BENKAN web site