あがり症を克服する5つのヒント-緊張を味方にするテクニック

メンタル

あがり症をなんとかして克服したいと思いませんか?
あがり症の悩みはけっしてめずらしいことではなく、日本人の90%があがり症で悩んでいるといわれます。

あがり症とは、不安や恐怖による極度の緊張で動悸が激しくなったり、言葉が出なくなったりする症状が度々起こる状態を指します。
症状がひどくなると「社会不安障害(SAD)」という病気として診断されることもあります。

しかし、多くの場合は原因やしくみを理解することによって、その人なりの対策を講じることができるので、克服できない問題ではありません。

ここでは、あがり症を克服するために役立つ5つのヒントを紹介します。
症状や性格から自分のあがり症がどのようなタイプなのか判断し、科学的な根拠を理解してから、簡単にできる対処法を実践していきましょう。

自分のあがり症を診断してみる

あがり症克服の第一歩は、自分を知ることだといわれます。

一言で「あがり症」といっても、原因や症状は様々。
自分はどういうときにあがるのか?
どういった症状がでやすいのか?

そうした自分のあがり症の実情を知ることで、自分なりの対処法が見えてきます。

人前でのスピーチは誰でもあがる

あなたが緊張してあがってしまうのは、どのようなときでしょうか。
慣れていないことをするときではありませんか?

飲料メーカーが行った「あなたはどんなときに緊張しますか?」というアンケート調査によると、「大勢の前で話・スピーチをするとき」という回答が第1位で、なんと82.2%の人がチェックをしていました。

このアンケート結果でわかることは、人前で話すときにあがるのは、特別なことではないということですね。
第2位は「初対面の人に会うとき」で36.5%、第3位は「新しい職場で仕事をするとき」で35.6%と続きます。

この上位3つの状況を考えてみると、どれも「慣れていないこと」という共通点があるのです。
慣れていないことに対して緊張するのは、自然なことであり、当たり前のこと。
あなたが緊張するのも、そんなときではないでしょうか。

自分のクセを知る

自分があがるのはどのようなときか把握できたら、次になぜあがるのか考えてみましょう。
経営者、講演家として活動し、YouTuberとしても100万人以上の登録者を誇る鴨頭嘉人さんが示す「10項目のあがり症診断シート」を紹介します。

① 人前で話していると、聞き手の視線が気になる
② 人前で話していると、聞き手の反応が気になる
③ 人前で話していると、緊張しているのがバレていそうで心配になる
④ スピーチの間、どこを見て話せばいいかわからない
⑤ スピーチ中に、緊張で頭が真っ白になることがある
⑥ これまで、できるだけスピーチする機会を避けてきた
⑦ 原稿をちゃんと書くのが苦手だ
⑧ 準備をすればするほど緊張して話せない
⑨ 自分のスピーチを録音して聴くのが怖い
⑩ 本番当日にスピーチをキャンセルしたくなる

この10項目であてはまるものにチェックをいれます。

①~⑤は「自意識過剰グセ」のカテゴリーで、ここのチェックが多い人は、「自分がどう見られているか」が気になってしまうタイプ。

⑥~⑩は「逃げグセ」のカテゴリーで、ここのチェックが多い人は、苦手意識があると逃げてしまうタイプです。

緊張の正体は正常な生体反応

自分があがってしまうのはどういうときで、自分のあがり症にはどのような傾向があるのか分析できたら、次にすべてのあがり症に共通する科学的根拠を理解しましょう。

緊張してあがってしまっているとき、身体の中ではなにが起こっているのかを知ることにより、本質から外れない対処法を考えることができます。

自律神経が引き起こす防御反応

身体に現れるあがり症の特徴には、「心拍の上昇」「血圧の上昇」「呼吸が早くなる」「震え」「汗をかく」「赤くなる」といったものがありますよね。

実はこれらの症状には、自律神経が大きくかかわっています。
自律神経とは、心拍、呼吸、血圧、体温、消化吸収といった生命維持に欠かせない身体機能をコントロールしているシステムで、活動モードをつくる交感神経と、リラックスモードをつくる副交感神経が常に6:4程度の割合で働き、どちらかが優位になるようになっています。

慣れていないことや不安な状態に遭遇すると、脳は自分を守るために交感神経を優位にして防御態勢をとります。
これは「ストレス反応」とも呼ばれるもので、酸素をたくさん体内に取り込んで筋肉を緊張させ、危機に対して臨戦態勢をとるのですから、この状態が続けば疲労しますよね。

緊張状態をほぐすためには、リラックスモードをつくる副交感神経を優位にすればいいのですが、自律神経は意識的にバランスを変えられるものではありません。
しかし、ストレスケアなどでコントロールすることは可能です。

ノルアドレナリンとセロトニン

緊張モードとリラックスモードという2つの状態に大きくかかわっているのが、「ノルアドレナリン」や「セロトニン」という神経伝達物資です。

ノルアドレナリンは感情の高ぶりや興奮、意欲などにかかわっており、交感神経を刺激する物質。
緊張すると脳内でノルアドレナリンが多く分泌され、その情報が腎臓の上部にある副腎に伝わるとアドレナリンがつくられて体内を巡り、興奮状態をつくります。

セロトニンは精神の安定をつくりだす物質で、副交感神経を高めて落ち着きや心の安らぎをもたらします。
あがり症の克服には、セロトニンを増やして副交感神経を活性化することがカギとなるわけですね。
ですから、重度のあがり症や社会不安障害の治療には、セロトニンとノルアドレナリンの働きを調整する抗不安薬が用いられるのです。

自分をリラックスさせるテクニック

副交感神経を優位にするためにはリラックスすればいいのですが、「リラックスしよう」と思ってもすぐにできるものではありませんよね。

そこで、自分をリラックス状態に導くテクニックがいろいろと考案されたのです。
いかにしてリラックスモードをつくるかということは、メンタルヘルスやストレスケアにおいてもっとも重要なポイントとなり、意識的に「心地よい」「楽しい」「うれしい」「美味しい」といったプラスの感情がわく刺激を自分に与える手法が中心になります。

あがり症を克服するという目的で考えると、自分を「コンフォートゾーン」に置くという手法がよく知られているので、ここで紹介しましょう。

コンフォートゾーンは個人差がある

「コンフォートゾーン」とは、自分が「心地よい」「快適」と感じる領域のことで、慣れ親しんだ環境や安心できる人間関係などがつくり出すものです。

コンフォートゾーンではないから緊張してあがるわけですね。
だから、スピーチする場をコンフォートゾーンにセッティングしておく、緊張する相手とはコンフォートゾーンである行きつけの店で会うといった対処ができれば、緊張は軽減できます。

注意すべきは、コンフォートゾーンは人によって違うということ。
その人の経験によって、質や量に差があるのです。

「同じフロアで話すのは問題ないのに、ステージのように高いところから話すのはあがってしまう」といった「質」の問題や、「5~6人の前では大丈夫だけど、10人を超えるようになると緊張する」といった「量」の問題を考えてみましょう。

自分にとってコンフォートゾーンはどこまでか、ということが見えてきます。

スティーブ・ジョブズのアウェイ克服法

スポーツ競技には「ホーム」と「アウェイ」という概念がありますよね。
一般的にアウェイはコンフォートゾーンではないので、緊張やプレッシャーによるパフォーマンスの低下が起こり、難しい試合運びとなるものです。

聴衆の心をつかみ、熱狂させたスピーチで知られる、アップル社の創業者スティーブ・ジョブズのアウェイ克服法を伝える話があります。

2005年のスタンフォード大学卒業式でジョブズが行ったスピーチは、歴史に残るスピーチといわれていますが、彼はその準備に数百時間を費やし、リハーサルを丸二日間行ったと語っています。
これは、スピーチの現場をコンフォートゾーンにするため。

あのジョブズでさえも、コンフォートゾーンから外れれば緊張したのです。

緊張を抑えようとしない

あがり症の最大の敵は、「緊張のスパイラル」です。
「不安のスパイラル」といってもいいでしょう。

苦手意識が不安を生み、自分が不安な状態でいることを知られるのが怖くなり、そういう緊張状態にある自分を意識するとさらに不安が大きくなる、という悪循環のことです。

この出口のない悪循環を断ち切ることができれば、あがり症の克服につながります。
「それができたら苦労はしない」と思う人もいるでしょう。
ところが、考え方ひとつでこのスパイラルを断ち切り、緊張を味方につけることもできるのです。

緊張を受け入れる方法

まず大事なのは、緊張を抑えようとしないこと。
緊張は悪いことでもなんでもなくて、誰にでもある自然な生体反応なのですから、「ダメだ」「どうしよう」「はずかしい」といったマイナスの感情をもつ必要はないのです。

「こういう場は、慣れていないから緊張しているだけ」
そう考えましょう。

誰でも最初は慣れていません。
どんな講演の名人でも、有名なボーカリストでも、最初の頃はあがってしまい、言葉が出なくなったり、歌詞を忘れたりしたのです。

慣れてからも、緊張しないわけではありません。
毎回、ステージに立つ前は緊張することがわかっていて、自分は緊張したらどうなるかということもわかっているので、緊張を受け入れることができるようになるのです。
緊張することに慣れればいいわけですね。

緊張を利用する

アスリートには、緊張を味方につけてパフォーマンスアップを図る人が少なくありません。

日本人史上初のオリンピック2大会連続2種目制覇、世界初の同種目2大会連続制覇を果たした水泳の北島康介選手は、オリンピックという大舞台において、練習では出したことのないタイムで勝利しています。

なぜそんなことができたのかという質問に対して、北島選手の答えは「本番は緊張するから」。
誰もが極度に緊張するというオリンピックの決勝戦ともなると、身体の状態が普段では考えられないくらい異常な状態になるといいます。
オリンピックで超人的な記録がでるのは、緊張状態がつくりだす身体機能のおかげなのです。

緊張状態を嫌なものとしてとらえ、まるで病気のように考えてしまうから、スパイラルを起こして過度に緊張してしまうのです。
人前で話すときにも、緊張を受け入れて味方にできればパフォーマンスアップできるはずですよね。

あがり症克服の簡単なトレーニング

あがり症の克服には、ここで解説してきたように「緊張を必要なものとしてとらえる」という考え方が大事です。
さらに、普段から簡単にできるトレーニングを身につけると効果は倍増します。

ポイントは、副交感神経を活性化させることと、話すことに慣れること。
ストレスケアにも共通するメソッドですから、ぜひ試してください。

表情筋のストレッチ

ストレッチとは、筋肉を伸ばす運動。
緊張状態で収縮している筋肉は、血液が流れなくなってしまい、老廃物が溜まっていきます。
この状態が続くと「だるい」から「痛い」へと悪化、とくに肩や首でうっ血が起こると、頭部への血流が悪化して脳機能が低下します。

緊張して硬くなっている全身の筋肉をほぐすことは、あがり症対策として大きな効果がありますが、とくに顔の筋肉をほぐすと表情がやわらかくなり、リラックス効果も高まります。

顔には20以上もの筋肉があって様々な表情をつくりだしており、「表情筋」という総称で呼ばれます。
とくに表情の変化として現れやすいのが、口と目の周囲にある筋肉。

・目をギュッと閉じてパッと開く
・眼球を上下左右に動かし、グルグル回す
・口を大きく開いて「アー」、横に大きく広げて「イー」、ぎゅっとすぼめて「ウー」を繰り返す
・両手で顔全体をもみほぐす

こうした顔面ストレッチを習慣化しましょう。

腹式深呼吸

深呼吸は、リラックスの基本ですよね。
大切なのは、腹式呼吸で自律神経が多く集まる横隔膜を動かすこと。
お腹をへこまして横隔膜を上げると副交感神経が刺激され、お腹をふくらまして横隔膜を下げると交感神経が刺激されるので、息を吐くことからはじめるのがポイントです。

・8秒かけて口からフーっと息を吐き切ってお腹をへこませる
・4秒かけて鼻からお腹へ息を吸い込む
・4秒間静止

この深呼吸を気持ちが落ち着くまで繰り返します。
8秒4秒で長く感じる人は6秒3秒でもかまいません。

どこでもいつでもできるところが深呼吸のいいところですが、緑の多い場所や空気のきれいな場所でやると効果は倍増します。
植物が放出する「フィトンチッド」と呼ばれる香りの成分は、副交感神経の活性化に大きな効果があるといわれています。

ワンテーマの会話練習

あがり症の人が、いきなりスピーチやプレゼンの本番だけ上手く話そうと思っても、それはムリというもの。
やはり、日常の会話から「話す」ことに慣れていくしかありません。
ここで重要なのが、「ワンテーマで話す」ということです。

わかりやすく人に伝わるスピーチは、「ワンスピーチワンテーマ」だといわれます。
あれも話そう、これも話そうと盛沢山の内容では、余計に緊張してしまいます。
話す内容の要点をひとつに絞るという思考を普段の会話から身につけましょう。

日常の会話で、ワンテーマで話すことを意識してみてください。
そして後から、「さっきの話は一言でいうと何かな?」と、自分に問いかけます。
会話した相手に、「今の話、結局何が言いたいの?」とはなかなか聞けないですよね。
だから、自分で自分に問いかけるのです。

頭の中を整理する練習にもなりますから、思考力アップにもつながることでしょう。

まとめ

ここで紹介した5つのヒントは、あがり症が、緊張を受け入れることができる「思考の余裕」、強張った筋肉をほぐして血流改善するストレッチ、自分をリラックスさせるテクニックなどで克服できることを示しています。

誰もが緊張するのですから、あがっていないように見える人は、そうした習慣を身につけているのです。
もっとも大事なのは、やはり「慣れること」だと言えるかもしれません。

参考資料
・『ドキドキ・ブルブルなし 理想の自分で輝くためのあがり症克服術』 村本麗子 著  明日香出版社 2020年
・『決定版! あがり症克服の教科書』 鴨頭嘉人 著  サンクチュアリ出版 2018年

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