怒りをコントロールする10の習慣-脳のストレス反応に対処する

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shutterstock_788165872怒りの感情をコントロールできない大人が増えています。

怒りをコントロールできない原因として、先天的に脳機能の発達が遅れた状態である発達障害や、うつ病、双極性障害(躁うつ病)といった精神の病気がクローズアップされ、専門の病院も増えています。

しかし、こうした症状の診断は、どこからが脳や精神の障害なのかというラインがはっきりしているものではないために、グレーゾーンで難しいケースが多いのです。

なぜかといえば、怒りの感情が特別なものではなくて、人間にとって自然な反応であり、脳が発するひとつのサインだから。
イライラや怒りという感情は、「つまらない」「痛い」「つらい」といった、ストレスを受けたときに起こる感情のひとつなのです。

ストレス反応ですから、放置して蓄積すると、うつ病をはじめとして、いろいろな心と身体の病気を引き起こす原因になるわけです。

怒りは、誰にとってもある自然な反応なのですから、ストレスケアを覚えれば、先天的な原因がある人でも、多くの場合は自分で症状を軽減することが可能です。
アンガーマネジメントやストレスケアの本がこれだけ多く出版されているのは、セルフケアが有効だという証拠だといえますよね。

ここでは、ストレス反応で起こる「怒り」という感情を自分で鎮められる10のテクニックを紹介します。
ぜひ習慣化して、心と身体の健康に役立ててください。

目次

1. 怒りの感情が起こるしくみ
1-1. ストレスは脳の防御反応
1-2. 怒りがわく主な要因
1-3. 怒りは寿命を縮める

2. 怒りをコントロールする10の習慣
① 基本となる6秒ルール
② その場を離れる
③ 数字を思い浮かべる
④ 深呼吸でリラックス
⑤ コーピングマントラ
⑥ 目を閉じてプチ瞑想
⑦ 好きなことに没頭する
⑧ 軽い有酸素運動
⑨ 美味しいものを食べる
⑩ 自律神経を整える生活を意識する

まとめ

1. 怒りの感情が起こるしくみ

shutterstock_732565900「喜怒哀楽」とは、「喜び」「怒り」「哀しみ」「楽しみ」という人間の感情を表す言葉。
人間には、いろいろな感情があるからこそ、生きる張り合いが生まれるのです。

また、感情はホルモンの分泌や身体機能に影響を与えるので、身体の健康とリンクしており、精神的負担となる負の感情が重なると、いろいろな病気を引き起こす原因になるのです。

そうした感情のひとつである「怒り」も、人間にとってプラスマイナス両面のエネルギーをもっています。
怒りのコントロール法を紹介する前に、「怒りのしくみ」を解説しましょう。

1-1. ストレスは脳の防御反応

人間は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感で、外部からの刺激を感知します。
五感で受けた刺激は、電気信号となって神経細胞を伝わり、脳の各部位で受け取られると、扁桃体という部位で脳に保持されている記憶と照らし合わせて、感情が生まれます。

扁桃体では、瞬時に「好きか嫌いか」「快か不快か」といった二択が行われて感情が生まれるのですが、ここで「嫌い」「不快」「つらい」「痛い」「悲しい」という負の感情が生まれると、脳は自分を守ろうとして全身に指令を出します。

このとき、筋肉を緊張させて臨戦態勢をとり、ホルモンの分泌を増やして身体機能を高め、心拍や呼吸を早くして行う危機回避行動などは、ストレス反応と呼ばれる人間の防御反応。
臨戦態勢ですから、この状態が続けば心身は疲労します。

「負」の感情である怒りも、危機回避をするために「心の問題」を知らせるサインなのです。
しかし、怒りの感情がすべてマイナスに働くとは限りません。
人間はストレスがあることによって、充実感や達成感が生まれ、生きる張り合いを感じるという一面もあります。

1-2. 怒りがわく主な要因

「怒りは願望の裏返し」と、いわれることがあります。
願望が裏切られたり、予定がくるったりすると、とっさに腹を立てることがありますよね。
これは、人間の本能に「闘って撃退するか逃げるか」という二択の反応プログラムが備わっているからだといわれます。

突然予定していたことがくるった場合には、逃げることができないので、脳が撃退モードになって怒りを感じるのです。

相手に抱いていた願望が裏切られたときも同じで、自分が傷つくのを防ごうとして防御態勢に入ります。
「堪忍袋の緒が切れた」という状態は、自分は我慢しているのに相手は我慢していないという感情が怒りにつながった状態。

予定通りに物事が運んで欲しいという感情も願望だと考えれば、怒りのおおもとには常に願望があります。
人間関係において、最初から相手に対して願望を抱かなければ、怒ることもないわけです。

1-3. 怒りは寿命を縮める

怒りで発生するマイナスのエネルギーは、心身に様々な形で悪影響を与えます。
ストレスの中でもとくに興奮状態を招く感情ですから、身体機能と相関関係が深い「怒り」。

大脳皮質には、衝動的な行動にブレーキをかける働きがあるのですが、感情が高まって興奮状態にあるときは大脳皮質で酸素が不足することがわかっています。
酸素不足がさらに怒りを増幅させることとなるので、怒りは悪循環に陥りやすいのです。

ストレス反応が起こると、交感神経が高まって自律神経のバランスが崩れることはよく知られています。

自律神経は、心拍、呼吸、血圧、体温、消化吸収といった生命維持に欠かせない身体機能をコントロールするシステム。
活動モードをつくる交感神経と、リラックスモードをつくる副交感神経が常に6:4程度の割合で働き、どちらかが優位になっています。

怒りの感情を抑えられないとリラックスなどできないことは、誰でもわかりますよね。
交感神経ばかりが高まっていると、身体機能に重大な問題を引き起こしていろいろな病気の原因となり、しいては寿命を縮めることにもつながるのです。

2. 怒りをコントロールする10の習慣

shutterstock_1517688029職場では仕事内容や人間関係で、家庭では夫婦関係や近所づきあいでと、ストレスが絶えない現代人にとって、自分なりのストレスケアを習慣化することは、もはや特別なことではなく、誰もが取組むべき課題となっています。

怒りのコントロールは、ストレスケアの一環として、アンガーマネジメントという分野が確立されるほど重視されていますが、これは、怒りがセルフコントロールできる感情であることを示しています。

ここでは、怒りのコントロールに即効性がある10のケアを紹介しましょう。

① 基本となる6秒ルール

アンガーマネジメントでは、「怒りのピークは6秒」といわれています。

脳科学では、扁桃体で怒りの感情が生まれてから、身体を防御態勢にするノルアドレナリンというホルモンが分泌され、4~6秒後にもっとも多くなるとされます。
また、大脳皮質のブレーキによって理性が介入するまでに、6秒かかるともいわれます。

怒りの感情がわいたときに、この6秒間をなんとかしてやり過せば、峠を越えて興奮状態は下降し始めるということ。
この「6秒ルール」は、アンガーマネジメントの基本として、なんとか6秒間をやり過ごす方法がいくつも提唱されているのです。

② その場を離れる

職場でも家庭でも、怒りを感じたら、とりあえずその場を離れることで感情を鎮めることができます。
アンガーマネジメントでは、「タイムアウト」と呼ばれる手法。

「感情が抑えられない」「ブチ切れる」と思ったら、なんでもいいからその場を離れます。
相手がいる場合には、トイレに行くなどと差し障りのない言葉を伝えて離れ、トイレに行くのもよし、外気に触れて深呼吸するのもよし、ただ歩くだけでも血流がよくなって脳はリフレッシュします。

気もちが落ち着いてから元の場所に戻りましょう。
アンガーマネジメントには、頭の中で「ストップ!」と唱え、思考を停止させることで怒りまかせの行動をとってしまうのを防ぐ「ストップシンキング」という手法もあります。

③ 数字を思い浮かべる

6秒をやり過ごすために、「100、97、94、91」などと頭の中で数字を逆に数えて集中するのは「カウントバック」、この怒りは自分の「怒りスケール」でいうと何点かという採点をすることで客観的になるのは「スケールテクニック」と呼ばれる手法です。

どちらも数字を思い浮かべることによって、意識を怒りから外すのが目的。
「100、99、98、97」ではなくて、3ずつ引いていくのも集中するためのテクニックです。
3ずつ引く数字を覚えてしまって集中力に欠けたら、今度は6ずつ引くというようにだんだん難しくしていけばいいでしょう。

なにせ6秒間のことですから、ほんの一瞬でも怒りの感情を忘れることができたら、もう自分に勝ったようなものなのです。

④ 深呼吸でリラックス

深呼吸はストレスケアとしても健康法としても効果が認められているものですが、アンガーマネジメントでも「呼吸リラクゼーション」と呼ばれて必ずすすめられます。

腹式呼吸で行うことと、吐くことからはじめるのがポイント。
横隔膜まわりには自律神経が集中しており、吐いたときには副交感神経、吸ったときには交感神経を刺激するといわれます。

ですから、ストレスケアに効果的な深呼吸は、まず8秒間かけてフーっと口から息を吐き切り、4秒かけて鼻からお腹に息を吸い込んだら4秒間静止。
これを10回から20回程度、気持ちが落ち着くまで繰り返します。

この腹式深呼吸は、簡単に副交感神経を刺激してリラックスできる方法ですから、ここで紹介しているほかの習慣と合わせて実践すると効果が倍増します。

⑤ コーピングマントラ

アンガーマネジメントで行われる「コーピングマントラ」とは、気持ちが落ち着く言葉を唱える手法で、「コーピング」とは「ストレスの緩和」、「マントラ」は古代インドのサンスクリット語で呪文を意味します。

いってみれば「おまじない」ですね。

怒りを感じたらとにかくその場を離れるか、内向きになれる時間をつくって「まあいいか」「大丈夫、大丈夫」「それがどうした」というように、自分を労わったり許したりする言葉を何度か心の中で自分に言い聞かせます。

自分が落ち着く決めゼリフをつくっておきましょう。
気もちが落ちついて冷静に考えられるようになったら、もう大丈夫です。

⑥ 目を閉じてプチ瞑想

自分に内向できる状況であったら、プチ瞑想もよい手段です。
1分間でいいので、今ここにいる自分に意識を集中します。
心理学では「マインドフルネス」、アンガーマネジメントでは「グラウンディング」と呼ばれる手法。

簡単なやり方は、目を閉じて深呼吸を繰り返し、呼吸に意識を集中します。
もしくは目を開けたまま、何かを手にして細かい部分までジーっと観察します。
小物でもいいでしょうし、石でも小さな植物などでもいいでしょう。
少し前に流行したハンドスピナーは、こうした成果を狙ったアイテム。

重要なのは、とっさに意識を怒りから外すことですから、何も道具もいらない、自分の呼吸に集中するのがもっとも簡単な方法だといえるでしょう。
プチ瞑想は、ぜひ習慣化してストレスケアに役立ててください。

⑦ 好きなことに没頭する

ストレスケアでは、「不快」な感情を忘れるために、「快」の感情が起こる刺激を自分に与える方法がとられます。
難しく聞こえますが、要するに心地よいことや楽しいことをして、少しの間でも没頭する手段です。

ストレスを忘れようとすれば、原因になっている負の刺激を思い出すことになるので、余計にストレスを溜めることに。
そして、ストレスを引き起こす不快な刺激は、自分の意思とは関係なく降り注ぎますから、ストレスを消したりなくしたりすることはできません。

ストレスを忘れさせるのは、自分の意思で自分に与えることができる「快」の刺激。
それも没頭するような心地よさがあるものです。

怒りの感情がわいたら、大好きな写真を見る、大好きな音楽を聴く、没頭してしまうゲームをするということなどを状況が許す範囲でやればいいのです。
スマートフォンは、疲労やストレスのもとになるマイナス面ばかりがクローズアップされますが、ストレスケアのアイテムとしても貴重な存在だといえますね。

⑧ 軽い有酸素運動

アンガーマネジメントでは、「身体リラクゼーション」という名称で、有酸素運動やストレッチで副交感神経を高める手法がとられます。
これは、怒りの感情を抑えるテクニックというよりも、怒りの感情をコントロールできる身体づくりにフォーカスしたテクニック。

有酸素運動は最近、やりすぎると体内の活性酸素を増やしてしまうことが指摘されており、ストレスケアを目的した場合には、ウォーキングやエアロビクスなどの軽い運動を10分程度行うのが効果的だといわれています。

ストレッチは、筋肉を伸ばして血流をよくすることが目的。
全身の血流を改善して脳機能を活性化すれば、いろいろな方法で実践する怒りのコントロールがスムーズに行えるようになるでしょう。

血流の改善は、怒りのコントロールに即効性もありますから、怒りがわいてきたらとりあえず歩くというのもおススメです。
タイムアウトで、とりあえずその場を離れて少し歩き、深呼吸をして気持ちが落ち着いたら戻るというのが、職場で怒りをコントロールするコツだといえますね。

⑨ 美味しいものを食べる

好きなものを食べる、美味しいものを食べるという行為も、ストレスケアにとても有効な手段。

2019年に、ゴルフ女子メジャー選手権のひとつである全英女子オープンで優勝し、一躍人気者となったプロゴルファーの渋野日向子選手は、プレーの合間に駄菓子を口にしていて話題になりました。

あれは、栄養価よりも、噛むことで精神がリラックスし、集中力が高まる効果が高いといわれています。
ガムには、自律神経を整えて脳機能を活性化させる働きがあるといわれますよね。

怒りの感情がわいたときに、美味しいと感じるものを食べる、噛むことに意識が向くものを口に入れるというのは、とても理にかなった行為なのです。

⑩ 自律神経を整える生活を意識する

自律神経は、自分で意識して「交感神経を高めよう」「副交感神経を高めよう」ということができません。
しかし、身体の活動モードを高めることによって交感神経を優位にしたり、リラックスすることによって副交感神経を優位にすることができます。

怒りのコントロールで重要なのは、副交感神経を優位にするリラックス方法。
しかし、これは一朝一夕でできることではないので、習慣化して自然にできるようにしておくことが大事です。

普段から、自律神経の働きを意識して生活し、怒りの感情がわいたら「あ、交感神経が高まっているな」と考えて、ストレスケアができるようになりましょう。

まとめ

shutterstock_563425426イライラや怒りの感情は、伝染するといわれます。
相手がイライラしていると、自分もイライラしますよね。
逆に、あなたが怒りをコントロールできたら、周囲の人たちもイライラしなくなるということです。
怒りのコントロールは、自分のためでもあり、社会のためにもなるということですね。

しかし人間ですから、抑えるばかりではなくて、ときには怒りの感情を表に出して自分を解放することも、ストレスケアでは大切な要素。
誰かを傷つけることなく怒りを発散するガス抜き方法も、身につけたい習慣ですね。

【参考資料】
・『「もう怒らない」ための本』 和田秀樹 著 アスコム 2016年
・『アンガーマネジメント実践講座-「怒り」を上手にコントロールする技術』 安藤俊介 著  PHP研究所 2018年
・『イライラしない、怒らない ADHDの人のためのアンガーマネジメント』 高山恵子 監修 講談社 2016年
・『怒りにとらわれないマインドフルネス』 藤井英雄 著  大和書房 2019年

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