理由別に対処する円満な仕事の辞め方-あいさつから手続きまで

ビジネス

終身雇用が当たり前の時代は終わり、退職や転職は特別なことではなくなり、多くの人が経験する人生のイベントとなりました。

年齢や職歴を問わず、キャリアアップを目指す戦略的な退職が増えています。
入社した会社に、すぐに見切りをつけて退職する「新卒退職」や、仕事を辞めたいと考える人が増える「入社二年目退職」も急増しているといいます。
また、女性が出産で退職するケースや、メンタル系の病気で退職するケースも少なくありません。

仕事を辞める理由は様々。
理由によって円満な対処法は変わってきます。

ここでは、「転職」「病気」「出産」「倒産や解雇」という4つの事情によって退職する場合のチェックポイントや手続きの要点などをまとめました。

仕事の辞め方チェックポイント 転職で退職

定年退職ではなく、自身の都合で転職が決まって退職するような場合には、会社に対して退職の意思を伝えておかなくてはいけません。

民法上は2週間前までということになっています。
しかし、いろいろな準備や仕事の引き継ぎなどを考えると、最低でも1カ月前には直属の上司に対して退職の意思があることを伝えておくのが常識です。

上司との話し合いや、転職までのスケジューリングに余裕をもたせることを考えるのであれば、退職日の2カ月前がいいでしょう。

会社によっては、就業規定で退職についての取り決めをしている場合もあるので、確認しておく必要があります。

退職願や挨拶状の書き方

退職が正式に決まって最初に提出するのは「退職願」です。
「辞表」は役員や公務員が役職を辞すときに使う書類ですから、通常の会社勤務では「退職届」や「退職願」になります。
会社に退職を願い出るのですから「退職願」と記すのが常識とされています。

退職願の文面は、「この度、一身上の都合により、〇〇〇〇年〇月〇日をもって、退職させていただきたくお願い申し上げます」という一般的なもので問題ないのですが、大切なポイントは、書き出しの一行目は一番下に「私事」もしくは「私儀」と記して2行目から本文を始めること、パソコンなどではなく必ず自筆で書くこと、直属の上司に手渡しすることの3点。

社外の人に退職を知らせる挨拶状は、転職してからの人脈づくりに役立つことも多いので、気を配りたいところです。
通常はハガキで、在職中にお世話になった感謝を述べて、退職する期日などを伝えます。
挨拶状のポイントも3つ。
「拝啓」で始まり「敬具」で閉じるフォーマルな文面にすること、直接あいさつに出向けないことを詫びること、同業他社へ転職するような場合には会社側に挨拶状を送る確認をとることです。

事務手続きのポイント

会社に提出するのは、「健康保険証」「退職所得の受給に関する申告書」。
さらに、社員証や社章、自分の名刺、会社の業務で交換した名刺、社内資料や会社の備品、通勤定期なども返却します。

会社から受け取るのは、「雇用保険証」「離職票 1と2」「年金手帳」「源泉徴収票」の4種。
厚生年金基金に加入していた場合には「厚生年金基金加入者証」も返却してもらいます。

雇用保険証はハローワークで雇用保険の給付を受ける際に必要となり、年金は市区町村で国民年金に加入したり、転職先で厚生年金に加入したりする際に必要です。
源泉徴収票は、確定申告をする場合や、転職先の会社で年末調整をする際に必要となります。

そのほか、注意するポイントは、財形貯蓄や社内預金があれば解約すること、退職金の支払い要件を確認することなどがあります。
こうした手続きのポイントは、退職の理由を問わず事務的に必要とされるものがほとんどです。

仕事の辞め方チェックポイント 病気で退職

病気やケガが理由で退職をする場合は、その原因が業務外のものか、業務上のものかで会社の対応がかわってきます。

プライベートにおける病気やケガが原因で仕事を辞める「業務外」のケースでは、働くことができなくなった時点で休業制度を検討すべきです。
既定の休業期間が経過しても働くことができない場合には解雇の対象となることもありますが、会社側からの説明が義務付けられていますから、いきなり解雇ということはありません。

過労によるうつ病は業務上と認められる

業務上の病気やケガが原因で働けなくなった場合には、労災保険によって医療費補償があり、健康保険によるいろいろな給付を受けることができます。

会社は、労務不能の間と復帰後30日は解雇することが禁止されており、労務不能期間が長くなった場合でも、1200日分の賃金が条件となっている「打切補償」を払わなければ解雇できないことになっていますから、退職を考える際には時期をよく検討すべきです。

近年はメンタルヘルス疾患を理由とする休職や退職が増えています。
見た目に顕著な変化がある病気やケガと違い、メンタルヘルス疾患はその原因が業務上にあるか業務外であるかという判断が難しくなります。

もっとも多いメンタルヘルス疾患の原因は過労ですから、長時間労働や過重労働があったかどうかを綿密に確認しなければいけません。
こうしたケースでは業務上の病気と認められるケースが増えています。

退職代行を利用する

病気で退職を考える場合、とくにメンタルヘルス疾患などでは、「辞めたいといいたくてもいえない」、原因がハラスメントにあって相談する人がいない、というケースが少なくありません。

仕事を辞めたくても辞められないことが原因となって病状を悪化させてしまい、最悪の場合は命にかかわるようなケースもあります。

そうした状況の中で注目されているのが「退職代行サービス」です。
退職の意思を自分で伝えることができない場合に、第三者である業者が代行するもので、料金は数万円程度。
仕事の辞め方として必ずしも円満とはいえませんが、本気で会社を辞めたい人にとっては選択肢のひとつとなるでしょう。

雇用期間の定めのない正社員の場合、当事者はいつでも解約の申し入れができて、雇用は解約の日から2週間が経つと終了すると、民法では定めています。
原則として、労働者が辞める意思を伝えれば、会社の承認は必要なく労働契約は終了するのです。

労災保険の給付

病気が原因で休職や退職をする際に関連する、受給可能な労災保険の給付には、次のようなものがあるので知っておきましょう。

① 療養給付
業務災害や通勤災害による傷病を病院で療養するときに給付

② 休業給付
業務災害や通勤災害による傷病に療養で労働ができず、賃金を受けられない日が4日以上に及ぶときに給付

③ 障害給付
業務災害や通勤災害による傷病が治った後に、障害等級が1級~14級のいずれかにあてはまる障害が残ったときに給付

④ 傷病年金
業務災害や通勤災害による傷病が療養開始後1年6カ月を経過した日、あるいは同日後に次のいずれにもあてはまるときに給付
・傷病が治っていないこと
・障害の程度が傷病等級の1級~3級にあてはまること

⑤ 介護給付
障害年金または傷病年金の受給権者で、その支給事由となっている一定の障害に該当し、常時または随時介護を必要とするときに給付

⑥ 遺族給付
業務災害や通勤災害により死亡したときに給付

⑦ 葬儀給付
業務災害や通勤災害により死亡した人の葬儀を行うときに給付

⑧ 二次健康診断等給付
過労死等の防止のため、脳および心臓の状態を把握するために検査等、医師による健康診断や保健指導を受けるときに給付

仕事の辞め方チェックポイント 出産で退職

出産が理由で会社を辞めることを考える女性は、まず、母性を保護する法律を確認する必要があります。

現在は、男女平等を基本としながら、出産する女性の保護を強めて、いろいろな角度から仕事と家庭の両立を支援する制度がつくられています。
出産することを理由とする解雇は認められていませんし、出産後も会社に在職する場合にはいくつかの給付金もありますから、退職の時期はよく検討すべきです。

産前産後休業が基本

出産する女性本人が請求した場合は、産前の42日間(2人以上を出産する多胎妊娠では98日間)、産後の56日間は本人の請求の有無にかかわらず、会社は出産前後の女性を使用することが禁止されています。
産後42日経過後は、本人が請求して医師が認めた業務については従事させることが可能。

これが「産前産後休業」と呼ばれる規定で、出産にまつわるいろいろな制度や取り決めの基本となっています。

出産前後の保護を知る

出産前後の女性を保護する制度や給付にはいろいろなものがあるので、仕事を辞めることを考える前に知っておきましょう。

① 有害業務の禁止
会社は妊産婦(妊娠中および産後1年を経過しない女性)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務など、出産等に有害な業務につかせてはいけない

② 深夜等の制限
妊産婦が請求したときは、会社は時間外労働、深夜労働等をさせてはならない

③ 保健指導、健康診査の時間等
会社は、産前産後の母子健康診査や医師の指導を受ける時間を確保する義務を負う

④ 出産手当金
出産のための働かない期間のうち、一定の要件を満たす場合、産前産後休業の期間は、健康保険から出産手当金が支給される

⑤ 育児休業給付
一定の条件に該当するときは、子が1歳(一定の場合には1歳6カ月)になるまで、雇用保険から育児休業給付が支給される

⑥ 育児休業
産後、子が1歳(一定の場合には1歳6カ月または2歳、夫婦で休業する一定の場合は1歳2カ月)になるまでの期間、一定の条件を満たせば育児休業を取ることができる

⑦ その他の制度
短時間勤務や、子の看護休暇といった制度もある

⑧ 健康保険料、厚生年金保険料の免除
産前産後休業および育児休業期間中は、健康保険料、厚生年金保険料が免除される

仕事の辞め方チェックポイント 解雇や倒産で退職

この分野は、個人の事情から選択する退職ではなく、会社側の事情で仕事を辞める場合のチェックポイントを解説します。

解雇の理由や法律を確認する

解雇とは、会社から労働契約を解除されることで、正当な理由がなければ解雇できないことは労働契約法という法律に定められています。

会社から突然の解雇を言い渡された場合、冷静に対処しなければいけない事が3つあります。

① 解雇に値する理由はあるのか?

・普通解雇の場合
社員として適格性に欠ける
心身、勤務態度、勤務成績などから社員として業務に耐えられないこと

・懲戒解雇の場合
社員として相応しくない行為があった
就業規則の制裁規定に該当する懲戒行為があった

・整理解雇の場合
会社が経営不振等により事業を廃止・縮小する
会社があらゆる経営努力をしても整理解雇をしなければならない状況で、社員への説明や公平な人選を実施している

② 解雇制限に該当しないか?

・制限①
業務上負傷または疾病にかかり、療養のため休業する期間、およびその後30日間は解雇できない

・制限②
産前産後の休業をする期間、およびその後30日間は解雇できない

・例外①
事業の継続が不可能であり、監督署長の認定を受けたとき

・例外②
制限①の場合に3年を経過しても治らず、会社が平均賃金1200日分の打切補償を支払ったとき(傷病年金を受ける場合も同様とみなされる)

③ 解雇の正式な手続きは履行されたか?

原則として、少なくても30日前の解雇予告、または30日分以上の解雇予告手当が必要

・例外
日々雇われる者、2カ月以内の期間を定めて雇用される者など一定の場合は解雇予告を必要としないという適用除外あり

刑法犯になる、2週間以上無断欠勤するなどの理由があり、会社が労働基準監督署長の認定を受けた場合には除外認定あり

会社が倒産した場合は未払金を確認

勤務する会社が倒産してしまい、仕事を辞めざるを得なくなったときに、冷静な対処が必要とされるのは、賃金や退職金などの未払金がある場合です。

通常は、倒産手続き前に会社側から説明があるか、破産手続き開始となった場合には破産管財人から手続きの説明があるはずなので、説明会などには必ず出席しましょう。

従業員の賃金や退職金の一部は、会社が残した負債の中でもっとも優先される債権です。
会社に財産が残っている場合にはそこから弁済されますが、破産し弁済できる財産がない場合には、政府が立替払いをしてくれる制度があります。

① 立替払いを受けることができる人

・労災保険の適用事業で1年以上事業活動を行ってきた法人また個人に「労働者」として雇用されていた人

・「労働者」とは、倒産した企業に雇用され、労働の対価として賃金の支払いを受けてきた人(会社の役員は該当しない)

・企業の倒産に伴って退職し、総額が2万円以上の「未払い賃金」が残っている人

・裁判所に対する破産申立て日、または労働基準監督署長に対する倒産の事実についての認定申請日の6カ月前の日から2年の間に当該企業を退職した人

② 立替払いの限度額

立替払いの請求手続きは、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に相談するのが一般的で、破産管財人が手続きを代行してくれるケースもあります。

限度額は年齢によって規定されています。

・30歳未満
未払金の上限額は110万円、立替金の限度額は88万円

・30歳以上45歳未満
未払金の上限額は220万円、立替金の限度額は176万円

・45歳以上
未払金の上限額は370万円、立替金の限度額は296万円

まとめ

仕事の辞め方で守るべきことは、「手続き」と「マナー」です。
いかなる理由で退職する場合においても、正当な手続きが必要とされ、マナーを守れる人間でありたいものです。

新卒退職や二年目退職などの若年層では、将来の目標がないまま退職してしまう人も多く、仕事を探す無職の期間が長期化してしまうとか、転職を繰り返してしまうことになりがちです。

仕事を辞めるのは、自分の人生における一大職業イベントであることをしっかりと自覚して、プラス思考の退職にしましょう。

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