30分で理解できる「般若心経」の概要-歴史と全文の意味を知る

Pocket

shutterstock_550121293 (1)

「般若心経」のことを知りたいと思っても、難しそうな感じがしますよね?

般若心経とは、世界でもっとも読まれている、世界一短い仏教の経典です。
わずか200数十文字に、釈迦の教えを凝縮したものだといわれています。

「経典」「釈迦の教え」などと聞くと、余計に難解なのではないかと思われるかもしれませんが、もし般若心経が難解であったら、こんなに誰もが読んだり写経したりする身近なものになっているはずがありません。

誰にでも理解できるわかりやすいものでなければ、般若心経はここまで世界中に広まらなかったでしょうし、そもそも宗教というものは、誰にでもわかりやすいものでなければ、布教活動ができないのです。

ここでは、般若心経の概要と歴史を簡単に説明してから、般若心経全文を通して、基本的な解釈をわかりやすく解説します。


目次

1. 般若心経の概要と歴史
1-1. そもそも「お経」とは何か?
1-2. 大乗仏教の経典「般若経」
1-3. 奈良時代に伝わり写経される
1-4. 唱える宗派と唱えない宗派
1-5. 日本における4回目のブーム

2. 全文の意味するところ
2-1. 状況設定
2-2. 空の智慧を説く
2-3. 心の自由を説く
2-4. 般若波羅蜜多を説く
2-5. マントラに要約

まとめ

1. 般若心経の概要と歴史

shutterstock_424330522

般若心経は、日本だけでなく、世界でもっとも多くの人たちに読まれているお経です。
この、わずか260文字程度の短いお経に秘められた「心を安らかにするパワー」が、注目されているからです。

なぜ、般若心経にそのようなパワーがあるのか、その成り立ちから考察していきましょう。

1-1. そもそも「お経」とは何か?

shutterstock_657228868

般若心経が「お経」だということは誰もが知っていますが、「お経」とは何なのでしょうか。

「お経」の正式名である「経典」は、仏教の教えを記録したものです。
仏教の文献には、「経(教え)」「律(戒め)」「論(道理)」の3種があり、「経」は仏が教えを説いたものとされます。

釈迦が入滅したのは、紀元前4~5世紀ではないかと考えられていますが、生きている間に弟子たちに説いた教えや、釈迦が定めた戒律は、釈迦の入滅によって混乱をきたしました。

仏教が自由な宗教といわれる所以でもありますが、釈迦は状況に応じた教義を説いたために、弟子たちの間で矛盾が生じたのです。
しかも、釈迦の教えは文書に残さず、口伝されたものだったのです。

そこで、釈迦の教えを伝える弟子たちは、「結集」という会議を開いて、仏典の整理を行いました。
結集は、仏滅後、400~500年の間に4回ほど行われ、そこで「経」「律」「論」の三蔵が生まれ、後に古代インドのパーリ語やサンスクリット語で書き残されたのです。

「経」は必ずしも釈迦が説いたものとは限らず、極楽浄土の教主である阿弥陀如来が説いたとされるものや、いろいろな菩薩が説いたとされるものもあります。

般若心経は、釈迦如来が本尊として登場しますが、実際に教えを説くのは観音菩薩です。

1-2. 大乗仏教の経典「般若経」

shutterstock_1116285773

釈迦が説いた仏教は、出家による自己救済が目的でした。
仏滅後100年経つと、口伝による教えや戒律の矛盾が生じたこともあり、様々な部派仏教が乱立します。

部派仏教の主流となったのは、保守的な解釈を続ける「上座部(長老たち)」でしたが、幅広い解釈を行う「大衆部(だいしゅぶ)」との対立が激しくなり、紀元前250年頃に「根本分裂」と呼ばれる仏教の大事件が起こりました。

この分裂によって仏教は、出家して自己救済を目的とする「上座部仏教(小乗仏教)」と、大衆の救済を目的とする「大乗仏教」に分かれました。
インドから中国を経て日本に伝わったのは大乗仏教ですが、タイやスリランカ、カンボジアなどの東南アジア諸国では上座部仏教が広まり、今でも信仰されています。

大乗仏教において、もっとも重要とされる経典が「般若経」と呼ばれるもので、大乗仏教の根本思想である「空(くう)」を説き、自らの修行や精進に加えて、ほかの人びとにも教えを分かち与えて救うという「菩薩道」の教えを示しています。

般若経はたくさんの漢訳があり、その経典群を集大成したひとりが、西遊記に登場する三蔵法師のモデルとなった玄奘(げんじょう)です。
三蔵法師とは、「経」「律」「論」のすべてに精通した高僧のことで、玄奘はそのひとり。

玄奘が訳した600巻に及ぶ『大般若波羅蜜多経』は通称「大般若経」とも呼ばれ、般若経の集大成としてもっとも普及しました。
この600巻の意を、最終的に260~270文字程度に集約したものが『般若波羅蜜多心経(般若心経)』なのです。

般若心経の漢訳には、500~600文字の長さがある「広本」と、200数十文字の「略本」が存在し、玄奘訳は略本を代表するものです。

般若心経は「大般若経」には含まれていないので、本当に玄奘が訳したことがあるのか疑問視する学者もいましたが、2016年に中国で、北京の雲居寺に保管されていた石に刻まれた般若心経が、玄奘の漢訳による現存最古の般若心経だと発表されました。

1-3. 奈良時代に伝わり写経される

shutterstock_1091678951

奈良時代の法相宗の僧である玄昉(げんぼう)は、遣唐使として唐にわたり、玄宗皇帝から賜った5千余巻にも及ぶ「大蔵経」を持ち帰りました。

大蔵経とは、三蔵を中心として、注釈書を加えた仏教聖典の総集で、その中に、600巻の『大般若波羅蜜多経』とともに、玄奘訳の『般若波羅蜜多心経』が含まれていたのです。

経典としては異例の短さである般若心経は、願望成就と故人供養という点から注目され、写経にもっとも適した経典として仏教僧や貴族の間に広まっていきました。

平安時代に中国から密教を伝えた空海は、般若心経を密教経典として解釈し、般若菩薩のさとりの境地を示したものと考えました。
般若心経は、密教の布教とともに2度目のブームとなります。

鎌倉時代になって新しい仏教が広まると、日本古来の神々は仏の化身と考えられて、神仏を習合して拝むときに般若心経が読まれました。

そして、室町期から江戸時代にかけては、一休や沢庵、白隠といった禅宗の高僧によって、「空」や「無」といった禅的解釈がなされ、般若心経は三度ブームとなったのです。

日本には、玄奘訳のほかにも、鳩摩羅什(くまらじゅう)訳やサンスクリット語の写本が伝わっていますが、定着した流布本は経題を除いて262文字で、玄奘訳とほとんど同じものです。

1-4. 唱える宗派と唱えない宗派

shutterstock_17613145

般若心経は、浄土真宗と日蓮宗、法華宗を除いた各宗派において唱えられています。

浄土真宗では、「阿弥陀如来にすがって極楽浄土へと導かれることがすべて」という「絶対他力」に基づく念仏信仰を説き、『浄土三部経』を根本経典とするので、菩薩行を説いた般若心経は唱えません。

また、日蓮宗や法華宗は、根本経典である『法華経』以外の経典は必要ないと考えるために、般若心経は唱えません。

親鸞の師である法然を宗祖とする浄土宗も、『浄土三部経』を根本経典としますが、祈願のときと食事の前後に般若心経を唱えます。

とくに般若心経を重視するのは、真言宗と天台宗、臨済宗や曹洞宗などの禅宗です。
また、神道と密教が習合した修験道でも、行者が般若心経を唱えます。

1-5. 日本における4回目のブーム

shutterstock_579910963

昭和から平成にかけては、「空」や「無」の哲学に基づいた生き方を示すお経、すべてを絶対のものにまかせて、心が動揺しない境地である「安心立命」のやすらぎを与えてくれるお経として、般若心経がまたもやブームとなりました。

NHKの長寿番組である「こころの時代」をはじめ、巡礼ブームや仏像ブームなどが広く受け入れられて、仏教ブームの到来となったのです。

2010年にニコニコ動画に投稿された『般若心経ポップ』は、ボーカロイドの初音ミクがエレクトリックなポップサウンドをバックに般若心経を読む動画で、約2週間で60万再生を達成し、「般若心経ロック」など、様々なバリエーションを派生させました。

「坊主バー」「寺カフェ」といった仏教ブームの中で、現役僧侶によるバンドがいくつか登場して、般若心経を歌詞とする曲も話題になりました。

 

2. 全文の意味するところ

shutterstock_362325734

玄奘訳の『般若波羅蜜多心経』をベースとした一般的な般若心経は、経題を除いて262文字です。

観音菩薩が、釈迦の十大弟子のひとり「舎利子(シャーリプトラ)」に「空」の原理を説くという設定になっています。

構成としては、「すべての存在は移り変わる」という「空の智慧」=「般若波羅蜜多」を説く前半部と、般若波羅蜜多の力を説き、真言(マントラ)に要約する後半部に分けられます。

「状況設定」「空の智慧を説く」「心の自由を説く」という前半と、「般若波羅蜜多の力を説く」「マントラに要約」という後半の5部に分けて、般若心経の基本的な現代語釈を解説します。
まず、全文を掲載しておきます。

経題の「仏説摩訶般若波羅蜜多心経(ぶっせつまかはんにゃはらみったしんぎょう)」とは、
「仏の智慧によって悟りを開く心髄を説いたすごいお経」という意味です。

仏説摩訶般若波羅蜜多心経

観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識 亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中 無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界 乃至無意識界 無無明 亦無無明尽 乃至無老死 亦無老死尽 無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒夢想 究竟涅槃 三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多 是大神咒 是大明咒 是無上咒 是無等等咒 能除一切苦 真実不虚 故説般若波羅蜜多咒 即説呪曰
羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提僧莎訶
般若心経

2-1. 状況設定

shutterstock_422411512

観自在菩薩(かんじざいぼさつ)
お釈迦さまに代わって教えを説く観自在菩薩(観音菩薩)は

行深般若波羅蜜多時(ぎょうじんはんにゃはらみったじ)
大いなる仏の智慧を知るために深く修行をしていたとき

照見五蘊皆空(しょうけんごうんかいくう)
人間は色(しき/身体)と、受(じゅ/感受)、想(そう/記憶)、行(ぎょう/意志)、識(しき/識別)という精神の5つの力で構成されているが、そこに実体はないと見抜き

度一切苦厄(どいっさいくやく)
すべての苦しみから抜け出したのだ

2-2. 空の智慧を説く

shutterstock_204614026

舎利子 色不異空 空不異色(しゃりし しきふいくう くうふいしき)
シャーリプトラよ、よく聞きなさい、色や形があるものは実体がないのだ。ただ一時的な存在として現れるだけなのだ

色即是空 空即是色(しきそくぜくう くうそくぜしき)
色や形があるものは実体なきものであり、常に変化している

受想行識 亦復如是(じゅそうぎょうしき やくぶにょぜ)
人間の精神の力である「受(感受)」、「想(記憶)」、「行(意志)」、「識(識別)」も、同様に実体がない

舎利子 是諸法空相 (しゃりし ぜしょほうくうそう)
シャーリプトラよ、よく聞きなさい、この世の森羅万象は実体がなく、永遠に変わらないものはない

不生不滅 不垢不浄 不増不減(ふしょうふめつ ふくふじょう ふぞうふげん)
そして実体がないのだから、生ずることも滅することもなく、汚れたりきれいになったりすることもなく、増えたり減ったりもしない

是故空中無色 無受想行識(ぜこくうちゅうむしき むじゅそうぎょうしき)
すべての事象が空であるのだから色形は無く、受(感受)も想(記憶)も行(意志)も識(識別)もない

無眼耳鼻舌身意(むげんにびぜっしんに)
空の中では、「六根」といわれる眼も耳も鼻も舌も身も意も実体は存在しないのだから、感覚に頼りすぎてはいけない

無色声香味触法(むしきしょうこうみそくほう)
「六境」といわれる、目が見た色、耳が聞いた音、鼻がかいだ香り、舌が感じた味、身が感じた触感、心の意識も実体は存在しないのだから、六境に惑わされてはいけない

無眼界 乃至無意識界(むげんかい ないしむいしきかい)
目に映るものから、それらを受け止める意識まで、六根はすべて「無」なのだ

無無明 亦無無明尽(むむみょう やくむむみょうじん)
自分の無知を知って執着を捨てるのだ。悟ることにも執着してはいけない

乃至無老死 亦無老死尽(ないしむろうし やくむろうしじん)
老いることや死ぬことまで、すべての苦しみにとらわれてはいけない

無苦集滅道(むくしゅうめつどう)
苦しみもその原因も、苦が消えることや悟りへの道にも、とらわれてはいけない

無智亦無得(むちやくむとく)
今までに学んだ智慧も御利益も捨ててしまいなさい

以無所得故(いむしょとくこ)
何ひとつ自分のものではないのだから

2-3. 心の自由を説く

shutterstock_1059340376

菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 (ぼだいさった えはんにゃはらみったこ)
すでに仏になれる立場にあるのに、あえて人々を救うためにこの世で修業を続けておられる菩薩は、大いなる仏の智慧をより所とするので、

心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖(しんむけいげ むけいげこ むうくふ)
心にこだわりが無く、不安も恐怖も無い

遠離一切顛倒夢想 究竟涅槃(おんりいっさいてんどうむそう くきょうねはん)
あらゆる間違ったものの見方や、ありもしない想像による迷いから解き放たれているので、悟りを極めることができる

三世諸仏 依般若波羅蜜多故(さんぜしょぶつ えはんにゃはらみったこ)
過去、現在、未来という三世の仏も、大いなる仏の智慧をより所として

得阿耨多羅三藐三菩提(とくあのくたらさんみゃくさんぼだい)
この上ない、正しい悟りの境地を開かれたのだ

2-4. 般若波羅蜜多を説く

shutterstock_631533302

故知般若波羅蜜多(こちはんにゃはらみった)
したがってこう考えなさい。大いなる仏の智慧は

是大神咒 是大明咒(ぜだいじんしゅ ぜだいみょうしゅ)
偉大な真言(真実の言葉=マントラ)であり、悟りを得るための真言であり

是無上咒 是無等等咒(ぜむじょうしゅ ぜむとうどうしゅ)
永遠に究まることのない真言であり、絶対にして並ぶもののない真言だ

能除一切苦 真実不虚(のうじょいっさいく しんじつふこ)
すべての苦しみを取り除く、偽りのない真実の言葉である

2-5. マントラに要約

故説般若波羅蜜多咒(こせつはんにゃはらみったしゅ)
れ故に、般若波羅蜜多を聖なる真言として説こう

即説呪曰(そくせつしゅわつ)
すなわち、その真言の意味は

羯諦羯諦 波羅羯諦(ぎゃていぎゃてい はらぎゃてい)
悟りの世界へ往く者よ、悟りの境地に到った者よ

波羅僧羯諦(はらそうぎゃてい)
ひとり残らずみんな一緒に悟りの世界へ行こう

菩提僧莎訶(ぼじそわか)
悟りよ、幸あれ!

般若心経(はんにゃしんぎょう)
これが、仏の智慧の真髄を説く般若心経なのだ

まとめ

shutterstock_626818022

いかがですか?
たった262文字の概要にふれただけで、気持ちが安らぎませんか?

「この世に常なるものはない」という「無常」や、「すべての存在に実体はない」とする「空」という思想が、ほんの少しだけ理解できたことと思います。

この哲学を基本とする仏教の面白さは、聖書のように細かいことまで定めた聖典がないおかげで、解釈がフレキシブルだということにあります。
だから、現代の様々な生活にも当てはまる部分が多いのです。

般若心経は、宗派によって多少の解釈の違いがあり、ここで解説したのは、一般的な現代語訳になります。

般若心経を現代の生活に照らし合わせて意訳を著した本が何冊もありますので、読んでみると、さらに般若心経の本質へと迫ることができるはずです。

【参考資料】
・『史上最強 図解 般若心経入門』 頼富本宏(編著) ナツメ社 2012年
・『生きるのがラクになる 「般若心経」31の知恵』 枡野俊明 サンマーク出版 2017年
・『あらすじとイラストでわかる般若心経』 知的発見!探検隊 イースト・プレス社 2013年
日本経済新聞 web
曹洞宗 少林寺 web site

Pocket

▼ファミリアスピリット・アプリ(iTunesサイト) ※iphoneでご覧ください bannar-familiarspirits familiarspirits-app-download

コメントをどうぞ

*