ウィズ・コロナ時代に求められるメンタルケア-12の実例と対策

メンタル

「メンタル」とは、フィジカルが意味する「肉体」に対する「精神」という意味や、心のもち方、精神にかかわるさまといった意味で使われる言葉です。
心の健康を「メンタルヘルス」、それを管理することは「メンタルヘルスマネジメント」と呼ばれます。

近年、企業や学校におけるメンタルヘルスが重視されるようになり、メンタルヘルスチェックが義務付けられて、心理職と呼ばれる専門家を常駐させるところも増えました。
ところが2020年になり、新型コロナウィルスの感染が世界で蔓延すると、様々な生活様式がガラッと変わってしまい、今までは考えられなかったような新型ストレスが問題視されるようになっています。

「ああなったらこうなる」とイメージする今までのメンタルモデルが通用しなくなり、メンタルケアやメンタルトレーニングの在り方も、新時代へと突入することになったのです。

ここでは、ウィズ・コロナ時代に求められるメンタルケアとはどのようなものか、12の実例をあげて解説します。

ウィズ・コロナ時代に求められるメンタルケア、12の実例と対策

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テレワークをはじめた夫の言動が怖くなった

在宅勤務や休校で、大人も子どもも家にいる状態がこれほど続いたのは、かつてないことです。
生活様式の変化の中で、もっとも大きなものといっていいでしょう。

テレワークに慣れなかったり、仕事での行き詰まりが強かったりして、強いストレス反応が行動や態度にあらわれてしまい、奥さんに対してモラハラをしてしまう男性が増えました。
モラルハラスメントとは、態度や言動で相手をいじめる行為です。

夫の方は問題を抱えていても、モラハラすることによってストレスをある程度発散しているケースが多いのですが、ひたすら耐えている奥さんが大きなストレスを溜めてしまい、心身の健康を害する可能性が高くなります。

このようなケースではただ耐えるのではなく、まずは身近な人に相談して気持ちを落ち着け、それからご主人と対話する機会をつくりましょう。
つらい気持ちを伝えたら、ご主人からも苦しい状況を打ち明けられるかもしれません。
夫婦で協力して解決できないか相談してみましょう。

対話が進まないような場合には、一時的に実家などへ滞在するのもいいでしょうし、メンタルの専門家に相談してみることも考えてみましょう。

家飲みが続いて酒量が増えてしまった

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テレワークや外食自粛が続いて、毎日家で早い時間から飲酒する人が多くなり、アルコール依存症予備軍が急増しているといいます。

自由な時間が増えるということは、それだけ自分を律する必要が出てくるということ。
酒量が増えたと思ったら、アルコール依存症にならないように自律しましょう。
慣れないテレワークなどでストレスを抱え、メンタル面の反応として活気がなくなり、フィジカル面の反応として肩こりや頭痛をうったえ、行動面の反応として飲酒するという人が増えており、これは紛れもなくアルコール依存症の進行過程。

アルコール依存症のレベルを知って、自分の状態を推し量りましょう。
レべル① 機会があれば飲む
レべル② 習慣的に飲む
レべル③ 毎日大量に飲む
レべル④ 飲まないと決めた日でも飲んでしまう(精神的な依存)
レべル⑤ 酒が抜けると震えや発汗が起こる(肉体的な依存)

テレワークで子どもたちを怒るようになった

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在宅勤務や休校で、親子が四六時中いっしょにいる環境となり、「子どもがうるさくて仕事ができない」と怒る親が増えたといわれます。

欧米ではどんな仕事をしていても、夏休みを2週間から3週間とって家族で過ごすバケーションが根づいていますが、日本ではせいぜい年末年始やゴールデンウィークくらいでしたから、子どもとずっと一緒にいるということに慣れることができず、ストレスを抱えてしまったのです。

コロナ渦が子どもたちの未来に与える影響は予想がつかないので、気をつけて対応しなければいけません。
小学生の子どもを感情的に叱り続けると、思春期以降の親子の関係を悪化させることにつながります。

理由がわからないまま、一方的に繰り返し怒られると、自信がもてない子どもになり、いつも誰かの顔色をうかがう情緒不安定な人間に育つ可能性が高くなります。
親子で、平日のスケジュールや、静かにしなければいけない理由などを話し合うことが大切です。

休校を境に子どもが勉強をしなくなった

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子どもが環境の変化で勉強しなくなり、親が叱ってしまうケースも増えています。
「ゲームばかりしているので勉強しろと怒鳴る」→「子どもが反抗して部屋にこもる」→「会話がなくなる」という関係悪化に悩む家庭は少なくありません。

世の親は、「子どもが大人になったときに幸せに暮らしてほしい」と願うもの。
幸せになるために勉強して良い高校、良い大学、良い会社へ入って欲しいと思うわけです。
しかし、こうした親の勝手な価値観を押し付けてしまうと、それが叶えられなかったときに子どもは大きな敗北感を抱いたまま一生を過ごす可能性があります。

少子高齢化となり、毎年のように自然災害にさらされ、さらに新型コロナ感染で生活様式が変貌した現在、学ぶということの意味合いも変わりつつあります。
データを記憶することよりも、自分で情報収集できるかどうかという能力が重視される時代になってきているのです。

親は冷静になって対話する機会を設け、「なぜ勉強するのか?」という目的、「何を目指して勉強するのか?」という目標、「どうやって学ぶのか?」という手段という、学びの3要素を親子でよく話し合ってみましょう。

乳幼児に与える影響が心配

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コロナ感染が子どもに与える影響は、子どもの言動に現れやすいのでまだ気がつくことができるのですが、反応が読み取れない乳幼児に与える影響を心配する母親が増えています。

とくに、メンタルリープの時期にある乳児は、知能の発達に影響を及ぼすことが危惧されているのです。
メンタルリープとは、0~2歳の間に10回ある「ぐずる時期」で、知能が急成長するときとされています。

乳幼児にもっとも影響を与えるのではないかと考えられているのが、ソーシャルディスタンスの在り方。
感染防止のためには必要な措置ですが、3歳くらいまでの子どもにとって身体的接触が制限されることは、心の発達に影響を与える可能性が高いと危惧されるのです。

感染に気をつけるあまりに、スキンシップを減らしてしまうのは気をつけた方がいいでしょう。
ソーシャルディスタンスの目的は飛沫感染を防ぐための身体的距離ですから、心理的・社会的距離を広げないようにすることが大事。
理解できる年齢であればスキンシップをとれない理由を説明してあげることもいいでしょうが、乳幼児の場合は必要以上にスキンシップを減らすべきではないと考えられています。

失業の不安から離れられない

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失業に対する不安や、経験したことのない状況に対する不安から離れられなくなっている人は、数えきれないほどいるでしょう。

心配や不安は誰にでもある感情で、通常はゆっくり睡眠をとったり、美味しいものを食べたり、楽しい事をしたりして離れることができるのですが、憂うつな気分が2日も3日も続いてしまうという人が増えているのです。

不安が続いて、不眠や食欲減退、思考力や意欲の低下といった心身の症状が現れてきたら要注意。
しかし、そうした自分の状態を意識すれば、さらに大きなストレスとなって悪化していき、この悪循環にはまると、セルフケアでメンタルを回復することが難しくなっていきます。
この状態が2週間続くと、うつ病やストレス性障害と診断されることになります。

ストレスは、できるだけ早い段階でのケアが重要。
もっとも簡単に不安から逃れる方法は、何かに没頭することです。
気持ちよいこと、楽しいこと、好きなこと、美味しいものなどで、一時でも不安を忘れることができたら、もう回復に向かっているといえます。

テレワークのシステムで監視されているような気がする

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テレワークが一般的なものとなり、オンライン会議をはじめとする新しいシステムが導入されてメンタルな問題を抱えている人も少なくありません。

仕事とプライベートの分離が常識となってきたときに、いきなりテレワークがはじまり、自宅の様子が映し出されるオンライン会議にストレスを感じている人もいます。

仕事とバケーションを混合したワーケーションで、南の島にいても仕事ができるなどといわれてはいるものの、世界中どこにいてもインターネットでつながってしまう状況に、まるで監視されているようだと感じてしまう人も。

経営者や管理職の中には、リモートで仕事をする効率が理解できなくて、テレワークによって部下がさぼるのではないかと監視体制を強めてしまう会社もあります。
テレワークには、会社側と社員の間の信頼関係を浮き彫りにしたという側面があります。

監視しなければと考える会社側も、監視されているのではないかと感じる社員側も、お互いに信頼していないのです。
ますます財政的に厳しくなる企業が増えるであろう社会の状況を考えれば、双方の信頼関係を維持することが会社の存続にも、個人のメンタルにも重要なことだといえるでしょう。

通勤電車に乗るのが怖い

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三密を避けるのが常識となった現在でも、都市圏において電車やバスで通勤している人は、密集・密着・密接を強いられることになり、大きなストレスの原因となっています。

感染の恐怖から、満員電車に乗ることができないという状態になってしまい、それでも乗ろうとすれば、車内で動悸や冷感、息苦しさを覚え、最寄りの駅で降りてしまうという人も。

こうなると、痴漢に遭遇したり営業先で暴言を受けたりして、動悸、発汗、身震い、胸の痛みなど様々な症状を起こすのと同様に、「パニック障害」を発症している可能性があります。
パニック障害は、自分はこのまま死んでしまうのではないかという恐怖にまで至るメンタルの病。

発作的な症状を感じたら、ムリをせずに職場の産業医や心理職、かかりつけの医師がいればその医師に相談してみましょう。
その上で、専門的な医師の診察を受ける方がいいでしょう。

一定期間、自宅療養で回復をまつ必要が出てきたら、専門医に診断書や意見書を書いてもらい、職場に提出します。

家事の分担で夫婦喧嘩になってしまう

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夫婦そろって家にいる時間が長くなり、喧嘩が多くなったという家庭は、環境の変化によるストレスが原因。
家事の分担や子どもの送り迎えなど、ちょっとしたことで言い争いになってしまいます。

メンタルケアの分野には、「アンガーマネージメント」というイライラ対策の手法があります。
アンガーマネージメントの基本となっているのが、「6秒をどうやり過すか」といういろいろなテクニック。
怒りの感情は、6秒後をピークとして減衰するので、なんとか6秒間をやり過ごせば収まっていくというものです。

具体的な方法としては、次のようなものがあります。
・イラっとしたら、とにかくその場を離れる
・6から0まで単純にカウントダウンする
・100からマイナス6ずつカウントダウンする
・今回の自分の怒りは何点が点数をつける
・決めてあった「おまじない」の言葉を唱える

夫婦でお互いに6秒を意識しておけば、イライラすることがあっても、相手を思いやる気持ちにつながるはずです。

不安や悩みを相談できる人がいない 

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コロナ感染で不安や悩みを抱えたら、まずは身近で信頼できる人に話してみましょう。
近くにいなくても、両親や親戚がいたら連絡すればいいし、友人と連絡が取れなければ、学生時代の旧友に連絡をとってもいいのです。

50人以上の従業員がいる会社に勤めている人は、職場に産業医や保健師、メンタルケアカウンセラーやメンタルケア心理士といった資格をもつ心理職がいるはずですから、窓口となる担当者に「健康相談をお願いしたい」と言って相談の予約をすることができます。

自治体にある心の相談窓口を利用するのもいいですし、かかりつけのカウンセラーをつくっておくのもおススメ。
これからの時代、長い付き合いで心身のことを相談できる医師や医療機関を確保するのは、とても大切なことです。

接客業の妻が手洗いをやめられなくなってしまった

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コロナ感染対策の常識となった手洗いですが、妻が感染に対する恐怖心から、1日に1時間以上も手洗いに費やすようになってしまったという相談です。

これは、不特定多数のお客さんと接する仕事をしている奥さんが、毎日、感染に恐怖を覚えながら仕事を続け、感染してしまったときのことをとても心配していたことから、強迫性障害となっているものと考えられます。

強迫性障害は、強い不安やこだわりによって、日常生活に支障をきたす病気。
「ドアにカギをかけてきたか心配になる」「ガスの元栓を締めてきたか心配になる」という思いから家に戻った経験をもつ人は多いでしょう。
その不安やこだわりが度を越してしまうと、外出してから何度も家に戻ったり、特定の数字にこだわって生活に支障をきたすようになります。

手洗いを続けることが不合理だとわかっていても止められないのです。
いっしょに生活している人間がやってはいけない事が3つ。
① 「おかしいよ」「やめろよ」とは言わないこと
② 「病気じゃないのか?」と言わないこと
③ 「なんとかしろ」と孤立させないこと

まず対話する状態をつくって困っていることの聞き役になり、困っていることを相談してみようと提案してメンタルクリニックを予約し、受診に付き添うのが正しい対処です。

折れない心をもって未来に立ち向かいたい

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ウィズ・コロナの時代が到来し、「感染に負けず、新しい生活様式にも対応しながら強く生きていかなければいけない」と気もちを引き締めている人も多いことでしょう。

感染に負けないためには、免疫力を落とさないことが何よりも大事ですが、「折れない心」をもち続けるためにはどうすればよいのでしょうか。

「折れない心」とは何があっても動じない、決して落ち込んだりしない心境ではありません。
人間は生きていれば、失敗や挫折を経験するもの。
ストレスを受けない生き方などありませんから、気分が滅入ることも、落ち込むこともあって当然なのです。

「折れない心」の持ち主は、そこから回復して立ち直ることができます。
何度でもしなやかに立ち直ることができるのです。
そこで大事なのが、過去に自分は悲しい思いや辛い経験からどうやって立ち直ったのかという分析。

経験したことがない苦境に陥っても、どうすれば次の1歩を踏み出すことができるかというアイデアを1つでも多くもっていることが、強く生きていくヒントになることでしょう。

まとめ

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メンタルケアというものは、その時代や環境における人間がもつメンタルに対応していなければ意味がありません。
ですから、今はウィズ・コロナのメンタルケアを考える必要があるのです。

来年か再来年に新型コロナの感染が終息したとして、そのときはまた違ったケアが求められるでしょうし、人々のメンタルが以前の状態に戻ることもないでしょう。

そうして考えると、やはりどのような状況にあってもメンタルをセルフで回復することができる「折れない心」を身に着けておくことが、ますます重視されるようになると思いませんか?

【参考資料】
・『【図解】新型コロナウイルス メンタルヘルス対策』 亀田高志 著  エクスナレッジ 2020年
・『心療内科医が教える 家庭でできるセルフメンタルケア』 山岡昌之 監修  徳間書店 2020年

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