ストレス社会を生き抜く9つの知恵‐心と身体の関係を理解する

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現代の日本は「ストレス社会」だといわれていますよね。
激化するストレス社会における対策の一環として、厚生労働省は、2015年12月から従業員50人以上の事業所に対してストレスチェックを義務付けました。

その後も、職場のメンタルヘルスがますます重視されるようになっています。
多くの人のメンタルヘルスに悪影響を与えている「ストレス社会」とは、いったいどのような社会をさすのでしょうか。

また、ストレスは、メンタルヘルスという言葉が示すように「心の健康」を害するだけでなく、生命にかかわるような重大な病気の原因にもなるといわれていますが、なぜ「身体の健康」にまで影響を及ぼすのでしょうか。

ここでは、まず「ストレスのしくみ」を理解してから「ストレス社会」の原因を探り、どのようにしてケアをしたらよいのかということを「9つの知恵」として解説します。

目次

1. ストレスのしくみを理解する
1-1. 外界からの刺激に対する生体反応
1-2. ストレッサーによるマイナス感情
1-3. 積極的に増やせるプラス刺激
2. ストレス社会を理解する
2-1. テクノストレス
2-2. 人間関係のストレス
2-3. コロナストレス
3. ストレスケアを理解する
3-1. 身体のケア
3-2. 心のケア
 3-3. 適度なストレスとは?
まとめ

1. ストレスのしくみを理解する

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ストレス社会とはなにか?
その疑問を解消する前に、ストレスの正体を理解しておきましょう。

「stress」は英語で、重みなどでかかる物理的な圧力を意味する言葉でしたが、1930年代にカナダ人の生理学者ハンス・セリエによって、「外界のあらゆる要求によってもたらされる身体の非特異的反応」と定義づけられ、精神的な負荷や重圧感という意味合いが強くなりました。

非特異的とは、特別ではないという意味で、いろいろな外的刺激に対して体内で同じような反応が起こるということです。
体内で起こるこの反応とはどのようなものか、わかりやすく解説していきましょう。

1-1. 外界からの刺激に対する生体反応

人間は、「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」という五感によって外界からの刺激を取得します。
日々、見たり聞いたり感じたりすることで、様々な体験をしますよね。

五感で感じとった刺激は電気信号として神経細胞を伝わり、脳へ届くと記憶と照らし合わされて感情がわき起こります。

喜怒哀楽、いろいろな感情がわき起こる中で、不快、辛い、悲しい、痛いといった、自分に被害が及びそうな感情に対しては、脳が自分を守ろうとする反応が起こります。
これが「ストレス反応」と呼ばれるもので、心拍や呼吸を活発にして血圧を高め、筋肉を緊張させて、身体を臨戦態勢にするのです。

危機に対して身構えるようなものですね。
こんな状態が長く続けば、筋肉が収縮して血行不良を起こし、心臓や血管、そして呼吸器など全身の器官にムリがかかることに。
ホルモンバランスにも異常が起きて、電気信号が伝わる神経細胞や脳細胞も問題を抱えることになります。

これが、ストレスによって精神と身体が蝕まれていくしくみです。

1-2. ストレッサーによるマイナス感情

ストレスを引き起こす出来事や刺激を「ストレッサー」と呼びます。

ストレッサーは、人間関係の問題、仕事や勉強のプレッシャー、忙しさによる疲労、体調不良といった、自分にとって悪い出来事ばかりではありません。
就職や進学、結婚、昇進、引っ越しといった人生の節目に起こるライフイベントによって、大きなストレスを抱えることもあります。

どちらにしても、環境の変化に対して適応できないとストレスを抱えることになるのですが、大きな問題になるのは、やはりマイナスの感情が起こるストレッサー。
たとえ、ライフイベントなどでストレスを抱えても、期待感、達成感、嬉しさ、楽しさといったプラスの感情が起こると、脳は緊張や疲労感などを忘れてしまうのです。

代表的なストレッサーは、次にように分類できます。

① 物理的・環境的ストレッサー
環境の温度、音、明るさなど

② 化学物質などによるストレッサー
大気汚染、アルコール、たばこ、薬物など

③ 生物的なストレッサー
ウィルス、カビなど

④ 心理的なストレッサー
悩み、葛藤、感情、気分など

⑤ 社会・文化的なストレッサー
人間関係、経済状況、地位社会の慣習など

1-3. 積極的に増やせるプラス刺激

マイナスの感情がわくストレッサーのほとんどは、自分の意思とは関係なく降り注ぐものなので、なくしたり消したりすることはできません。
意識して、できるだけストレッサーの少ない生き方をすることはできても、ストレッサーのない生活などありえないのです。

マイナスの感情を忘れようとすれば、原因になっているストレッサーを思い出すことになるので、かえってストレスを抱えてしまうことに。

いっぽう、プラスの感情がわく刺激は、積極的に増やすことが可能。
具体的にいうと、楽しい、うれしい、心地よい、美味しいといった感情がわくことをすればいいのです。
こうしたプラス刺激に没頭すると、その間、脳はストレッサーを忘れてしまうのです。

これが、もっとも簡単で効果の高いセルフストレスケアの手段。
ストレス社会におけるメンタルヘルスでは、自分をリラックスさせる手段や、時間がたつのも忘れて没頭できる趣味などを、ひとつでも多くもつことが重視されていますよね。
プラス刺激によって、ストレッサーをコントロールすることができるわけです。

2. ストレス社会を理解する

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ストレスの概要を理解したところで、「ストレス社会」の正体に迫っていきましょう。
ストレス社会と呼ばれるようになったのは、それまでなかったストレッサーが増えたことに原因があります。

いったいどのようなストレッサーが増えたのか、ここでは代表的な3つの要素を紹介します。
1つ目は、「テクノストレス」と呼ばれるストレスをもたらすストレッサーで、テノクノロジーの進歩と普及によって広がったもの。

2つ目は、人間関係のストレスをもたらすストレッサー。
人間関係によるストレスは、従来から大きな心の問題として取り上げられてきましたが、新たな要因が次々と発生しています。

3つ目は、新型コロナウィルスの感染拡大によるストレスをもたらすストレッサー。
いまだ出口が見えない社会問題として対応が急がれています。

2-1. テクノストレス

テクノストレスは、テクノロジーの進歩によって引き起こされるマイナス刺激によってもたらされます。

もっとも大きなストレッサーとされるのが、パソコンやスマートフォンの長時間使用による視覚の刺激。
LEDのような強力な光源が目に入ると、眼球にダメージを与えるだけでなく、脳がストレス反応を起こして心も身体も緊張状態になります。

デスクワークでパソコンを使い続ける人は、目の疲労だけでなく、全身の血流が悪化して肩こりや頭痛が慢性化するといった辛い経験がありませんか?
こまめな休憩をとることや、目からモニターまでの距離、姿勢が悪くならない角度などに気をつけなくてはいけません。

明るくて長持ちすることから普及したLED電球も、テクノストレスの原因です。
経費を削減する必要がある店舗やオフィスでは仕方ないとしても、ストレスケアを考えれば、自宅ではできるだけLED光源が直接目に入るような照明は避けたいもの。
LEDを使う場合には、間接照明をうまく使う、必要以上に明るい照明は避けるといった工夫が必要です。

2-2. 人間関係のストレス

個人の自由が重視される一方で、人間関係が希薄になったといわれる現代社会。
従来から人間関係の悩みは、どこの職場や学校でもトップ3に必ず入ってくる心の問題でしたが、近年は「ハラスメント」という言葉の流行とともにその傾向をより強めています。

「ハラスメント」とは、英語で「嫌がらせ」という意味ですが、今では人を困らせる行為全般を指し、はじめて耳にする「〇〇ハラ」という略語が多くなっていますよね。
三大ハラスメントと呼ばれる「セクシャルハラスメント」「パワーハラスメント」「マタニティハラスメント」は誰もが知っている言葉で、ストレスを経験した人も多いことでしょう。

「モラハラ」は、道徳や倫理に反するような行為で傷つける「モラルハラスメント」であることや、「スモハラ」が、受動喫煙で他人を困らせるたり喫煙を強要したりする「スモークハラスメント」であることは、ほとんどの人がわかります。

しかし、「ソーハラ」「ドクハラ」「ヌーハラ」となってくると、何のことかわからない人もいますよね。
「ソーハラ」はSNSで発生するハラスメント、「ドクハラ」は医者が患者に対して好ましくない言動をするハラスメント、「ヌーハラ」は麺類(ヌードル)を食べる時に音を立てて周囲の人に不快な思いをさせるハラスメントだといわれます。

たしかに、こうしたハラスメントがストレッサーになっているケースは少なくないでしょう。
しかし、言葉が流行したことによって、それまでは何とも思っていなかったことがストレッサーになってしまうことも多く、外部からのマイナス刺激を意識しすぎることのデメリットが指摘されています。

2-3. コロナストレス

2020年は、新型コロナウィルスの影響で、いろいろなことに変革がもたらされました。
生活や仕事のしかたが変わり、様々な環境が変化して新たなスタンダードが生まれ、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」という言葉も生まれました。

この新型コロナ感染によってもたらされた環境の変化に対応できず、大きなストレスを抱える人が増えたのです。

もちろん、新型コロナウィルスによる直接的なストレスを経験する人は日々増え続けていますが、感染拡大による不安や、外出時にマスクを着用しなければいけないという義務感、密集、密接、密閉の「3密」を避けなければいけないという心配などが、ストレッサーになっています。

電車通勤が怖いのに続けなければいけなかったり、人と会うのがストレスになったり、逆に友人や離れて暮らす家族と会えないことがストレッサーになったりと、今までは考えもしなかったことが心の負担になっています。
仕事がなくなった、店を維持できなくなったという大問題に直面している人も少なくありなせん。

コロナストレスは、地球規模で人類に起こっている現象であり、いまだ明確な解消時期は見えていません。
いかにしてストレスを軽減しながら感染を防ぐか、心と身体を健全に保つかということを世界中の人々が考えています。

自分でできるストレスケアを日々続けることが、心と身体を健康に保ち、免疫力の低下を防ぐことになるのは間違いありません。

3. ストレスケアを理解する

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ストレス社会においては、ストレッサーが発生しやすい企業や学校がメンタルケアにしっかり取り組むことが重要です。
心理職と呼ばれる専門家が常駐するようになった企業や学校も増えていますよね。

しかし、ストレスケアの基本は、あくまでも「セルフ」にあります。
ストレスは自分の感情が引き起こす生体反応なのですから、感情のコントロールやストレス反応に負けない身体づくりをすることが、大きな意味をもつのです。

ここでは、ストレスを軽減するセルフケアとして、身体からのアプローチと心からのアプローチという2つの考え方を解説しましょう。
心と身体は、切り離して考えられるものではありません。
ストレスのしくみで解説したように、感情(=心)によって身体の器官に変化が起こる反応を見ても、心と身体は相関関係にあるのです。

3-1. 身体のケア

ストレス反応が起こると、交感神経が活性化します。
交感神経とは、副交感神経とともに自律神経を構成する神経群です。
自律神経は、心拍、呼吸、血圧、体温、消化吸収といった生命維持に欠かせない身体機能をコントロールするシステム。

心拍や呼吸を活性化させて活動モードをつくる交感神経と、リラックスモードをつくって消化吸収を活性化させる副交感神経が、常に6対4程度の割合で働いており、交感神経が高まり続けると疲労感を覚え、さらにその状態が続けば、全身のいろいろな器官に悪影響を及ぼします。
ずっと臨戦態勢をとって緊張しているのですから、疲れますよね。

ですから、ストレスケアの要は、副交感神経を活性化させて自律神経のバランスを整えること。
副交感神経は、積極的にリラックスすることによって活性化します。

ストレスケアには食生活も重要ですが、中でも精神を安定させる働きがある神経伝達物質「セロトニン」の材料になる「トリプロファン」、アミノ酸の「GABA」が注目されています。
トリプトファンはバナナや乳製品、大豆製品などに多く含まれ、GABAが摂取できる食品としては玄米がよく知られ、最近ではGABAを配合したチョコなども販売されています。

3-2. 心のケア

ストレス社会におけるメンタルケアは、自分自身で行う「セルフケア」、管理職の監督者が部下に対して行う「ラインケア」、社内に常駐する心理職スタッフによるケア、外部の専門機関と協力して行うケアという4つに分類されます。

ここでは、ストレスケアの基本となるセルフケアについて解説しましょう。
ここまでの解説でわかるように、リラックスすることが最大のストレスケアになるのですが、それがわかっていてもできないところに問題があるわけです。

自分を疲れさせているストレッサーが何かわかっていても、仕事の都合などでそれをやめることができなかったり、忘れようとして逆にストレスを溜めてしまったりするケースが多いのです。

だから、心地よいことや楽しいことに没頭して強引にストレッサーを忘れさせてしまう手段が有効なのですが、心の負担が大きくなり過ぎているとそうした転換もできなくなってしまい、心の病気を患うことにも。

大事なのは、ストレスによるダメージが深くならないうちに、小まめにケアすること。
仕事をしていて「飽きた」「集中できなくなった」と感じたら、それは疲労の第一段階のサインだと思ってください。
そのまま作業を続ければ、目が疲れ、血流が悪化して肩こりや頭痛が起こり、さらに放置すれば心と身体を蝕む病気へと悪化します。

セルフメンタルケアのコツは、難しいことではなく、「小まめなリラックス」なのです。

3-3. 適度なストレスとは?

ストレスには、よいストレスと悪いストレスがあるといわれます。
よいストレス、適度なストレスとは、そのハードルを越えることによって達成感や充実感が得られて、やりがいや生きがいにつながるようなものです。

ところが、ストレス社会と呼ばれる現代は、その「よいストレス」が引き起こす心身へのダメージが問題に。
達成感や充実感を得たいがために、心身にかかっている負担を脳が感じさせなくしてしまうのです。
ワーカホリックと呼ばれる仕事中毒は、この状態に陥っているケースがほとんど。
ある日、ピーンと張っていた糸が切れるように、心身のダメージが限界に達して重大な疾患を抱えてしまいます。

ストレスケアには、「飽きた」「疲れた」というサインが出なくても、定期的な休憩やリラックスタイムをつくることが大切です。

まとめ

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ストレス社会で多くの人が心の病に悩んでいるのは、避けられない必然の現象といわざるをえません。
誰かが意識的にそう仕向けたものではなく、起こってしまった社会環境の変化がそうさせているのです。

ストレスを軽減するセルフケアの重要性が、ますます高まっているということですね。
いくら人間に自然治癒力が備わっているといっても、自発的回復には限度があります。
だからこそ、「早め」「小まめ」なケアが大切なんですね。

【参考資料】
・『ストレス社会とメンタルヘルス』 片山和男 編  樹村房 2017年
・『こころのセルフケア ストレスから自分を守る20の習慣』 中村延江、近本洋介 著
金子書房 2019年

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