脳卒中を予防する4つのポイント-危険因子を減らす生活とは?

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「脳卒中」という病名は、少し古いイメージがあるでしょうか。
でも、古い割には、脳の血管に起こるトラブルが原因ということはわかっていても、どのような症状の病気なのかはっきりしないという人が多いのではないでしょうか。

脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりして起こる病気の総称で、脳の動脈が詰まる「脳梗塞」、脳の動脈が破れて出血する「脳出血」、脳にできた動脈瘤が破裂して出血する「くも膜下出血」に分類されます。

こうした脳の血管に起こるトラブルを防ぐ予防対策は、生活習慣の改善、とくに食生活と運動が基本となります。
病院にロビーなどによく置いてある、脳卒中や高血圧にかんするパンフレットには、必ずこの2つの生活習慣について書かれていますよね。

ここでは、脳卒中の正しい予防法を理解するために、「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」「肥満」という4つのポイントから、危険因子を減らす方法を解説します。

 

目次

1. 高血圧を管理する
1-1. 3つのリスク群
1-2. 減塩と喫煙・節酒
1-3. 軽い有酸素運動

2. 糖尿病を管理する
2-1. 糖尿病の診断基準
2-2. 血糖値の急上昇を防ぐ食事
2-3. インスリンの効果を高める運動

3. 脂質異常症を防ぐ
3-1. 脂質異常症の診断基準
3-2. コレステロールと中性脂肪の正しい知識
3-3. 脂質異常症を改善する食生活

4. 肥満を進行させない
4-1. 適正体重を知る
4-2. 皮下脂肪型と内臓脂肪型の違い
4-3. 糖質過多に注意

まとめ

1. 高血圧を管理する

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病気に「かかりやすい要因」を「危険因子」と呼びます。
脳卒中の危険因子には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、不整脈、喫煙や飲酒などがあり、これらは努力すれば少なくできるもの。

年齢、性別、脳卒中の家族歴なども危険因子となりますが、これらの要因は変えられないものです。

脳卒中を引き起こす最大の危険因子である「高血圧」は、自覚症状があまりないために放置されがち。
常に血管に大きな圧力がかかって血管壁が傷つくと、血小板などが付着して動脈硬化を起こし、脳梗塞の原因となります。

また、高血圧が続くと動脈瘤をつくる原因にもなりますから、脳出血も起こしやすくなるのです。
ですから高血圧の人は、血圧の管理が最大の予防法となります。

1-1. 3つのリスク群

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日本高血圧学会の診断基準では、理想的な血圧を、収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満と設定し、正常値とされるのは130/85mmHg、140/90mmHgを超えると高血圧と診断されます。

以前は140/90mmHg以下であれば正常域とされ、160/95mmHg以下でも、医学的には正常域とみなす「境界域高血圧」とされていましたから、1999年以降の現行基準は大幅に変更されていることがわかります。

高血圧と診断された場合、ほかにもっている危険因子の内容によって、「低リスク群」「中等リスク群」「高リスク群」の3グループに分けられ、それぞれ治療方法が決められています。

低リスク群

Ⅰ度高血圧(140~159/90~99mmHg)であっても、ほかに危険因子がなければ生活習慣の見直しを行い、3カ月経っても140/90mmHg以上であれば降圧剤による治療を行います。

中等リスク群

Ⅰ度高血圧で糖尿病以外の危険因子がある人、Ⅱ度高血圧(160~179/100~109mmHg)で危険因子のない人がこのグループにあたり、生活改善を行って1カ月経っても140/90mmHg以上であれば降圧剤による治療を行います。

高リスク群

Ⅲ度高血圧(180/100mmHg以上)、あるいはⅠ度高血圧やⅡ度高血圧で糖尿病、慢性腎臓病、臓器障害、心血管病のいずれかがあると高リスク群とみなされ、生活習慣の改善を行うとともに、ただちに降圧剤治療を行います。

1-2. 減塩と喫煙・節酒

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食生活の見直しでは、肥満の場合はダイエットを行い、体重を落とすことによって血圧を下げます。

食べ物は、塩分を減らすことが大きなポイントとなり、「麺類のスープは残し、みそ汁は具沢山にする」「ハム、ベーコン、かまぼこ、漬物などの塩分の多い加工品を摂り過ぎない」「減塩醤油や減塩みそを使う」「出汁の風味を生かして薄味にする」といった工夫によって、1日の塩分摂取量を男性は8g未満、女性は7 g未満に抑えます。

また、大きな危険因子である喫煙はただちにやめる必要があります。
ストレス解消であるとか、個人の嗜好品といっていた時代はすでに過去のもの。
受動喫煙で他人にまで被害を及ぼす喫煙は、脳卒中の危険因子に限らず、諸悪の根源でしかありません。

少量の飲酒は身体によい影響を及ぼすことがわかっていますが、飲み過ぎは脳卒中の引き金になります。
ですから予防対策としては、禁煙と、禁酒ではなくて節酒が大事なのです。

1-3. 軽い有酸素運動

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脳卒中の予防に限らず、あらゆる生活習慣病の予防として、適度な運動は欠かせません。
健康法でも「適度な運動」という言葉がよく使われますが、はたしてどのような運動が「適度」なのでしょう。

最新の医学では、「息が切れない程度の軽い有酸素運動」が、健康な生活や生活習慣病の予防に適しているとされています。

ウォーキングや、エクササイズなどの体操に代表される有酸素運動は、かつて、30分以上続けなければ効果が出ないなどといわれたこともありましたが、現在は5分でも10分でも効果があるとわかっています。

重要なのは、汗をかきすぎたり息が切れるほどの運動をしてしまうと、体内で大量の活性酸素が発生して抗酸化対策が必要となるので、あくまでも軽い有酸素運動を毎日続けること。
老化や様々な病気の原因として注目されている活性酸素を増やさないことは、脳卒中の予防としても大きな意味をもっています。

 

2. 糖尿病を管理する

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厚生労労働省が2016年に行った「国民健康・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる人と、可能性が否定できない人をあわせると2000万人に達しています。

2012年の調査よりは減少傾向にあるものの、糖尿病が強く疑われる人のうち、治療を受けているのは男性で65.9%、女性で64.3%しかいないという点が問題。
3分の1以上の人が放置してしまっているのです。

高血糖状態が続くと、とくに脳内の血管の動脈硬化を促進するので、血糖値の管理は重要な予防対策のひとつです。

2-1. 糖尿病の診断基準

糖尿病の診断基準は現在、空腹時の血糖値が110mg/dL未満であれば正常型、110~125mg/dLで境界型、126mg/dL以上で糖尿病となっています。

境界型とは、いわゆる糖尿病予備軍のことであり、生活習慣の見直しが必要となります。
境界型の人の多くは、血糖値が高くても自覚症状が現れないので注意が必要。
定期的な血液検査で、自分の血糖値を把握しましょう。

2-2. 血糖値の急上昇を防ぐ食事

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糖質が体内に入ると、血液中の糖分が増え、その血糖値を下げるために膵臓からインスリンが分泌されます。

糖質の大量摂取や、とくに白米や白糖などを摂取すると、血糖値が急上昇します。
すると大量のインスリンが分泌されて働き、今度は血糖値が急降下、そうなると副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されて血糖値が上昇。

この血糖値の急上昇と急降下は「血糖値スパイク」と呼ばれる現象で、繰り返すと糖尿病の引き金となります。

血糖値を急上昇させない食事は、白米を玄米に替える、白糖をブラウンシュガーに替える、食パンは全粒粉のものに替えるというように、白いものを食べないようにすることがひとつのポイント。

また、ナトリウムを排出するカリウムの摂取や、2:1で摂取すると血圧を下げる作用があるカルシウムとマグネシウムの摂取などを意識して、そうした栄養素を多く含む食材をを積極的に摂りましょう。

ビタミンやミネラルなどの微量栄養素はサプリで摂取するよりも、ほかの栄養素と協力して働くように食材で摂取することが大事で、とくにサプリによるカルシウムなどの単体摂取は危険です。

2-3. インスリンの効果を高める運動

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前に解説した軽い有酸素運動は、インスリンの働きを高めて血糖値を下げる効果もあります。
有酸素運動は、体内の脂質をエネルギーとして酸素を必要とし、活性酸素を生み出す運動。
無酸素運動は、体内の糖質をエネルギーとして酸素を必要とせず、乳酸を生み出す運動です。

糖質がエネルギーとして使われるのは、瞬発力が必要とされる短距離走や筋トレなどで、そうした運動が無酸素運動にあたります。

無酸素運動は、活性酸素を発生させず、かつては老廃物と考えられていましたが肝臓でエネルギーに変換される貴重な物質であることがわかった乳酸を発生させるので、健康的なダイエットの一環として注目されていますが、急激な高血糖や低血糖を起こす可能性があるので、糖尿病が疑われる場合は注意しなければいけません。

 

3. 脂質異常症を防ぐ

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体内のコレステロールや中性脂肪が過剰になる「脂質異常症」は、かつて「高脂血症」と呼ばれていました。

脂質異常症になると動脈硬化が促進されるので、とくに脳梗塞の重大な危険因子です。
脂質異常症は、「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセライド(高中性脂肪)血症」に分類され、とくに重大な危険因子とされているのが「高LDLコレステロール血症」です。

脂質異常症の予防や治療も、食生活と運動が基本となりますが、まず脂質を理解することが大事。
三大栄養素のひとつである脂質は、脳卒中の危険因子である脂質異常症の原因となる一方で、生命維持に必要な物質でもあるのです。

3-1. 脂質異常症の診断基準

脂質異常症の診断は、空腹時の血液検査で行われます。
コレステロールは食事の影響を受けないのですが、中性脂肪の値には影響するためです。

血液検査の値からコレステロール値を求める計算式は、次のようになります。

LDLコレステロール値

総コレステロール値 - HDLコレステロール値 - (中性脂肪÷5)

Non-HDLコレステロール値

総コレステロール値 - HDLコレステロール値

今までは、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪という3つの値が診断の対象でしたが、HDL以外のコレステロール総量を示す「Non-HDLコレステロール値」は、LDLだけでなく全ての悪玉コレステロールの量が反映されることから、最近は注目されています。

診断基準となる値は以下のとおり。

LDLコレステロール

140mg/dL以上   高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL   境界域高LDLコレステロール血症

HDLコレステロール

40mg/dL未満   低HDLコレステロール血症

中性脂肪

150mg/dL以上   高中性脂肪血症

Non-HDLコレステロール

170mg/dL以上   高Non-HDLコレステロール血症
150~169mg/dL   境界域高Non-HDLコレステロール血症

3-2. コレステロールと中性脂肪の正しい知識

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「LDLは悪玉、HDLは善玉、中性脂肪は悪いもの」。
脂質異常症が多くなっている現在では、こんなイメージをもっている人が多いのですが、脂質の正しい知識をもつことが、脳卒中の予防につながります。

人間の体内にある脂質は4種類あって、それぞれの役割があります。

① コレステロール

全身の細胞膜の材料となり、ホルモンやビタミンD合成の材料にもなります。
70%は体内で合成されるので、食事からの摂取量だけでは推し量れません。

② 中性脂肪

皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられて、メインのエネルギー源となります。

③ リン脂質

体内の脂質の運搬にかかわり、細胞膜の主成分となります。

④ 遊離脂肪酸

中性脂肪が分解されて血液中に放出されたもので、エネルギーとしてすぐに利用可能です。

コレステロールや中性脂肪は油ですから、そのままでは血液に溶けないため、「リポタンパク」というタンパク質が周りを包んで運搬されます。
「LDL」や「HDL」というのは、この「リポタンパク」の名称。

「LDL」は、コレステロールを全身に運ぶ役割があるのですが、余ったものはそのままになってしまいます。
「HDL」の役割は、この全身で余ったコレステロールを回収すること。
ですから、LDLを必要以上に増やさず、HDLを増やすことが大事なのです。

中性脂肪は、食事から摂取した脂質からつくられると思っている人は注意。
中性脂肪となるのは、体内で余った糖質と脂質です。
現代の日本人の食生活では、脂質よりも、ご飯やパン、麺類などの糖質が中性脂肪を増やす主な原因となっているのです。

3-3. 脂質異常症を改善する食生活

脂質異常症を改善する食生活のポイントは2つ。
糖質の摂取を抑えることと、良質の脂質を摂取することです。

良質の脂質とは、LDLを減らしたり、HDLを増やす油です。
常温で液体の不飽和脂肪酸の食用油には、次のような特性があります。

① オメガ3系

α-リノレン酸、DHA、EPAなどの不飽和脂肪酸は、エゴマ油、アマニ油、青魚、クルミなどに多く含まれ、LDLを減らしてHDLを増やす働きがあります。

② オメガ9系

オリーブオイル、キャノーラ油などに多く含まれるオレイン酸は、HDLを減らさずにLDLを減らす働きがあります。

③ オメガ6系

コーン油、大豆油などに多く含まれるリノール酸は、LDLを減らしますが、HDLも減らしてしまうことがあります。

脂質の摂取は、オメガ3系を積極的に摂り、オメガ6系を控えるのがポイントです。
また、酸化したLDLは血管壁を傷つける要因になるので、抗酸化食品を積極的に摂ることも脳卒中の予防には欠かせません。

 

4. 肥満を進行させない

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肥満は、多くの生活習慣病の温床となります。
ここまで読んでおわかりだと思いますが、脳卒中の危険因子はメタボリックシンドロームの原因とほぼ一致します。

自分の適正体重を知り、体重の管理を続けることが、脳卒中の予防にも大きな効果をもたらすのです。

4-1. 適正体重を知る

肥満度を表す値としてよく用いられるのは、「BMI(ボディ・マス・インデックス)」と「体脂肪率」です。
BMIは、「体格指数」とも呼ばれるもの。

BMI = 体重(kg) ÷ [身長(m)×身長(m)]
適正体重(kg) = 身長(m)×身長(m)×22

BMIが25を超えると肥満と診断され、理想的な数値は22といわれています。
BMIが25以上で、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの危険因子がある場合や内臓脂肪が多い場合は、肥満症の治療を受ける必要があるとされています。
体脂肪率は男性が25%以上、女性が30%以上だと肥満になります。

4-2. 皮下脂肪型と内臓脂肪型の違い

肥満は、体脂肪の分布によって、皮下脂肪型と内臓脂肪型に分けられます。
血管を痛める主な原因となるのは内臓脂肪。

皮下脂肪はエネルギーの貯蔵庫ですが、内臓脂肪は臨時のエネルギー貯蔵庫で、常に血液中に脂肪酸、コレステロール、中性脂肪などを放出し続けるという特徴があります。

内臓脂肪型はお腹まわりが太っているタイプで、ウェストサイズが男性で85cm以上、女性で90cm以上だと、内臓脂肪型肥満と判定されます。

4-3. 糖質過多に注意

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肥満を防ぐ方法も、食生活と運動であることに変わりはありません。
現代の日本人の食生活で大きな問題となっている「糖質の過剰摂取」は、とくに気をつけなければいけないポイントです。

元来、白米を1日に2回も3回も食べていた食習慣に、欧米的な脂質過剰になりやすい食習慣が摂り入れられたのですから、中性脂肪が多くなるのは当然ですね。

糖質制限がこれほど普及したのは、単にダイエットという目的だけでなく、現代の日本人の食生活を見直そうという健康的な意識が働いているからです。

もちろん甘いモノの過剰摂取はいけませんが、もっとも大きな原因となっているのが、白米、パン、麺類などの主食類なのです。
ご飯を小さめの茶碗に1杯で160kcal、これは角砂糖15個に匹敵するカロリー。

白米を玄米などに替えて血糖値の急上昇を抑えることは可能ですが、摂取するエネルギー量はそれほど変わるものではありませんから、やはり「食べすぎ」に気をつけることが脳卒中の予防にも大事だということですね。

 

まとめ

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脳卒中の危険因子を減らす手段として、ストレスケアも欠かせないポイントです。
ストレスとは、 人間が五感で受けた刺激が脳に伝わって生まれるマイナスの感情に対する防御反応。

適度なストレスは思考力や集中力を高め、達成感や充実感といったプラスの感情を生みますから必要なものですが、過度のストレスは血圧の上昇や動脈硬化の原因となります。

ストレスのない生活というものはあり得ませんから、日頃からストレスケアを積極的に行うことも脳卒中の予防につながります。
ストレスケアの秘訣は、自分にとって「心地よいこと」「楽しいこと」「没頭できること」などをできるだけ多くもつことです。

ここで解説した脳卒中の予防法をさらに深く知りたい方は、日本脳卒中協会などの専門機関が公開しているpdfや、専門の書籍をご覧ください。

 

【参考資料】
・『脳梗塞 脳出血 くも膜下出血』 主婦の友社 編  主婦の友社 2018年
・『NHKきょうの健康 血管を守る250のQ&A事典』 主婦と生活社 2018年

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