概要の理解に必要な心理学の用語30-代表的な6つの領域と研究

Pocket

shutterstock_687296710「心理学」からイメージされるものは何でしょう?

「カウンセリング」「心理療法」「錯覚」といったところでしょうか。
「読心術」や「マインドコントロール」といった、ちょっとアブナイようなイメージをもっている人もいることでしょう。

しかし、現代の心理学はとても幅広い学問で、多くの人がイメージしているこうした事柄はほんの1分野の関連事項にすぎません。

ここでは、心理学の概要を知りたい人のために、30の用語を解説します。
用語辞典のようにひとつひとつの言葉を独立して説明するのではなく、入門書の本をサラッと読むようなスタイルで、筋立てして用語を並べたので、心理学の大枠を理解することができるはずです。

できる限り難解なカタカナの用語や人名は避けて、誰もが大枠を理解できることを念頭に置きました。
各用語の後ろに表記した番号は、単なる通しナンバーです。

目次

1. 心理学①
1-1. 観察法②
1-2. 調査法③
1-3. 実験法④
2. 心理学学会⑤
3. 領域⑥
3-1. 知覚心理学⑦
3-1-1. 誘導運動⑧
3-1-2. カニッツァの三角形⑨
3-1-3. 錯視⑩
3-2. 認知心理学⑪
3-2-1. 記憶測定⑫
3-2-2. 処理水準説⑬
3-2-3. 推測統計⑭
3-3. 発達心理学⑮
3-3-1. 原始反射⑯
3-3-2. 保存概念⑰
3-3-3. 心の理論⑱
3-4. 臨床心理学⑲
3-4-1. 心理臨床学⑳
3-4-2. カウンセラー㉑
3-4-3. 心理アセスメント㉒
3-5. 社会心理学㉓
3-5-1. 自己評価維持モデル㉔
3-5-2. 援助行動㉕
3-5-3. 集団意思決定㉖
3-6. 教育心理学㉗
3-6-1. 外発的動機づけ㉘
3-6-2. 内発的動機づけ㉙
3-6-3. ピグマリオン効果㉚
まとめ

1. 心理学①

shutterstock_1208865688人間の行動の法則性を科学的に探る学問。
英語では「Psychology(サイコロジー)」。

心理学でいう「行動」とは、身体的な運動だけではなく、何かを思ったり感じたりすることも含みます。
何かを思ったり感じたりして起こる生理的な変化と、その原因となっている五感で受けた刺激の関連性を明らかにしようとすることが大きな目的のひとつ。

人間におけるこうした法則性は、自然科学のように「同一条件下では同一の結果が得られる」ものではなく、人によって微妙な変化が生まれます。
心理学ではそうした不安定な要素から法則性を見つけるために、様々な研究方法が開発されてきました。

1-1. 観察法②

観察法は、様々な状況下で、人間の行動を観察する研究方法です。

「人間は電車に乗ったとき、どこに座ろうとするのか」という着席行動の法則性を見出そうとする観察研究であったら、まずどこかの駅で自然的な観察を行い、時間や地域別の観察、性別や年齢層に分けた観察、職業別の観察というように、様々な状況を考慮して計画的な観察を行うことになります。

1-2. 調査法③

例えば、着席行動の計画的な観察を行ういろいろな状況を設定したら、多くの人にアンケートなどで質問をして答えてもらうことも、法則性を見出すためには効果的ですよね。
これが調査法と呼ばれる研究方法。

直接インタビューしながら答えてもらう方法は、「面接法(面接調査法)」と呼ばれます。

1-3. 実験法④

計画的な観察法や調査法によってある法則を想定したら、これを仮説として確かめるのが実験法。
研究者が複数の状況を意図的につくり出して人間の行動を観察し、それらを比較することで、原因と結果の関連性を検討する研究方法です。

着席行動の例でいえば、「人間は自由に座る位置を決められるのであれば、知らない人とは距離を置いて座り、知っている人であったら近くに座る」という法則を想定したとします。

こうした場合、よく行われるのは、心理学の実験を行うと知らせて多くの学生を集め、待合室での着席行動を観察して仮説を確かめるといった実験法です。

2. 心理学学会⑤

shutterstock_1605742960日本にある心理学関連の学会は、「心理学検定」を実施している「日本心理学諸学会連合」という組織に56団体(2019年12月16日現在)が加盟しています。
この数字は、心理学がいかに多岐に渡る幅広い学問かということを表しています。

その中で中心的な存在となっているのが、「日本心理学会」。
日本心理学会は、大学の教授や学者、研究所で心理学を研究する研究者たちが集まり、心理学の進歩普及を目的として、1927年に創立された学術団体です。
会員になると、次の5つの専門部門から自分の専門を申告することになっています。

第1部門 知覚、生理、思考、学習
第2部門 発達、教育
第3部門 臨床、人格、犯罪、矯正
第4部門 社会、産業、文化
第5部門 方法、原理、歴史、一般

3. 領域⑥

shutterstock_176592509上記のような専門分野を心理学では「領域」と呼びます。
心理学の領域は、何らかの基準があって設定されているものではありません。
上の5部門は日本心理学会が設定した領域であり、例えば日本心理学諸学会連合が実施している心理学検定では、さらに細かく24の領域が10部門に分けられています。

ひとついえることは、ある領域において行われている研究は、研究者がどの領域に位置づけているかということで領域が決まるものであり、ひとつの研究から複数の領域で活かせる結果を得ることがよくあるということ。

心理学の領域は、それぞれ独立しているものではなくて、広い角度からみな人間の行動を対象としているものなので、幅広く学ぶことが大事だといわれます。

ここでは代表的な6つの領域を取り上げます。

3-1. 知覚心理学⑦

人間が、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感で受けた刺激をどう感じるのか探求するのが知覚心理学。

知覚心理学で得られた成果としては、順応や錯覚といった現象を応用した道路標示でドライバーに注意を促すといったことが、よく知られています。

最近、ゲームやアミューズメントで楽しまれている「VR(バーチャルリアリティ)」も、知覚心理学の成果が多く応用されており、医療や教育など多くの分野での応用が研究されています。

3-1-1. 誘導運動⑧

乗っている電車が駅に停車し、反対方向の電車も停車している状況で反対方向の電車が動き出すと、自分が乗っている電車はまだ動いていないのに反対方向へと動き出したと感じることがありますよね。

これは錯覚のひとつで、誘導運動と呼ばれる現象。
実験を行って、こうした現象の原因やしくみを解明しようとするのが知覚心理学です。

3-1-2. カニッツァの三角形⑨

錯覚のひとつとして、知覚心理学でよく例にあげられる図形が「カニッツァの三角形」です。

実際には描かれていない白い三角形が見えますよね。
これは主観的輪郭と呼ばれる効果で、白い三角形を形成する線は、脳内で描かれているのです。

人間が見たり聞いたり、感じたりしていることは、実際のものと違っていることが多々あります。
知覚心理学では、こうした現象も検討します。

3-1-3. 錯視⑩

大きさ、色や形、重さ、明るさ、音の大きさ、味、温かさなどが、機器で測定されたものと大きく異なって知覚される現象を錯覚といいます。
その中で、視覚的錯覚のことを「錯視」と呼びます。

錯視には、長さの錯覚である「幾何学的錯視」」、「明るさの錯視」、「色の錯視」「動く錯視」「ないものがあるように見える錯視」「消える錯視」「奥行きがあるように見える錯視」「ものが見えなくなる錯視」の8つがあるとされています。

3-2. 認知心理学⑪

認知心理学における「認知」とは、ものを認識したり、覚えたり、物事について理解したり、考えたりするといった知的な行動全般を指します。

1950年あたりからはじまった認知心理学では、脳をひとつのコンピュータ(情報処理装置)ととらえて、人間が意図するしないにかかわらず外から受けた刺激によって得た情報の処理過程を研究します。

認知心理学は、それまでの研究結果から仮説を立てて実験を行い、そこで得られた結果を新たな仮説として、さらに実験を重ねていくのが特徴です。

3-2-1. 記憶測定⑫

認知心理学では、実験法として記憶測定を行います。
記憶の測定は、学習とテストという2段階で行われ、試験勉強でいえば勉強をしている状態が学習で、試験を受けている状態がテスト。

実験参加者に覚えてもらいたいことを呈示して、覚えたことを思い出してもらう実験が一般的です。
何のヒントも出さずに思い出してもらう「再生法」や、選択肢を用意して選んでもらう「再認法」があり、採点してデータを残します。

3-2-2. 処理水準説⑬

人間は形や音で覚えるよりも、意味をもたせて覚えたほうが忘れづらくなり、記憶成績が高くなるという理論が「処理水準説」。

処理水準説は、数十人の参加者に対して記憶測定を行い、成績を数値化することによって実証されますが、日常生活でも意味処理の重要性を実感できることはたくさんあります。

歴史の年号を覚える場合には、ただ年号と事件の名称を覚えるよりも、その事件が起きた背景や後の時代に与えた影響などを理解すれば、より深い意味的な処理を行うことになり、記憶成績は高くなりますよね。

3-2-3. 推測統計⑭

記憶測定の実験を30人の参加者に対して実施したとしましょう。
次の30人に対して同じ実験を行ったら、同じ結果が得られるのでしょうか?

心理学では、確率を用いた推測統計という統計学によって、一度の実験から得た結果の普遍性を確認します。
「この実験を100回行った場合、意味処理が音だけの処理と差がないという結果は5回未満であり、95回以上で差がみられる」と結論づけるのです。

推測統計によって結論を導く実験は、最新の注意を払い、意味処理以外で覚えやすい要素をつくらないことが重要とされます。

3-3. 発達心理学⑮

shutterstock_649305121発達心理学は、人間の成長を研究する学問です。

人間として生まれ、誰もが同じように受け継いだ遺伝的要素と、人間関係や社会的な影響など、個人によって異なる環境的要素は、それぞれどのように影響して人間が成長するのか。

乳児から高齢者に至るまで、時間の経過とともに現れる心と身体の変化が、どのようにして起こるのか研究します。

3-3-1. 原始反射⑯

近年の研究では、乳児もいろいろな能力をもっていることがわかってきました。
生まれて間もない乳児だけに見られる反射が「原始反射」と呼ばれるもの。

数種類の原始反射があることがわかっており、大きな音が鳴ったり、体を急に揺らしたりしてびっくりすると腕を前に突き出す「モロー反射」や、足の裏を触ると足の裏や指を広げる「バビンスキー反射」がよく知られています。
原始反射は、生後3~6カ月で消えてしまう不思議な現象です。

3-3-2. 保存概念⑰

2~6歳の幼児期には、やっと人間らしくなって歩き出し、誰もがみな同じような発達順序をたどります。
3~4歳頃からは知的な発達も進みますが、その過程で面白い現象が起こります。

同じコップを2つ用意して両方とも半分まで水を入れ、子どもの見ている前で片方の水だけを細長いコップに移します。
3~4歳の幼児に「どっちの水が多い?」と質問すると、水面が高い方を応えたり、コップの幅が大きい方を応えたりします。

しかし、5~6歳になってくると、足したり加えたりしなければ、元の物質の量は変わらないという「保存概念」という知識をもつようになり、正しく答えられるようになるのです。

3-3-3. 心の理論⑱

「心の理論」とは、自分が知っていることと、ほかの人が知っていることは違うということが理解できるという理論。
3~4歳の幼児は、まだ心の理論をもっていないといわれています。

「スマーティーズ課題」という有名な実験では、チョコレートの箱の中に鉛筆を入れておき、3~4歳の幼児に中に何が入っているか答えさせます。
子どもはチョコレートと答えますが、中を見せると入っているのは鉛筆。

そして、その場にいないほかの子どもにこれを見せたらなんて答えるか、という質問をすると、「鉛筆が入っているという」と答えるのです。
自分は鉛筆が入っていることを知り、その場にいない子も同じだと思っているわけです。

3-4. 臨床心理学⑲

shutterstock_60652942心理学でもっとも人気のある領域が臨床心理学。
人間が悩むしくみを脳科学や医学の科学的事実から研究し、悩みの原因と対処法を導き出す学問です。

3-4-1. 心理臨床学⑳

臨床心理学のくくりの中で、精神分析学から発展した、心の問題を抱えた人の治療や援助を目的とした分野を「心理臨床学」と呼びます。

人の心を測定したり、診断する方法を開発するのが臨床心理学、その測定法や診断法を用いて心理療法を施すのが心理臨床学です。

3-4-2. カウンセラー㉑

心理臨床学を施す心理療法士のこと。

カウンセラーは、心の問題を抱えるクライエントを治療するというよりも、クライエントが自力で治癒することを目指しますから、お互いの信頼関係が重要で、お互いに気持ちを受け入れ合うことを「共感的理解」といいます。

3-4-3. 心理アセスメント㉒

心を測定する行為が「心理アセスメント(心理査定)」。

臨床心理学における心理アセスメントには、「観察法」「調査法」「面接法」「実験法」「検査法」があり、ほかの領域における研究方法と変わりませんが、心理検査は特徴的なものです。

臨床心理学で用いられる心理検査や性格検査は、蓄積された膨大なデータにあらゆる統計的処理をして心理測定を行うもので、検査者の十分な知識と訓練によって、正しい結果を導きだすことができます。

3-5. 社会心理学㉓

心理学では、「人と人とのかかわりが生じている場」を社会と呼びます。
1対1でもかかわりが生じていれば、それは社会。

他者が人の心に与える影響や、人と人との関係性、人の集まりである集団の特徴、組織や地域などの問題について研究するのが社会心理学です。

3-5-1. 自己評価維持モデル㉔

心理学で「自己」とは、自分自身のこと。
人間がもっている、自己を高く評価して欲しい、自分自身の評価を下げたくないという欲求を説明するのが「自己評価維持モデル」。

「比較する他者と自己の心理的距離(仲のよさ)」「その課題がどれだけ自分に重要か」「比較する他者が自分より優れているかどうか」という3つに着目する考え方です。

3-5-2. 援助行動㉕

援助行動とは、文字通り人を助けること。
よく、路上で起こる通り魔事件が例にあげられます。

自分以外にも助けられる人が存在すると思うと、「自分が助けなくてはならない」という意識が薄れてしまうことが証明されて、援助行動を促進したり抑制したりするしくみが研究されるようになりました。

3-5-3. 集団意思決定㉖

集団が個人に及ぼす影響を研究するのも、社会心理学です。
集団で話し合ってひとつの判断を下すのが、集団意思決定。

集団意思決定は、ひとりで考えて物事を決定するよりも、リスクの高い決定をしてしまうことが知られ、この現象は「リスキーシフト」と呼ばれています。

3-6. 教育心理学㉗

「教育」とは、「特定の対象に対して、何らかの働きかけを行い、その結果、対象が以前とは変化する過程」と定義されます。

教育をより効果的に行うための、役立つ情報や技術を示していく学問が、教育心理学です。

3-6-1. 外発的動機づけ㉘

「モチベーション」「やる気」「意欲」ということに対して、教育心理学では「動機づけ」という言葉を使って研究されてきました。

心理的な「報酬」を得るために、または心理的な「罰」を避けるために、やる気が高まって何かに取り組むことを「外発的動機づけ」といいます。

3-6-2. 内発的動機づけ㉙

外発的動機づけは、それまで存在した報酬や罰がなくなると、やる気がなくなってしまうという一面があります。

一方、内からわきあがる知的好奇心や興味、関心などから何かに取り組もうとするのが、「内発的動機づけ」。

教育心理学では、外発的動機づけと内発的動機づけをうまく使い分けることが重要とされます。

3-6-3. ピグマリオン効果㉚

教師が児童や生徒に期待をもつと、その教師はその期待にそうような行動をとることになり、児童や生徒もその期待に応えるべく動機づけを高めるので、結果的に成績が伸びることがあります。
これが「ピグマリオン効果」と呼ばれるもの。

ギリシア神話に登場するピグマリオン王が、女性の彫刻に恋をして人間になることを願い続けていたら、その通りになったという話から、生まれた名称です。

まとめ

shutterstock_365037596ここで解説した30の用語を理解すれば、心理学の概要が把握できるはずです。
心理学は、「人の心を読む」「人の心を操る」といったことに興味をもった人には、的外れな学問だといえます。

でも、知覚心理学で応用される錯視などは、雑学として披露すれば「かっこいい」と思われるかもしれませんね。
それで心理学に興味をもったとしても、動機が不純などとはいわれません。

どうして自分が興味をもったのかということや、どうして他人からかっこいいと思われたいのかということを解き明かすのも、心理学の大きなテーマなのですから。

【参考資料】
・『スタートアップ「心理学」』 小川一美、斎藤和志、坂田陽子、吉崎一人 著  ナカニシヤ出版 2013年
・『基礎から学ぶ心理療法』 矢澤美香子 著  ナカニシヤ出版 2018年

▼ファミリアスピリット・アプリ(iTunesサイト) ※iphoneでご覧ください bannar-familiarspirits familiarspirits-app-download

コメントをどうぞ

*