姿勢の悪さや肩こりが、文字通り頭痛のタネという人は多いですよね?
とくにデスクワークやパソコン仕事をする人は、慢性的な肩こりや腰痛に悩むことが多いのではないでしょうか。マッサージや指圧をしても、症状がよくなるのはその時だけで、またすぐに再発してしまいます。
それは、局部の血行が一時的によくなっても、悪い姿勢と硬くなった筋肉が改善されていないためです。筋肉を緩めて緊張をほぐし、さらに伸ばしてやることで柔軟な身体をつくることができれば、正しい姿勢が身につき、肩こりや腰痛が改善され、頭痛に悩まされることもなくなります。
ここでは、筋肉の柔軟性を取り戻して体幹が改善されるストレッチを、部位別に15種類紹介します。「肩がこっている」「足が疲れている」といったさまざまな症状別に、効果的なストレッチが選べるような構成になっています。
目次
1 体幹ストレッチとは
1-1 体幹の構造
1-2 ストレッチで身体が柔らかくなるプロセス
1-3 体幹ストレッチの効果
1-4 ストレッチのコツ
2 柔軟な身体をつくる体幹ストレッチ
●首から肩のストレッチ
体幹ストレッチ1 首曲げストレッチ
体幹ストレッチ2 腕引き寄せストレッチ
体幹ストレッチ3 胸張りストレッチ
体幹ストレッチ4 背中伸ばしストレッチ
●腰と股関節のストレッチ
体幹ストレッチ5 足四の字ストレッチ
体幹ストレッチ6 足乗せストレッチ
体幹ストレッチ7 ヒザ引き寄せストレッチ
体幹ストレッチ8 足押さえ込みストレッチ
●腕のストレッチ
体幹ストレッチ9 指合わせストレッチ
体幹ストレッチ10 手首ストレッチ
体幹ストレッチ11 手首裏返しストレッチ
体幹ストレッチ12 二の腕ストレッチ
●脚のストレッチ
体幹ストレッチ13 かかとつかみストレッチ
体幹ストレッチ14 正座ストレッチ
体幹ストレッチ15 ヒザ伸ばしストレッチ
まとめ
1 体幹ストレッチとは
「体幹ストレッチ」は「体幹トレーニング」のひとつの方法で、筋肉を伸ばして柔軟にし、体幹を整えることを目的としたストレッチです。
1-1 体幹の構造
「体幹」とは、頭と手足を除いた胴体の部分を指します。
体幹の中心部である脊椎(背骨)には、上から7つの頸椎、12の胸椎、5つの腰椎があり、体幹を安定させている骨盤へとつながっています。
ゆるいS字カーブを描いている脊椎がゆがんでしまうと、頭痛、肩こり、腰痛、猫背など、いろいろな身体の不調の原因となり、ケガもしやすくなってしまいます。
体幹を安定させるために、背骨や骨盤の周辺にある筋肉を強化することが、一般的な体幹トレーニングの目的です。
1-2 ストレッチで身体が柔らかくなるプロセス
ストレッチは、筋肉を伸ばして身体を柔らかくするために行います。ストレッチで身体が柔らかくなるプロセスは次のようなものです。
【2】骨につく筋肉は骨を挟んで対になっているものが多く、一方の筋肉を伸ばせば反対側の筋肉は縮む構造になっています。ストレッチでも、どこかの筋肉を伸ばせば、反対側の筋肉が縮みます。
【3】ストレッチをして筋肉の伸縮を繰り返すと、その筋肉には柔軟性が出てきます。筋肉が柔軟になると、それまで以上に伸びるようになり、関節の可動域も広がります。
1-3 体幹ストレッチの効果
体幹ストレッチは、体幹の筋肉を伸ばすだけでなく、連動して動く手足の筋肉も伸ばして関節の可動域を広げ、身体全体の動きをスムーズにします。具体的には、以下のような効果があります。
1-3-1 身体を動かすのが楽になる
筋肉が柔らかくなると、身体を楽に動かせるようになります。
デスクワークなど、長時間同じ姿勢のままでいると、首、肩、背中、腰などの筋肉が緊張して硬くなります。筋肉が硬くなると肩こりや腰痛を引き起こし、身体を動かすことがおっくうになります。さらに、身体を動かさなくなると体内に脂肪が蓄積して、体重の増加にもつながるのです。
ですが、ストレッチで筋肉を柔らかくすると、この悪循環を断ち切ることができるのです。
1-3-2 猫背や反り腰が改善される
体幹部を中心としたストレッチで肩から背中にかけての筋肉をほぐすことによって、猫背や反り腰、背中の張りなどが改善します。
デスクワークなどで同じ姿勢を続けたために起こる背中や腰の張りは、猫背の原因になっています。さらに運動不足になると、肩や背中の筋肉が硬くなり、身体の不調に拍車をかけることになります。
体幹ストレッチを行ったあとで、肩や背中や腰の深層筋(体の表面近くではなく、骨の周囲にある筋肉)を強化すると、意識しなくても正しい姿勢を自然に維持できる強い体幹をつくりあげることができます。
1-3-3 肩こりや腰痛が解消する
肩こりや腰痛の原因は、筋肉が緊張状態になって収縮してしまい、血管を圧迫することにあります。
血流が滞ってしまうと、疲労物質がうまく血管内に排出されなくなり、脳が危険信号として発痛物質を生み出します。このまま筋肉の緊張状態を放置すると身体が危険な状態になり、脳が警告を発します。それが痛みやこりなのです。
ストレッチで筋肉の伸縮を繰り返すと、筋肉内の血管は圧迫から解放され、血流がよくなるため、肩こりや腰痛が解消するのです。
1-3-4 基礎代謝が上がる
深層筋の動きがよくなると基礎代謝が上がり、太りにくい身体になります。
基礎代謝とは、身体が生命維持のために無意識で行っている心拍、呼吸、血液循環、内臓機能といった活動です。
基礎代謝は体内で消費される総エネルギーの70%近くを占めるので、基礎代謝を上げることで効率よくエネルギーが燃やされ、健康な身体になるのです。
1-4 ストレッチのコツ
効果的にストレッチをするためには、3つのコツがあります。
●身体のどこが疲労しているか、どこが硬くなっているかを感じ取る
同じ筋肉でも、根本部分なのか先端部分なのかというように、できるだけ的確な部位を感じ取ることで、伸ばすべき筋肉を把握できます。
●2つのパターンのストレッチを組み合わせる
ストレッチには、反動をつけずにゆっくりと伸ばして姿勢をキープする「静的ストレッチ」と、筋肉の伸縮を繰り返し行う「動的ストレッチ」があります。
この2つを組み合わせることで、効果的なストレッチが行えます。
●ペアストレッチを取り入れる
ここではペアストレッチの具体的な方法は紹介しませんが、自分では伸ばしづらい部位や、とくに可動域を広げたい部位は、ストレッチを手伝う伸ばし役がいると短時間で大きな効果が得られます。関節の可動域がさらに広がります。
ただし、伸ばし役には微妙な力の入れ加減が求められますから、経験者にお願いするのがいいでしょう。
2 柔軟な身体をつくる体幹ストレッチ
ここからは、「首から肩」「腰と骨盤」「腕」「足」という4つの部位に分けて、基礎的な体幹ストレッチを解説していきます。
それぞれ、どういう人が向くかということも書いてありますので、参考にしてください。1日に何度行わなければいけない、何分間行わなければいけないといった制約はありません。
ストレッチは、気持ちよく筋肉を伸ばすものです。痛いと感じる少し前までが伸ばす範囲で、筋肉が伸びたと実感できるところまで続けるのが基本ということを忘れないようにしてください。
首から肩のストレッチ
首や肩のこりには、多くの人が悩んでいます。
4~5kgもの重さがある頭部を支える首と、両腕を動かす支点となる肩は、体幹でもっとも負担がかかる部位ですので、しっかり伸ばして血流を改善しましょう。
基本的にストレッチは、すべて立ち姿勢で行います。
体幹ストレッチ1 首曲げストレッチ
デスクワークなどで首の後ろがこっている人は、このストレッチをしましょう。背中から肩にかけて広がる僧帽筋を伸ばします。
(2)息をゆっくり吐きながら、背筋をしっかりと伸ばしたまま、両ヒジを前に倒して頭だけを前に曲げる。
体幹ストレッチ2 腕引き寄せストレッチ
肩がこっている人におすすめです。肩関節を覆うようについている三角筋を伸ばします。
(2)肩が浮かないようにして、ぴんと伸ばした右ヒジあたりを左腕で引き寄せる。
(3)10秒程度静止したら、左腕も同じ要領で行う。静止した状態で身体をひねると動的ストレッチになり、対側部にも効果がある。
体幹ストレッチ3 胸張りストレッチ
デスクワークで同じ姿勢が続き、背中が張っている人は、このストレッチをしましょう。胸部に広がる大胸筋を伸ばします。
(2)左右の肩甲骨を引き寄せる感じで、後方で腕を上げて、しっかりと胸を張る。
(3)組んだ手を放し、両ヒジを少し上げて前後させると、動的ストレッチになる。
体幹ストレッチ4 背中伸ばしストレッチ
背中がこっている人に向きます。僧帽筋を伸ばします。
(2)頭を前に倒して両腕を伸ばし、背中の肩甲骨を広げる。そのとき、左右均等に力が加わるようにする。
(3)組んだ腕を上下に動かすと、動的ストレッチになる。
腰と股関節のストレッチ
股関節が硬くなると疲労物質がたまり、下半身が重くなってしまいます。下半身の疲労軽減と腰痛の改善をしましょう。
体幹ストレッチ5 足四の字ストレッチ
普段、ストレッチをまったくしていない人は、このストレッチをしてみましょう。足を閉じるときに作用する内ももの内転筋群を伸ばします。
(2)右ヒザを曲げて右足の裏を左ヒザの内側につける。骨盤を床に押し付けながら股関節を伸ばすことを意識する。
(3)左右の足を変えて同様に行う。
体幹ストレッチ6 足乗せストレッチ
足に疲れが溜まっている人におすすめです。内転筋群を伸ばします。
(2)右足首を左ヒザに乗せて、股関節周りを伸ばす。左右を変えて同様に行う。
(3)左ヒザを抱え込むと動的ストレッチになって、お尻の筋肉も伸びる。
体幹ストレッチ7 ヒザ引き寄せストレッチ
よく歩く人に効果的なストレッチです。お尻の筋肉である臀筋群を伸ばします。
(2)抱えた右ヒザを胸に引き寄せて、お尻とももの裏を伸ばす。左脚はしっかりと伸ばしておく。
(3)左右の脚を変えて同様に行う。
体幹ストレッチ8 足押さえ込みストレッチ
腰が張っている人に向けたストレッチです。臀筋群を伸ばします。
(2)腕を広げたまま、左足首で右脚を内側へ倒して身体をひねる。手のひらや肩が浮かないようにする。
(3)左右を変えて同様に行う。
腕のストレッチ
体幹部のストレッチと合わせて、手足のストレッチも行いましょう。関節周りの筋肉に柔軟性をもたせて関節への負担を減らし、体幹部の筋肉との連動をよくすると、体幹への負担も軽減されます。
体幹ストレッチ9 指合わせストレッチ
重い荷物をよく持つ人に向いています。ヒジから指先まで細長く続く前腕屈筋群を伸ばします。
(2)指を広げたまま、指先から指の付け根までをつけるように両方から押し付ける。手のひらはくっつけない。
(3)指を合わせたまま手首を前後に回すと動的ストレッチになる。
体幹ストレッチ10 手首ストレッチ
手首やヒジがこる人におすすめです。前腕屈筋群の裏側にある前腕伸筋群を伸ばします。
(2)左手で右手の甲をつかみ、手首をゆっくりと深く曲げる。
(3)左右を変えて同様に行う。手首を外側にひねると動的ストレッチになり、伸びる部位が変わる。
体幹ストレッチ11 手首裏返しストレッチ
手首やヒジがこる人に向けたストレッチです。前腕屈筋群を伸ばします。
(2)左手で右手の指をつかみ、ゆっくりと深く反らせる。
(3)左右を変えて同様に行う。手首を外側にひねると動的ストレッチになり、伸びる部位が変わる。
体幹ストレッチ12 二の腕ストレッチ
腕が重たいと感じる人は、このストレッチをしましょう。曲げた腕を伸ばすときに大きく作用する上腕三頭筋を伸ばします。
(2)ヒジを真上に上げて胸を張り、左手で右ヒジを後方へ押さえ込んで二の腕からワキにかけて伸ばす。
(3)左右を変えて同様に行う。上体を左右に倒しながら行うと動的ストレッチになって、体幹部の筋肉も伸ばすことができる。
脚のストレッチ
ふくらはぎや太ももの裏側にあるハムストリングは疲労しやすい部位なので、運動する前によく伸ばしておきましょう。体重を支えている足首やアキレス腱は常に負担がかかりますから、柔軟性が大切です。
体幹ストレッチ13 かかとつかみストレッチ
日ごろ、あまり運動をしないという人におすすめです。ふくらはぎとかかとをつなぐアキレス腱を伸ばします。
(2)右の太ももに体重をのせて上体を前に傾け、右のアキレス腱を伸ばす。かかとが浮かばないよう、しっかり押さえておく。
(3)左右を変えて同様に行う。
体幹ストレッチ14 正座ストレッチ
日ごろからよく歩く人は、このストレッチをしましょう。太ももの表側にある大腿四頭筋を伸ばします。
(2)胸を張りながら上体を後ろに反らせて両手を肩の下につき、体重を後ろにかけて太ももの前部分を伸ばす。両ヒザは、床から浮かないようにする。
体幹ストレッチ15 ヒザ伸ばしストレッチ
足に疲れを感じている人におすすめです。太ももの裏側にあるハムストリングを伸ばします。
(2)両手で右足の指先をつかみ、息をゆっくりと吐きながら身体を折り曲げる。左右の肩が傾かないようにして、ムリのない範囲で行う。
まとめ
体幹ストレッチは、誰でも簡単に取り組むことができる健康法です。自分の症状にあったストレッチで体幹を改善して、頭痛や肩こりといった身体の不調を取り除きましょう。
【参考資料】
『「体幹」を鍛えるとなぜいいのか?』(PHP研究所・2012年)
『体幹力身につるコア・ストレッチ』(成美堂出版・2013年)
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