自分の気持ちをうまく伝えられないと、もどかしい思いをしますよね?
「いいアイデアが浮かぶのにうまく話せない」
「話を最後まで聞いてもらえない」
そうした悩みを抱える人はとても多いのです。
相手にしっかりと気持ちを伝える話し方には、いくつかのルールがあります。
・話をムダに長くしない。
・わかりにくい表現はしない
・相手を嫌な気分にさせない。
その中でも、この3つは重要なポイントです。
ここでは、この3つのポイントを踏まえながら、「15秒のブロックで組み立てる会話」と、「1分間で自分を伝える話し方」という2つのアプローチで、効果的に自分を伝える方法を解説します。
目次
1. 15秒ブロックの会話を身につけるコツ
1-1. 15秒が効果的な理由
1-2. 構成をメモするトレーニング
1-3. ストップウォッチで時間の感覚をつかむ
1-4. 15秒×4=1分間で話を組み立てる
1-5. オチは頭にもってくる
1-6. パス回しで会話をつなげる
1-7. 会話のトレーニングは喫茶店で!
2. 1分間で自分を伝える7つのテクニック
① 1分間のダイジェスト版をつくる
② 話に番号をふる
③ 3ステップで話を組み立てる
④ 1分間の自己紹介で失敗しない方法
⑤ 正しいメリハリのつけかた
⑥ 5大NGワード
⑦ ムダなフレーズを省く時短テクニック
1. 15秒ブロックの会話を身につけるコツ
会話の達人は5秒で気持ちを伝えるといわれます。
テレビのコマーシャルは、短い時間で、いかに商品の魅力を伝えるかが競われます。
現在はだいたい15秒パターンか30秒パターンに分かれていますが、かつては5秒パターンが多かった時代もありました。
5秒パターンのコマーシャルは、ともすれば商品名を言うだけで終わってしまいがちですが、インパクトのあるヒット作がいくつも生まれました。
ところが5秒では、インパクトはあってもせわしない印象が強くなってしまうので、ストーリー展開ができて、視聴者がわかりやすいと感じる15秒パターンが主流となったのです。
普通の人が交わす会話においても、15秒がジャストサイズとされています。
1-1. 15秒が効果的な理由
15秒がジャストサイズとされるのは、自分が伝えたいと思うほとんどのことは15秒間で言うことが可能だからです。
伝えたいことを凝縮するのは、そう難しくはなくて、聞き手に「内容があってわかりやすい」と感じさせることができる長さにするためです。
これから解説するようなコツをつかめば、言葉だけでなく、表情やしぐさなど体全体を使って15秒で効果的に話を伝えることができるようになります。
ビジネスパーソンのトレーニングに、「15秒プレゼン」というものがあります。
15秒間で名前と用件をサッと伝えて、もし相手がもっと話を聞きたがったらもう15秒、そこから話が展開したらさらに30秒というように、話を長くしていくトレーニングです。
忙しい相手に「3分ください」「5分ください」と言うのではなく、15秒でまず相手の気持ちをつかむプレゼン方法です。
用件を伝えたらサッと身を引くので、お互いの時間をムダにすることもありません。
伝えたいことを凝縮した15秒は、会話の最少ブロックとしてジャストサイズなのです。
1-2. 構成をメモするトレーニング
事前に伝えたい内容をメモすることで、15秒の話し方を身につけることができます。
まず、あまり深く考えずに思いつく単語を全部羅列します。
その中から、一番伝えたい最重要キーワードを選んでください。
そのキーワードが話のテーマですから、一文にまとめ、最後の3秒にもってきて決めのフレーズにします。
頭の3秒にもってきても効果的ですし、最初に言ったことを最後に繰り返すのもときには効果があります。
最重要キーワードを二重丸で囲んだら、次に強調したい言葉をひとつかふたつ丸で囲んでください。
これは声を強めたり、ゆっくり語ったりするところです。
15秒の話に5分もかけてメモをつくることに疑問を抱く人がいるかもしれませんが、まったく気にする必要はありません。
考えて話を構成することによって、気持ちを伝えるテクニックが身につくのです。
次第に準備の時間は短くてすむようになっていきます。
15秒間で話せることは早口でも100文字程度なので、全部書いておけば間違いないと思うかもしれません。
しかし、これは間違いです。
全文を書いてしまうと、原稿を読むような気持になって緊張してしまうのです。
1-3. ストップウォッチで時間の感覚をつかむ
ストップウォッチを持ち歩いて、時間の感覚を体で覚えましょう。
腕時計やスマートフォンを使うのではなく、あえてストップウォッチという時間を測るためだけに存在する道具を用いることによって、時間に対する意識が高まります。
ストップウォッチを使うようになると、15秒という単位が身につきます。
15秒あればこれだけのことが話せる、30秒あればこれだけの内容を盛り込むことができるという感覚が備わります。
時間感覚がないと「短すぎたかな」などと余計なことを考えてしまい、必要のない話を盛り込んでしまいがちです。
1-4. 15秒×4=1分間で話を組み立てる
普通の人が、飽きたりイライラしたりせずに耳を傾けていられるのは、だいたい1分間までとされています。
しかし、時間感覚が身につくと、話し続ける1分間は意外に長いと感じるでしょう。
最初から1分間の話をしようと思って構成を考えると、精神的な負担が大きくなります。
そこで、15秒の話を4回できる時間と考えるのです。
まず、4本の話で組み立てる1分間を構成してみましょう。
一例をあげると次のようなものです。
・最重要キーワードをテーマとした結論(15秒)
・テーマに至った経緯や理由など(15秒×2)
・印象的な締めのメッセージ(15秒)
1分間の構成ができるようになると、話の内容を濃くすることができるようになり、自分の気持ちを伝えるテクニックはグッと幅が広がります。
1-5. オチは頭にもってくる
結論や面白い話のネタは、最後ではなくて話の冒頭にもってきます。
話すことを職業にしている人でもなければ、最後にオチをつくろうと思って話してもなかなかうまくいくものではありません。
オチのある話をしようとして前置きが長くなってしまい、聞き手が面倒な気持ちになったり、嫌気がさしたりすれば、最後まで聞いてもらえない可能性が高まります。
どちらかと言えば、大事なのは、最後のオチよりも冒頭のインパクト。
ウケを狙おうとせず、伝えたい言葉は最初にしっかり言ってあげるのが、相手に対する優しさでもあるのです。
1-6. パス回しで会話をつなげる
ここまでは、気持ちを伝えるために一人で話すコツを解説してきましたが、15秒ブロックの話し方を会話につなげてみましょう。
1分間の話を構成しても、一度に話しきる必要はありません。
むしろ、間に相手の話をはさんだほうが、説得力が増す場合が多いのです。
誰もが自分のことを話したがっているものです。
自分の言葉だけで通そうとすると、相手の気持ちを置き去りにしてしまい、相手とのつながりがもてません。
相手にも話をさせて、自分を伝えるコツは「質問」と「繰り返し」です。
相手の話を聞いて、すぐに短く質問を入れます。
質問自体に深い意味はなくても、会話が転がっていけばいいのです。
もうひとつは、相手の言ったことを繰り返して話につなげることです。
これは、相手の言葉を受け止めている、聞いているというサインを送る行為です。
この2つのテクニックをうまく使って、パス回しをしながら会話を転がします。
ここで流されないために重要となるのが、準備していた構成のメモなのです。
1-7. 会話のトレーニングは喫茶店で!
15秒ブロックの会話は、繰り返し練習することで身につきます。
気の置けない友人とトレーニングを重ねましょう。
ここで、気をつけなければいけないのは、酒を飲みながらやらないことです。
酒を飲みながらの会話は、酔いの力で盛り上がってしまい、本来の目的を忘れがちです。
後で覚えていないことも多くなるので、トレーニングには向きません。
食事の場も、食べることに集中しますから、会話のトレーニングには向きません。
最も適しているのが、コーヒーショップや喫茶店。
1杯200~500円のコーヒーを楽しみながら、1時間ほどクールな会話トレーニングをするのです。
会話のトレーニングについては「口下手な人でも自信がつく会話術―20の問題を克服する方法」という記事もぜひ参考にしてみてください。
2. 1分間で自分を伝える7つのテクニック
ここからは、相手が耳を傾けてくれている1分の間に、いかに自分の気持ちを伝えるかということにポイントを置いて解説します。
15秒のブロック4本で、1分間の話を構成するというベーシックな組み立て方が理解できたら、最初から1分間で話しを組み立てるトレーニングも行ってみましょう。
ここでは、効果的な7つのテクニックを紹介します。
① 1分間のダイジェスト版をつくる
相手が忙しい人でも、最初に「1分だけいいですか?」と切り出せば、話を聞いてもらえる確率は格段にアップします。
問題は、その1分間でどれだけ言いたいことを伝えられるかです。
そこで最も大事なことは、「何の話なのか」という話のテーマを最初に伝えることです。
たとえばその話は、「相談」なのか、「報告」なのか、「提案」なのかを最初に伝えることによって、相手はどういうスタンスで話を聞けばいいのか把握することができます。
話を聞いてもらう態勢ができたら、要点を3つに凝縮してダイジェスト版にします。
相談の場合は、「何の相談か」「現状」「自分の考え」「判断を求める」。
報告の場合は、「何の報告か」「結果」「理由」「今後について」。
提案の場合は、「何の提案か」「利益」「現状」「戦略」。
これは一例ですが、基本は15秒ブロック4本で組み立てます。
② 話に番号をふる
提案書や企画書で箇条書きが効果を発揮するのと同様に、話に番号をふるだけで相手の理解度は数段高まります。
最初に「何の話か」を伝えたら、「お話は3つあります」というように、いくつの話があるのか示すことによって、相手は話の全体像をつかむことができます。
各話の頭には、「ひとつ目は〇〇です」「ふたつ目は〇〇です」「そして3つ目は〇〇です」とそのブロックのテーマを言うことで、伝えたいことをより明確にすることができるのです。
③ 3ステップで話を組み立てる
1分間で説得力のある話をするための3ステップがあります。
・テーマ(何についての話か)
・エピソード(体験談や実例)
・言いたいこと
「〇〇の作り方について、私の経験に基づいてお話しします」
と、冒頭にどのような話なのかをはっきり伝え、経験や実例に基づいた理由を述べたら、結論として「こうしたい」「こうするべきだ」という「自分の思い」で締めくくります。
熱い思いがあっても、思いだけをただ繰り返したり、長い話をしたりしても、聞き手にとってはつらいだけです。
ムダのない3ステップの構成で1分間にまとめることで、最後まで興味をもって聞いてもらうことができるのです。
④ 1分間の自己紹介で失敗しない方法
営業先などの自己紹介で「この人はいいな」と思ってもらうポイントは3つあります。
・関心
自己紹介の冒頭で、相手についてどれだけ調べたか、相手を知るためにどれだけ行動したかがわかるように伝えます。
心の扉を開いてもらうためです。
・共通点
相手が大切にしていることの中から、自分との共通点を探して述べます。
相手に「この人は、自分(たち)のことをわかってくれているんだ」と思ってもらえます。
・貢献
相手に対して、自分はどのように貢献できるかを伝えます。
相手が一番知りたいのは、「この人は私(たち)に、どんなことをしてくれるのだろう」ということですから、最後に必ずはっきりと伝えましょう。
ただ自分のことを一生懸命に話すのではなく、この3つのポイントを伝えることによって、「この人はいい人で、自分(たち)にとってプラスになる存在だ」と思ってもらえます。
⑤ 正しいメリハリのつけかた
伝えたいポイントをしっかり伝えるためには、メリハリをつけた話し方が求められます。
しかし、無計画に声の大小や音の高低、スピードの違いをつけても、聞き手にとってわかりやすいものとはならず、嫌味な演出になってしまいます。
強調しなくていい言葉があります。
・助詞(「〇〇が」「〇〇は」「〇〇を」「〇〇の」「〇〇と」)
・接続詞(「そして」「けれど」「さらに」「また」)
・語尾(「~です」「~ます」「~でした」「~ました」)
これらの言葉を強調すると、なにを伝えたいのかわからなくなってしまいます。
強調すべき言葉は次のようなものです。
・数字(年号、日付、時間、金額、割合、人数、大きさなど)
・固有名詞(人名、社名、地名、作品名など)
強調のしかたは4種類あります。
簡単にできるものから並べますので、やりやすいものから使ってみましょう。
・声を大きくする
・音程を高くする
・ゆっくり語る
・間(ま)をあける
⑥ 5大NGワード
人が飽きずに話をきいていられるのは1分間ですが、最初の30秒で、その話を聞きたいか聞きたくないかを判断するといわれます。
だから、「つかみ」が大事なのです。
最初の30秒で相手が聞く気を失ってしまうような言葉を口にしてはいけないのですが、実はこれをやってしまって、話を最後まで聞いてもらえないという人がとても多いのです。
とくに冒頭では口にしてはいけない、5つのNGワードがあります。
・自分が準備不足であるという言い訳
聞き手に対して失礼以外のなにものでもありません。
・メモや資料を見ながら話すという前置き
マイナス要素ではないのですから、わざわざ口にだしてことわる必要がありません。
・話を急にふられて困ったというセリフ
うまく話せないのを、質問をした相手や指名した人のせいにしているように聞こえます。
・話を手短にしたことの説明や言い訳
その説明や言い訳で、話が長くなってしまっている場合が多いものです。
・スピーチなどで若輩者を強調する言葉
若輩であることや主賓であることは見ればわかるものです。
わざわざ「私はあなたたちより若いのに主賓だ」と言って、年長者のゲストを不愉快にする必要はありません。
⑦ ムダなフレーズを省く時短テクニック
たいしたことを言っていないのに話が長いというタイプは嫌われます。
なぜ自分の話がムダに長くなっているのか、よく考えてみましょう。
「いらない言葉」を散りばめるクセがあることに気がつきませんか?
次のような言葉は「いらない言葉」ですから、捨ててしまえば話がすっきりして伝えたいことが明確になります。
これはクセになってしまっているケースが多いので、直すには時間がかかるかもしれません。しかし、これらのムダな言葉を省くと、劇的に話が伝わるようになって驚くことでしょう。
・「えー」「あー」「あのー」「えーと」
これは単なるクセで、聞き手にとってはムダな時間です。
まずは、これから切り捨てましょう。
・「~させていただきます」
いたずらに丁寧な表現を使っても、語尾を伸ばして話を長くしてしまうだけです。
「いたします」「します」に変えたほうが、スッキリして話が流れます。
・「~したいと思います」
聞き手にとって「話し手がどう思っているか」という情報が必要な場合以外は、話を長くするだけなので「思う」を使うのは避けましょう。
・「~のほう」
これは柔らかい表現にしたいときに使ってしまいがちな言葉ですが、基本的に必要ありません。
「画面のほうを」「資料のほうを」は、「画面を」「資料を」としたほうがすっきりします。
・「本当に」
一生懸命伝えたいという熱意から、「本当に」を連発してしまう人がいます。
連発すればするほど逆効果になる言葉ですから、切り捨てましょう。
これらの「いらない言葉」が多い人は、意識して省くだけで、1分間に話す文字の量が半分まで減るというケースもあります。
まとめ
ここで解説してきた「15秒ブロックで話を組み立てる方法」と「1分間で自分を伝える話し方」が身につくと、自分の言いたいことが相手に十分伝わるようになります。
最初からすべてを実践しようとせずに、できることから始めてください。
なにかひとつでも効果が実感できると、自信がついて次のステップに進みやすくなります。
「自分を伝える話し方」が自然にできるようになると、大事な場面でチャンスをつかめる確率が数段上がることでしょう。
人前で話したり、スピーチをしなくてはならない機会で悩んでいる方は「スピーチのネタに使える名言40選-場面別で役に立つ珠玉の言葉」の記事もあわせてぜひ読んでみてください。
【参考資料】
『15秒で自分を伝える「会話」の授業』 学研パブリッシング 2014年
『言いたいことは1分で! 10倍伝わる話し方』 幻冬舎 2012年
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