「接客業に従事しているけれど、リピーターがつかない」
「どんな風にお客様と接すれば売上があがるのか」
「自分のサービスが正しいのかどうかわからない」
そんな悩みを抱えている方はいませんか?
接客の世界で結果を出したければ、ただお客様に期待されている通りのサービスをしているだけでは足りません。お客様の期待をはるかに超える良質なサービスを提供し、絶対的な信頼関係を築く必要があります。
ここでは、かつてクレジットカード会社JCBで14年間にわたりのべ約16万人の顧客対応を行った実績を持つ網野麻理さんの『期待以上に応える技術』(フォレスト出版)から、お客様を満足させるための究極の接客メソッドをご紹介します。
目次
1 お客様の「期待」を超える6つの接客メソッド(基本編)
接客の基本1 相手に気づかれないサービスが信頼関係を築く
接客の基本2 正しい情報がお客様を喜ばせるとは限らない
接客の基本3 ファンを増やすために自分が一番のファンになる
接客の基本4 無理な要望も断らず、真の要望を汲み取る
接客の基本5 日頃から情報収集を怠らず「お客様マニア」になる
接客の基本6 積極的に提案し、お客様の可能性を広げる
2 お客様と絶対的な信頼関係を築く4つの接客メソッド(アドバンス編)
接客アドバンス編1 お客様と自分との心の距離を知る
接客アドバンス編2 2つの雑談を使い分けて距離を縮める
接客アドバンス編3 「ジョハリの窓」三段活用で信頼関係を築く
接客アドバンス編4 指名を増やす魔法の言葉「いつも」
3 まとめ
1 お客様の「期待」を超える6つの接客メソッド(基本編)
接客業に従事している人びとにとって、「どうしたらお客様に満足していただけるのか?」という問いは、永遠のテーマと言えるでしょう。
通常の接客は、「お客様の求めていることを提供すること」が求められます。例えば、喫茶店やレストランで、お冷が空になっているお客様に呼ばれたら、水を注ぎに行く。それが接客です。
しかし、それはあくまでも「期待されているサービス」を提供しているだけに過ぎません。お客様にリピーターになってもらうためには、お客様の「期待を超えるサービス」を提供する必要があるのです。
ここでは、どのようにすればお客様の期待を超える接客ができるのか、その基本ポイントについてご紹介していきます。
接客の基本1 相手に気づかれないサービスが信頼関係を築く
お客様から信頼されるためには、お客様の期待を超えるサービス、通常よりももっと「深い」サービスが必要になります。
そういったサービスは、往々にしてお客様に気づかれないほど繊細な気配りに支えられています。
例えば、あるお寿司屋さんは、カウンターにお客様が座った瞬間に、その人の利き手を見るそうです。そして、それに応じてネタやお茶を出すときの位置を変えるわけです。
また、お店での接客においても疲れているお客様にはゆったりとしたペースで、急いでいるお客様にはきびきびとしたペースで応接するなどを使い分けている店員もいます。
こうした接客は、繊細すぎてお客様には気づかれないことがほとんどですし、「ありがとう」と言ってもらえることもないかもしれません。
しかし、こうしたサービスは言葉では説明できない、いわば右脳で感じる心地よさを提供することができます。そのお客様も、上手く説明できないけれど、あなたの接客を受けると何だか心地が良いと感じてくれるでしょう。
相手に気づかれなかったとしても見返りを求めずに、お客様のことを考えて対応しましょう。
接客の基本2 正しい情報がお客様を喜ばせるとは限らない
もし、あなたがホテルのフロント係として働いているときに、お客様からこんな質問をされたとします。
「そちらのホテルから○○へ行くには、最寄り駅はA駅が一番近いはずですよね?」
しかし、実際にはA駅よりもB駅の方が近かった場合、あなたは何と答えますか?
「いえ、B駅のほうが近いです」と答えた場合、そのお客様は「A駅のほうが近いはず」と思い込まれているわけですから、正しい情報を押し通そうとすると、どんなに丁寧な口調で伝えても結局は言い負かすことになりかねません。
正しい情報を伝えることが、必ずしも最良の選択肢であるとは限らないのです。これは、マニュアルについても同様のことがいえます。お客様の状況やニーズによっては、マニュアル通りの対応ではむしろ不興を買ってしまうことがあります。
自分のサービスが、自分の主張を押し通すだけの自己満足に陥っていないか、本当にお客様の求めているものを提供できているか、今一度確認してみましょう。
接客の基本3 ファンを増やすために自分が一番のファンになる
接客業をしている人にとって、リピーターを作ることは誰もが目指す目標の1つだと思います。なぜなら、リピーターが増えれば増えるほど、あなたは接客の世界で成功するからです。
リピーターとは、言い方を変えれば「あなたのファン」ということになります。そして、あなたのファンとは、「あなたでなければダメ」「あなたがいるからこの会社にお願いしている」、そう言ってくださるお客様のことです。
それでは、どうすれば自分のファンを増やすことができるのでしょうか。答えは、あなた自身が「あなたが勤めている会社のファンになる」ことです。
自分が勤めている会社のファンになれば、いい加減な接客などできなくなります。自分の会社をお客様にもっと好きになって欲しいから、と誠心誠意尽すようになりますし、当然ながら自社の商品やサービスにも詳しくなり、サービスの質も向上します。
自分が扱っている商品やサービス、ひいては自分の勤めている会社を好きになってください。それらに誇りを持ち、誠意を持ってお客様に尽くしていれば、必ずあなたのファンは増えていきます。
接客の基本4 無理な要望も断らず、真の要望を汲み取る
接客業に従事していると、どう考えても無理な要望をぶつけられることもあります。
「すでに完売になっている洋服がどうしても欲しい」
「どうしても今すぐに必要な商品があるから送って欲しい」
「雑誌で見かけただけのうろ覚えの本を探して欲しい」
などなど。こんな要望をぶつけられたとき、あなたならどうしますか?「それは無理です」とNOを突きつけることは簡単です。しかし、それでは接客術としては三流以下。むしろ「術」ですらありません。
そうしたときは、「お客様の真の要望を汲み取る」ようにしましょう。お客様が求めている商品そのものをご用意できなくても、そのお客様が「なぜその商品を求めているのか」「その要望の根っこにはどんな欲求があるのか」を分析し、お客様のその思いに寄り添って、代替品を探してさしあげたらどうでしょうか。
ご自分がそうされたら、最初の要望はたとえ叶わなくても、「あぁ、この人にお願いしてみてよかった」と思うはずです。
お客様の気持ちに寄り添い、お客様を突き放して「一人」にしないこと。こうした態度が、期待を超える接客を実現し、リピーターを増やすのです。
接客の基本5 日頃から情報収集を怠らず「お客様マニア」になる
例えば、あなたが美容室に行ったとき、これまでに何度もカットを担当してくれたスタイリストが、前に聞いたことがあるはずのあなたの職業について忘れていたら、どう思うでしょうか?
「あぁ、この人は私に興味がないのだな」と思いますよね。逆に、あなたの職業だけでなく、趣味や最近興味を持っていることなど、雑談の中に出てきた話題を事細かに覚えていたら、あなたは「この人は自分を理解してくれている!」と嬉しくなるはずです。
リピーターを増やしたいのなら、あなたはお客様にとっての理解者、もっと言えば「マニア」になる必要があります。相手の好みや生活スタイルだけでなく、性格、趣味嗜好、価値観、家族構成にいたるまでを徹底的に記録して、覚えておくのです。このお客様のことなら誰にも負けないぞ、というくらいまでとことん知り尽くしてみてください。
その誠意は必ずお客様にも伝わり、あなたから理解されていると感じ、あなた自身がそのお客様にとっての「居心地のよい場所」となることができるのです。そうなれば、リピーターになってくださるのはほぼ間違いありません。
接客の基本6 積極的に提案し、お客様の可能性を広げる
お客様に気に入られようとするあまり、相手の要望に応えるだけの「受け身」の接客をしてしまう人は少なくありません。
しかし、それではどんなに頑張っても、期待を超える接客にはならないでしょう。
時には、そのお客様にとって自分が「いいと思った」アイデアを思い切って提案してみることも必要です。例えば、ブティックであるスカートを欲しいと言っているお客様がいたとします。お客様はブラウンの色を所望していても、あなたが「ブラックのほうが合うのに・・・」と思っていたら、どうしますか?
ブラウンのスカートも持って行きながら、ブラックも同時に持って行ってさりげなく薦めてみましょう。結果的に、「それはいらない」と言われてしまうかもしれませんが、あなたがプロとして本当にいいと思っているのなら、提案してみるだけの価値はあります。
その試みが上手くいけば、あなたはお客様の予想を良い意味で裏切る提案をすることができ、お客様の満足度もかなり高いものになるでしょう。
2 お客様と絶対的な信頼関係を築く4つの接客メソッド(アドバンス編)
さて、お客様の期待を超える接客の基本を押さえたところで、さらに先のステップに進んでいきましょう。
ここでは、あなたとお客様とのコミュニケーション、ひいては信頼関係そのものの質を大幅に向上させるテクニックをご紹介します。
ここに書かれてあることを意識して接客を磨いていけば、No.1の売上を達成しつづけることも夢ではないでしょう。
接客アドバンス編1 お客様と自分との心の距離を知る
お客様との信頼関係を築くうえでは、お客様と自分との心の距離を知ることが重要です。
このことに無頓着でいると、相手の心に土足で上がり込むような接客になってしまったり、あるいは遠慮しすぎてしまって良いところを見せられなかったりといったことになってしまいます。
人と人との心の距離は何で測ることができると思いますか?答えは、「話の濃さ」です。
心の距離が近い人同士は、プライベートなことも含めありのままの自分をさらけ出すような「濃い話」をします。一方、心の距離の遠い人同士は、プライベートの話はほとんどせず、うわべだけの「薄い話」に終始します。
この心の距離は、心に存在する5つの扉に喩えることができます。自分と相手との間に5つの扉があり、それらのうちのいくつの扉が開いているか、あるいは閉じているかということで、二人の心の距離を測るわけです。
何もガードしていない、ありのままの自分でいられる最も近い距離
◎扉の枚数 1枚
恥ずかしかったり、イヤだったりした過去、または自分の秘密についても打ち明けられる距離
◎扉の枚数 2枚
仕事以外でもどこかへ行って時間を過ごせる関係。プライベートの付き合いができる距離。
◎扉の枚数 3枚
仕事をしている場で、プライベートの話もできる距離。
◎扉の枚数 4枚
仕事はともにするが、仕事以外の話はしない距離。
◎扉の枚数 5枚
できればお互いに顔を合わせたくないと思っている距離。
接客をする際には、そのお客様と自分との心の距離がどの程度近いのかを探り、自分はいつもオープンマインドで接しながら、相手が扉を開くのをじっくり待ちましょう。くれぐれも相手との距離を縮めるために、扉を無理矢理開けるようなことはしないでください。それでは無神経な人だと思われてしまいます。
距離を意識しつつ、こちらは扉を開いておいて、相手が自然に扉を開くのを待つ。これが接客のうえで必要な心構えだと言えましょう。
接客アドバンス編2 2つの雑談を使い分けて距離を縮める
お客様と「濃い話」ができるようになれば、絶対的な信頼関係が築けたといってもいいでしょう。しかし、そのような状態へ辿り着くまでには、焦らず着実に距離を縮めていく必要があります。
そのために有効なのが「雑談」ですが、あなたは雑談のジャンルをどれだけ認識していますか?雑談のジャンルは、「キドニタテカケシ衣食住」という言葉で表現されます。
ド:道楽
ニ:ニュース
タ:旅
テ:テレビ
カ:家族
ケ:健康
シ:趣味
衣:衣類
食:食事
住:住まい
これらを覚えておくと、雑談のネタに困ったときに大変役に立ちます。また、雑談にはおおざっぱに分けると2つのタイプがあります。
「プライベートな雑談」・・・仕事、家族、旅行、健康など。
心の距離が遠いほど、オフィシャルな雑談のほうがしやすいため、まずはそういった雑談から入って、お互いに打ち解けてきたら次第にプライベートな雑談に移行していくようにするのがいいでしょう。心の距離が遠いのにプライベートな雑談から入るのは得策とは言えません。
接客アドバンス編3 「ジョハリの窓」三段活用で信頼関係を築く
あなたは、ジョハリの窓というものを知っていますか?ョハリの窓とは、私たち人間の側面を、
2. 盲点の窓・・・自分はわかっていないが他人はわかっている自分
3. 秘密の窓・・・自分はわかっているが他人はわかっていない自分
4. 未知の窓・・・自分も他人もわかっていない自分
の4つに分けて、コミュニケーションと自己開示との関係を解説するために提案されたモデルのことです。
このジョハリの窓は、お客様との信頼関係を築くのに大変役に立ちます。
まず、相手との距離を縮めるために、「開放の窓」、つまり明らかになっている相手の側面をほめます。見るからに「明るく陽気そうな人」であれば、そこをほめることによって相手に違和感を抱かせずに距離を縮めることができるのです。
次に、「秘密の窓」、つまり相手はわかっているが他人はわかっていない部分をほめます。相手の中に隠されている側面を見つけなければならないため、想像力が求められます。
例えば、「あなたは明るく陽気そうに見えますが、本当はとても繊細な心の持ち主ですよね」という風に、相手が本当はわかってもらいたいと思っているけれど、ほとんどの他人は知らない部分を指摘してほめるわけです。上手く行けば、その人はあなたのことを「自分のことを理解してくれる人かも」と思ってくれるでしょう。
さて、「秘密の窓」をほめて、次第に心の距離が近づいてきたら、最後に「盲点の窓」に入っていきます。相手自身も気づいていないような相手の長所を探し出し、ほめるわけです。これが上手くいけば、相手はきっとあなたのことを真の理解者だと見なしてくれます。
このように、「開放の窓」→「秘密の窓」→「盲点の窓」と相手を褒めていくやり方を「ジョハリの窓三段活用」と呼びます。ぜひ接客の際に意識して行ってみましょう。
接客アドバンス編4 指名を増やす魔法の言葉「いつも」
接客をするうえでお客様に「ありがとう」という感謝の気持ちを表わすことが大切なのは、皆さんおわかりのことと思います。
「ありがとう」という言葉のもつ力は絶大で、それがないのとあるのとでは大違いですが、さらに一歩進めて「いつも」という言葉を付け加えてみましょう。
実際に、そのお客様がいつもあなたの商品やサービスを利用してくださっていなくてもいいのです。
「いつも」という言葉は、相手の自己評価を高めます。本当はいつも助けていただいていなくても、「いつも助けていただきありがとうございます」。本当はいつも応援していただいていなくても、「いつも応援していただきありがとうございます」。
いつもという言葉を付け加えるだけで、言われた方の相手は「自分はいつもこの人のためになることをしている人間なんだ」と思うようになっていくのです。そして、あなたに親近感を覚え、心の距離も近づきやすくなります。
御縁を長続きさせたいお客様がいたら、ぜひ魔法の言葉「いつも」を付け加えてみましょう。
3 まとめ
接客は、決してマニュアル通りにすればよいというものではなく、サービスをする側とされる側との心のやり取りであることがおわかりいただけたと思います。
ご自分の接客サービスに限界や不満を感じていた方は、ぜひここでご紹介したメソッドを導入してみてはいかがでしょうか。
【参考書籍】
『期待以上に応える技術』(網野麻理著・フォレスト出版)
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