4つのケアで行う職場のメンタルヘルスとは?-心の健康を保つ

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shutterstock_786114658メンタルヘルスとは、「心の健康」。

身体に健康と不健康があるのと同じように、心にも健康と不健康があります。

WHO(世界保健機関)は、「健康とは、身体的、精神的ならびに社会的に完全に良好な状態にあることであり、単に病気や虚弱でないことにとどまるものではない」と、健康を定義しています。

この定義から考えると、心の健康とは、単に心に病気を抱えていないということではなく、個人が社会で良好な状態にあることを意味しますよね。

職場のメンタルヘルスが重視されるようになったのは、心が良好な状態を維持できなくなる要因が多い場所であるから。
仕事や人間関係でストレス過多になって、心の健康を害する人が多いからです。

最近、職場の問題としてハラスメントがよく取りざたされますが、ハラスメントによる心の問題はまだ目に見えやすいという特徴があります。
しかし、内的要因による心の問題は目に見えにくいので、メンタルヘルス対策の難しさがあるのです。

ここでは、まず、メンタルヘルスとは何かという基礎知識を解説してから、職場のメンタルヘルスに必要とされる4つのケアを紹介します。

目次

1. メンタルヘルスの基礎知識
1-1. メンタルヘルスに影響を与える要因
1-1-1. 影響し合うパーソナリティとキャラクター
1-1-2. 発達課題
1-1-3. 生活の在り方と偶然の出来事
1-2. メンタルヘルスの問題が現れる3つのパターン
1-2-1. 内面化
1-2-2. 身体化
1-2-3. 行動化
1-3. メンタルへルスを脅かすストレス
1-3-1. 心と身体に現れるストレス反応
1-3-2. ストレス反応の3つの段階
1-3-3. 4種類のストレッサー

2. メンタルヘルスの指針にある4つのケア
2-1. セルフケア
2-2. ラインケア
2-3. 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
2-4. 事業場外資源によるケア

まとめ

1. メンタルヘルスの基礎知識

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以前は、「精神衛生」という言葉がよく使われていましたが、最近はあまり聞かなくなりましたよね。
「メンタルヘルス」は、「精神衛生」に代わって使われるようになった言葉です。

以前のいい方にすれば「精神衛生上、好ましくないこと」、現代風にいえば「メンタルヘルスを脅かす状況」が増えた事によって、職場における「心の健康」が重視されるようになりました。

なぜ現代社会は、「ストレス社会」と呼ばれるようになったのか?
メンタルヘルスが脅かされるしくみはどうなっているのか?
まずは、メンタルヘルスの概要を理解して、そうした疑問を解消していきましょう。

1-1. メンタルヘルスに影響を与える要因

その人間特有の「心」は、いろいろなことに影響を受けながら形成されます。

メンタルヘルスを支えている大きなものは、物事を肯定的、楽観的にとらえるか、否定的、悲観的にとらえるかという「認知」、様々な感情を抑えたり適切な形で表したりする「感情統制力」、新しいことに興味をもち、物事に積極的に取り組む「積極的行動力」という3つの心理だといわれます。

また、「他人との関係」や、自分を認めて受け入れられているかどうかという「自分との関係」も、メンタルヘルスを左右します。

そうした心理以外に、メンタルヘルスに影響を与える基本的な要因として挙げられるのは、次の3点です。

1-1-1. 影響し合うパーソナリティとキャラクター

心理学では、「人格(パーソナリティ)」と「性格(キャラクター)」を分けて考えます。
パーソナリティは生まれてから成長する中で形成された性質で、その人特有の心の背景にあるもの、キャラクターは先天的にもっている気質や性質。
そして、その2つは相互作用があると考えられています。

生まれつきの性質と、生まれてからの対人関係は、メンタルヘルスが良好かどうかということに大きくかかわっており、影響し合うものです。
どちらをとっても、誰かと同じ人間はいませんから、その人特有の心をもつことになるのです。

1-1-2. 発達課題

人間が成長する過程は、幼児期、児童期、思春期、青年期、成人期、老年期に分けられ、それぞれの過程には、成長を遂げるための「発達課題」と呼ばれる課題があります。

「言葉を覚える課題」「同年期の子どもと遊べるようになる課題」「親から心理的に独立するという課題」といったもので、こうした課題に取り組んで達成することによって、人間は成長していくのです。

いつどのように達成するかという個人差はあるものの、発達課題はどの人間にも共通。
この発達課題をうまく達成できるかどうかは、メンタルヘルスに大きな影響を与えます。

1-1-3. 生活の在り方と偶然の出来事

その人間がどのような環境や状況で生まれ育つかという生活の在り方は、メンタルヘルスに影響を与えます。
都会で生まれ育った人間と山間地の農村で生まれ育った人間、経済的に豊かで平和な国で生まれ育った人間と、内戦が起こっている貧しい地域で生まれ育った人間とでは、パーソナリティもキャラクターも違ってきますよね。

こうした地域性、経済的情況、文化的情況などは、その人間の心の形成に大きな影響を与えるのです。

また、災害や事故といった偶然の出来事もメンタルヘルスに影響します。
災害や事故の経験がトラウマとなって、心にダメージが残るケースがありますよね。
どのようなパーソナリティーをもっているかでダメージの大きさが変わり、「打たれ強い人格」をもっている人などは、影響を受けにくいといえます。

1-2. メンタルヘルスの問題が現れる3つのパターン

メンタルヘルスが脅かされると、何らかの心理的問題が生じます。
その現れ方は3種類あり、人によっては複数のものが重なって現れる場合もあります。

1-2-1. 内面化

不安になったり、気持ちが落ち込んだりして、気持ちや気分、感情面に問題が現れることを「内面化」と呼びます。

この場合、本人は問題の背景や原因がわからなくても、メンタルに何か問題があるという問題意識をもっています。
自分が問題を抱えていることがわかっているので、なんとかしようと考えやすいのが特徴。

重くなると、強い不安や恐怖感、抑うつ症状といった精神症状が現れます。

1-2-2. 身体化

心理的要因によって、身体に症状が現れるケース。
頭痛、発熱、吐き気、各部位の痛みなどがあり、この場合はメンタルに原因があると自覚できないことも少なくありません。

症状があるので問題意識はあるのですが、心理的問題ではなくて、なにかしらの身体的病気と考えやすいのです。
そのために、内科などの医師から診察を受けても、「どこも悪くない」といわれることが多く、問題を放置してメンタルヘルスを悪化させてしまうことがあります。

1-2-3. 行動化

周囲を困らせたり、自分自身を傷つけたりするような、通常は好ましくないとされる行動に現れるのが「行動化」。
暴力行為、自傷行為、不適切な性行動などが代表的なもので、不登校や引きこもりも行動面だけをとらえれば、行動化の一種と考えらます。

行動化に問題が現れる場合は、背景にメンタルの問題があるということを本人が自覚しにくく、自分が問題行動をしているという自覚すらなかったり、希薄だったりするのが特徴です。

1-3. メンタルへルスを脅かすストレス

「ストレス」は、一般的に精神的な疲れを示す言葉として使われていますよね。
もともと「ストレス」という言葉は工業用語で、ある材料に圧力をかけたとき、その力に対して反発する力を指しています。

その「ストレス」という言葉を医学や心理学にもち込んだのは、カナダ人の生理学者ハンス・セリエでした。
1946年、セリエは、ある環境が特定の症状を生み出すのではなく、様々な外部環境からの刺激によって特定の生体反応が起こることを見出し、「汎適応性症候群」と名づけたのです。

セリエは、その生体反応を「ストレス反応」と呼び、ストレスの原因となる外的刺激を「ストレッサー」と呼びました。
その後、生理学だけでなく、医学、脳科学、心理学などの分野でも、ストレスの研究が行われてきたのです。

ここで、メンタルヘルスを脅かすストレスとは、どのようなものか、簡単に解説しましょう。

1-3-1. 心と身体に現れるストレス反応

人間が外部から受ける刺激は、「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」という五感からインプットされます。
様々な刺激は、電気信号として神経細胞を伝わり、脳へと伝達されると記憶情報と照らし合わせて「快か不快か」「好きか嫌いか」といった判断が行われ、感情が生まれます。

ここで「不快」「嫌い」「辛い」「痛い」「怖い」といったマイナスの感情が心に現れると、その危機から脱するために、脳が戦闘態勢をとって自分を守ろうとするのがストレス反応の正体。
自律神経系の交感神経が優位になって、心拍が増え、血圧が上昇し、瞳孔が開き、血管が収縮して筋肉を緊張状態にし、危機に立ち向かったり、逃走したりするのです。

こうした状態が慢性化すると、身体にかかる負荷が大きくなってストレス性疾患へと発展し、身体面、心理面、行動面で変化が現れます。

1-3-2. ストレス反応の3つの段階

セリエは、ストレッサーを持続的に受けたときに起こる生体反応を、時間の経過によって3段階に分けました。

第1段階の「警告反応期」は、ストレッサーに対してショックを受ける「ショック期」と、そのストレスに対応する「反ショック期」に分けられ、当初はショックのために身体の抵抗力は低下しますが、すぐに抵抗力は高まります。

第2段階の「抵抗期」は、安定的な抵抗力を発揮して、いろいろな方法でストレッサーの解消が図られます。

ストレスに抵抗するためにはエネルギーが必要とされ、エネルギーが不足すると、次第にストレス耐性が落ちてきます。
これが第3段階の「疲憊(ひはい)期」で、ストレスに抵抗するための緊張を維持できなくなると生体が破綻していき、最終的には死亡してしまいます。

1-3-3. 4種類のストレッサー

ストレスを引き起こすストレッサーは、4つに分類されます。

① 気温や室温、照明の明るさや騒音といった「物理的ストレッサー」
② 細菌やウイルス、睡眠不足、空腹といった「生物学的ストレッサー」
③ 有毒な物質や排気ガスといった「化学的ストレッサー」
④ 人間関係や様々な人生における出来事などの「心理社会学的ストレッサー」

また、ストレスを受ける時間の長さによって、「イベント型ストレッサー」と、「慢性的ストレッサー」に分類されることもあります。

劣等感、将来に対する不安、トラウマなどの「内的ストレッサー」と、自分をとりまく環境や課題など自分の外にある「外的ストレッサー」に分類することもありますが、多くの場合は、これらを明確に区別することは難しいとされています。

2. メンタルヘルスの指針にある4つのケア

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厚生労働省が2012年に行った調査では、メンタルヘルスの不調によって連続1カ月以上休業、または退職した労働者がいる事業所は、従業員数100~299人の事業所で39.2%、500~999人の事業所で77%、1000人以上の事業所では92.2%という割合でした。

この年、メンタルヘルス不調者が最近3年間で「増加傾向」「横ばい」と回答した企業の割合は90%を超えたのです。

こうした状況から企業における心の健康問題対策が急務とされ、厚生労働省は2006年に発表した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を2015年に改正しました。
通称「メンタルヘルスの指針」と呼ばれるこの対策では、4つのメンタルヘルスケアを継続的かつ計画的に行うことが重要であるとしています。

2-1. セルフケア

「セルフケア」は、労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らストレスの予防や軽減を行うことで、もっとも基本的なメンタルヘルスケアです。

ストレッサーとなるマイナスの刺激は、自分の意思とは関係なく降り注ぐものですから、生きている以上なくすことはできません。
社会で働く以上、ストレスは避けられないものと考えて、どのようにしてうまく付き合っていくかを知ることが大事なのです。

人間にはストレス対処のメカニズムとして、「跳ね返す(欲求不満耐性)」「逃がす(自我防衛機制)」「抜く(カタルシス)」という3つが備わっているといわれます。

「跳ね返す」は、つらい状況を我慢しながらストレスを解消しようと努力すること。
これは、限界があり、いくら努力をしても解決できない問題がたくさんあります。
ストレスを忘れようと努力しても、原因となっているストレッサーを思い出すことになるので、余計にストレスを高めることになってしまいます。

「逃がす」とは、ものの見方や考え方を変えて、客観的に事態を分析したり、目標を再設定するメカニズム。
発想の転換をできるかどうかが問題ですね。

「抜く」は、いわゆるストレス発散のことで、自分に「快」「好き」「楽しい」といった感情が起こるプラスの刺激を与えること。
心地よい事、楽しい事、好きな事をする、美味しいものを食べる、感動的なものを見るというように、プラスの刺激は自分で積極的に増やすことができますから、これがもっとも簡単で効果的なストレスケアなのです。

2-2. ラインケア

「ラインケア」は、日常的に労働者と接する管理監督者が、職場におけるストレス要因を把握し、その改善を図ったり、心の健康にかんして労働者に対する相談対応を行うことです。

例えば残業が多くて心の健康を害しそうな労働者に対し、「メンタルヘルスのために残業はやめて帰りなさい」といっても、仕事のやり方が変わったり全体の仕事量が変わったりしなければ、帰ることができませんよね。

こうした場合に、過重労働を改善する立場にある管理監督者が、具体的な方策を講じたり、相談にのったりするのがラインケアです。

2-3. 事業場内産業保健スタッフ等によるケア

職場において、産業保健スタッフと呼ばれる産業医や保険医、カウンセラー、衛生管理者らの専門職が、労働者の健康や安全のために企業がすべきことを提言したり、企画立案したりします。

また、セルフケアとラインケアを効果的に実施するための、心の健康づくりにかんする専門的な知識を適用したり、相談にのったりします。

2-4. 事業場外資源によるケア

外部の精神科病院やクリニック、カウンセリングルーム、公的機関である精神保健福祉センターや保健所などの支援を受けるケアです。

事業場にメンタルヘルスの専門家がいない場合には、こうした事業場外資源を活用することが重要であり、専門家が存在する事業場でも、労働者が相談内容を事業者に知られたくない場合などには、事業場外資源を活用することが効果的です。

まとめ

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メンタルヘルスを脅かすストレスは、必ずしも悪者ではありません。
適度なストレスがあることによって、それを乗り越えたときの達成感や充実感が生まれます。
こうした達成感や充実感が人間を成長させたり、生きがいをつくったりもするのです。

2012年にはアメリカで、ストレスが心や体に悪い影響を与えると思っている人は、そう思っていない人よりも43%も死亡率が高いという研究結果が発表されています。
ストレス対処のメカニズムにあった「逃がす」でもわかるように、同じ刺激を受けても、どうとらえるかでメンタルにプラスにもマイナスにもなるということですね。

やはり、ストレスのしくみを理解してセルフケアを充実させることが、メンタルヘルスの極みといえそうですね。

【参考資料】
・『3訂版 精神科産業医が明かす 職場のメンタルヘルスの正しい知識』 吉野聡、梅田忠敬 著  日本法令 2018年
・『メンタルヘルスの道案内』 徳田完二、竹内健児、吉沅洪 著  北大路書房 2018年

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