A4サイズ1枚にまとめる「究極の企画書」の作り方を知りたいと思いませんか?
現代は、ビジネスにおけるあらゆるシーンで企画書が求められています。コストの削減、業務の改善、体制の改革、商品開発と、多くの問題を解決するビジネスプランが必要なのです。
また、管理統制のために報告書やレポートの提出を義務づける企業も増えています。今や、企画書を中心とするビジネス文書を書くスキルは、ビジネスマンにとって不可欠な要素となりました。
そこで重要となったのが、もっとも提出する機会が多いA4サイズ1枚に内容をまとめる能力なのです。ここでは、企画書を中心としたA4サイズ1枚文書の作り方と、5つの基本パターンを解説します。
目次
1 企画書の例 | 5つの基本パターン
1-1 企画書の例1 報告レポート
1-2 企画書の例2 提案レポート
1-3 企画書の例3 戦略提案書
1-4 企画書の例4 戦術提案書
1-5 企画書の例5 総合企画書
2 A4サイズ1枚企画書の作り方
2-1 なぜA4サイズ1枚なのか?
2-1-1 現代に求められているスタイル
2-1-2 読み手の負担にならない
2-1-3 3つのメリット
2-2 企画書をシンプルにまとめるための9ポイント
ポイント1 レイアウトの基本
ポイント2 余白の取り方
ポイント3 フォント
ポイント4 文字サイズ
ポイント5 表記の統一
ポイント6 箇条書きの基本
ポイント7 要約の基本
ポイント8 ビジュアルの活用
ポイント9 色の使い方
まとめ
1 企画書の例 | 5つの基本パターン
まず、代表的なA4サイズ1枚の企画書を5例を解説します。
シンプルに内容をまとめる好例として、提出する機会が多い社内レポート2例も取り上げました。基本パターンに必要なデータをはめ込んでいけば、誰でも整理されて読みやすい企画書が作成できます。
・提出者の所属と氏名
この2点は最低限必要な記載事項ですから、忘れないようにしましょう。社外企画書となる場合には、次の2点も記載します。
・提出者の連絡先
1-1 企画書の例1 報告レポート
結論を明確にまとめることが「報告レポート」の目的です。報告する内容は、出張報告、アンケート、取材などの調査報告、会議議事録などです。
基本レイアウト
1 正確な報告
報告レポートには、報告内容を正確に表現することが求められます。最初の構成要素となる「目的」では、何を報告するレポートなのか明確に示しましょう。
「報告内容」では、見出しをつけて要約を表記し、本文では内容の補足説明を書きます。書く順序は全体的な内容から部分的な内容へとまとめると、全体像がつかみやすくなります。
最後に「結論」で締めくくります。
2 明確な結論
「結論」は、レポート内容の中からもっとも重要な事柄を明確にする部分です。一点に要約して補足文章を書く方法と、2~3の項目に分けて書く方法があります。
結論の内容は、「目的」から「報告内容」へと流れてきた内容との一貫性や論理性がなければいけません。
3 図表を活用
調査結果のレポートなどでは、内容を納得させる要素として、わかりやすいグラフやチャートを挿入しましょう。
スペースが限られているA4サイズ1枚文書では、的確に図表を選ぶ必要があります。特徴的な部分に写真データを埋め込むのもイメージの共有には効果的です。
4 フォーマット化する
使用頻度の高い報告レポートは、フォーマット化しておきましょう。
一般的な報告書や稟議書などと同様に、会社でフォーマット化されているところもありますが、もしもない場合には、報告レポートもフォーマット化しておくと、社内業務のスリム化ができます。
1-2 企画書の例2 提案レポート
まとめた結論を基にどうすべきか提案するのが「提案レポート」です。報告レポートよりも企画書的な要素が強くなります。
基本レイアウト
1 3要素をまとめる
提案レポートは、報告レポートに提案が加わった内容になりますが、構成要素は上の基本レイアウトにある3要素にまとめます。
盛り込む内容が増えるので、整理してまとめなければいけません。スペース的にはレポートの目的となる「提案」を広くとり、「報告内容(現状分析)」と「結論(課題)」はできるだけ要約します。「報告内容(現状分析)」と「結論(課題)」をひとつの項目にまとめる場合もあります。
2 重要なのは「提案」
提案レポートでもっとも重要な要素は、「報告内容(現状分析)」と「結論(課題)」を受けた「提案」です。
問題の解決策となる提案は、簡単には導くことができない難しい内容のものもあります。社内外での情報収集がカギとなるケースも多いので日頃からアンテナを立てておきましょう。
内容をより具体化させて「スケジュール・予算・効果」まで記述してもいいでしょう。
3 戦略提案書のスリム化
提案レポートは、次の項で解説する「戦略提案書」と構造的に似ています。
戦略提案書の現状分析は、多方面から情報収集と分析の結果が示されるのに対し、提案レポートではあくまでも「報告内容」です。提案レポートでは、「報告内容(現状分析)」とその「結論(課題)」を見極めて、解決方法を提案します。
4 問題解決のためのフォロー
社内提案である提案レポートは、提出した案が不採用になっても、どこに問題があったのか確認して提案し直すことが重要です。
提案レポートを提出するということは、なにか社内に問題があるということ。その問題を解決しなければ会社はよくならないのです。なんらかの事情で不採用になっても、問題解決への思いを捨ててはいけません。
1-3 企画書の例3 戦略提案書
「戦略提案書」は、「どうすべきか」という方向性(戦略)を提案する文書です。総合的な企画書に必要なのは「課題」「基本方針」「解決策」という3要素と、これを書く7つのステップです。
step1 現状分析
step2 課題発見
step3 目的の明確化
step4 対象設定
step5 解決手段
step6 実施方法
step7 費用・効果
戦略提案書や戦術提案書では、このステップから必要なものを選んで設定します。
基本レイアウト
1 現状分析と課題設定
「現状分析・課題設定」は提案の論拠となる部分です。社会環境や様々な要素の動向から2~4項目を選出してしっかりとした分析を行い、問題点を明確にして課題をあぶり出します。
ここが的確でないと、戦略提案が、ただのアイデア提案で終わってしまいます。重要とはいえ戦略を導き出す前段階ですから、スペースとしては全体の20~30%に収めましょう。
2 タイトルやテーマを工夫する
どんな提案なのかということを「ひと言」または短文で表現する「タイトル」「テーマ」があると、独自性が出て説得力がアップします。そのためにも、提案する戦略やプランには、コンセプトが伝わりやすくイメージしやすいネーミングを考えましょう。
3 説得力を高める図表
現状分析で説得力を発揮するグラフやチャートは、1~2点に絞って挿入します。
限られたスペースですから、ひとつの図表でどれだけの情報を伝達できるか工夫しましょう。棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、レーダーチャートといった図表は、それぞれの特徴を理解して使い分けます。
グラフの上に傾向線を重ねたり、グラフを効果的に着色したりして、傾向性や重要性を表現することも可能です。
4 明確な方向性の提示
明確な方向性の提示は、戦略提案書の決め手となる要素です。現状分析や課題に基づいた論理性、一貫性をもった方向性を述べます。いくつかの選択肢を設定して、最適な方向性を選択させるという手法もあります。
1-4 企画書の例4 戦術提案書
「戦術提案書」は、どの方向に進むべきかという戦略提案書に対して、その戦略をどのように実施するかを具体的に提案する文書です。
基本レイアウト
1 具体的な提案
戦術提案書の目的は、具体的な解決策を明示することにあります。
具体的な実施内容を書く「目的」は、タイトルと短文で済ますケース、タイトルに見出しを付けた項目をプラスするケースがあります。背景などの裏付けデータを加えると説得力がアップしますが、スペース的には全体の10~20%程度に収めます。
2 具体的な展開
より具体的な展開方法、展開内容を提示する「戦術提案」には最大のスペースを割きます。読み手が具体的に検討できる材料を提示しましょう。
イメージ写真などを挿入すると具体性がアップします。提案内容が多くなってどうしても1枚では表記できない場合には、全体像だけを表記して、別紙資料として詳細を添付します。
3 説得力を高める「事例」
他社や他業界での活用事例などを提示することで、読み手の理解を深めることができます。また、「成功させるポイント」などとして客観的な判断材料を提供すると、説得力が高まります。
4 スケジュール・予算・効果
具体的な実施提案にするためには、提案から実施までのスケジュール、実施にかかる費用、実施した場合の効果予想が欠かせません。
スケジュールは、「準備期間」「実施期間」から「フォロー期間」まで提案します。スペースに余裕があれば、箱矢印や線図も活用しましょう。
費用は総経費を提示し、必要に応じて別紙の見積もりを用意します。効果予想は必須要素ではありませんが、説得力を高めるために現実的な内容を記載しましょう。
1-5 企画書の例5 総合企画書
「総合企画書」は、戦略提案書と戦術提案書をひとつにまとめたものです。企画書に必要な3要素7ステップをすべて盛り込んだ内容になります。
基本レイアウト
1 4項目に集約
項目としては、上記の4項目に集約されます。
A4サイズ1枚に戦略から戦術まで盛り込むので、いかにスペースをうまく使うかが問われます。各項目のスペースは、内容に応じて割り振りましょう。「基本方針」と「解決策提案」に多くのスペースを割くのが一般的です。
企画書全体に一貫性をもたせ、論理的にまとめることが重要です。
2 レイアウトの重要性
要素が多い総合企画書では、なにがどこに書いてあるかわかりやすいように、バランスよくレイアウトしましょう。ひと目で全体像をつかめることがA4サイズ1枚のメリットなのです。
左右が対象で、できるだけ均等な枠を配置すると見栄えのよい仕上がりになります。レイアウト感覚、デザイン感覚に優れている人が書いた企画書は、見た瞬間に判断できるものです。
3 文字量を抑える
見た目を美しくするためには、文字量の限界があります。
小さい文字があふれている企画書では、読む気を失ってしまいます。総合企画書ではとくに、見出しと箇条書きをうまく使って文字量を抑えましょう。
フォントの使い分け、サイズや太文字などで強弱をつけて読みやすくします。
4 読みやすくするための図表
総合企画書は、盛り込む要素が多いために、文字だけの文書になりがちです。
図表や写真データなどをうまく挿入して文字数を抑え、読みやすい文書を目指しましょう。文字だけの構成になった項目でも、矢印などの記号や枠を工夫することで読みやすくすることができます。
2 A4サイズ1枚企画書の作り方
ここからは、ビジネス文書をA4サイズ1枚にまとめるためには、いくつかのコツをお伝えします。そのコツさえつかめれば、決して難しいことではありません。
「究極の企画書」などと言われるこのスタイルの存在意義と、作成のコツとなる9つのポイントを解説します。
2-1 なぜA4サイズ1枚なのか?
ビジネスプランをシンプルに提案する1枚企画書には、いくつかの型があります。
PowerPointの初期設定になっているもっとも標準的なスタイル。
テレビ業界や出版業界などで、文字メインとなる場合に多く用いられるスタイル。報告書やレポートなども、このスタイルが多い。
トヨタ自動車などが採用している「ワンシート」と呼ばれるスタイル。A4サイズよりもビジュアル面を強化できる。
外資系企業などで用いられるスタイル。A4横サイズの表裏にA5サイズを4ページプリントして、真ん中で折る小冊子的なもの。
2-1-1 現代に求められているスタイル
スピードを求められる現代のビジネスシーンにおいて、企画書に求められる最重要事項は「シンプルさ」です。
提案相手に時間を割いてもらうことが難しい状況になってきているこの時代に、ページ数の多い企画書を提出しても、見向きもされない可能性すらあります。相手が時間をかけずにひと目で把握できるのは、A4サイズ1枚の文書なのです。
2-1-2 読み手の負担にならない
A4サイズ1枚の企画書は、俯瞰して企画を読めるので相手の負担になりません。報告書やレポートと同様に、ビジネス書類の標準となっているA4サイズの企画書は保管がしやすいというメリットもあります。
2-1-3 3つのメリット
こいしたA4サイズ1枚のメリットをまとめると、次に3点に集約されます。
●時間短縮・・作成時間や提案時間が短縮できる。
●簡単保存・・A4ファイルに保存できるので、かさばらばい。
2-2 シンプルにまとめるための9ポイント
伝えたいことをA4サイズ1枚にうまくまとめるためには、いくつかのポイントがあります。
文字数が限られるので情報の取捨選択が重要になることは、言うまでもありません。1枚の文書の中で、何が重要で何を伝えたいのか、どこを強調したら効果的なのか、しっかり検討しましょう。
ポイント1 レイアウトの基本
A4サイズ1枚の企画書は、読み手の視線を意識したレイアウトが必要です。横書きの場合は、左上から右下へと移動する「Z」状の流れが基本となります。
手順や時間の流れを示す表やチャートは、左から右、上から下へと並べます。
ポイント2 余白の取り方
読みやすくするためには、用紙の上下左右にある程度の余白をとり、文字の行間を調整してゆとりをもたせます。
上下左右は1cm程度の余白を作りましょう。行間は一般的に文字サイズの50%から70%に設定すると読みやすくなります。
項目など強調したい文字の上下には余白をとり、枠の中の文字も前後左右に余裕をもたせると、読み手に要点を伝えやすくなります。
ポイント3 フォント
フォントは「ゴシック体」と「明朝体」の2種類を使い分けましょう。
見出しなど目立たせたい部分には、線が太く力強い印象のゴシック体が適し、本文には線が細くて文字のサイズを小さくしてもつぶれにくい明朝体が適しています。
スクリーンでプレゼンをするスライドを作る場合には、すべてゴシック体を使用したほうが読みやすくなります。Windowsのユーザーであれば、ゴシック体は「メイリオ」、明朝体は「MSP明朝」を使用すると、見やすく引き締まった印象に仕上げることができるでしょう。
ポイント4 文字サイズ
1枚文書に使用する文字サイズは、大・中・小の3サイズを設定しましょう。基本的なサイズ範囲から3サイズを選びます。
・タイトル・・・28~36ポイント
・見出し・・・16~24ポイント
・本文・・・10~12ポイント
・タイトル・・・36~44ポイント
・見出し・・・28~32ポイント
・本文・・・18~24ポイント
本文中でとくに強調したい部分はポイント数を上げる方法もありますが、太字や下線をもちいると余白を変えないまま強調できます。
ポイント5 表記の統一
文字の表記には統一したルールを設けましょう。
・数字やアルファベットは半角。
・時間や金額の表記には、一定のルールを決める。
・外来語の表記も統一する。(「ビーナス」と「ヴィーナス」など)
わかりにくい語句にはカッコ書きで補足を加えます。
ポイント6 箇条書きの基本
箇条書きは、以下の手順で整理します。
・同じような内容の事柄はひとつにまとめる。
・時間や手順の流れがあれば並びを整理する
簡潔にまとめるためのポイントは3点です。
とくにない場合は、「・」や「●」などの記号をつける。
・大見出し、中見出し、小見出しといった階層を作る場合は行頭を2文字分ずつ下げる。
・ひとつの見出しに書く項目は、多くても7項目までに抑える。
ポイント7 要約の基本
文章を要約して洗練されたイメージにするためには、次の2点に気をつけましょう。
・体言止めを効果的に使う
長くて無駄のある修飾語や重複している言葉を省くと文章がすっきりします。全ての文章を「~です」「~である」などと終わらせるのではなく、名詞で終わらせる体言止めを適切に使うと、メリハリのきいた文章となります。
ポイント8 ビジュアルの活用
写真やイラスト、地図やクリップアートなどのビジュアルデータを活用すると、直感的な伝達ができて、イメージの共有に役立ちます。
いくらA4サイズ1枚に要約しても、言葉だけでは伝えきれない事柄もあります。
自分で撮った写真や自作したイラストデータ、マイクロソフトが提供しているクリップアートなどの使用は問題ありませんが、著作権や肖像権には注意しましょう。インターネット上のデータを使用する場合は、フリー素材として公開されているものか、データが市販されているコーポレイト画像になります。
ポイント9 色の使い方
色を使うときの基本は、黒、青、赤の3色です。
カラープリンターやカラーコピーが普及した近年は、企画書もカラーで作られることが一般的になりました。しかし、色の使い過ぎは散漫な印象を与えてしまうので注意しましょう。
文字には黒、枠やスライドの背景には青、強調したいポイントは赤、などと3色に絞り、濃淡でバリエーションを作ると、整理された印象で重要な部分も伝わりやすくなります。
まとめ
後半で解説した9つのポイントを意識して、前半の基本パターンを想定してください。提案書や企画書にといったビジネス文書に共通するポイントが、おわかりいただけますね。
ここでは究極とされるA4サイズ1枚のビジネス文書を、読み手がわかりやすいように作成する方法を解説してきました。最後に、企画書の目的である「プレゼンテーションを通す」ためのチェックポイントを3つ紹介しましょう。
・裏付けとなるデータがあるか?
・相手に行動を起こさせるものか?
企画が採用されるためには、わかりやすく読みやすいだけでなく、相手の心を動かす文書でなければいけないのです。
【参考資料】
『ゼロから始める「1枚企画書」の書き方』(KADOKAWA・2014年)
『A4・1枚究極の企画書』(宝島社・2007年)
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