記憶力を向上させる10の習慣-短期記憶を長期記憶に換えるコツ

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記憶力のいい人を見ると、いったい自分とどこが違うのか知りたいと思いませんか?

「覚えたはずのことを忘れてしまう」
「覚えたいことが、なかなか覚えられない」
そうした、記憶力にかんする悩みをかかえている人は多いですよね。

覚えられなくなる、思い出せなくなる原因は、何なのでしょう。
それを知るためには、脳が記憶するしくみを理解する必要があります。
そして、その原因がわかれば、記憶力を向上させる方法もおのずと見えてくるはずです。

ここでは、記憶のしくみや分類、それぞれの性質などをわかりやすく解説し、記憶力を向上させるために誰もができる10の習慣を紹介します。

目次

1. 記憶が残るしくみ
1-1. 感覚記憶から短期記憶へ
1-2. 短期記憶から長期記憶へ

2. 長期記憶には種類がある
2-1. 言葉で説明できる陳述記憶
2-1-1. 覚えやすいエピソード記憶
2-1-2. 覚えにくい意味記憶
2-2. 運動能力などの非陳述記憶

3. 記憶力を向上させる10の習慣
① 積極的に感情を重ね合わせる
② 意味記憶は反復して覚える
③ 意味記憶をエピソード記憶化する
④ 場所を関連づける
⑤ 視覚を関連づける
⑥ 聴覚を関連づける
⑦ 関連する情報はまとめて覚える
⑧ 検索力を強化して思い出しやすくする
⑨ ワーキングメモリを上手に使う
⑩ ストレスをコントロールする

まとめ

1. 記憶が残るしくみ

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一般的に「記憶」と呼ばれているものは、長期にわたって忘れずに思い出すことができる情報のことです。

長期にわたって残っている記憶は、脳の中でどのようにしてつくられるのでしょうか。
何かを覚えるときに、脳の中で何が起こっているのか簡単に解説します。

1-1. 感覚記憶から短期記憶へ

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記憶は、残される時間によって、「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3つに分類されます。

感覚記憶とは、「視覚器官」「聴覚器官」「嗅覚器官」「味覚器官」「皮膚」などの感覚器官で刺激の感覚が瞬間的に保持されたものです。
保持されるのは長くても数秒程度で、ほとんどの記憶は意識されないまま1~2秒で失われます。

見たものや聴いたものなど感覚記憶のうち、意識が向いて認知した情報は、脳の海馬という部分で一時的に保存されます。
これが短期記憶で、残しておけるのは70~80分から、長くても1~2日程度です。

1-2. 短期記憶から長期記憶へ

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海馬に保存された情報は、情動フィルターによって取捨選択され、選ばれた記憶だけが睡眠中に大脳皮質へと送られて長期記憶になります。

情動フィルターとは、喜びや悲しみ、怒りや驚きといった本能的な感情を司って、反応の処理をする部位です。

情動が大きい情報ほど記憶に残るのは、脳が「生きるために重要度の高い情報」と判断するからだといわれています。
逆に情動が少ない情報は、「生きるために重要度が低い」情報と判断されるために、長期記憶となりにくいのです。

美味しい食べ物がある店や危険な場所などは、情動が大きくなるので記憶に残りやすいのですが、試験勉強や、仕事で会う人の名前などは、生死にかかわる情報と判断されないので、長期記憶として残すためには工夫をする必要があるのです。

 

2. 長期記憶には種類がある

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海馬から大脳皮質に送られて、記憶の倉庫に収納された長期記憶には、「陳述記憶」と「非陳述記憶」という分類があります。

同じ長期記憶でも、覚えやすい情報と覚えにくい情報があります。
その違いを知ることが、記憶力向上の1つのカギとなるのです。

2-1. 言葉で説明できる陳述記憶

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陳述記憶とは、言葉で説明したり、文字で表したりできる記憶のことです。
陳述記憶は、「エピソード記憶」と「意味記憶」に分類されます。

この2つの記憶の違いをよく理解しましょう。

 

2-1-1. 覚えやすいエピソード記憶

「去年の花火大会で会って、おしゃれな浴衣を着ていた同級生の彼女、なんていう名前だったかな?」
このように、場面や容姿が浮かんでいるのに人の名前が思い出せないことは、よくあることです。

言葉で表せる陳述記憶のうち、自分が体験したり、見たりした経験に基づくものを「エピソード記憶」と呼びます。

上の例でいうと、「去年の花火大会」や「おしゃれな浴衣を着ていた」「同級生だった」という記憶は、エピソード記憶になります。

2-1-2. 覚えにくい意味記憶

一方で、体験や見たものではなくて、言語や数字などで意味をもたせた「知識」のことを「意味記憶」と呼びます。
人の名前や数式、単語、法律などの条文、歴史の年号などは意味記憶です。

ある人間のことは、いろいろなエピソード記憶が頭の中でひもづけられているので思い出すことができるのですが、エピソード記憶のラベルともいえる意味記憶は、関連づけが弱くなりやすく、思い出しにくいのです。

「去年の花火大会で会って、おしゃれな浴衣を着ていた同級生の彼女」までは、エピソード記憶がいくつか関連づけられているのに、言語情報である名前は関連づけが弱いということです。

人類の記憶は元々、生命にかかわる経験を覚えておくためのものでしたが、言語を獲得したことにより、経験をともなわない情報も記憶に残せるようになりました。
ところが意味記憶は、経験をともなうエピソード記憶に比べて、脳内で高度な処理が必要になるのです。

そのために、関連づけが弱くなって、覚えにくいのです。

2-2. 運動能力などの非陳述記憶

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長期記憶のうち「非陳述記憶」とは、言葉ではすべてを説明しづらい、無意識に思い出す記憶です。

自転車の乗り方や、楽器の演奏方法、ゴルフのスイングなど、身体で覚える記憶のことで、「手続き記憶」や「技能記憶」とも呼ばれます。

 

3. 記憶力を向上させる10の習慣

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記憶力を向上させるということは、短期記憶を長期記憶として定着させやすくすることです。

ここまでに解説してきた記憶のしくみや脳の性質をふまえて、記憶を定着させやすくする習慣を紹介しましょう。

① 積極的に感情を重ね合わせる

情動が大きいほど、脳が「生き残るために必要な情報」と判断するために、長期記憶として残りやすいことは、解説しました。
情動とは、感情の動きです。

この脳の性質を利用して、意味記憶を定着させたいときに、積極的に感情を動かすようにすれば、その情報は「生き残るために必要な情報」だと判断されて、記憶に残りやすくなります。

はじめて会った人に対しても、単に顔と名前を記憶に残そうとするのではなくて、「いいスーツを着ているな」「優しそうな人だな」「清潔感があふれているな」などと、相手のいいところを意識することによって、その人の名前を覚えやすくなるのです。

英語を学ぶときでも、単に教科書やカードを反復して覚えるよりも、映画や音楽など感情の動きをともなうものと一緒に覚えると、エピソード記憶との関連づけが強くなり、長期記憶として残りやすくなります。

② 意味記憶は反復して覚える

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意味記憶を定着させるために欠かせないのが、「反復」です。

脳の神経細胞には、繰り返し情報を送られるとネットワークが強くなって長期記憶になりやすい「長期増強」という現象があります。
この脳の性質を利用するのが、反復なのです。

反復は、1日に何度もやるより、一度睡眠をとってから繰り返す方が効果的です。
それは脳内で、睡眠中に記憶の整理と、短期記憶から長期記憶への移行が行われるからです。

ですから寝る前に、過去にもらった名刺を見ながらその人のことを思い出す習慣をつくれば、人の名前を記憶する力は想像以上に向上します。

快適な睡眠が、記憶力の向上に重要な役割を果たすことは、いうまでもありません。
寝ている間に脳では多くの酸素や栄養が使われて、情報整理が行われているのです。

③ 意味記憶をエピソード記憶化する

覚えにくい意味記憶をエピソード記憶に変えられれば、長期記憶として残りやすくなります。

もっともわかりやすい例は、英語を覚えるときに、ただ反復するだけではなくて、覚えたい言葉を実際に使って会話をしてみるのです。
こうすることによって、意味記憶である英単語は、体験をともなうエピソード記憶に変換されます。

歴史年表を覚えるときに誰もがやっていた「鳴くよウグイス平安京」といった語呂合わせも、年代という意味記憶をエピソード記憶に変えて覚えやすくする手段です。
自分で語呂合わせをつくると、強いエピソード記憶になるので、さらに記憶は定着しやすくなります。

また、文章や本の内容を覚えたいときに、そのストーリーに没頭して疑似体験することも、エピソード記憶に変換する方法の1つです。

④ 場所を関連づける

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人間の記憶のベースとなっているエピソード記憶は、空間的な位置づけがとても大きな要素です。

脳の海馬は、エピソード記憶を残すフィルターとして、「どこで起きたことか」という情報を必ず添付するといわれます。
これは、記憶の原点である命にかかわる情報において、場所の情報が重要であったからではないかといわれています。

2014年に、脳内でカーナビのような空間認識のシステムを構成する「場所細胞」の発見が、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
脳内で、それほど重視されている場所の情報は、記憶を関連づける索引であり、記憶を思い出しやすくする要素です。

ですから、人の名前と顔を覚えるようなときは、「どこで会ったのか」という場所の情報を意識して記憶するようにすると、忘れにくくなるのです。

⑤ 視覚を関連づける

脳には、それぞれの感覚器官から入ってきた情報を受け取る部位があり、それらの情報を集めて整理するのが海馬です。
人間には「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」という五感がありますが、その中でも視覚と聴覚をともなう情報は記憶に残りやすいといわれています。

嗅覚、味覚、触覚の3つは、いずれもダイレクトに刺激の情報が脳へ伝えられる直感的な感覚であるのに対し、視覚と聴覚は、光や音を脳内でイメージに変換してから情報が海馬へと伝えられる間接的な感覚なのです。

間接的な感覚は、脳内で一度変換されるという複雑な過程を経るために、記憶に定着しやすく、思い出しやすいという性質があります。

たとえば、味覚や嗅覚の記憶は、味や匂いを体験することによって思い出されることが多いのですが、視覚や聴覚はそのときの情景を思い浮かべることができれば、記憶が蘇るという違いがあります。

意味記憶に視覚を関連づける方法としては、図式化や、語呂合わせのようにイメージ化することが思い浮かぶでしょうが、実はそれだけでなく、まずは覚えたい対象を「よく見る」という習慣が、記憶力の向上にはとても重要です。

⑥ 聴覚を関連づける

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聴覚を関連づける記憶方法としては、英会話のリスニング教材を使用したり、洋楽を聴いて英語を覚えたり、ということが一般的に行われています。

こういう場合は、覚えたいものが明確に音源となっているわけですから、簡単に取り組むことができます。

しかし、ある意味記憶と聴覚を関連づけるといっても、その内容が録音された音源が見つかるとは限りません。

そこで、習慣化したいのが、「ICレコーダー」に自分の声で言葉なり文書なりを録音することです。
最近は、スマートフォンのアプリを使用すれば簡単にできますから、ICレコーダーを購入するまでもありません。

自分で録音する行為自体がエピソード記憶となり、さらに繰り返し聴くことによって、聴覚情報が意味記憶とリンクして定着しやすくなる、一石二鳥の記憶力向上法です。

⑦ 関連する情報はまとめて覚える

何かを思い出すとき、脳内では関連づけられたいくつもの情報をたどりながら、それらの交差点にある記憶を検出します。

人間の脳には関連づけによって効率化を図ろうとする性質があるのです。

ですから、英単語を覚えるようなときには、つながりのない単語を1つずつ覚えるのではなく、同じジャンルのものをまとめて覚えたほうが、関連づけが多く残されますから、スムーズに記憶できるのです。

テレビのニュースを見ながら、政治経済関連の言葉を順に英訳して覚えたり、音楽を聴きながら楽器にかんする情報を順に覚えたりすれば、視覚や聴覚の情報も関連づけられるので、さらに記憶は定着しやすくなります。

⑧ 検索力を強化して思い出しやすくする

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人の名前を思い出すことは、エピソード記憶のラベルを検索する行為です。
ですから、エピソードと名前の結びつきを強くすれば、思い出しやすくなるわけです。

意味記憶の検索力を高めるためには、反復と、新たな関連づけがとても有効ですから、思い出す機会を増やして、エピソード記憶との関連づけを強めていくのです。

名刺を自分なりに整理したり、データベース化したりしている人は多いことと思いますが、それだけでは関連づけが増えません。

整理した名刺やデータベースを何度も見ながら、その人のことを思い出し、感情を重ね合わせる行為が、検索力を高めてくれます。

⑨ ワーキングメモリを上手に使う

ここまで、「いかにして短期記憶を長期記憶として定着させるか」という面から、記憶力を向上させる習慣を解説してきましたが、「短期記憶を上手に使う」ことも、記憶力の向上には求められる要素の1つです。

その代表的なものが、「作業記憶」とも呼ばれる「ワーキングメモリ」を上手に使うこと。

ワーキングメモリとは、五感から入ってきた情報を蓄えて処理する一時的な記憶のことで、デスク上の作業スペースのようなものです。
ワーキングメモリの容量はそれほど大きくないので、人間の脳はマルチタスクが得意ではありません。

たとえば歩くときには、「段差がある」「水たまりがある」といった視覚情報をワーキングメモリで処理しながら、それに応じて手足を動かしているのですが、考えごとをしながら歩いているとワーキングメモリがオーバーフローして、段差でつまずいてしまうのです。

ワーキングメモリを上手に使うためには、優先順位を明確にして作業を1つに絞ることが大切です。
さらに、知覚した情報に注意を向けて脳に重要な情報だと思わせることや、自分にご褒美を用意して報酬系の神経ネットワークを活性化させる、といった方法も有効です。

⑩ ストレスをコントロールする

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「ストレスは記憶力の天敵」といわれます。
過剰なストレスは記憶力を低下させるからです。

しかし、「記憶力が高いとストレス軽減につながる」という一面もあります。
ストレスは慣れるとストレスに感じなくなるものが多く、その「慣れる」とう状態は、ストレスに慣れたということを脳が記憶することなのです。

ですから、ストレスに感じることがあったら「慣れてしまう」、もしくは「慣れたと思い込む」ことによって、ストレスは軽減されます。

ストレスが軽減されれば、記憶力の低下を防ぐことができるのですから、日頃からストレスをコントロールする生活を心がけましょう。

まとめ

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人間がもって生まれた記憶力に、大した差はないといわれます。
物事を覚えられる人と、よく覚えられない人の違いは、記憶力の差ではなくて、記憶する対象の差であるともいわれます。

記憶力コンテスト世界一や、ノーベル賞クラスの記憶力を目指すのでなければ、誰もがもって生まれた記憶力で、仕事も勉強も十分にやっていくことが可能なのです。

そこで、もって生まれた記憶力をムダなく効果的に発揮させるために習慣化したいのが、ここで解説したメソッドです。
ぜひ、楽しみながらいいエピソード記憶を増やして、記憶力向上に役立ててください。
(約6400w)

【参考資料】
・『最新科学で解き明かす 最強の記憶術』 澤田誠 他 洋泉社 2017年
・『記憶力の鍛え方』 加藤俊徳 宝島社 2014年
・『記憶する技術』 伊藤真 サンマーク出版 2012年

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