誰かの期待に応える必要はない12の理由-認められたい心理とは

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「人の期待に応えたい」という気持ちは誰にでもありますよね?
期待に応えたいと思うのは、決して悪いことではありません。

ところが、メンタルケアやストレスケアが重視されるようになった近年は、この「期待に応えたい」と思う気持ちによってもたらされる弊害が注目されています。
ある日、糸がプッツリと切れるように、「期待に応えることに疲れた」と感じて脱力してしまう人が少なくありません。

「期待に応える」は、英語では“to meet expectations”と表現し、“expectations”は「期待」「予想」といった気持ちを意味し、「会う」「合う」という意味でよく使われる“meet”には、「応じる」「満たす」という意味もあります。

「期待に応える」ということは、「誰かの気持ちを満たす」ということであり、類語としては「希望に沿う」という言い方もされます。
「期待に応えたい」という気持ちは、「誰かの気持ちを満たしたい」「誰かの希望に沿いたい」といい換えることができますよね。

「誰かの気持ちを満たしたい」と思う気持ちがメンタルケアで問題視されるのは、実は、自分の気持ちを満たしたいという「欲求」だからです。
ここでは、人間にとって自然な行動である「欲求」という面から、「期待に応える」ことの問題点を解説していきます。


目次

1. 期待に応えたい気持ちは人を成長させる
2. 誰にでもある親和欲求と認知欲求
3. 個人主義社会で強くなった承認欲求
4. 承認欲求は貯めることができない
5. マウンティングは承認欲求の裏返し
6. 自分の気持ちを優先させてしまう
7. 完璧主義は承認のレベルが高い
8. 流行に流されやすくなる
9. 「いいね!」の魔力
10. 自分を責める「悲劇のヒロイン」 
11. 「いい人」でいるとストレスを溜める
12. 「いい人」は周りも疲れさせる
まとめ

1. 期待に応えたい気持ちは人を成長させる

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「誰かの気持ちに応えたい」「誰かに認められたい」と思うことは、本来、決して悪いことではありません。

自分が認められているという実感は、向上心を高めたり、充実感を得たりできる大切な感情で、自信につながるもの。
人間は、他人に評価されることで自分の実力を推し量り、「自分は間違っていない」という指標にするのです。

たとえば上司から、「○○さん、がんばってるね」「○○さんの仕事は結果を残すね」などと言葉をかけられたら、誰でもうれしいものですよね。
「もっと認められたい」「これからもがんばろう」と、前向きに思うのではないでしょうか。
期待に応えたいという欲求が満たされると、人は快感を得るのです。

他人から伝わるポジティブなリアクションは、人を成長させるといわれます。
努力を続けたり、自分のスキルを磨いたりするモチベーション(目的意識)になるわけです。

ところが、欲求が満たされる快感に依存してしまったり、目的意識が強くなり過ぎたりすると、心の負担が大きくなってメンタルにダメージを負うことに。
ここに、「期待に応える」ことの問題点があるのです。

2. 誰にでもある親和欲求と認知欲求

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「誰かの期待に応えたい」「誰かに認められたい」という気持ちは、心理学で「承認欲求」と呼ばれます。
「欲求」とは、「強く欲しがって求めること」、または「生理的や心理的な欠乏が生じたときに、それを満たそうとする状態」といい換えることができます。

アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人間の欲求を5段階に分類しました。
人間の欲求は、下から「生理的欲求」「安全欲求」「親和欲求」「認知欲求」「自己実現欲求」という5つの層に分かれていて、下の欲求が満たされると上の欲求が起こるという説です。

生理的欲求とは、生きるために「飲みたい」「食べたい」「眠りたい」というように、生死にかかわる欲求。
安全欲求とは、自身の安全を確保したい、安全な生活をしたいという欲求で、生理的欲求と安全欲求は、今の日本で普通の生活をしていれば脅かされることはありません。

意識しやすいのは、じぶんが所属する集団で受け入れてもらいたい、恋人が欲しいというように孤独を嫌う「親和欲求」と、人から特別だと思われたい、注目されたいと思う「認知欲求」です。

5層目の自己実現欲求は、4つの欲求が満たされて起こるもので、自分の能力を発揮して自己を高めたいという欲求といわれ、誰にでも生まれるものではありません。
現実の社会では、ほとんどの人が親和欲求と認知欲求を追い求めているといわれ、この2つの欲求が大きく関与するのが「承認欲求」なのです。

承認欲求はほとんどの人に芽生える欲求であるからこそ、大きな問題にもなるわけです。

3. 個人主義社会で強くなった承認欲求

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学歴がその人間の価値となり、終身雇用が当たり前であった日本では、「特別な個人」になることよりも、「どこに所属しているか」ということが重要でした。
だから、親は子どもに高学歴を望み、子どもは親の期待に応えたいと思ったのです。

どちらかといえば、まだ認知欲求よりも親和欲求の要素が強い承認欲求だったわけです。
ところが、終身雇用社会が崩壊し、大企業に就職しても安泰とはいえなくなった現在、強烈な個性やとびぬけた特技をもっている「個人」が注目されるようになりました。

特別な人だと思われるため、注目される存在になるためには、多くの人に認めてもらわなければいけませんから、認知欲求を満たす承認欲求が強くなる傾向となったのです。
集団よりも個人に焦点があてられる社会になれば、承認欲求が強くなるのは当然の成り行きだといえるのです。

しかし、長らく親和欲求を追い求めてきた日本では、「出る釘は打たれる」という言葉があるように、頑張っていることをアピールしたり、自分を前面に押し出すことを嫌う傾向が残っています。
こういう社会に対してムリをしてしまうことや、心のどこかで承認欲求は悪い事だと思っていることが、ストレスを蓄積させるといわれています。

4. 承認欲求は貯めることができない

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承認欲求は、一度満たされてもその満足感を溜めておくことはできません。
そのときは気持ちが満たされても、しばらくするとまた強い欲求にかられるのです。
だから、承認欲求は定期的に満たさなければなりません。

さらに大変なのは、人間は同じ刺激が繰り返されると、その刺激に対する反応が鈍くなること。
簡単にいうと、慣れてしまうのです。
最初は満足できていた刺激でも、繰り返すうちに物足りなくなっていき、より強い刺激を欲するようになります。

この習性が及ぼすのは、悪い影響ばかりではありません。
たとえば、満足していた給料が物足りなく感じてきたら、自分の欲求が満たされる額に増やそうと努力しますよね。
これは自己実現欲求につながるケース。

一方で問題視されているのが、SNSの「いいね!」のように、現実社会における承認よりも簡単に得ることができる刺激。
ツボを押さえれば簡単に増やせるだけに、慣れてしまうのも早く、ハードルがどんどん上がっていくのです。

5. マウンティングは承認欲求の裏返し

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「期待に応えたい」「認められたい」という承認欲求が厄介である点として、屈折した形で現れることが多いということもあげられます。

たとえば、普段からライバル視している相手や、自分の方が優れていると思っている相手が、自分より優位にいることがわかったときに、その相手に対して冷たい態度をとったり、嫌がらせをしてみたり、論破しようとしたりする人がいます。

自分の能力や成功をひけらかし、優越感に浸ることによって快感を得る人もいますよね。

こうした、自分の方が優位であることをアピールする「マウンティング」という行為は、承認欲求の裏返しであり、羨望、嫉妬、意地といった感情が屈折して表面化するものです。

承認欲求に年齢は関係ありません。
大人ばかりでなく、先生に指されて質問に答えるのではなく、揚げ足をとるような小学生も同様ですし、褒められた同級生に嫉妬から意地悪をしたり、気になる相手を強制的に振り向かせようとちょっかいを出すようなこともマウンティングだといえます。

6. 自分の気持ちを優先させてしまう

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承認欲求を満たしたくて、自分からわざわざ認められにくい状況をつくってしまうケースもあります。
代表的なのは、自分の欲求を一方的に通そうとしてしまうタイプ。

人間は人とのつながりを求めて生きています。
お互いに認め合うことができれば、よい関係が築けるわけです。
ところが、自分の評価ばかりを考えて相手の気持ちを理解しようとしなければ、人間関係に問題を抱えることになってしまいます。

こういう人は、「期待に応えたい」「認められたい」と思っているのは自分だけではなく、相手も同じなのだということに気づかないので、知らぬ間に関係を悪化させてしまうのです。

誰だって、自慢話ばかりする人や常に上から目線でものをいう人とは、付き合いたくないと思いますよね。

7. 完璧主義は承認のレベルが高い

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承認欲求が強くて問題を抱える典型的なタイプに「完璧主義」があります。
「こうあるべき」「こうでなければいけない」「これに限る」というような考え方をする人は要注意。

完璧主義の人のほとんどは、幼少期の体験が原因になっているといわれます。
親や先生から褒められたい、親や先生を喜ばせたいという強い気持ちをもった子どもがそのまま成長してしまい、大人になっても自分に高いハードルを課しているケースが多いのです。

こういうタイプの人は、慣れで認められたいことの基準が高くなっているので、他人に対しても高い基準を求めてしまいます。
さらに、相手から認められて褒められても自分の中で基準が高いので、素直に受け取ることができません。
自分の基準を押し付けようとするので、嫌われてしまいます。

8. 流行に流されやすくなる

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個人主義社会では、個性を伸ばすことがなによりも大事。
好きこと、得意なことで、何か人の役に立つことをすれば、自分を高めることができて人からも認められます。

しかし、承認欲求が強すぎて屈折してしまうと、人と違うことに不安を抱いたり、人と比べることで自分の価値を確認したりして、個性を殺してしまうことがあります。
こういうタイプの人は、流行に流されやすくなるので、価値観が安定しません。

本来、人生も幸福も人それぞれなのですから、人と比べても意味はないのです。
同じように人から認められるのでも、誰かより優れているという理由ではなくて、人の役に立って認められた方が個性は際立ちます。

認められようと頑張るよりも、「個性」「自分らしさ」「誰かのために自分ができること」を大事にすれば、結果的に「期待に応える」ことができるのです。

9. 「いいね!」の魔力

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SNSは、承認欲求の弊害が問題視される大きな要因となりました。
SNSで「いいね!」やリツイートといった反応をもらうのは、簡単に承認欲求を満たす方法なのです。

本来、人から認めてもらったり、期待に応えたりするためには相応の努力が必要であり、だからこそ達成感や充実感も得られるのです。
ところが、SNSで「いいね!」をするのは時間や手間もかからず、いつでもどこにいてもWEBでボタンを押すだけ。
特別に巨大な数字を目指さない限り、手軽に賛同を得ることができる手段です。

しかし、それだけにすぐ慣れてしまい、麻痺しやすい承認だといえます。
「いいね!」をくれた人の数が、自分を認めてくれた人の数だと考えるのは勘違い。
手当たり次第に「いいね!」をする人もいれば、付き合いのような気持ちで押す人もいるでしょう。

実際は期待に応えているのでも、認められているのでもないのに、SNS依存症になっている人がとても多い原因は匿名性と手軽さにあるのですが、それだけ無責任な反応だということを知っておくべき。
「いいね!」の数やフォロワーの数が気になってしかたがない、コメントやメッセージがないと気になってしまうといった人は、依存症になっている可能性があります。

10. 自分を責める「悲劇のヒロイン」 

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SNSによる承認欲求で、依存している人に多いのが、「悲劇のヒロイン」タイプ。
「自分は期待に応えられないダメな人間だ」「誰も認めてくれない」などと自虐的なことをつぶやくことが、快感になっている人たちです。

こういう人に対応するのは疲れるので、最初は「そんなことないよ」などと期待に応えるようなコメントを送っていても、だんだんと人が離れていきます。

ストレスや痛みを感じると、「βエンドルフィン」という脳内物質が分泌されて痛みなどを麻痺させ、快感を抱かせるのですが、「悲劇のヒロイン」タイプは自らにストレスをかけることが快感になってしまっている可能性があります。

自虐的なつぶやきをしている間はまだいいのですが、中にはリストカットなどの自虐行為に進展してしまうケースも。
こういうタイプの人がいたら、周囲も期待に応えるような行為はやめたほうがいいですね。

11. 「いい人」でいるとストレスを溜める

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期待に応えようとする人には、「一見いい人」が多いのも特徴。
最近では、「いい人」でいることの弊害も問題視されています。

「いい人」とは、周りの人間の期待に応える存在、願望を満たす存在です。
期待に応えてくれるので周りに人が集まりますけども、それは便利な存在だから。

「いつ飲み会に誘っても断らない」「細かいことを頼んでも嫌といわない」といった理由から人気があるように感じていても、誘いを断ったり、頼まれ事を断ったりすると人が離れていってしまいます。

そこで、人が集まってきたり、敬語を使ってくれたりしたのは人望があったからではなくて、都合の良い存在だったからだと気がつけばいいのですが、それでも「いい人」でいようとして余計なストレスを抱えてしまうケースが多いのです。

誰かにとっての「いい人」でいるより、自分のとっての「いい人」でいることが重要です。

12. 「いい人」は周りも疲れさせる

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「いい人」は、周りの人の願望を満たす存在である一方で、悲劇のヒロインタイプと同じように負担を強いる存在となりがちな一面をもっています。

便利な存在であるときはいいのですが、「いい人」でいたいがために承認欲求が強くなると面倒くさい存在になってしまうのです。

先に解説した完璧主義や、「正義の味方」タイプが嫌われてしまうのは、ストレスをもたらす面倒な存在だから。
相手の期待に応えたいと思う気持ちが、お互いのストレスを助長してしまうのです。

まとめ

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誰かにとっての「いい人」ではなくて、自分にとっての「いい人」とは、自分の期待に応える存在だといえます。
自分の期待に応える生き方とは、どのようなものでしょう?

それは、自分で設定した目標を達成しながら生きることではないでしょうか。
期待に応えることは、達成感や充実感が得られて自信につながるというプラス面をもっています。
しかし、誰かの期待に応えようとすれば、ここで解説したような問題が表面化しがち。

でも、自分の期待に応えて、目標を達成した自分を認める生き方ができれば、親和欲求や認知欲求をそれほど意識しなくても、最終段階である自己実現欲求も満たすことができるはずですよね。

【参考資料】
・『「いいね!」の魔力 認められたい心理のヒミツ』 ゆうきゆう 著  海竜社 2020年
・『弘兼流 やめる!生き方』 弘兼憲史 著  青春新書インテリジェンス 2020年
・『「一見、いい人」が一番ヤバイ』 下園壮太 著  PHP研究所 2019年

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