事務の仕事は、要領よくこなしたいですよね?
デスクワークにパソコンが欠かせなくなった現代は、以前よりも効率化が図れている一方で、扱う情報が多くなって疲れるようになったという人が少なくありません。
求人情報には、「港区の一般事務」「大阪府の一般事務」というように、一般事務という言葉がよく使われていますが、事務の仕事を英語では「office work」または「desk work」といいます。
一般事務を日本語でわかりやすくいえば、「デスクワークを中心とするオフォスワーク」といったところでしょうか。
大学で就活をしているときには、書類の作成や管理程度しか頭に浮かばなくて、「楽そうだから」という志望動機で事務職を選んだのに、就職してみたら業務があまりにも多岐にわたるので、要領よくミスせずにこなす方法を身につけたいと思うようになる人が少なくありません。
事務の仕事は部門や部署によって業務内容が変わり、淡々とデスクワークを続けていればよいというものではなく、多くの従業員ともかかわることになるので、すべてを要領よくこなすというのはなかなか難しいことなのです。
しかし、だからこそ要領の技を極めれば、やりがいを感じられる仕事です。
事務の仕事を要領よくこなすカギとなるのは、「時短と効率化」。
ここでは「人間関係」「ストレスケア」「文書作成」「情報伝達」という4つのジャンルから、時短と効率化を実現する12の技を紹介します。
目次
1. 人間関係の技
① 「すみません」を「ありがとう」に変える
② 教え上手は喜ばれる
③ 笑顔でストレスの連鎖を断ち切る
④ 感じよく誘いを断る技
2. ストレスケアの技
⑤ 休憩時間外でも飽きたら席を立つ
⑥ 同僚に助けてもらう技
⑦ デジタル機器から離れる時間をつくる
3. 文書作成の技
⑧ 社内文書のポイント
⑨ 社外文書のポイント
⑩ 文書管理と保存の技
4. 情報伝達の技
⑪ Eメールを使いこなす技
⑫ 電話応対と郵送物管理の技
1. 人間関係の技
総務部であればすべての部署の社員を、部門内の庶務課であれば部門内の部署の社員をサポートする存在ですから、書類の作成や申請、連絡事項などで多くの社員とかかわりをもつことになります。
多くの人間と接するので、コミュニケーションの取り方には気を使いたいもの。
そうかといって、ひとりひとりと深くかかわっていたのではストレスを溜めてしまいますから、相手に与える印象を悪くせずにクールな存在を目指しましょう。
① 「すみません」を「ありがとう」に変える
種類の提出を要請したり、何かの協力をしてもらったときには、「すみません」というのではなく、「ありがとうございます」といって素直な感謝の気持ちを表しましょう。
「すみません」を多用すると減り下った謙虚さが上下関係を意識させてしまい、相手の心に負担をかけることになるので、お礼の言葉には向きません。
素直にうれしい気持ちが伝わる「ありがとう」「ありがとうございます」は、クールなコミュニケーションの基本です。
② 教え上手は喜ばれる
事務の仕事に就いて数年が経つと、ほかの部署からも頼られる存在になる人がでてきます。
総務や庶務では、社員に書面の書き方や情報の扱いをレクチャーする機会もあり、後輩社員ができれば指導担当になることもあります。
誰かに「教える」ことは、相手の時短や効率化に役立つだけでなく、それまで見えていなかった仕事の側面が見えたり、新たな効率化のポイントに気づいたりできるチャンス。
教え上手になるコツは、どうすれば相手がわかりやすくレクチャーできるのか、不満や不安の感情を起こさせずに教えるにはどうすれば効果的かというように、相手の立場を常に意識して媚びないことです。
③ 笑顔でストレスの連鎖を断ち切る
多くの社員と接するということは、多くの社員に影響を与える可能性があるということ。
相手にストレスの元となる不快な感情を抱かせないことだけは、気をつけなければいけません。
ストレスは伝染するといわれます。
不快な感情は顔の表情に表れ、そういう重い表情をしている人を見ると不快になりますよね。
そうして不快な感情は伝染していくのです。
笑顔が自律神経を整えたり、気もちに余裕を生んだり、顔の筋肉の血流を促したりすることはよく知られていますが、相手に与える効能も大きいのです。
日頃から社内で人と接するときには、自分だけでなく、周囲までリラックスさせる笑顔を心がければ、ストレスの連鎖を断ち切る存在になることができます。
これは、事務の仕事の大事な目的である、「社員のサポート」にほかなりません。
④ 感じよく誘いを断る技
多くの社員と接する事務の仕事は、いろいろな誘いを受けたり、頼まれごとをしたりする機会も多くなります。
印象を悪くしない断り方は、相手への気づかいがあれば、それほど難しいことではありません。
ここで、断りつつも印象をアップするのが「技」です。
たとえば、日曜日に営業部が主催する野外イベントに誘われたとしましょう。
「行けたら行きます」は、もっとも相手に対する配慮に欠けた返答です。
気乗りがしなくて断るときには、真っ先に「行かない」ことを伝えるべき。
それから、誘ってくれたことへの感謝やイベントの成功を願う気持ちを伝え、さらに大事なのが陰ながらフォローすること。
メールやSNSでイベントの参加者を増やす手伝いをする、週明けにはアフターフォローの言葉をかける、といった心配りがあなたの印象を高めます。
2. ストレスケアの技
事務の仕事にパソコンが導入されてから、時短や効率化が実現したことは間違いありませんが、デジタル機器を扱うことによるストレスが生まれました。
現代の事務仕事におけるストレスケアのポイントは、血流改善と自律神経を整えることです。
⑤ 休憩時間外でも飽きたら席を立つ
パソコン仕事をしていると、なんとなく飽きてつまらなくなるときがありますよね。
これは、脳が疲労を知らせる最初のサインです。
「疲れた」と感じる疲労感は、脳内の自律神経中枢域に活性酸素が増えることによって生じると考えられています。
活性酸素が増えだすと、まず「飽きる」という感情を生み出して、「このまま同じことを続ければ心と身体に悪影響が出ますよ」ということを知らせているのです。
ですから、作業に飽きたら休憩時間ではなくても席を立って少し歩き、どこかでストレッチでもしてきましょう。
下半身の筋肉を動かすことは、全身の血流改善に大きな効果があります。押し上げるポンプの役割を果たすので、首、肩、肩甲骨まわりをほぐすこととともに、脳への血流を改善する効果が大きいのです。
⑥ 同僚に助けてもらう技
仕事に対する責任感から、ついつい仕事を抱え込んでしまい、大きなストレスを溜めてしまうことがありませんか?
同僚に頼めればよいのですが、迷惑をかけたくない、借りをつくりたくない、断られるのが怖い、よい頼み方がみつからない、などといった理由で抱えこむことになってしまう人がいます。
予定を詰めすぎることに根本的な原因があるので、自分の希望や展望よりも現実的な作業時間を重視して、余裕がもてるくらいの予定を組むべき。
しかし、予定を見直してもヘルプを必要とするときがありますよね。
そういうときのために、相手に気持ちよく仕事を引き受けてもらう頼み方の4つのポイントを覚えておきましょう。
・「あなただから頼みたい」という理由をしっかりと伝える
・一方的に頼まず、相手の都合を最優先させる
・頼む内容を具体的、かつ明確に伝える
・上司の了解を得ていることを伝える
⑦ デジタル機器から離れる時間をつくる
お昼の休憩時間はもちろん、帰宅してからも寝る前には、パソコンやスマートフォンから離れる時間をつくりましょう。
視力の低下を防ぐ意味もありますが、LEDのモニターを見続けると強力なストレスを生み出すからです。
心拍、呼吸、血圧、消化吸収といった生命維持に欠かせない機能をコントロールしている自律神経は、活動モードをつくる交感神経と、リラックスモードをつくる副交感神経が、常に6:4程度の割合で働いています。
昼間、仕事をしている間は交感神経が優位になっていて、目は遠くのものに焦点が合いやすくなっています。
これは、かつて人間が狩りをして生きていた時代の名残で、遠くの獲物や、近づいてくる危険なものに対処するため。
一方、副交感神経が優位になる夜は、洞穴の中で家族の顔を見たり、食べ物を見たりしたので、近くのものに焦点が合いやすくなっています。
パソコン仕事をしているときは、交感神経が優位なのに、近くのものを見続けることになるので、脳の自律神経中枢域で混乱が起こり、これが活性酸素を増やす原因になるのです。
3. 文書作成の技
事務の仕事で扱う書類は、大きく分けて社内文書と社外文書に分かれます。
多くの会社では、それぞれの文書ごとにつくられているフォーマットに従って作成することになりますから、作成方法を覚えるのは難しくありません。
しかし、どちらにも個人情報や機密事項が書かれる重要書類が存在しますから、卒なくこなすためには、扱いに配慮が必要とされます。
⑧ 社内文書のポイント
社内文書には、経営陣から各部署に与える指示文書、全社員に知らせるお知らせ、社員が提出するいろいろな届け出文書などがあり、社外文書のような挨拶は省いて、情報が早く正確に伝わることを重視します。
個人情報を扱うものは管理に注意が必要ですが、中でもマイナンバーの扱いは、法律で取得から廃棄に至るまで定められているので、漏洩がないように気をつけなければいけません。
マイナンバーを取り扱う際のポイントは、「社員のマイナンバーを事務的に使用する際には、利用目的を通知して、番号確認と身元確認を所定の証明書類で行うこと」「マイナンバーの利用目的は、社会保険や税金などの行政手続きに限定されているので、本人の同意があろうともほかの目的で利用しないこと」「マイナンバーの保管は、必要とされるときだけに限定し、不要になったら速やかに廃棄すること」「漏洩や減失を防ぐために安全管理措置を講じること」という4点です。
⑨ 社外文書のポイント
社外文書が社内文書と違う最大のポイントは、対外的なものなので礼儀をふまえるということ。
一般的な構成では、主文の前に頭語、前文が置かれ、末尾にはそれに対応した末文、結語が加わります。
社外文書の作成ミスは、会社に損害を与える可能性もあるので、名称や数値などは入念な確認が必要とされます。
さらに社外文書のポイントとなるのが印章の扱い。
「印章」とはハンコそのもののこと、「印影」とはハンコに朱肉をつけて押印したマークのこと、「印鑑」とは公官庁などに届け出した印影のことを指し、押印のある文書は法律上、本人の意思に基づくものとされるので、悪用されないように厳重な管理体制が必要です。
総務では、法務局に届け出している「代表者印」、金融機関に届け出している「銀行印」、請求書や領収書などに押印する「社印(角印)」など、重要な印章を管理します。
押印は、「消印」「捨印」「訂正印」「割印」「契印」といった使い方をマスターして、どの書類には何が必要か明確に判断する技を身につけましょう。
⑩ 文書管理と保存の技
事務の仕事で扱う文書には、法律で保存期間が定められているものがあります。
保存期間は、その書類が関連する法律によって決められているので、一定ではありませんから、会社法関連のものは10年、税金関係の書類は7年、労働基準法関連の多くは3年というような基本はマスターしておきたいもの。
文書保存の技は、日頃から使用するもの、普段は使用しなくても行政の調査が入ったときに必要となるもの、法定の保存期限までほとんど使用しないものに分類することです。
また、あまり使用することなく長期保存するものは、保存期限が同じ年のものをまとめておくと廃棄するときに作業が楽だという小技もあります。
4. 情報伝達の技
事務の大事な仕事のひとつに、電話応対やメール送受信といった情報伝達があります。
情報の伝達は「正確に、迅速に」が基本。
そして常に注意しなければいけないのが、漏洩の防止です。
⑪ Eメールを使いこなす技
今や、誰もが、仕事でもプライベートでも利用するEメール。
電話や手紙とは、また違う気配りが必要な情報伝達ツールです。
ここで紹介する技は、TO、CC、BCCの使い分けです。
「TO」は、宛先という意味で、カンマで区切って複数の相手に同じメールを送信できますが、受信した相手にはすべてのアドレスが表示されます。
「CC(カーボンコピー)」や「BCC(ブラインドカーボンコピー)」を使う目的は、情報の共有です。
「CC」は、「TOの人にこのメールを送信したのであなたも確認してください」という意味で使います。
受信者には、「TO」「CC」の全員のアドレスが表示され、「TO」の宛先がメインの送信先になりますから、「CC」の人は基本的に返信不要です。
「BCC」の相手には「TO」の人と同じメールが送信されて情報共有でき、返信不要なのは「CC」と同じですが、BCCの人のアドレスは他人に表示されないので、お知らせを一度に多くの人に送信する場合などに使われます。
「TO」のアドレスはBCCの人全員に表示されますから、送信元のアドレスを指定するのが技。
「CC」や「BCC」は、こうした機能を把握せずに使っている人が少なくありません。
便利な機能ですが、受信者には迷惑なこともあるので注意が必要。
「CC」を使う場合は、本文に「CCで○○さんにも送信します」と明記するのが、トラブル回避の技です
⑫ 電話応対と郵送物管理の技
電話応対は、受けた側が社名を名乗り、相手が名乗った場合は要件を聞き、名乗らなかったら氏名と社名、要件を聞いて、担当者につなぐのが基本。
担当者が離席している場合は、伝言を聞き、電話を折り返す必要があるかどうかを確認後、最後に自分の名前を知らせます。
伝言を連絡する際のポイントを3つ。
・伝言を聞くときはいわれたことを書くだけでなく、内容が把握できるまで確認する
・急ぎの伝言は、メモを残すだけでなく、離籍者が戻ったら声をかける
・内容が長いものや複雑なものは、伝言を残すと同時に、相手からも再度の電話やメールで確認してもらうようにお願いする
また、郵送物を受け取って担当者が離席しているときは、デスクの上に置いておくのではなく、その部署の社員に渡すか、メモを残して持ち帰り管理するのが、紛失や情報の漏洩を防ぐポイントです。
郵便や宅配便などは、発送と受け取りの記録を必ず残しましょう。
まとめ
事務の仕事に就くには、特別の資格が必要なわけではありません。
しかし、業務内容と部署によっては有利になる国家資格や民間資格があるので、スキルアップしたい人は検討してみてはいかがでしょうか。
事務職で役立つ代表的な資格には、「TOEIC」「簿記」「秘書検定」「個人情報保護士」「マイナンバー実務検定」「社会保険労務士」「文書情報管理士」「衛生管理者」などがあります。
ここでは紹介しませんでしたが、デスク周りの機能性向上も、事務の仕事にとっては大事な要素。
事務用品マニアまではいかなくても、ファイラーや文房具などの事務用品を見直してみると、意外と貴重な発見があるかもしれませんよ。
さらに、ファイリングひとつとても、リアルな書類をファイリングするのと、デジタル情報に変換してパソコン内にファイリングするのと、この案件はどちらが適しているのかといった「デジアナ」の使い分けも、現代における事務仕事の大きな効率アップポイントです。
参考資料
・『図解 自分をアップデートする 仕事のコツ大全』 金沢悦子 著 講談社 2019年
・『事務ミスがない人の 図解整理術(書類・メモ・データ)』 オダギリ展子 著 三笠書房 2018年
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