うつの症状を見分ける12のポイント-心と身体に表れるサイン

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うつ病は、自分だけでなく、まわりの人間も気づきにくい病気ですよね?

「やる気がでない」「すぐ疲れてしまう」という状態であっても、自分では「一時的なものですぐに治るだろう」とか、「気のせいだ」と思って放置する人がほとんどでしょう。

心や身体が不調を訴えていても、こうした症状は周りの人からみると、「怠けている」「だらしがない」などと見られがちなので、余計に自分の状態を放置してしまうのです。

うつ病は放置すると悪化しますから、早く気づくことが重要。
最悪の場合は、自殺という事態を招いてしまうこともあるのです。

ここでは、うつ病を悪化させることなく改善するために、心と身体に表れるサインを解説します。
うつ病の現状や治療法の最前線といった「うつ」の基礎知識を理解してから、うつの症状を見分ける12のポイントを紹介します。

目次

1. 「うつ」の基礎知識
1-1. 「うつ」と「うつ病」の違い
1-2. 現代人を蝕むうつ病の現状
1-3. ひとつだけではないうつ病の原因
1-4. うつ病治療の最新情報

2. うつの症状を見分ける12のポイント
2-1. 感情に表れる症状
① 抑うつ気分
② 興味や喜びの喪失
2-2. 行動に表れる症状
③ 無気力や意欲の低下
④ 自己嫌悪
⑤ 動作が緩慢
⑥ 注意力や記憶力の低下
2-3. 思考に表れる症状
⑦ マイナス思考
⑧ 白黒思考
⑨ 過小評価
2-4. 身体に表れる症状
⑩ 睡眠障害
⑪ 食欲減退
⑫ 自律神経症状

まとめ

1. 「うつ」の基礎知識

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仕事のストレスが原因でうつ病と診断されて休職する、という会社員は、いまや珍しい存在ではありません。

厚生労働省は、急増するうつ病対策として、2015年12月から、従業員50人以上の事業所にストレスチェックを義務付けました。

国ぐるみで対策を考えるほど大きな社会問題となっているうつ病とは、どのような病気なのでしょうか。

うつ病の概要や現状を簡単に解説しましょう。

1-1. 「うつ」と「うつ病」の違い

「うつ」とは、日常的に気分が落ち込んで憂うつな状態になることを意味し、「抑うつ」という言葉も同じ意味で使われます。

「うつ」の状態が2週間以上続き、日常生活や人間関係に大きな影響が出て健全な生活が送れなくなると、「うつ病」と診断されます。

医学的には「大うつ病」と呼ばれる「うつ病」は、精神障害のひとつである「気分障害」に分類されており、気分障害は、抑うつ状態が続く「うつ病」と、気分が過度に高揚する躁状態と抑うつ状態の両方が表れる「躁うつ病」の2つに分けられます。

一般的には、「うつ」という言葉で「うつ病」を指すことも多く、ここでも単に抑うつ状態の症状ということではなく、うつ病が疑われる症状のポイントを解説します。

1-2. 現代人を蝕むうつ病の現状

2011年、厚生労働省は「がん」「脳卒中」「心血管疾患」「糖尿病」に「うつ病」を加え、重点的に対策すべき「5疾病」として発表、新たな医療計画を進めることになりました。

うつ病や躁うつ病といった気分障害で治療を受けている患者数は、1984年に10万人以下だったものが、2008年には100万人を超え、24年間で約11倍に激増していたのです。

さらに、うつ病であるのに医療機関を受診していない人が、その数倍もいるといわれており、現状ではほぼ10人にひとりが、一生に一度は発症すると考えられています。

WHO(世界保健機関)が発表した「自殺防止マニュアル」には、自殺者の約90%がなんらかの精神障害に侵されており、60%は自殺するときに抑うつ状態であると書かれています。

1-3. ひとつだけではないうつ病の原因

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うつ病の最大の原因は、「環境の変化によるストレス」と考えられています。

男性に多いのは、リストラや配置転換、退職や転職といった仕事上で起こる環境の急激な変化で、過剰なストレスを抱えるといったケース。
女性の場合は、結婚、出産、離婚、親の介護、子どもの教育問題で抱えたストレスが原因になるケースも多くなっています。

近親者との死別や病気がきっかけになる場合もあります。

遺伝的な要因も報告されていますが、うつ病はその人間の生活環境や考え方などが複雑に絡み合ってうつ病を発症するもので、遺伝的要因をもっていたとしても必ず発症するということではありません。

現状では確実にうつ病に影響を及ぼす遺伝子が発見されていないことから、遺伝よりも環境による要因が圧倒的に多いのではないかと考えられています。

また、ストレスを抱えやすい性格、マイナス思考など、うつ病を発症しやすい性格も影響します。

1-4. うつ病治療の最新情報

うつ病は、脳のストレス反応によって、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンや、意欲をもたらすドーパミンといった神経伝達物質の働きが弱まることに、直接の原因があります。

薬物療法の主流となっている「SSRI」という抗うつ薬は、神経伝達物質の働きを活性化して抑うつ状態を改善するもの。
治療には時間がかかり、多くの場合は、数カ月から1年間の服用が必要です。

患者がストレスに感じていることを書き出して、現実的な考えへと導いたり、行動することによって避けていることを少しずつ克服していくのが、「認知行動療法」です。

近年、注目されている療法に「磁気刺激治療(TMS)」があります。
これは、脳に磁気発生装置で強い磁場の変化を与えることで、喜怒哀楽を司る扁桃体の活動を抑えるもの。
抗うつ薬の投与を少なく抑える目的で、行われるケースが多くなっています。

また、患者の頭部に100ボルト前後の電圧をかけて、脳に電流を流す「通電療法」は、抗うつ薬が効かない重度の患者に行われるケースが多く、以前は安全性に問題があったものの、現在では医療機器の進歩によって、安全性が確保されています。

 

2. うつの症状を見分ける12のポイント

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うつの症状を見分ける際に大事なことは、通常の「うつな気分」なのか、うつ病による「抑うつ状態」なのかを見極めることです。

正常な場合は、一時的にストレス反応が起こってもすぐに元に戻ります。
これが長く続いて、生活や仕事に支障が出ることを「適応障害」と呼びますが、この状態もストレスがなくなると元に戻ります。

ストレスがなくなっても元に戻らないようになると、うつ病を発症していると考えられるのです。

2-1. 感情に表れる症状

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うつ病の症状がもっとも強く表れるのが、感情面です。

怒り、イライラ、悲しみ、不安、恐怖、むなしさ、さびしさといった感情が、すべて揃わなければうつ病でないというわけではなく、こうした感情が続いても、数日間で治るようであれば、心配する必要はないとされます。

感情に表れる症状は、「抑うつ気分」と「興味や喜びの喪失」が代表的なものですが、少なくてもどちらかが、毎日1日中、2週間以上続くとうつ病の可能性が高くなります。

① 抑うつ気分

うつ病になったときの「ゆううつ感」は、普段感じる嫌な気分とは異なります。
形容しがたいほどの嫌な気分が1日中、何日も続き、「砂漠のようなむなしさ」と表現されることもあります。

・なんとなくゆううつで、気分が晴れない
・毎日がつまらなくて、気が滅入る
・タメ息が多くなる

こうした症状は「うつ」のサインです。

・理由のない不安が続く
・じっとしていられない焦燥感にかられる
・何かに追い詰められているような気がする
・イライラが収まらず、キレやすくなる

抑うつ状態がひどくなると、このような症状が表れます。

② 興味や喜びの喪失

うつ病を発症すると、やりがいを感じていた仕事や、楽しみにしていた趣味に対して興味を失ったり、世の中の出来事に対して関心がなくなったりします。

興味を喪失すると、なにもかもがつまらなくなって生活に張り合いがなくなり、テレビを観ていても笑ったり語ったりしなくなります。
嬉しい、楽しいという感情がわからなくなって、傍から見ると表情のない顔に。

性的な関心がなくなり、性欲も減退するのは、うつ病の特徴のひとつです。
男性は、ヒゲを剃らなくなる、身なりに気をつかわなくなるといった症状、女性は化粧やおしゃれをしなくなるといった症状も赤信号です。

2-2. 行動に表れる症状

うつ病になると、ストレスに対する行動に変化が表れます。shutterstock_1273439653

部下や配偶者に対して八つ当たりする「統制」、遅刻や欠勤が増える、会社に近づくと足が動かなくなるといった「逃避」、アルコールやギャンブル、買い物などにハマる「依存」などが典型的なものです。

さらに、うつ病になると意欲が低下して、行動力や決断力が鈍くなるので、以下のような症状が表れます。

③ 無気力や意欲の低下

強い倦怠感が続いて何をするのも面倒くさくなり、会社や学校へ行くのが嫌になる、主婦であれば、普通に行っていた家事が手につかなくなるという症状は、神経伝達物質の働きが低下している可能性が高い状態です。

この状態が悪化すると、外出することが苦痛になり、洗顔、着替え、入浴といったことすら面倒になって、最後は布団から出なくなってしまいます。

周囲から見ると、「怠けているだけ」「サボっているだけ」と見られがちですが、単なる「怠け」が「やりたくないから怠けている」のに対し、うつ病による意欲の低下は、「やらなければいけないと思っているのにできない」という違いがあります。

④ 自己嫌悪

それまで普通にできていた仕事が急にできなくなるのは、うつ病の症状であることが考えられます。

頭ではわかっているのにできない、その仕事をしなければいけないと思っているのに実行できないという状態です。
「身体がついてこない」「気持ちがついてこない」などと形容されることもあります。
人からいわれたことが頭に入らない、簡単な仕事に時間がかかってしまう、という症状も。

問題は、こうした状態が続くと「やらなければいけないのにできない自分」に対して罪悪感や嫌悪感を感じて「自分は無能な人間だ」「自分は役に立たないダメ人間だ」と自責の念にかられることです。

これは、うつ病の典型的な症状のひとつ。
このような感情が強くなると、将来に対する不安が大きくなって、「いっそ、死んでしまったほうがいいのではないか」と思うようになってしまうこともあるのです。

⑤ 動作が緩慢

うつ病の症状として、周りから見てはっきりとわかるのは、動作が緩慢になるケースです。

・テキパキと仕事をこなしていた人が、のらりくらりと仕事をするようになる
・歩き方やふとした動作が、ゆるくなる
・話し方に抑揚がなくなったり、声が小さくなったりする
・会話をしようとしても言葉が出てこない
・的はずれな返答ばかり返ってくる

このような症状が見られたら、赤信号と考えましょう。

⑥ 注意力や記憶力の低下

うつ病になると注意力が散漫になって、物事に集中できなくなるので、会話をしていても相手が話す内容を理解しにくくなります。

そのため、人と話をするのがおっくうになり、無口になっていきます。

本を読んでいても、内容が頭に入らないので同じところを何度も読んでしまいます。
会議などで発言しようとしても思考力が低下しているので、考えをまとめることができません。

さらに記憶力が低下するので、人からいわれたことをすぐに忘れてしまう、簡単な計算ができなくなるといった症状も表れます。

決断力も鈍るので、今日着ていく服を決められない、お昼に食べるメニューが決まらないといったことで悩んでしまい、最終的には自分を責めてしまうのです。

2-3. 思考に表れる症状

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うつ病による思考力の低下は、「思考制止」や「思考抑制」と呼ばれます。

職場でミスが多くなったり、仕事や家事の能率が著しく低下したりという状態になったら、単に思考低下で考えがまとまらないということ以外に、偏った考え方が定着してしまっていることが考えられます。

うつ病の原因になり、うつ病によって進行する考え方の偏りには、以下のようものがあります。

⑦ マイナス思考

物事を悪い方へ悪い方へと考えてしまうのは、うつ病の特徴のひとつです。

何をやってもうまくいくはずがないと、未来のことを悲観的に考えて、自分はもうおしまいだなどと思ってしまいます。

小さな失敗なのに、取り返しのつかないことをしてしまったと深刻に考える「罪業妄想」、みんなが自分の悪口をいっていると感じる「被害妄想」、自分はみんなに嫌われ、避けられていると感じる「忌避妄想」などの妄想もうつ病性のものが多く、とくに高齢者に多く見られる傾向があります。

⑧ 白黒思考

物事をすべて白か黒かで考えようとする極端な思考は、うつ病の原因となり、うつ病で表れる症状のひとつでもあります。

真面目な人や完璧主義の人が陥りやすい思考で、「こうでなければいけない」「こうあるべき」といった強い思考から離れる事ができません。
「こうなったらいい」「できればこうしたい」といった、柔軟な考え方ができなくなります。

完璧な仕事ができない自分に対して嫌悪感を抱いたり、悪い結果になると決めたりして、悲観的な思考が強まると、自己否定につながっていきます。

相手はこう考えているに違いないと決めつける「邪推」も、被害妄想につながっています。

⑨ 過小評価

マイナス思考がひどくなると、うまくいかないことばかりに注目してしまい、自分自身を過小評価する傾向が表れます。

「自分は仕事ができない人間だ」「自分の決断はいつも間違っている」「自分は弱い人間だ」と極端に低い自己評価をするようになります。

一方で物事がうまくいったときには、「この程度のことなら誰にでもできることだ」「今回はたまたまうまくいっただけで、次はきっと失敗する」というように、過少評価するのも、うつ病の偏った思考の特徴です。

2-4. 身体に表れる症状

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うつ病を発症すると、ここまで解説してきた精神症状とともに、必ずといってよいほど身体症状が表れます。

しかし、睡眠不足や食欲減退などは、普通の生活を送っていてもさまざまな原因によって起こるものですから、うつ病の症状だと気づきにくい傾向があります。

軽度のうつ病には、身体症状が目立って表れ、精神症状がその陰に隠れてしまうのもあります。

⑩ 睡眠障害

うつ病の身体症状でもっとも多いのが、「睡眠障害」。
睡眠障害は、次の3つが代表的なものです。

・明け方に醒めてしまい、その後は眠れない「早朝覚醒」
・夜中に何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」
・布団に入っても、いつまでも眠れない「入眠障害」

中でも早朝覚醒が、うつ病の症状として表れる頻度がもっとも多いものです。
眠気が消えず、1日中寝てばかりいる「過眠」の症状が表れるケースもあります。

⑪ 食欲減退

消化器系の症状も、うつ病の症状としてよく表れます。

・食欲がなくなって、食べる量や回数が減る
・何を食べても美味しく感じない
・下痢や便秘
・吐き気、胸やけ、げっぷ
・胃の不快感や、腹部膨満感

若い人には、まれに過食の症状が表れることもあります。

⑫ 自律神経症状

うつ病になると、生命の維持に必要なさまざまな機能をコントロールしている自律神経に異常をきたす症状も、よく表れます。

・息苦しい
・動悸や不整脈
・肩こり、背中の痛み、腰痛
・頭痛やめまい
・汗を大量にかく
・口が乾く

こうした症状は、ストレスが原因となって自律神経が乱れているために起こっている可能性が高いので、原因がわからなかったらうつ病を疑ってみましょう。

 

まとめ

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うつ病の症状は、段階的に進行するものもあれば、ある日突然変化が表れるものもあります。
また、年齢や性別によって、いくつかの特徴があります。

子どもの場合には、学校における孤立や不登校。
仕事をしている大人では、仕事の内容や環境が変わったことによるストレスがもっとも大きな原因になるので、ここで解説してきたような仕事や対人関係に表れる変化。

高齢者の場合は、生き甲斐の喪失や配偶者との死別が原因で、孤立するケースが多いのですが、認知症や軽度の脳梗塞などでもうつ病と同じ症状が表れることがあるので、診断が難しくなります。

また、女性の場合は子育ての責任で自分を追い込んでしまう「産後うつ」や、仕事と家庭を両立させようと頑張ることが原因でうつ病になるケースも多く、月経不順や無月経といった症状が表れることもあります。

 

【参考資料】
・『患者のための最新医学 うつ病』 坪井康次 監修 高橋書店 2014年
・『ニュートン別冊 現代人をむしばむ五つの大病』 ニュートンプレス 2018年

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