今までの自分から脱却して、人生を変えたい!
誰にでも、そんなことを思うタイミングがありますよね?
仕事が変わったときや結婚を考えたときなどは、そう考える人が多いでしょう。
さて、どう変わるかが問題です。
人生を転換しようと思うときは、指針になったり、道を照らしてくれたりする助けがほしいと思うもの。
「人生を変えた1冊」や「人生を変えた1曲」という出会いもあるでしょうし、占いをたよってみたり、パワースポットとされる神社へお参りに行ってみたり、ということもあるでしょう。
ここで提案したいのは、先人の知恵に学ぶこと。
それも2500年も前の東洋思想です。
ここでは、老子の思想である『老子』、孔子の思想である『論語』という2冊の書から、それそれ10の言葉をピックアップして、人生を変えたい人に贈ります。
とてもわかりやすく解説しますので、今まで難解だと敬遠していた人も安心して読み進めてください。
目次
1. 『論語』から贈る10の言葉
① 悟りは目の前の現実世界にある
② 自分で限界をつくらない
③ 道を切り開くのは努力と謙虚さ
④ 成長の秘訣は楽しむこと
⑤ 他人を気にせず自分のやるべきことをやる
⑥ 失敗を認めることで成長できる
⑦ 物事は両面から見る
⑧ 自分で解決しようとする者が成長する
⑨ 困難なときこそ真価が問われる
⑩ 自分のすべてを受け入れる
2. 『老子』から贈る10の言葉
⑪ 正しく生きる基準などない
⑫ ほめられたいと思う気持ちに惑わされない
⑬ 耳に痛い言葉こそ自分に必要
⑭ 自分を知る人が賢い人
⑮ 些細なことを大事にする
⑯ 継続のコツは自然体
⑰ マイナスをプラスに変える
⑱ 実力者は目立とうとしない
⑲ 未完成だからこそ成長できる
⑳ しなやかな生き方は水に学べ
1. 『論語』から贈る10の言葉
『論語』は、紀元前6世紀から5世紀にかけて生きた中国、春秋時代の学者、思想家である孔子の教えを弟子たちがまとめた書です。
そこに書かれた孔子や弟子たちの言葉には、現代にも通じる「人生を豊かにするための考え方」があふれています。
3500人の弟子がいたという孔子を聖人君子のように思っている人が多いのですが、それは正しくありません。
孔子が生きた時代は乱世で、政府の高官として働いた時期もありましたが、わずか3年で旧勢力に追われ、それから15年近くも理想の政治を求めて諸国を旅したのです。
順風満帆の人生ではなく、苦難の人生だったといえます。
2009年に公開された中国映画『孔子の教え』では、名優チョウ・ユンファがそんな孔子の生きざまを演じています。
孔子は、そうした苦難の人生において、どう生きたら自己を確立し、強くしなやかに生きていくことができるのかということをひとりひとりの弟子に語りました。
ですから、不遇な時期や「人生を変えたい」という悩みを抱えているときに、『論語』がヒントを与えてくれるのです。
① 悟りは目の前の現実世界にある
「朝(あした)に道を聞きては、夕べに死すとも可なり」
→ 朝に正しい道が開けたら、その晩に死んでも後悔はない。
「悟り」や「道」というものは、特別なところではなく目の前の現実世界にあります。
今を生きることが大事。
目の前の現実世界をしっかり生きることが、悟りにつながるのです。
孔子は、山にこもって修行するようなことを否定しています。
仕事でもなんでも目の前のことに一生懸命取り組んで、誰かの役に立とうと思ったときに、道は見えてくるのです。
② 自分で限界をつくらない
「力足らざる者は中道にして廃す。今汝(なんじ)は画(かぎ)れり」
→ 力の足りない者は途中でやめることになるだろうが、今お前は自分から見きりをつけている。
「先生の道を学びたいのですが、力が足りないのです」という弟子に対して、孔子が言った言葉です。
自分の可能性を信じることができず、自分で限界をつくってしまう人間は、成長できません。
まず、限界をつくっているのは自分だということに気がつくことが大事。
仕事でなかなか結果が出なくても、すぐにあきらめてしまってはもったいない。
ひとつのことを少し辛抱して続けると、必ず人間は成長することができます。
③ 道を切り開くのは努力と謙虚さ
「博(ひろ)く文を学びて、これを約するに礼を以てせば、亦(また)以て畔(そむ)かざるべきか」
→ 一生懸命勉強して、それをひけらかさず礼儀を忘れなければ、きっと結果はそむかない。
努力をしているのに報われないと感じている人は、振り返ってみましょう。
自分が努力しているということを、これみよがしにアピールしていませんか?
努力するだけでなく、謙虚な姿勢で苦労することによって、人間は成長するのです。
④ 成長の秘訣は楽しむこと
「これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」
→ 知識があっても、そのことを好きな人にはかなわない。好きな人も楽しんでいる人にはかなわない。
仕事でも趣味でも、深い知識がある人は立派だけど、もっとすごいのはそれを好きで実践している人です。
さらにすごいのは、自分がどんな状況にあってもそれを楽しんでいる人なのです。
何かを楽しく感じると、自分の中にあるマイナス要素やストレスなどを忘れてしまうので、プラス思考ができるようになります。
⑤ 他人を気にせず自分のやるべきことをやる
「其の位に在らざれば、其の政(まつりごと)を謀(はか)らず」
→ その地位にいるのでなければ、その政務に口出しをしてはいけない
会社という組織で仕事をする以上、自分に与えられた地位や役職というものがあります。
上の立場になったり下の立場になったりして視野を広げることはよいことですが、口出しや、違うポジションの仕事をしてはいけません。
自分に与えられている目の前の仕事を全力でやることが大事。
スポーツでも同じですが、それぞれのポジションを個々が守ることによって組織は成り立つのです。
⑥ 失敗を認めることで成長できる
「過(あやま)てば則(すなわ)ち改むるに憚(はばか)ることなかれ」
→ 自分が間違っていることがわかったら、躊躇せずに改めなさい。
誰にでも失敗やあやまちはあるものです。
大事なことは、それがわかったら素直に認めてすぐに改めること。
そして、2度と同じ失敗を繰り返さないことです。
目の前の現実を受け入れて、変わることができる人間は、成長します。
⑦ 物事は両面から見る
「故きを温ねて新しきを知る、以て師と為るべし」
→ 過去の出来事や先人の知恵を学んで、新しい考え方の役に立てなさい。
「温故知新」という四字熟語になっているほど、この言葉は有名ですね。
古いものには価値がない、または古いものにしか価値はないなどと考えるのは間違いで、古いものにも新しいものにも、それぞれよい部分があるのです。
物事には必ず両面があり、その両方の価値を知ることが大事。
一面だけを見て判断してはいけません。
⑧ 自分で解決しようとする者が成長する
「之を如何(いかん)、之を如何と曰(い)わざる者は、吾(われ)之を如何ともする末(なき)のみ」
→ これはどうしよう、どうしようと自分に問いかけないような者は、私にはどうしようもない。
人生を変えたいと思っても、自分で考えずにただ情報を集めたり、人に相談するだけでは前に進めません。
日々、降りかかる困難や課題に対しても、自分で解決方法を探さなければ次につながらないのです。
常に問題意識をもっている人間は、考えることが次の一歩につながるので成長することができます。
⑨ 困難なときこそ真価が問われる
「歳寒くして、然(しか)る後に松柏(しょうはく)の彫(しぼ)むに後(おく)ることを知る」
→ 寒くなってから、はじめて松やヒノキが散らないで残ることがわかる。
調子が良いときや物事が順調に進んでいるときは、誰でもうまく仕事できるもの。
苦境に立たされたときこそ、その人の実力が問われます。
苦境に立たされなければわからないことがあります。
たとえば、最後まで助けになってくれた家族や友人の存在。
苦境に立つと、本当に大切な人や物事の存在を認識することができます。
仕事が順調でおカネもあって、ちやほやされているときは、誰の周りにも人が集まってくるものなのです。
⑩ 自分のすべてを受け入れる
「君子は諸(こ)れを己に求む。小人(しょうにん)は諸れを人に求む」
→ すぐれた人物は、自身に責任を求めて反省するが、度量の小さな人物は相手の落ち度を非難して責める。
自分を省みない人は、他人からどう見られているかということばかり気にして、自分を変えようとしないもの。
だから、他人から評価されなくなると、自分のせいとは考えずに他人のせいにします。
こういう人間は、逆境に弱く、一度落ち込むとなかなか立ち直ることができません。
失敗した自分も、ダメなところも、すべて受け入れることができる人間は、度量が広いのです。
2. 『老子』から贈る10の言葉
『老子』を書いたとされる老子は、孔子とほぼ同時期である紀元前6世紀の人物とされますが不明な部分が多く、『老子』は1人の人物が書いたものではなく、複数の人物によって書かれたとする説もあります。
『論語』とともに生き方を教える書物として、現代でも世界で読まれており、孔子は老子の影響を強く受けているといわれます。
孔子が社会の中における生き方や原理原則を考えたのに対し、老子は山や川など自然の姿に人間の生き方を求めました。
その根底に流れる思想が、万物の根源にあるとされる「道(タオ)」です。
⑪ 正しく生きる基準などない
「道の道とす可(べ)きは、常の道に非(あら)ず」
→ 「道」と示せるようなものは、本当の「道」ではない。
流れる水のように自由で柔軟な姿を理想とし、しなやかで自然な生き方を説いた『老子』の最初の言葉です。
「道」という概念は示せないといっているのですから、解釈が難しいのですが、道を人生と置き換えて考えてみましょう。
正しい生き方、立派な生き方は語れるものではなく、基準などどこにもないのです。
仕事ができる人が幸福とは限りませんし、財を成した人が立派だとは限りません。
ムダなこだわりをもたず自由に生きることができれば、その人間は幸福です。
⑫ ほめられたいと思う気持ちに惑わされない
「寵辱(ちょうじょく)に驚くが若(ごと)し、大患(たいかん)を貴(たっと)ぶこと身の若くす」
→ ほめられるか、けなされるかばかりを気にしている不安は、重い病気と同じだ。
人間は誰でも、ほめられればうれしいものです。
しかし、その気持ちが強くなりすぎると、けなされたらどうしよう、嫌われたらどうしようという不安が生まれます。
その結果、自分をよく見せようとムリをしてしまうのです。
認められればうれしい。
認められなかったらがっかりする。
そういた感情は自然なものなのですから、ただそのまま受け止めて、こだわらないようにしましょう。
⑬ 耳に痛い言葉こそ自分に必要
「信言(しんげん)は美ならず、美言(びげん)は信ならず」
→ 信じるに値する言葉は美しいものではない。飾った言葉は信じるに値しない。
自分のためになる言葉は、心地よく聞こえるものではありません。
心地よい言葉ほど、あまり役には立たないものです。
「夢は必ずかなう」「努力すれば救われる」といった言葉は、そのときは耳ざわりがよくて安心感を与えても、それだけでは一時しのぎでしかありません。
耳の痛いことを言われたときこそ、素直に聞くようにしましょう。
⑭ 自分を知る人が賢い人
「人を知る者は智なり、自ら知る者は明なり」
→ 他人のことをよく知っている人は賢いかもしれないが、自分自身のことを知る人こそ明知である。
自分のことというのは、意外とわかっていないものです。
自分を知るためには、日々の出来事に対して素直に向き合うことが大事。
そして、毎日の生活の中で無意識にやっている言動を意識してみるのです。
それまで知らなかった自分に気づくことができるでしょう。
そこにあるのは、現実の自分の姿なのです。
⑮ 些細なことを大事にする
「小を見るを明と曰い、柔を守るを強と曰う」
→ 些細なことまで見定めることを明といい、柔軟さをもち続けることを強という。
小さなことに気づける人は、物事の本質をつかめる人です。
そうなるためには、自分の思い込みを捨てて、物事と素直な気持ちで向き合うことが大事。
そして、何か気づいたことがあったら、柔軟な姿勢で動けることが大事なのです。
日頃から、身のまわりで起こるちょっとした変化も気にかけてみる習慣をもつようにして、自分の気持ちに従って動くのが、成長する秘訣です。
⑯ 継続のコツは自然体
「企(つまだ)つ者は立たず、跨(また)ぐ者は行かず」
→ 爪先で立つ者はずっと立っていることができず、大股で歩く者は疲れて遠くまでは行けない。
自分を大きく見せようとしたり、いいところを見せようとしたりしても、ムリをするので成功しません。
できそうもない大きな目標を掲げても、達成できずに信用を失います。
自然な自分でいたほうが、物事を長く続けることができて、自分をいかすこともできるのです。
⑰ マイナスをプラスに変える
「曲(きょく)なれば即ち全(まった)し、枉(ま)がれば即ち直し、窪めば即ち盈(み)ち、敝(やぶ)るれば即ち新たなり」
→ 曲がった木は材木として使用できないから切られずに生き残る。かがんでいれば、この後伸びることができる。落ち込めばいろいろな感情が満ち溢れ、破れれば新たなスタートが切れるのだ。
マイナスに思えることも、見方ひとつ、考え方ひとつでプラスにすることができます。
ボトルに半分残っているワインをみて、「もう半分しかない」と考えるのは悲観的な人、「まだ半分残っている」と考えるのが楽観的な人という名言があります。
人の性格も同じで欠点と長所は表と裏の関係。
欠点があったら長所としていかす方法を考えればいいのです。
⑱ 実力者は目立とうとしない
「其の光を和らげ、其の塵(ちり)に同ず」
→ 才能を包み隠して世間と同調する。
すぐれた能力というものは、まわりから敬遠されたり、ねたまれてトラブルを招くことがあります。
本当に優れた人間はそのことをわかっているので、ムダに目立とうとはしません。
自分の能力をアピールしない人は、すぐに認められないかもしれませんが、いつのまにか周りに人が集まってくるものです。
⑲ 未完成だからこそ成長できる
「大器は晩成す」
→ 本当に大きな器は、完成することがない。
「大器晩成」という四字熟語は、「偉大な人は若い頃は目立たずに、歳をとってから才能を表す」という意味で使われますが、老子が言っているのは、「完成してしまうとそれ以上変わることはない。成長や変化を続けるものに完成はない」ということなのです。
「これで完成!」と思えば、ほかの考えや見方を受け入れられなくなっていきます。
流れる水のように変化を続ける人が、成長できるのです。
⑳ しなやかな生き方は水に学べ
「上善は水の若(ごと)し」
→ 最上の生き方とは水のような生き方。
「上善」とは最高の「善」という意味で、『老子』が書かれた乱世における「善」とは平和のこと。
水は氷や雲になり、雨になって地上に降り注ぎ、低いところに流れます。
水と水が出会っても決して争いが起こることなく、一体になります。
老子は、こうした水の性質が、あらゆるものの中で最高のものだと考えたのです。
まとめ
東洋思想を代表する『論語』や『老子』は、東洋文化ブームの再来もあり、英語にも訳されて世界中で読まれています。
日本では近年、欠如した道徳観の回復や、自然回帰を目指して『論語』や『老子』が静かなブームとなり、小中学生から主婦まで幅広い層の読者がいます。
『論語』は512の短い文章から成り、『老子』は81章の文章で構成されており、ここで紹介した言葉はほんの一部にすぎません。
人生を変えたいと思っている人には、ぜひ通読されることをおすすめします。
【参考資料】
・『超訳!こども名著塾 第1巻 論語/老子』 「超訳!こども名著塾」編集委員会 日本図書センター 2018年
・『人生が変わる最高の教科書 論語』 小宮一慶 KADOKAWA 2016年
・『バカボンのパパと読む「老子」』 ドリアン助川 角川マガジンズ 2011年