15分でわかるメンタルケアの基本と資格-心の諸問題に対処する

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shutterstock_549090334メンタルケアに興味をもつ人が増えています。

ストレス社会といわれる現代社会では、職場における仕事の悩みや人間関係、家庭環境における家族関係や近所づきあいなどで、心に問題を抱える人がたくさんいます。
むしろ、心に問題を抱えていない人はいないといっても過言ではないでしょう。
学校でも会社でも、引きこもり、不登校、欠勤、いじめ、過労といった心の健康を害する問題が増え続けています。

政府は、企業にストレスチェック制度を導入したり、学校にスクールカウンセラーを設置したりして、児童や生徒、労働者の心の健康対策をはじめています。

そうした状況の中で、自分の経験や知識を活かし、心に問題を抱えている人の支援を仕事としてみたいと考える人が増えているのです。

ここでは、メンタルケアとはなにかという基本的な知識や現状を解説し、仕事として検討しようと思っている人のために、主なメンタルケア関連の資格を紹介します。

目次

1. メンタルケアの基本
1-1. メンタルケアの基盤となる心理学
1-2. カウンセリングとセラピーの違い
1-3. いろいろな心理療法の技法
1-4. 厚生労働省が提唱する4つのケア
1-5. メンタルケアの仕事に就く方法
2. 主なメンタルケアの資格
2-1. 大学課程の修了が必須の資格
2-1-1. 公認心理師
2-1-2. 臨床心理士
2-1-3. 認定心理士
2-1-4. 学校心理士
2-2. 大学での学びが必須ではない資格
2-2-1. 産業カウンセラー
2-2-2. 産業心理カウンセラー
2-2-3. プロフェッショナル心理カウンセラー
2-2-4. 精神対話士
2-2-5. メンタル心理カウンセラー
2-2-6. メンタルケアカウンセラー
2-2-7. メンタルケア心理士、メンタルケア心理専門士
まとめ

1. メンタルケアの基本

shutterstock_1283220583「メンタル(mental)」という英語は、精神的、心理面といった意味。
「メンタルヘルス」とは、かつて「精神衛生」という言葉で示されていた「心の健康」を意味します。

メンタルヘルスケアと同意義で使われる「メンタルケア」という言葉は、心が抱える諸問題に対処することです。
まずは、メタルケアの概要を解説しましょう。

1-1. メンタルケアの基盤となる心理学

メンタルケアは心の健康をケアするわけですから、「心と行動の科学」である心理学の知識が欠かせません。

心理学は、一般的な法則を研究する基礎心理学と、一般的な法則を実際の問題に役立てる応用心理学に分類されます。

基礎心理学の代表的なものには、次のようなものがあります。

・知覚、記憶、思考、言語という4つに認知から人間の情報処理のしくみを研究する「認知心理学」
・対人的な環境など社会で起こる、個人と他者との相互作用について研究する「社会心理学」
・五感によって外部からの情報を取り入れるプロセスやメカニズムの解明を目的とする「知覚心理学」
・人間の生涯で起こる身体面、行動面、認知面の変化と周囲の環境との関係を研究する「発達心理学」
・先天的な「性格(キャラクター)」や、後天的な「人格(パーソナリティ)」について研究する「人格心理学」
・人間の行動や精神活動が、脳や身体の機能とどのように関連しているかを研究する「生理心理学」

一方、代表的な応用心理学には次のようなものがあります。

・人格心理学をベースにして、悩みや問題を抱えた人を援助する方法を考える「臨床心理学」
・心理学を産業活動で活用していくための研究をする「産業心理学」
・罪を犯した人の社会復帰などを研究対象とする「犯罪心理学」
・災害と心理との関係を研究する「災害心理学」
・家族をシステムと考えて問題解決を図ろうとする「家族心理学」
・教育課程における心の働きを研究する「教育心理学」

1-2. カウンセリングとセラピーの違い

心理学を基盤とした技法を利用してメンタルケアを行うことを英語で「Psychotherapy(サイコセラピー)」といいます。
サイコセラピーは、「心理療法」と訳され、サイコセラピーを行う人が「サイコセラピスト」または「心理セラピスト」。
心理療法は、医学分野で「精神療法」と呼ばれることもあります。

「カウンセリング」「カウンセラー」も、メンタルケアで用いられる言葉ですよね。
英語の「Counseling」は「相談」という意味で、20世紀初頭にアメリカで用いられるようになった言葉、サイコセラピーは19世紀終わりからヨーロッパで用いられるようになった言葉という違いがあります。

「心理カウンセラー」と「心理セラピスト」の違いに明確な定義はありませんが、カウンセリングは比較的健康でありながら心に問題を抱える人に対して、その人の長所に焦点をあてて欲求不満の解消を援助するもの、サイコセラピーはやや重い心の問題を抱える人に対して病的側面に焦点をあて、ときには無意識レベルにまで掘り下げて長期的に介入するものという認識が一般的です。

また一般的には、単にカウンセラーといえば「心理カウンセラー」を、単に「セラピスト
といえば「心理セラピスト」を指します。

1-3. いろいろな心理療法の技法

shutterstock_596748269メンタルケアで行う心理療法は、心理学にいろいろな領域があるのと同様に、たくさんの療法が研究開発され、その数は200を超えるといわれています。
代表的な心理療法には、次のようなものがあります。

・セラピストとクライアント(相談者)の関係を重視し、傾聴することを基本とする「クライアント中心療法」

・「気づき」の概念を重視して、クライアントが不満をもつ自分、それを非難する自分など、自分の様々な部分を演じる役割演技の技法などを用いる「ゲシュタルト療法」

・人間の行動を対象にして心の問題解決を目指す「行動療法」

・「人の心がどのような仕組みでどう機能するか」という精神分析の理論に基づいて精神的な問題や症状を取り扱う「精神分析療法」

・家族心理学に基づき、その個人を含む家族全体を対象として機能不全の解決を目指す「家族療法」

・人間が心の奥にあるものを何らかの形で表現したいという欲望を基礎とする「芸術療法」

1-4. 厚生労働省が提唱する4つのケア

2006年、厚生労働省は、「ストレスの原因となる要因は、仕事、職業生活、家庭、地域等に存在している。心の健康づくりは、労働者自身が、ストレスに気づき、これに対処すること(セルフケア)の必要性を認識することが重要である」と提唱して、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を示しました。

2012年に、メンタルヘルス不調者が最近3年間で「増加傾向」、または「横ばい」と回答した企業の割合が90%を超え、2015年にはこの指針がより具体的なものへと改正されました。

通称「メンタルヘルスの指針」と呼ばれるこの対策では、以下の4つのメンタルヘルスケアを継続的かつ計画的に行うことが重要であるとしています。

① セルフケア
労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らストレスの予防や軽減を行う、もっとも基本的なメンタルヘルスケア。

② ラインケア
日常的に労働者と接する管理監督者が、職場におけるストレス要因を把握し、その改善を図ったり、心の健康にかんして労働者に対する相談対応を行うメンタルヘルスケア。

③ 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
職場の産業保健スタッフと呼ばれる産業医、保険医、カウンセラー、衛生管理者といった専門職が、労働者の相談にのったり、健康や安全のために企業がすべきことを提言したりするケア。

④ 事業場外資源によるケア
外部の精神科病院やクリニック、カウンセリングルーム、公的機関である精神保健福祉センターや保健所などの支援を受けるケア。

1-5. メンタルケアの仕事に就く方法

カウンセラーやセラピストとしてメンタルケアを仕事とするフィールドは、企業、学校、病院及びクリニック、常設や特設の相談所などがあります。

私設のメンタルケア相談室を開いて相談を受ける、インターネットや電話などで相談を受けるといったことを仕事とするのに、資格がなければいけないということはありません。

企業内の産業保健スタッフとして働く、学校のスクールカウンセラーとして働く、精神科や心療内科でセラピストとして働くというように事業場や公共機関でメンタルケアの仕事に就こうと思ったら、相応の資格が必要になります。

私設のメンタルケア相談室などでも、十分な経験だけでなく、資格があることを示した方が有利になることは間違いありません。
心理学を学ぶためには、大学で専攻する、さらに大学院で専攻する、短大で学ぶ、専門学校で学ぶ、通信教育で学ぶ、書籍やセミナーなどで学ぶといった方法があります。

2. 主なメンタルケアの資格

shutterstock_567987529心理学関連の学会や協会、心理療法関連の学会や協会などはとてもたくさんあります。
そうした団体や機関が認定する心理療法関連の資格は、なんと100種以上。
似かよった名称の資格もあるので注意が必要です。

こうした、メンタルケアを行うための資格は、大学や大学院で心理学科目を修得しなければとれないものと、大学を修了しなくてもとれるものがあります。
それぞれ代表的なものを紹介しましょう。

2-1. 大学課程の修了が必須の資格

心理療法、メンタルケア系の三大資格と呼ばれるものが、「公認心理師」「臨床心理士」「認定心理士」。
これらの資格は、すべて大学過程を修了することが資格取得の条件となっています。
公共機関や企業で心理職に就こうと思っている人にとっては、こうした資格の取得が必要とされる場合がほとんどです。

ここでは、三大資格に学校心理士を加えた4つの資格を取り上げます。

2-1-1. 公認心理師

公認心理師は、2017年に施行された公認心理師法に基づく国家資格。
日本においては、初の心理職系国家資格です。

公認心理師の資格取得には、大学の心理学部や心理学科で国が定める科目を修得した後、指定大学院で国が定める科目を修得するか、大臣が制定する省令で定められた施設で2年以上の実務経験を積んで、国家試験を受けなければいけません。

2-1-2. 臨床心理士

心理職系の条件としてもっとも多いのが、民間資格の臨床心理士。
1988年に創設された日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格で、学部や学科を問わずに大学卒業後、指定大学院で教育訓練を受けてから資格認定試験を受けることになります。

病院やクリニックの心理職、企業の心理職、学校のスクールカウンセラーなど、多くの心理職に就く際に取得が条件となっている資格で、臨床心理学を基礎とした知識や技法を用いて心理学的な専門業務を行うためのものです。

2-1-3. 認定心理士

認定心理士は、大学で心理学に関する標準的な基礎知識や技術を修得していることを日本心理学会が証明する資格。

大学で心理学を学んでいても、学部名や学科名に必ずしも「心理学」という言葉が使われていないことがあります。
そうした人たちが申請をして一定の基準を満たしていると判定されると、試験などを受けることなく取得できます。

2-1-4. 学校心理士

学校心理士は、日本学校心理学会、日本応用教育心理学会、日本生徒指導学会、日本学校カウンセリング学会、日本コミュニケーション障害学会、日本学校メンタルヘルス学会などが運営する学校心理士認定運営機構が認定する資格。

文部科学省では、学校心理士をスクールカウンセラーに準ずる者とみなし、正規の資格取得者が少ない地域などでは「準スクールカウセンラー」として任命しています。

申請には次のような条件があり、試験に合格しなければいけません。
・大学院で学校心理学関係の科目の単位を修得し、学校心理学に関する専門的実務経験を1年以上有する
・4年制大学卒業で学校心理学に関する専門的実務経験を5年以上有する
・大学または大学院で授業を2年以上担当し、学校心理学の8領域に関する研究業績を5編以上有する
・公認心理師資格を有する
・学校の管理職または教育行政職として、心理教育的援助サービスに関する指導的な役割を3年以上有する

上級資格として、学校心理士の指導などを行う「学校心理士スーパーバイザー」があります。

2-2. 大学での学びが必須ではない資格

shutterstock_483278644メンタルケア関連の民間資格は、心理学関連の協会や団体が独自に認定するものがたくさんありますから、自分の方向性や目的をよく検討して選ぶことが大事です。

ここでは、大学を修了していなくても取得可能な資格で代表的なものをいくつか紹介しましょう。

2-2-1. 産業カウンセラー

産業カウンセラーは、1992年度から2001年度までの間、労働省(当時)が認定する公的資格でしたが、現在は日本産業カウンセラー協会が認定する民間資格です。
企業などの心理職として、働く人たちの心の問題解決を援助することが目的。

大学院で指定学部、指定科目を修了しているか、成年に達した者で、産業カウンセラー養成講座を修了していることが受験条件で、受験資格を得るための産業カウンセラー養成講座は通学制、通信制、e-Learning制があり、6~10カ月間を要します。

2-2-2.  産業心理カウンセラー

産業心理カウンセラーは、日本能力開発推進協会 (JADP)が認定する資格で、産業カウンセラーよりも難易度の低い簡易的な資格です。

通信課程で4カ月程度のカリキュラムをこなし、在宅試験を受けるだけなので、メンタルケアの基本を学ぶことが目的となり、心理職の求人にはあまり役に立ちません。

2-2-3. プロフェッショナル心理カウンセラー

全国心理業連合会(全心連)が認定する心理カウンセラー資格が、プロフェッショナル心理カウンセラーで、ベースラインの「一般」と国家資格レベルの「上級」があります。

全心連に加盟しているいずれかの心理スクールに入学し、受講と実習を行うことで受験資格が生まれ、年1回行われている試験に合格すると資格を取得できます。
「上級」は1280時間、「一般」は242時間のカリキュラムを受講する必要があり、費用や難易度は高めですが、心理職には就きやすいといわれています。

2-2-4. 精神対話士

メンタルケア協会が認定する精神対話士は、心理カウンセラーなど「話を聴く専門家」であることを示す資格。
精神科医や臨床心理士など、心の専門家からサポートを受けるまで至らなくても心に悩みを抱える人の話を、個人宅や学校、企業、福祉施設、病院、老人ホームなどで聴くのが精神対話士の役割で、需要は増えていますが、それだけで職業とするのは難しいでしょう。

メンタルケア協会が開講するメンタルケア・スペシャリスト養成講座を受講してレポート採点に合格し、精神対話士選考試験に合格する必要がありますが、受験資格は年齢、学齢、職歴不問です。

2-2-5. メンタル心理カウンセラー

メンタル心理カウンセラーは、日本能力開発推進協会が認定する心理カウンセラーの資格。

在宅のまま認定の通信講座を受講し、試験まで受けることができるので、かなり難易度は低く、ほかのメンタルケア関連資格を取得する前に、基礎的な知識を身につける目的で取得する人も多い資格です。

2-2-6. メンタルケアカウンセラー

メンタルケアカウンセラーは、心理学の入門知識及び、コミュニケーション向上に求められる基礎能力を証明する資格。
メンタルケア学術学会、人生涯学習開発財団、ヘルスケア産業推進財の3団体が認定する資格で、心理カウンセラーの資格としては信頼性が高いといわれています。

メンタルケア学術学会が指定する通信講座を受講して、レポート試験に合格すれば取得できるので、心理カウンセラーの入門資格として取得する人が増えています。

2-2-7. メンタルケア心理士、メタルケア心理専門士

メンタルケアカウンセラーと同じ公的3団体が認定する、上級資格と位置付けられているのが、メンタルケア心理士。

メンタルケア心理士の資格登録申請には、文部科学省が後援する「こころ検定2級」に合格し、メンタルケア心理士講座受講修了、認定心理士の資格保有、産業カウンセラーの資格保有、メンタルケア学術学会の「学士・修士受検規定」に基づいた4年制大学心理学部、学科または心理隣接学部、学科卒業のいずれかに当てはまることが条件となります。

上記3団体が認定するさらなる上級資格として、文部科学省が後援する「こころ検定1級」合格が条件のメタルケア心理専門士もあります。

まとめ

shutterstock_1155348268心に問題を抱える人に対してメンタルケアを行うのは、資格のあるなしにかかわらず心理カウンセラーや心理セラピストがおり、精神科医や心療内科医もいます。

しかし、そうした外部から行われるメンタルケアも、基本はクライアントのセルフケアを支援することにあるのです。

この記事では、メンタルケアの基本をざっと解説しましたが、心理学や心理療法などを扱った記事もぜひご覧になり、自身のセルフケア能力を見直してみると、メンタルヘルスケアをより深く理解できることでしょう。

【参考資料】
・『基礎から学ぶ心理療法』 矢澤美香子 編  ナカニシヤ出版 2018年
・『心理カウンセラーをめざす人の本 ‘19年版』 新川田譲 監修  成美堂出版 2019年
・『メンタルヘルスの道案内』 徳田完二、竹内健児、吉沅洪 著  北大路書房 2018年

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