4つの疑問から理解する心理療法の基本-心の専門家が行う支援

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shutterstock_224217079今、心理療法や心理学に興味をもつ人が増えていますよね?

心の負担が大きな「ストレス社会」となり、心に問題を抱える人が増えているからです。

アメリカでは、カウンセラーやセラピストの数が床屋と同じくらいだといわれるほど、心のトラブル解消を支援するシステムが確立されています。
しかし日本では、いまだに精神科や心療内科を受診するだけで、「弱い人間」だというレッテルを貼られ、差別を受けるような風潮がなくなりません。

心の負担になっている問題を解決するための支援をするのですから、決して特別なことではなくて、現代人には必要な学問であり、必要なケアなのです。

「カウンセラーと話してみる」「相談室にメールを送ってみる」といったことが、少しずつ普通のこととして認識され出した今、その基盤となっている心理学や、心理学を応用した心理療法を知ることは、自分を守るためにも、人の役に立つためにも重要ですよね。

ここでは、4つの疑問を解決する形で心理療法の基本を解説します。

目次

1. 心理療法とは何か?
1-1. 心理療法の目的
1-2. 心理療法とカウンセリングの違い
1-3. 基盤となる心理学の分野
2. 心理療法の仕事とは?
2-1. 心理療法士という名称はない!?
2-2. 心理セラピストや心理カウンセラーになる方法
2-3. 代表的な3つの資格
2-4. 心理療法にかんするその他の資格
3. 心理療法の種類は?
3-1. クライアント中心療法
3-2. 精神分析療法
3-3. 行動療法
3-4. ゲシュタルト療法
3-5. 家族療法
3-6. 芸術療法
4. 心理療法を受ける方法は?
4-1. 企業や学校内の部署を利用
4-2. クリニックや相談室
4-3. インターネットや電話で相談
まとめ

1. 心理療法とは何か?

shutterstock_1136971007ひとつ目の疑問は、「そもそも心理療法とは何なのか?」ということ。
基本中の基本からはじめましょう。

 

 

 

 

1-1. 心理療法の目的

心理療法の目的は、心理的な問題を抱える人を対象とし、心理学を基盤とした技法を用いて心の健康を回復することです。

「心理療法」は、「Psychotherapy(サイコセラピー)」という英語の訳。
サイコセラピーは「精神療法」と訳されることもあります。
心理療法は心理学の領域で、精神療法は医学の領域で用いられることが多い言葉であり、その分類に明確な定義などはありません。

医学領域では、医師が治療行為として行う身体的治療に対して、精神的な治療を精神療法と呼んだり、薬物療法と対比して精神療法という言葉を使うこともあります。

もともとサイコセラピーは、医療の中のひとつの治療法として発展してきたという歴史があり、心理学者や心理療法家がそれを受け継いで、多くのサイコセラピーへと発展しました。

1-2. 心理療法とカウンセリングの違い

心理療法と同じような使い方をされる言葉に、「カウンセリング」があります。
英語の「Counseling(カウンセリング)」は「相談」という意味ですが、「心理カウンセリング」の意味で使われることが多くなっています。

カウンセリングは20世紀初頭にアメリカで用いられるようになった言葉で、背景には職業指導や教育測定などがあり、サイコセラピーは19世紀終わりからヨーロッパで用いられるようになった言葉で、医学領域で催眠療法の影響を受けて成立したという違いがあります。

しかし、心理療法と心理カウンセリングを同じものとするのか、区別するのかという議論は長い間行われており、これも現在、明確な定義はありません。

一般的には、カウンセリングは比較的健康でありながら心理的な問題を抱える人を対象として、その人の長所に焦点をあてて欲求不満になっている現所を解消する援助を行うもの、サイコセラピーはやや重い心理的問題や病を抱える人を対象として病的側面に焦点をあて、ときには無意識レベルにまで掘り下げて長期的に介入するものという認識があります。

1-3. 基盤となる心理学の分野

心理療法の基盤となる心理学の分野は、心理学の一般法則を研究する基礎心理学と、法則や知識を実際の問題に役立てる応用心理学に大別されます。
以下、代表的な分野を簡単に紹介しましょう。

① 基礎心理学

社会心理学
社会的なことや対人的な環境で起こる、個人と他者との相互作用について研究する分野。

認知心理学
認知を人間の情報処理過程とみなし、知覚、記憶、思考、言語の4つから人間の情報処理のしくみを研究する、比較的新しい分野。

発達心理学
人間が生まれてから死ぬまでの間に起こる身体面、行動面、認知面の変化のプロセスを周囲の環境との関係において研究する分野。

青年心理学
どの期間を青年期とするかは学者によって違いがあるが、身体の性的変化とともに変わる青年期の心理を研究する分野。

人格心理学
臨床心理学の基礎となる領域で、感情や意思をともなう先天的な行動様式である「性格(キャラクター)」や、知能や感情の全体的な特徴である後天的な「人格(パーソナリティ)」について研究する分野。

知覚心理学
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感によって外部からの情報を取り入れるプロセスや、そのメカニズムの解明を目的とする分野。

生理心理学
人間の行動や精神活動が、脳や身体の機能とどのように関連しているかを研究する分野。

② 応用心理学

臨床心理学
悩みや問題を抱えた人の援助方法を考える分野で、一般的に心理学といえば臨床心理学を思い浮かべる人が多い。

教育心理学
人間は生涯にわたって学習する存在であるという考えを基盤とし、教育課程における心の働きを研究する分野。

産業心理学
心理学を産業活動で活用していくための研究をする分野で、産業界で起きている問題の解決に向けて心理学、人間工学、生理学などをどのように応用するか、働くことの意義とは何かといったことなどを考える。

犯罪心理学
人間はなぜ犯罪を犯すのか、犯罪を犯す人と犯さない人の違いはどこにあるのか、罪を犯した人の社会復帰といったことなどを研究対象とする分野。

災害心理学
災害が起きたときの人間の心理的な反応や行動など、災害と心理との関係を研究する分野。

家族心理学
家族の関係そのものを研究対象として、家族内で起こっている問題に対し、家族全体のシステムを変化させることで解決を図ろうとする分野。

健康心理学
病気の予防、健康の維持や増進だけでなく、生活の質を向上させるヘルスケアシステムや健康政策の策定など、健康的なライフスタイルの創造を研究する分野。

2. 心理療法の仕事とは?

shutterstock_7311472152つめの疑問は、「心理療法の仕事とはどのようものなのか?」ということ。

仕事として行う方法や、資格について解説しましょう。

 

 

 

2-1. 心理療法士という名称はない!?

心理療法を行う人という意味で「心理療法士」という言葉が使われることがありますが、実際にはそうした職名も資格もありません。

日本臨床心理カウンセリング協会が認定している「臨床心理療法士」があるものの、心理療法を行うカウンセラーやセラピストのことをひっくるめて、「心理療法士」と呼ぶことが多いのです。

本来、「カウンセラー」とは相談を受ける人という意味ですから、「心理カウンセラー」以外に、「スキンケアカウンセラー」「フードカウンセラー」「ドッグライフカウンセラー」といったものもあり、「セラピスト」とは治療士という意味ですから、「心理(サイコ)セラピスト」以外に「アロマセラピスト」「ボディセラピスト」「メディカルセラピスト」と名乗る人たちもいます。

ここで取り上げている、サイコセラピーを行う心理セラピストや、心理カウンセラーは、精神科やメンタルクリニックといった病院、協会が開設したり私設で開設したりする「こころの相談室」や「心理相談室」、企業や学校内に設置された相談室、被災地などに特設された相談所などが職場となります。

2-2. 心理セラピストや心理カウンセラーになる方法

心理療法を行う「心理セラピスト」や「心理カウンセラー」は、とくに資格がなくても名乗ることは可能です。
「心理療法士」は、そういう名称の資格がないのですから、厳密にいえば名乗るのは自由。

しかし、クライアント(相談者)が心に抱えるトラブルを解消するためには、心理学や精神医学の知識がなければ責任をもった対処ができません。
資格をとるかどうかは別の問題としても、心理学を学ぶことは必須とされるのです。

各種の心理学を学ぶためには、短大や大学、大学院で学ぶという方法以外にも、専門学校で学ぶ、協会などが開催する講座に参加する、通信教育で学ぶといった方法があります。

2-3. 代表的な3つの資格

心理カウンセラーや心理セラピストを仕事にしようと考える人にとって、現在の日本で三大資格といわれるものがあります。

ひとつは、1988年に創設された日本臨床心理士資格認定協会が認定する「臨床心理士」で、学部や学科を問わずに大学卒業後、指定大学院で教育訓練を受けてから資格認定試験を受けることになり、臨床心理学を基礎とした知識や技術を用いて心理学的な専門業務を行うためのものです。

次は、2017年に施行された公認心理師法に基づく国家資格の「公認心理師」。
戦後から行われていた心理職の国家資格化にかんする議論がやっと実現し、2015年に公認心理師法が成立、2017年に施行されたことにより、日本初となる心理職の国家資格として設定されました。

公認心理師の資格取得には、大学の心理学部や心理学科で国が定める科目を修得した後、指定大学院で国が定める科目を修得するか、大臣が制定する省令で定められた施設で2年以上の実務経験を積んで国家試験を受けなければいけません。

もうひとつは、日本心理学協会が認定する「認定心理士」で、心理学部以外で心理学を学んだ場合でも心理職に就くことを目的とした資格です。

2-4. 心理療法にかんするその他の資格

心理療法にかんする資格は、様々な協会や団体が設定しているので、100種類以上もあります。
三大資格以外の代表的なものをあげておきましょう。

・日本産業カウンセラー協会が認定する「産業カウンセラー」
・学校心理士認定運営機構が認定する「学校心理士」
・臨床発達心理士認定運営機構が認定する「臨床発達心理士」
・日本応用心理学会が認定する「応用心理士」
・日本音楽療法学会が認定する「音楽療法士」
・日本健康心理学会が認定する「健康心理士」
・日本心身医学会が認定する「医療心理士」
・日本福祉心理学会が認定する「福祉心理士」
・メンタルケア学術学会、人生涯学習開発財団、ヘルスケア産業推進財団の3団体が認定する「メンタルケア心理士」と上級資格の「メンタルケア心理専門士」

3. 心理療法の種類は?

shutterstock_2474113033つめの疑問は、心理療法の種類について。
心理療法は心理学を基盤としていますから、心理学の領域が多岐にわたるのと同様に、いろいろな療法が開発されてきました。
ここでは代表的なものを6種だけ、簡単に解説しましょう。

 

 

3-1. クライアント中心療法

アメリカの臨床心理学者カール・ロジャースによって提唱されたカウンセリング、心理療法の理論。
通常の心理療法は、セラピストとクライアントとの関係の中でクライアントがどのような体験をするかということが重視されますが、この療法では、セラピストとクライアントの関係自体を重視し、セラピストは傾聴することが基本とされます。

3-2. 精神分析療法

精神分析とは、「人の心がどのような仕組みでどう機能するか」についての理論で、精神的な問題や症状を取り扱う療法でもあります。
19世紀後半にウィーンの精神科医フロイトによって創始された古典的な療法で、クライアントの無意識の領域に抑圧された本能的な部分を解放することによって、正常な精神活動に転じることを目的とします。

3-3. 行動療法

行動療法は、人間の行動を対象にして心の問題解決を目指す治療技法。
人間が抱える様々な心の問題は、成長の過程で後天的に学習された結果であるととらえ、行動を学習し直すことによって問題を改善できると考えます。

3-4. ゲシュタルト療法

ユダヤ系ドイツ人の精神科医フレデリック・パールズが、妻のローラとともに提唱した心理療法で、「人間の知覚や認知の形成は、部分的な構成要素で決定されるのではなく、全体がもつ性質によって決定される」とするゲシュタルト心理学を理論的背景にもちます。
「気づき」の概念を重視し、クライアントが、不満をもつ自分、それを非難する自分など、自分の様々な部分を演じる役割演技の技法などが用いられます。

3-5. 家族療法

家族というひとつのまとまりをシステムとみなして、そのシステムを治療の対象とする心理療法。
個人の問題は、家族システムの機能不全を反映したものと考え、その個人を含む家族全体を対象として機能不全の解決を目指します。

3-6. 芸術療法

人間が心の奥にあるものを何らかの形で表現したいという欲望を基礎とする心理療法。
絵画や物語、音楽といった創作物に心理的内容が投影される過程で浄化作用が起こり、癒しにつながるという考えから発展したもので、箱庭療法がよく知られています。

4. 心理療法を受ける方法は?

shutterstock_14773367784つ目の疑問は、「心理療法を受けるにはどうしたらよいのか?」ということ。
あなたが実際に、心の問題を解決したい、心の負担を軽くしたいと思ったときには、以下のような手段で、心理療法を受けることができます。

 

4-1. 企業や学校内の部署を利用  

企業の人事部などに設置された相談室や、学校のスクールカウンセラーなどを利用し、心理療法担当職員から心理療法を受けることができます。

従業員50人以上の職場にストレスチェックが義務づけられたことや、働き方改革の実施によって、企業内カウンセラーや社内カウンセラーと呼ばれる心理職が置かれる企業が増えました。
学校で児童や生徒、その保護者に対して心理相談を行うスクールカウンセラーは、2017年度の統計で、約75%の公立小学校、約95%の公立中学校に配置されています。

4-2. クリニックや相談室へ行く

「メンタルクリニック」や「心理クリニック」という名称の病院は、精神科、心療内科などの科目があって、専門の心理士が治療にあたります。
健康保険適用でカウンセリングを受けられるクリニックも多くなっています。

精神科や心療内科の医師やいろいろな資格をもつセラピストなどが個人、もしくはグループで開設している相談室もあります。
そうしたメンタル相談室などは、医療機関ではないので保険適用にはならず、概ね1時間あたり1万円程度の費用がかかります。

4-3. インターネットや電話で相談

近年はボランティアを募集して、心理カウンセリングを行うNPOや行政機関などが増えています。
最近、ボランティアカウンセラーの活躍する場となっているのが、インターネット相談や電話相談。
クリニックが電話相談やオンライン相談を受け付けている場合もあります。

電話相談では、日本いのちの電話連盟が行っている「いのちの電話」や、東京自殺防止センターが行っている電話相談、文部科学省に設置されている「こどものSOS相談窓口」、法務省が設置している「子どもの人権110番」などが知られています。

まとめ

shutterstock_274466732心理療法は、クライアントの多様な心の問題を解決しようとするものですから、心理カウンセリングや心理セラピーを行おうとすれば、複雑な心理に介入することになります。

ですから、ひとつの心理学理論や技法ではなくて、目の前にいるクライアントに最も適した療法をそのつど選択できることが求められます。

そうした理由から、心理療法には、多様な理論や技法にふれる「横の学び」と、ひとつの理論や技法を深める「縦の学び」の双方が必要といわれるのです。

【参考資料】
・『基礎から学ぶ心理療法』 矢澤美香子 編  ナカニシヤ出版 2018年
・『心理カウンセラーをめざす人の本 ‘19年版』 新川田譲 監修  成美堂出版 2019年

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