不安を理解する4つのポイント-恐怖や強迫観念がもたらす感情

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「不安遺伝子」という言葉を見たり聞いたりしたことがありますか?
日本人は不安遺伝子が多くて、不安を感じやすいという説があります。

ほかの民族よりも不安の種が多いということではなくて、近年の研究では精神の安定に深く関与するセロトニンという神経伝達物質の分泌量を決める遺伝子があり、日本人の遺伝子にはこの分泌が少ない型が多いとされています。
だから、積極的に少し楽観するくらいの生き方が、日本人には必要だというのです。

不安は、誰にでも発生する自然な感情。
すべてが悪いことではなくて、不安を覚えることによって身を守ることもできますから、不安遺伝子は生き延びるために必要な遺伝子であり、日本人は災害などから自分や家族を守ることに長けているのだと考える学者もいます。

いっぽうで、不安が多くなればいろいろな心の病気の原因になってしまいますよね。
ストレス社会と呼ばれる現代に、新型コロナ感染がさらなる不安をもたらして、病気にならずとも多くの不安を抱える人が増えています。

ここでは4つのポイントから、現代社会における「不安」という感情を理解していきます。
病的とされる不安の境目はどこにあるのか、不安神経症や不安症などとも呼ばれる「不安障害」、自覚していてもなかなか治せない「強迫性障害」とはどのような病気なのか、さらには日常的な不安への対処法などをわかりやすく解説します。

目次

1. 不安とはなにか?
1-1. 病的な不安と正常な不安
1-2. ストレス社会で急増した心の病
1-3. 代表的な精神の病気
2. 不安障害
2-1. パニック発作と予期不安
2-2. 恐怖症
2-2-1. 広場恐怖症
2-2-2. 社交恐怖症
2-2-3. 500以上にも及ぶ恐怖の対象
3. 強迫性障害
3-1. わかっていても同じ行為を繰り返す
3-2. 強迫を感じる対象は7つ
3-3. 強迫性障害に近い病気
4. 日常的な不安への対処法
4-1. 人間関係の不安
4-2. ネット不安
4-3. コロナ渦の不安
4-4. 原因がわからない不安
まとめ

1. 不安とはなにか?

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英語では不安になるという意味で、「anxious」「worried」「uneasy」といった単語が使われ、「worried」は「心配する」という意味でもよく使用されます。

「誰かのことが心配になる」「試験の結果を心配する」というように、「心配」には対象があるように思えますが、「不安」はひとことで表すと「ばく然とした不快な感情」と科学誌などでは解説されます。
不安より心配のほうが軽く感じるという人も多いでしょう。

まず、こうした点を明確にしながら、不安とはなにかということや「心の病気」の現状を解説していきます。

1-1. 病的な不安と正常な不安

心配ばかりしている人を「心配性だ」などといいますよね。
誰でも心配することはあり、多少その傾向が強くても問題にはならないでしょう。
しかし、昼も夜も心配が続き、不安で眠れないという状態になると、不安症を疑う必要が出てきます。

心配性は病気ではありませんが、不安症は「不安障害」という病気です。
心配は正常な不安の範疇であれば問題ないのですが、正常な不安には「脅威となる状況への反応を準備するという前向きな側面がある」とされています。

たとえば、幼児が親と離れるときに泣く行為や、はじめての学校へ登校したり会社に初出社したりするときの不安は正常な状態でも認められるものです。

心配性も度を越して日常生活に支障をきたすようになると、病的な不安と診断され、ときには死の恐怖にまで至ることもあります。

1-2. ストレス社会で急増した心の病

ストレスの多い現代社会では、30代から50代の人に悩みを抱える割合が多く、20代から50代までいずれも女性が半数以上を占めているといわれます。

近年はこうした現状に対する対策がとられ、メンタルケアが重視されると同時に心の病気の治療環境も変わってきました。

これまでは精神科の病院へ行くことに抵抗を感じる人が多かったのですが、診療所やクリニック、カウンセリングという形態で、入院や隔離をするのではなく通院しながら病気を治していけるよう対策がとられたのです。

患者の社会復帰を長期的な目標とする治療が行われ、心の病気を抱える人に対する理解も高まっています。

1-3. 代表的な精神の病気

うつの状態が続く「うつ病」や、うつと躁の両方がみられる「双極性障害」は、かつて「気分障害」と呼ばれた心の病気ですが、不安が関係する病気として代表的なものには、以下のような病気があります。

・パニック発作や恐怖症で知られる「不安障害」
・強迫観念によって不安が発生する「強迫性障害」
・トラウマが原因であらわれる「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」
・幻覚や妄想の症状があらわれる「統合失調症」
・ものの見かたや感じ方に強い偏りがみられる「パーソナリティ障害」

ここでは、とくに不安と関係が深い「不安障害」と「強迫性障害」について解説します。

2. 不安障害 

shutterstock_794191012不安障害とは、病的な不安によって日常生活に大きな支障をきたす障害で、特定の対象に対する恐怖以外に、パニック障害、広場恐怖症、社会恐怖症などがあります。

何年も前にエレベーターに乗っていたら故障で停まってしまったことがあり、それ以来、エレベーターには怖くて乗れなくなってしまったという人がいたとしても、それだけでは治療を必要とする不安障害と断定できません。

簡単な見極めは、クリニックのサイトや書籍に掲載されている不安障害診断テストなどでも可能ですが、エレベーターに乗れないために会社へ行けないとか、エレベーターを思い浮かべるだけで不安に襲われるという場合には、恐怖症や心的外傷後ストレス障害の診断を受ける必要が出てきます。

2-1. パニック発作と予期不安

パニック障害の症状であるパニック発作は、発汗、頻脈、呼吸促迫(急に激しくなる)、動悸、下痢、めまい、血圧上昇、失神、四肢のふるえなど、自律神経が関与する症状を中心として多彩な身体症状をともない、10分ほどで不安が急に高まり、ほとんどは20~30分で収まります。

言葉では言い表せないほどの強い不安感を覚え、しばしば死の恐怖にまで至ることも。
発作中に失神することさえあります。
発作がない状態においても、「あの発作が起こるのではないか」という強い不安が続くことがあり、「予期不安」と呼ばれます。

主な治療法は薬物療法で、神経伝達物質であるセロトニンの働きを正常にする薬が用いられます。

2-2. 恐怖症

不安は将来の脅威に対する予期であるのに対し、恐怖は現実の脅威に対する情動反応。
五感で受けた外部からの刺激が脳に伝わり、感情が起こることを情動といい、恐怖を感じるとその記憶が脳に刻まれるのです。

不安を覚えるような刺激が何度も繰り返されて、その状況を避けようとする行動が学習されるうちに、恐怖症が発症すると考えられています。
恐怖の対象は、様々な場面や動物、災害など多岐に渡り、代表的な恐怖症には広場恐怖症や社交恐怖症があります。

2-2-1. 広場恐怖症

すぐに逃げることが難しい状況に対する恐怖が「広場恐怖症」の不安要因。
人混みや混雑した建物内、さらにエレベーターや飛行機といった閉鎖空間を避けるようになり、症状が悪化するとこうした場所にはひとりで行けなくなってしまいます。

広場恐怖症は、パニック発作をおそれるあまりに発症するケースが多いと考えられており、広場恐怖症患者の30~50%がパニック障害を併発しているといいます。

2-2-2. 社交恐怖症

社交恐怖症は、見知らぬ人に出会ったり、他人から評価されたりする状況に対して強い不安をいだく不安障害。

公衆の前で恥ずかしい思いをしたり、困ったりすることに対する恐怖心も抱いています。

2-2-3. 500以上にも及ぶ恐怖の対象

恐怖症の人が日常生活に支障をきたすのは、特定の対象や状況を常に恐れていて、その不安を避けようとするため。
恐怖症の恐怖の対象は500以上もあるといわれ、4項目に分類されます。

① 動物型
クモ、ヘビ、ネズミなど

② 自然環境型
高所、地震や台風といった自然災害など

③ 血液、注射、負傷型
血液、注射、ケガなど

④ 状況型
エレベーターのような閉所、交通機関など

恐怖症は、うつ病やアルコール依存症、ほかの不安障害などを合併する場合が多く、治療には行動療法や認知療法が用いられ、同時に不安症状を取り除く薬物治療も行われます。

3. 強迫性障害

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「強迫症」とも呼ばれる「強迫性障害」は、不安を発生させる強迫観念と、それを打ち消す強迫行動があらわれるもので、どちらか一方である場合と両方が見られる場合があります。

わかりやすい例としてよくあげられるのが、家から外出する際に、カギをしめたか、ガスを消したかといったことが心配になって何度も確認をしてしまうケース。

これも自然な確認行為なのか強迫性障害かという判断は、程度の違いや日常生活に支障をきたしているかどうかを調べて行われ、治療には行動療法と薬物療法が用いられます。

3-1. わかっていても同じ行為を繰り返す

繰り返し何度も何度も頭に浮かんできて不安や恐怖を覚える「強迫観念」は、本人がそれとわかっていて不快に思っているのが特徴。
自分でも不合理だと思っているのに、強迫観念を打ち消すために繰り返してしまうのが「強迫行為」です。

強迫観念は周囲からはわかりませんが、強迫行為はわかります。
しかし、当事者は行為を恥ずかしく思って隠そうとするために、症状が進行してからわかるケースが多いのも、強迫性障害の特徴です。

3-2. 強迫を感じる対象は7つ

不安や恐怖を覚える強迫観念は、大きく7つの項目に分類されます。

① 攻撃
地震や津波が来るのではないか、クルマを運転していて人をはねてしまうのではないか、自分は明日死ぬのではないかといった不安が常にあります。

② 不潔
清潔に対する異常な強迫観念がもたらす「潔癖症」はよく知られるところです。

③ 対称性
本棚やクローゼットなどが常に整然と収納されていないと気になってしまい、着る服の順番が決まっていることも。

④ 性的
自分や兄弟の性的な心配が頭から離れない、自慰を繰り返す、異性や同性の股間や胸から目が離れないといった症状があらわれます。

⑤ ためこみ
偏った収集癖や、ものが捨てられないといった症状がみられます。

⑥ 身体
顔や身体のコンプレックスや心配が頭から離れません。

⑦ 宗教
罪深い行いをしてしまった、自分は罰を受けなければいけないといった宗教的な心配から離れることができません。

3-3. 強迫性障害に近い病気

強迫性障害に近い不安障害には、次のようなものがあります。

① 醜形恐怖症
自分の外観を他人と比較して身体的欠陥である、異常であるととらえる病気で、慢性化する傾向が強く、ひきこもりになることもあります。
うつ病や社交不安症を併発する確率が高いという特徴もあります。

② 抜毛症
頭髪、眉毛、まつ毛、体毛などの脱毛を繰り返す病気で、患者の70~90%は女性で、小児期に発症するケースがほとんどです。

③ 皮膚むしり症
抜毛症と同じ様に、全身の皮膚や爪などを繰り返しむしってしまう病気。
部位としては顔がもっとも多く、皮膚の損傷や爪の変形が残ってしまいます。

4. 日常的な不安への対処法

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この項では、不安障害へと悪化する前に、日常で感じる不安へ対処するノウハウを紹介しましょう。

マイナスの感情を忘れるためには、プラスの感情がわくことを積極的にするのが一番。
マイナスの感情とは不安をはじめとして「苦しい」「哀しい」「怒り」といったことなど、プラスの感情とは「楽しい」「うれしい」「心地よい」「美味しい」といった感情です。

このストレスケアの基本を忘れないようにしましょう。

4-1. 人間関係の不安

人間関係の悩みは、古今東西、常に悩み事ランキングのトップスリーに入るくらい、誰もが不安を覚えた経験をもっています。
ここでは2つほど、人間関係の不安を解消する方法を紹介しましょう。

ひとつ目は、他人に対して必要のない願望や期待を抱かないこと。
不安や怒りの裏には、必ず願望が隠れています。
最初から他人に対して願望をもたなければ、失望も不安も抱えずにすみます。

もうひとつは、不安や怒りという感情が伝染するものだという認識をもつこと。
やりづらいなと感じている相手に対して不安を抱きながら接していると、不安感が相手に伝わって増幅されることに。

可能であれば一度、相手に好意をもってみると不安を増幅し合う関係から脱却できるかもしれません。

4-2. ネット不安

ネット社会は、いわれのない誹謗中傷を恐れる不安、承認欲求が満たされない不安など、かつては想像もしなかった新しい不安をもたらしました。
ネット関連で抱えた不安が、心の病気の原因となるケースも激増しています。

こうしたネット不安に対処する方法も2つ紹介しましょう。
ひとつは、バーチャルとリアルのバランス、オンラインとオフのバランス、デジタルワークとアナログワークのバランスなど、デジタル機器やインターネットが関与する事柄を自分の中で管理すること。
毎週か2週間に1日は、パソコンやスマホなどから離れる「IT断食」をするのもいいでしょう。

もうひとつは、幸福を他人と比べないこと。
本来、幸せの形は人それぞれ違うのですから、誰かと比べても意味がありません。
匿名性が強いネット上では、さらにクールなマインドが求められます。
人は人、自分は自分という価値観がぶれないようにしましょう。

4-3. コロナ渦の不安

2020年に始まった新型コロナの感染拡大は、世界規模で人類にいくつもの新しい不安やストレスをもたらしました。

いつ感染するかわからない不安、収入が途絶える不安、店が会社がなくなるのではないかという不安、常にマスクをしていなければいけないストレス、いつになったら友人たちとまた楽しく食事ができるかと思うストレスなど、数えあげればキリがないかもしれません。

しかし、これがもっとも大事なことなのですが、今起こっていることはすべて現実。
受け入れるしかないのです。
「現実を早く受け入れて、その状況でできる最善の方法を実践する」
対処法はこれしかありません。

そして、不安や怒りを人に伝染させないことも、ウイルスの伝染同様に重視したいところです。

4-4. 原因がわからない不安

原因がわからない、ばく然とした不安を感じることもあるでしょう。
しかし、突き詰めていけば、不安の裏には必ず原因があるはず。
隠れている願望や期待を探り出せば、対処の糸口が見えてきます。

ばく然とした不安の原因を炙り出す際にもっとも重要なことは、それが自分で変えられることかどうかということです。
自分で変えられることであれば、必要に応じて変えていけばいいのです。

自分に変えることができないのであれば、受け入れるか忘れるしかありません。
不安を感じていても時間と労力のムダです。
明日が晴れるかどうかということで不安になっても、天気は変えることができないのですから疲れるだけですよね。

まとめ

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最後に、不安を生み出しているのは脳だということをもう一度再確認しておきましょう。
五感で得た刺激が脳に伝わり、記憶と照らし合わせて感情が生まれるのです。

不安になりやすいのは性格の問題ではなくて、五感から脳まで電気信号として情報が伝わる神経細胞やその細胞間で情報を伝達する物質、感情を生み出す脳機能などに何らかの問題が発生しているからだと考えられます。

神経細胞や脳内物質をつくり出すのは食事で摂取した栄養素ですし、脳内の血流を改善すれば脳機能は活性化し、脳内の神経細胞が情報を整理するのは睡眠中であることを考えれば、食生活、運動、睡眠といった生活習慣が「不安」と深いかかわりをもっていることがわかりますよね。

【参考資料】
・『Newton ライト2.0 精神科医が語る、こころの病気のきほん 精神の病気』 ニュートンプレス 2020年
・『HSPと不安障害 「生きているだけで不安」なあなたを救う方法』 高田明和 著  廣済堂出版 2020年

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