抽象度とは?
会話の中で出てくる『その話…抽象的すぎてわからない…』というあの言葉?
そもそも抽象度とは何なの?
抽象的という言葉と言い方が違うだけ?
違いもわからない…。
抽象度という意味は何となく知っているものの、詳しく理解して活用できている人は少ないようです。
ここでは、認知科学者の苫米地英人博士の造語でもある「抽象度」という言葉の意味と、抽象度を上げることにより、どのようなメリットが生まれるかについてお伝えしていきます。
目次
1 抽象度とは?
1-1 抽象度とは?
1-2 抽象度が高いとどうなるの?
1-3 抽象度の高い人
1-4 対義語と注意点
2 自分の抽象度を知ろう!
2-1 あなたの抽象度は?
2-2 スマホサイトでチェックしよう!
2-3 自分の思考を要チェック!
3 抽象度を上げる方法
3-1 あなたの物理空間での情報の捉え方をチェックしよう!
3-2 実際に物理空間で練習してみよう!
3-3 抽象度の高い人と低い人の違いを頭に入れておこう!
3-4 物理空間の抽象度から上げていこう!
4 抽象度を上げるメリット
4-1 抽象度が上がればストレスを溜めない人間関係が構築できる
4-2 嫌な人の言葉は聞こえなくなる
4-3 固定概念から解放され自由になれる
5 最後に
1 抽象度とは?
抽象度という言葉は、苫米地英人博士の造語で、ざっくり言うと、どれだけ物事を広い視野でみて、その中からどれだけ有用な情報をキャッチし、運用していくことができるのかを表した言葉です。ここでは、抽象度という言葉についてお伝えします。
1-1 抽象度とは?
抽象度を簡単に説明すると、物事をどのくらい高く広い視野で見るかという高さと広さの度合いを表す言葉になります。これを違う言葉で表現すると、「俯瞰して見る」という言葉で表現することができます。
例えば、あなたがタローという名の犬を飼っているとして、そのタローという概念は、「犬」という概念に含まれるので、「タロー」として認識するよりも「犬」のほうが少しだけ抽象度の高い概念ということになります。
そこから更に抽象度を上げた状態でタローを表現すると、哺乳類(タローも犬も含まれる)、動物(タローも犬も哺乳類も含まれる)というように、それよりも前にある情報を包括して表現する高さの度合いを抽象度といいます。
↑
哺乳類(タロー/犬)も含まれる
↑
犬(タロー)も含まれる
↑
抽象度が低い⇒ タロー
あなたのタローは犬という概念に含まれており、犬は哺乳類に含まれます。そして、更に上の抽象度、それよりも更に上の…というように、抽象度を高くすると、そこに至るまでの情報を包括しているということがわかると思います。
このように、抽象度とは事象を見る視点が広く高いところにあり、ひとつ下の情報全てを包括して捉えているかどうかという度合いのことを「抽象度が高い、低い」と表現します。
もうひとつ、例えばあなたの愛車がベンツだとして例を挙げてみます。
↑
普通車(ベンツも含まれる)
↑
抽象度が低い⇒ ベンツ
どうでしょうか?あなたの愛車で例えてみてもわかるように、抽象度をひとつあげるとあなたのベンツは普通車であり、その普通車は、車という概念の中にあるということになります。
1-2 抽象度が高いとどうなるの?
抽象度の高い思考をすると、見える世界は格段と広がり、認識できる情報が増えてきます。先程の例でもわかるように、高い抽象度になればなるほど、様々な概念が含まれている思考になり、その中から自分にとって有用な情報だけを選択することができます。
例えば、あなたが飼っている犬のタローのために、栄養たっぷりの食べ物を探している場合、栄養が沢山つまったカリカリした一般的なドッグフードを買って与えるという方法があります。しかし、そこからもうひとつ抽象度を上げて、哺乳類にとって栄養をたっぷり摂れる食材を探して調理する方が、カリカリした一般的なドッグフードよりも栄養を吸収しやすく、タローが飽きないような料理を作れる可能性があります。
固定概念に邪魔されてひとつしか見えなかったことでも、抽象思考をすることで選択肢が多くなるので、その中から最適な方法を選んで応用することが可能です。
1-3 抽象度の高い人
抽象度が高い人は、潜在的に知っている事象の中で、有用な情報だけをキャッチすることができるので、問題を解決する時間を短縮し、無駄に時間をかけることがなくなります。
もし、あなたが何かを達成したいと考えているのであれば、高い抽象度の思考を身に付けて、あなたにとって有用な情報をキャッチすることが大切です。
抽象度の高い、低いを、山の頂上と山のふもとに例えてみるとわかりやすいと思います。抽象度の高い人の思考は、山の頂上からふもとを見渡している感じで、多くのことを高い所から広く見渡して理解することができます。
また、ひとつの物事に対して細かな情報を沢山もっていて、それを誰かに何かを説明する時には、とってもシンプルでスマートに説明することができます。
例えば、ひとつのことを説明するのに10の事を一所懸命に説明する人よりも、一言ボソっと、的を射た言葉を使って周囲を納得させるような人は抽象度が高い可能性が高いでしょう。また、会議などで話が煮詰まらずに困っているような時でも、抽象度の高い人は、ひとつのことに対して広い視野と知識があるので、それまでみんなが思いつかなかった方法や打開策などを提案することができます。
どんなことでも幅広く視野を広げることができる抽象度の高い人は、あれこれ考えて時間を無駄にすることなく、すぐに対応できる柔軟性があるとも言えるでしょう。もしも抽象度を上げたいと思っているなら、できる限り俯瞰=上から物を見るように、情報を包括して認識し、それを活用した言動を心掛けてみてください。
1-4 対義語と注意点
さて、ここまでの説明で「抽象度」については理解できましたでしょうか?
因みに、抽象の対義語は「具体」になります。
具体=情報量が多い
こうしてみると、ここまでに説明した抽象度の高い思考は、より多くの概念が含まれるので、「抽象度が高い思考=情報量が多いんじゃないの?」と思われるかもしれません。
しかし、苫米地英人博士の言っている「抽象度」は、情報量は減るけれど、潜在的な情報は増えるということを意味しています。
まずは、「抽象度を高くすると情報量は減るけれど」という部分についてですが、犬とタローを比べた時、あなたの飼っている「タロー」は何色で、どんな模様をしていて、どんな吠え方をして、足の長さや尻尾の長さなどの情報が山ほどあるため、情報量が多いということになります。しかし、ひとつ抽象度を高くして「犬」という言葉だけを考えた時、それは生き物としての情報しかないため、情報量は少ないと言えます。
また、「潜在的な情報は増える」という部分ですが、例えば犬よりひとつ上の動物をイメージした時、動物という概念そのものが、犬そのものの直接的な情報は持っていませんが、潜在的にはネコ、トリ、クマ、イノシシという幅広い動物のことが含まれるため、潜在的な情報量は多いということになります。
ただし、気をつけることがあります。抽象度が高い概念の潜在的な情報量は多いですが、知識を身に付け、思考しないとその潜在的情報を引き出すことができません。上記の例でいえば、動物という概念には、ネコもクマもイノシシも潜在的に含まれていますが、イノシシを知らなければ、動物という情報からイノシシという情報を引き出すことはできません。ですから、これから抽象度を上げる方法論をご説明していきますが、知識を増やし、思考し続けるという意識は持ち続けましょう。
2 自分の抽象度を知ろう!
さて、あなたの抽象度はどれくらいでしょうか?
ここでは、今すぐに自分の抽象度を知るための方法や、日頃の会話や思考の中で自分の抽象度をチェックする方法をお伝えします。
2-1 あなたの抽象度は?
あなたが物事を包括的に捉えて思考しているなら、あなたの抽象度は高く、なんでもシンプルに物事を進めたり、数ある情報の中から有用な情報だけをキャッチしたりできていることでしょう。
そして、あなたは余計な情報に惑わされずに思考していることになります。何かを思考する時、もしくは誰かに何かを説明する時、どのように思考したり伝ええたりしていますか?
それを知ることで、自分の抽象度がどれくらいなのかを理解し、そこから更に上の抽象度を目指しましょう。
2-2 スマホサイトでチェックしよう!
自分の抽象度が今どのくらいなのか?を手軽に知れる簡易な方法として、苫米地博士のスマホサイトで抽象度チェックを無料で診断するという方法もあります。
いくつかの質問に答えると、あなたの抽象度がどれくらいのレベルなのかを5段階で教えてくれます。今すぐに自分の抽象度を知りたいという人には便利です。
2-3 自分の思考を要チェック!
誰かに何かを相談された時の思考をチェックしてみると、自分の抽象度がわかります。例えば、「毎日読んでいる新聞が溜まって大変なんだけど…なんかいい方法ない?」と言われたら、あなたはどんな思考をしますか?
段ボールに重ねて入れておきますか?
それとも、廃品回収に出しますか?
もしくは、窓ガラスを拭くためにとっておきますか?
いろんな思考が浮かんでくると思いますが、抽象度の高い人は、新聞をどうやって処理したり、邪魔にならないようにしたりするかということは考えず、そもそも新聞を取ること=新聞紙を配達されずに記事を読む方法がないかを考えます。
そして、「毎日読んでいる新聞が溜まって大変なんだけど…なんかいい方法ない?」という質問に「電子版を購読されてみてはいかがですか?」という返答をします。
このように具体的なケースを思い浮かべて、何かに困った時に自分ならどのように思考するかをチェックしてみましょう。抽象度の高い思考をしている人は、ひとつの物事に対して沢山の潜在的な情報を持っているため、幅広い切り口でアイデアを出すことができます。
3 抽象度を上げる方法
抽象度を上げるには、まずは物理空間で抽象度の高い思考を身に付ける訓練をします。その後に情報空間でそれを発揮するという方法が最適です。ここではその方法をお伝えします。
3-1 あなたの物理空間での情報の捉え方をチェックしよう!
物理的な空間とは、手で触れられるようなモノ自体の世界になります。例えば、パソコンやマウス、キーボード、ピアノ、車など。そして、情報空間とは、概念を扱う空間のことを言います。
情報空間=概念を扱う空間
この、物理空間上にある物自体の捉え方をチェックしていきましょう。まずは、目の前にある物や、いつも自分が乗っている車や電車などをどうやって捉えるかをチェックしてください。
パソコンはどのように捉えていますか?
マウスは?
キーボードは?
ピアノは?
車は?
バッグは?
エンピツは?
それぞれの物を普段の自分がどのように捉えているか認識しておきましょう。
3-2 実際に物理空間で練習してみよう!
あなたの目の前にパソコンのモニターがあるとして、今まではそのモニターの事をMacのパソコンのモニターだと思考していた場合、そこから更に計な情報を削ぎ落として機械…というようにみていくことで抽象度は上がります。
例えば、Macのパソコンモニターを例に挙げると次のようになります。
抽象度が高い⇒ 機械
モニター
パソコンのモニター
抽象度が低い⇒ Macのパソコンのモニター
あなたがDELLのパソコンを持っている場合でも、DELLのパソコンのモニターではなく、パソコンのモニター→モニター→機械というように、物理空間にある物の情報を捉える時、余計な情報を取り除いてシンプルに捉えるようにしてください。
もう一つ例を挙げてみます。
抽象度が高い⇒ 情報端末機
iPhone
iPhone6
抽象度が低い⇒ 黒色のiPhone6
このようになります。情報量を少なくする=物事を俯瞰してみることで抽象度が上がり、機械という言葉にはパソコンやiPhoneも含まれ、情報端末機の場合はiPhoneだけでなくスマホや公衆電話なども含まれます。
抽象度が高いということは、その他にも応用が効くくらいの概念の高さがあるということです。まずは、あなたの目の前にある物理空間上の物を見て、その物自体の一つ上の抽象度で認識するようにしてみましょう。
3-3 抽象度の高い人と低い人の違いを頭に入れておこう!
抽象度の低い人の特徴は、一つのことに囚われて周りが見えなかったり、ある物を見た時に、その役割をその物の直接的な用途しか浮かばなかったりという特徴があります。
例えば、ピアノなら音を奏でる物という思考になりますが、少し抽象度を高くすれば、机にすることもできますし、本立てにすることもできます。
まずは、あなたの目の前に見える物をいかに高い抽象度で捉えるかを日頃から訓練するようにしてください。
3-4 物理空間の抽象度から上げていこう!
ここまでの内容で、物理空間にある物を認識する際の抽象度を上げるということをお伝えしてきました。これは、物理空間での抽象度を上げることに慣れることで、情報空間での抽象度も上げられるようになっていくからです。
情報空間と物理空間は、それぞれ分けて捉えがちですが、これらは独立した形で存在しているのではなく、五感を通して体験できる世界が物理空間であり、この物理空間も情報空間の抽象度が低いところに位置する一部です。
物理空間も情報空間の一部ですが、体感を持って操作しやすいので、まずは物理空間での抽象度向上をトレーニングしていくことで、次第に抽象度を上げるという感覚に慣れていくことができます。
抽象度は高いほうが良いのですが、高くすると臨場感が下がっていくというデメリットがあります。たとえば、極限まで抽象度を上げたような「宇宙全体の幸せ」と言っても、臨場感を持ってイメージしづらいですよね。でも、「自分だけの幸せ」から少し抽象度を上げた「家族の幸せ」くらいなら、臨場感を持ってイメージできると思います。
このように臨場感を損なわないようにバランスを取りながら、一つずつ物事を認識する抽象度を上げていくことで、次第に漠然とした概念のような抽象度の高い思考をする際も、臨場感を伴ったイメージを作ることができるようになっていきます。
4 抽象度を上げるメリット
抽象度を上げることで様々なメリットは生まれますが、特に、情報空間を言葉や態度で表現する私達にとっては、人間関係でのメリットが大きいと言えます。
生まれ育った環境により、私達の性格は一人ひとり異なるわけですが、高い抽象思考でコミュニケーションが取れるようになれば、どんな状況に遭遇しても、落ち着いて最善な方法や言動を選択することが可能になります。
4-1 抽象度が上がればストレスを溜めない人間関係が構築できる
今よりも抽象度を高くして、余計な情報に惑わされずに自由な思考ができるようになれば、話す相手に合わせて抽象度を上げたり、下げたりして会話をすることもできるようになります。
人間関係のツールとして、言葉にはとても大きな影響力がありますが、どんな相手でも、どんな場所でも、どんな方法でも、あなたが例えどれだけ頭が良くて文才があっても、受け取り側があなたの言葉をどう認識するかでその関係は大きく変わります。
不快に感じる人を相手にする必要はありませんが、ビジネスの場や、どうしても関わらなければならないという人と会話をする時など、いつも以上に言動に気を遣うシーンをあなたも経験したことがあるはずです。
でも、毎回そんなに気を遣っていたらストレスが溜まる一方ですよね。そんな時に、あなた自身の抽象度を相手に合わせて下げたり、上げたりすることができれば、あなたのメッセージを相手が正しき認識しやすくなるので、気が合わない人や一緒にいるだけで苦痛を感じる人とでも、スムーズに会話できるようになります。
4-2 嫌な人の言葉は聞こえなくなる
あなたが不快に感じるような言葉を言ってくる人がいても、あなたの抽象度がより高い場合、そんな言葉はまともに受け取らなくなります。そして、耳に入らなくなります。
抽象思考ができるようになれば、その言葉に傷ついたり、いつまでもその言葉に悩まされたりすることもなくなるので、余計な心配や悩みを抱えることがありません。
4-3 固定概念から解放され自由になれる
1日6万回も思考する私達ですが、その思考の中で、できるだけ身体に負担をかけずに、物事をスマートに、そしてシンプルに捉えることができれば嬉しいですよね。
1日の思考を全て自分で監視することはできませんが、少しずつでも抽象度を上げることで、無駄な思考をしなくなり、肩の力が自然と抜けていくのを感じられると思います。
また、今までに経験したこと、誰かから聞いたことが固定概念となっている場合でも、抽象度を上げることで古い知識を新しい知識として捉え直すこともできるようになります。
いつもなら、何か問題が起きてしまうと、いろんな情報を引っ張りだして、どうしたらいいかと悩んでいたかもしれませんが、その時の情報を包括してみる(抽象度を上げる)ことで、枝葉末節に過ぎない情報の囚われから解放され、常に自由で心地よい思考のパターンを見つけることができます。
心地よい思考のパターンを手に入れるためにも、思考の抽象度をアップする訓練をしていきましょう!
4-4 新しいアイデアが閃きやすくなる
抽象度が上がり、物事を上から俯瞰して見られるようになると、独創性のあるアイデアが閃きやすくなります。
アイデアは、ある物事を多面的に見た複数の結果の内の一つです。
例えば、有名なお菓子であるベビースターラーメンは、当時の他の商品の生産工程で、大量に出てしまう麺くずを違う抽象度で認識し直すことで、お菓子として有効利用することで生まれた商品です。麺くずをそのまま認識したら捨てるしかありませんが、食べ物という形で一度抽象度を上げて認識し、その食べ物を美味しく味わえるお菓子として再構築したことで、ゴミにしかならなかったものが、大ヒット商品として生まれ変わりました。
5 最後に
「抽象度」については理解できましたでしょうか?
苫米地博士が教えてくれる「抽象度」は、これまでに執筆されてきた本の内容にもあるように、私達が、日頃の生活を嬉しく、楽しく、清々しく、心地よく、そして気持ちよく過ごせるための言葉として教えてくれます。
自分の考え方に満足していない…
自分をもっと成長させたい…
シンプルに物事を捉えて自由に生きたい…
と悩む時もあるかもしれません。しかし、この記事をきっかけに抽象度を上げるということを実践してみてください。
抽象度を上げると、視野を広くして物事を高い視点から認識できるので、物事の本質を捉えることができます。そして、今まで気付かなかった解決法が見つかり、あなたの悩みをすんなり気持ち良く解消できるかもしれません。
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