8つの疑問から理解するインボイス制度-早めの準備で安心対応

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shutterstock_2842038562019年10月から、消費税増税とともに、軽減税率が適用されるようになりました。
スーパーなどで買い物をすると、レシートには10%税率と8%税率の消費税額がそれぞれ表示されていますよね。

この軽減税率は、対応できるレジシステムの導入や、対応する商品の線引きの複雑さ、同じ商品でも買い方で税率が変わることなど、様々な問題が指摘される中でスタートしました。

消費者の立場で考えると、増税が行われても出費を抑えることできるメリットがあるのですが、事業者の立場になると、「なぜこれほどまでに面倒で、複雑な制度を採用したのか?」と思っている人がとても多い制度ですよね。

そして、さらに事業者の頭を悩ませているのが「インボイス制度」なのです。
インボイス制度は、軽減税率がスタートした2019年10月1日から4年後となる2023年10月1日から導入されることが決定しており、正式名称を「適格請求書等保存方式」と呼ばれます。

この名称だけで、もうわかりにくいというイメージを与えてしまいます。
そもそも税務処理には、わかりにくい言葉やシステムが多いですよね。

いくら軽減税率が問題を抱える制度であっても、すでに採用されており、インボイス制度も導入が決まってしまっているのですから、日本で生活する以上は理解しておかなければいけません。
ここでは、インボイス制度の導入で、誰にとって何が変わるのか、わかりやすく解説します。
8つの疑問を解消するスタイルでインボイス制度の知識を身につけ、しっかりと準備をして対応してください。

目次

8つの疑問から理解するインボイス制度
1. 「インボイス」の意味とは?
2. 日本版インボイス制度とは?
3. 軽減税率を採用したのはなぜか?
4. 消費税はどうやって納められるのか?
5. 適格請求書とはどのようなものか?
6. 適格請求書発行事業者になるためには?
7. 免税事業者が不利だといわれる理由は?
8. フリーランスや個人事業主の注意ポイントは?
まとめ

1. 「インボイス」の意味とは?

shutterstock_762123613「インボイス」とは英語で「請求書」を意味します。

一般的には、貿易で使用される船積み書類のひとつである「送り状」のことで、内容は、売主が買主に対して発行する取引貨物の明細書および計算書です。
売買、船積み、保険に関する契約事項なども明記しなければいけません。

貨物の通関手続きに必要な書類なので、日本から海外へ商品を発送する際にも、必ずインボイスを発行しなければいけません。

しかし、この記事で扱う「インボイス」とは、後発的にヨーロッパで普及した、「個別の品目ごとに税率や税額を明記する税額表」のことです。

2. 日本版インボイス制度とは?

shutterstock_13762498282023年10月から導入されるのは、このインボイスを採用した「日本版インボイス制度」。
この記事では、「日本版インボイス制度」がどのようなものかということを解説します。

商品やサービスを購入したときに消費税を支払いますよね。
給与や賃金、土地、有価証券、切手や印紙、保険料など国税庁が非課税取引に指定しているもの以外は、すべて消費税がかかります。

消費者が支払った消費税は、事業者が預かる形で国に納税されるのですが、事業者も仕入れや経費で消費税を負担していますよね。
事業者が預かった消費税から、仕入れなどで負担した消費税を差し引いた額が納税額。
この「仕入れ税額控除」が、日本版インボイス制度の最重要ポイントなのです。

今までのように消費税が一律であれば、納税額を算出するのは、単純な計算で済みます。
しかし、複数の税率が採用された今、仕入れにかかった税率が8%か10%なのか、また販売で預かった税率が8%か10%かで、納税額が変わってしまいます。

そこで、正確な税務処理を行うために、品目ごとに価格と税率を記載した書類の作成と保存が必要となったのです。
これが「適格請求書」と呼ばれるもので、事業者は仕入れ先から発行されたすべての適格請求書を保存することで、仕入れ税額控除が受けられるようになるのです。

3. 軽減税率を採用したのはなぜか?

shutterstock_1500760397インボイス制度を導入する原因となった「消費税の軽減税率」は、繁雑で混乱も予想されたのに、なぜ大きなリスクを負ってまで採用に至ったのでしょうか。

税制のもっとも重要な原則として、所得の多い人からは多く負担を求めるという「税負担の公平性」があります。
ところが、生活必需品も含めた幅広い商品やサービスに単一の税率を課す日本の消費税は、所得の低い人ほど税負担が重くなるという問題を抱えていました。

そこで、ヨーロッパの付加価値税を手本として、食料品を中心とする生活必需品に低い税率を適用する軽減税率が採用されるに至ったのです。
しかし、軽減税率制度を導入している諸外国では、いろいろなデメリットも報告されていました。

日本でも、導入前から指摘されていた3つの問題点が解消されていません。
① 外食を対象から外したために、ラーメンや牛丼などの庶民的な食べ物を店で食べても標準税率であり、裕福な人しか買わない高級牛肉などを購入すれば軽減税率が適用される。イートインコーナーがあるコンビニやスーパーなどでは従業員の対応が難しい

② 軽減税率を導入したために事務手続きが煩雑になり、値札やレジなどで事業者の出費がかさみ、結果的に消費者の負担が増える

③ 低所得者にも必需品といえる公共料金は標準税率で、政治団体や一部の業界がかかわる新聞を軽減税率にしたことで、社会的不公平感が拡大している

軽減税率の対象となるものは、次の2点とされています。
・酒類及び外食サービスを除く飲食料品の譲渡
・定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡

4. 消費税はどうやって納められるのか?

shutterstock_534327391消費者が負担した消費税が、預かった事業者によって国に納税されるしくみは、以下のようになっています。
ここは、肝心なところなので、国税庁のサイトから引用しましょう。

その課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)の基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務者(課税事業者)となります。基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間においては課税事業者となります。
特定期間とは、個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間のことをいいます。

個人事業者であれば、前々年の1月から12月までの課税売上高が1000万円を超えると課税事業者となり、消費税を納めなければいけないということ。
確定申告の際に消費税申告書に記入して納入額が決まります。

法人の場合、決算月に応じた前々年の事業年度が1000万円を超えると、課税事業者となります。

5. 適格請求書とはどのようなものか?

shutterstock_563684299現行の消費税制がスタートした2019年10月1日からは、「区分記載請求書」という形態で、「取引が軽減税率の対象である場合はその旨」「取引金額を税率ごとに合計した額」などが請求書に記載されています。

2023年10月1日から導入されるインボイス制度で必要となる「適格請求書」には、次の6項目の記載が義務付けられています。

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引の年月日
③ 取引の内容(取引が軽減税率の対象である場合には、その旨)
④ 取引金額(税抜価格または税込価格)を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤ 消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

この一覧を見ると、現行で使用している通常の請求書と大きく変わるのは①の「登録番号の記載」と、④の「適用税率や消費税額等の記載」ということですから、適格請求書が難しいものではないことがわかりますよね。

6. 適格請求書発行事業者になるためには?

shutterstock_172072637適格請求書に記載しなければいけない「登録番号」とはなんでしょう?

適格請求書を発行するためには、「適格請求書発行事業者」として国税庁に登録する必要があり、登録を受けた事業者に割り当てられるのが登録番号。

適格請求書発行事業者となるためには、課税事業者が所轄の税務署長に対して申請書を提出しなければならず、この登録は2021年10月1日に開始されます。
インボイス制度が導入される2023年10月1日に登録を間に合わせるには、6カ月前となる2023年3月31日が申請書の提出期限となります。

登録事業者には、取引先の求めに応じて適格請求書を発行することと、発行した適格請求書の保存が義務づけられます。

登録したくない事業者は登録せずに課税事業者でいることもできますが、税率ごとの金額がわかる区分記載請求書は発行しなければいけません。
しかし、それでは取引先が仕入税額控除を受けることができなくなりますから、取引をする上で不利になるというデメリットが生じるでしょう。

登録事業者は、基準期間の課税売上が1000万円以下になった場合でも免税事業者になることはなく、登録を取消す場合には所轄税務署長に届出書を提出する必要があります。

7. 免税事業者が不利だといわれる理由は?

shutterstock_323698859インボイス制度の導入で、大きな問題となっているのは、年間課税売上が1000万円以下である免税事業者の立場です。
インボイス(適格請求書)は、適格請求書発行事業者でなければ発行できないのですから、仕事を免税事業者に発注した場合には、その仕事分の仕入税額控除を受けることができません。

このために、免税事業者からの仕入れ(免税事業者への発注)を控える事業者が増えることが予想されるのです。
とくに問題視されているのが、職人や一人親方の多くが免税事業者である建設業界。
発注元は仕入税額控除を受けられないことを理由に、課税業者への発注に替える、その分の値下げを要求するといったことが考えられます。

政府は、この混乱が経済に及ぼす影響を抑えるために、3段階の経過措置を設けています。

① 2023年10月1日から2026年9月30日までは、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについても、80%について仕入額控除の対象とする

② 2023年10月1日から2029年9月30日までは、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについても、50%について仕入額控除の対象とする

③ 2029年10月1日からは、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについて、仕入額控除を完全廃止

免税事業者は、課税売上が1000万円を超えたら必然的に課税事業者となりますが、売上が1000万円以下でも「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば課税事業者になることが可能。
課税事業者になれば、適格請求書発行事業者に登録することができます。

免税事業者は3年くらいの間に、繁雑な税務処理を行って消費税を納税する課税事業者になるか、免税事業者のままで仕事を続けるか選択しなさいということですね。

8. フリーランスや個人事業主の注意ポイントは?

shutterstock_154519763フリーランスや個人事業主は、2021年の課税売上が1000万円を超えていれば課税事業者となります。
よく考えなければいけないのは、免税事業者の対応。
課税事業者を選択して適格請求書発行事業者となったときから、納税の義務が生じます。

課税事業者になった方がよい場合と、免税事業者のまま仕事を続けた方がよい場合を考えてみましょう。

① 課税事業者になった方がよいケース
 ・2~3年後には課税売上が1000万円を超えそうで、少し早めになっても適格請求書発行事業者になっておいた方が仕事への影響が少ない
 ・取引先が課税事業者で、適格請求書発行事業者になることを求めている
 ・課税事業者になった方が、信用や売上を高めることができる
 ・売上と納税額のバランスを考えて、課税事業者としてやっていける見通しが立つ

② 免税事業者のまま仕事を続けた方がよいケース
 ・その事業者の個性が求められて仕事が発生しているので、適格請求書を発行できなくても仕事がほかに流れることは考えられない
 ・主な取引先(発注元)が免税事業者なので、仕入税額控除を考えなくてよい
 ・主な取引先(顧客)が一般消費者なので、仕入税額控除を考えなくてよい

職人やクリエイターには、「その人だから発注する」という仕事がありますよね。
自分の仕事がこのケースに当てはまる人で、適性請求書発行事業者への登録や値引きを求められることがないという場合には、免税事業者のままでも問題ないでしょう。

上のような免税事業者(人)から主に仕事を受けている場合には、適格請求書の発行を求められることはありませんから、これも免税事業者のままで問題ありませんね。

年間課税売上が1000万円以下である自営業の商店などで、取引先が一般消費者である場合には、消費税を預かっていても免税事業者のままで問題ありません。
課税事業者のレストランなどに商品を納入している場合には、適格請求書の発行を求められる、値引きを要求されるといったケースも考えられます。

店舗の修繕や設備投資で多額の消費税を支払った場合でも、免税事業者では消費税還付が受けられないことも覚えておきましょう。

まとめ

shutterstock_514576984フリーランスや個人事業主にとって、インボイス制度は歓迎されない要素が多いのは事実です。
現在も、いろいろな団体が政府に対して見直しを求める運動を行っています。

そのひとつ、日本税理士会連合会では中小企業に負担の少ない制度を求め、すべての事業者を課税事業者として取り扱い、課税売上高が一定の額に達しない事業者は申告不要とする制度を提案しています。

2023年10月の導入までには、まだ何らかの制度変更が行われる可能性もありますから、動向に注視する必要がありますね。

【参考資料】
・『消費税率引き上げ・軽減税率・インボイス 業種別対応ハンドブック』 熊王征秀 編  日本法令 2018年
・『平成30年度改正対応 消費税 軽減税率・インボイス導入の完全対応ガイド』 芹澤光春ほか 著  ぎょうせい 2018年
・日本税理士会連合会サイト

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