想像力を豊かにしたいと思っても、なかなか簡単にはできませんよね?
仕事で企画に携わっている人ばかりでなく、脳を活性化する手段としても、人生を楽しくするための要素としても、想像力を豊かにしたいと思っている人は多いですよね。
本をよく読む子どもは、想像力が豊かだといいます。
それは、無意識のうちに、小説の登場人物に感情移入して空想の世界を広げているからなのですが、大人になると子どもの頃のように自由な想像ができなくなっていきます。
そこで多くの人が、想像力を鍛えたいと考えるわけです。
本をたくさん読むようにするとか、想像力の向上を目的としたゲームやアプリをダウンロードして、スマートホンでトレーニングをするという方法もあるでしょう。
しかし、どうやってトレーニングするにしても想像力の根本となるのは、自由な発想ができる「やわらかアタマ」。
ここでは、国民的番組を手掛けた人気放送作家の鶴間政行さんの発想法をはじめ、常識をくつがえすような「やわらかアタマ」をつくり出すための15の方法をご紹介します。
目次
1. 五感を磨く
2. 常識や普通という言葉は使わない
3. 物事を両面から見る
4. 究極のわがままを考える
5. 最初から二兎を追ってもいい
6. タウンウォッチング
7. ホワイトペーパー発想法
8. 3回3ラウンド発想法
9. 頭の中に絵を描くトレーニング
10. ファミレスウォッチング
11. いろいろなことに興味をもつ
12. 雑学を高める
13. 空想してIFを楽しむ
14. 観察だけではなくて体験する
15. 98:2を意識する
想像力を鍛える15の方法
豊かな想像力を発揮する「やわらかアタマ」を生まれつきもっている人もいます。
しかし、多くの人は、何かが邪魔をして自由な想像力を発揮できなくなっています。
邪魔をしている何か。
それは、常識という概念であったり、既成概念であったり、無意識のうちに受け入れている様々な価値観や判断基準などです。
想像力を鍛えるためには、こうした「枠」を打ち壊さなければいけないのですが、みな潜在的にしみついているものなので、なかなか簡単にはいきません。
ここで紹介する、これらの枠を取り払うためのヒントは、習慣化することが大事です。
無意識の分野にアクセスするのですから、無意識のうちに枠を打ち破れるようになる必要があるのです。
1. 五感を磨く
情報過多の現代に生きていると、人間は五感が鈍くなっていきます。
自分から情報を得ようとしなくても、日々の生活の中であふれるほどの情報を与えられるからです。
想像力を鍛えるためには、情報のインプット端末である五感を鈍らせないことが大事。
日頃から五感を磨く努力をしましょう。
うれしい、楽しい、美味しい、悲しい、つらい、痛いといった様々な感情は、「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」という五感で受けた刺激が、脳に伝えられて起こるものです。
ですから、五感が鈍ると感情が薄れ、他人の喜びや悲しみといった感情にも鈍感になっていくのです。
五感を磨くためには、「感じる」ことを意識して増やすのが効果的。
自分で体験して、見て触って感じて、知識にすることを心がけましょう。
2. 常識や普通という言葉は使わない
「常識」や「普通」という概念は、自由な想像力を妨げます。
常識や普通にとらわれず、物事を考えられればいいのですが、常識や普通という概念は無意識のうちにもっているものなので、なかなか気づくことができません。
自分の想像力を狭めている常識という枠に、まず気づくことが大事。
日頃、何気なくやっていることに意識を向けてみましょう。
たとえば「おはようございます」や「おやすみなさい」といった挨拶。
なぜ、そんなことをするのか考えてみると、お互いに気持ちがよいからだということに気づきます。
ここに気づくことができたら、「挨拶なんて常識でしょ」とは発想しなくなり、「どうしたらもっと気持ちよい挨拶ができるか」ということに意識が向きます。
こういう突破口から想像力は広がっていくのです。
まずは、「それは常識でしょ」「そんなの普通でしょ」といった言葉を使うのをやめてみましょう。
そして、なにげなくスルーしている事柄に、「なぜ?」という洞察をしてみるのです。
3. 物事を両面から見る
「もう半分しか残っていないと嘆くのが悲観主義者、まだ半分残っていると喜ぶのが楽観主義者である」という言葉は、1925年にノーベル文学賞を受賞したアイルランドの文学者ジョージ・バーナード・ショウが残したものです。
ウィスキーが半分入ったボトルを見たとき、受け取り方ひとつで、人間は悲観的な気持ちにも幸福な気持ちにもなるのだという意味です。
この言葉は、「コップの水が『まだ半分入っている』から『もう半分空になった』と認識が変わるときにイノベーションの機会が生まれる」という、ピーター・ドラッカーの「コップの水理論」のもとになったことで知られています。
「もう半分しかない」と「まだ半分残っている」という、両面からものを見ることができる感性を鍛えましょう。
1面からだけのものの見方にこだわっていると、想像は広がりません。
4. 究極のわがままを考える
商品やサービスの開発では、消費者が求める究極のわがままが、発想の基準になるといいます。
2007年にパイロットが発売した「消せるボールペン」は、消費者の究極ともいえるわがままを実現したものでした。
万年筆やボールペンは、鉛筆のようには消せないことが意味をもつ筆記具だったのです。
ボールペンを使用していて書き損じたときには、修正液やテープを使うわけですが、修正液は乾くまでに時間がかかりますし、テープでもきれいに修正することは難しく、消した文字が後から浮かび上がってしまうこともあります。
そこで、「ボールペンで書いた文字もきれいに消すことができたらいいな」という消費者の要望が生まれるのですが、本来、消えないから使っているものなのですから、わがままな要望です。
鉛筆のようには消えることがないインクで書けて、自分が消したいときだけきれいに消すことができて、しかも消しゴムやほかの道具を必要としないもの。
これは究極のわがままといえるでしょう。
頭の中の枠を取っ払い、「あったらいいな」「できたらいいな」という究極のわがままを自由に想像する習慣をつくりましょう。
5. 最初から二兎を追ってもいい
相反する2つのことを同時に実現するのは大変なことです。
しかし、あえて2つのことを達成しようと考えれば、「難しい」「ムリだ」と決めつけてしまっている要素と向き合うことになり、想像力を広げることができます。
もっともわかりやすい例が、「価格」と「品質」です。
価格には、業界の常識や生産流通の現状から限界とされているラインがあるもの。
価格破壊に挑んでも、「安かろう、悪かろう」では勝ち残れません。
二兎を追って成功した例に、ユニクロの『ヒートテック』があります。
2003年に発売されたヒートテックのインナーは、「価格」と「機能性」という2つの要素を同時に達成して世界的な大ヒット商品となりました。
2つのことを同時に達成する発想も、想像力を鍛えてくれます。
6. タウンウォッチング
大手広告代理店で行われてきた新人研修のメニューに、「タウンウォッチング」というものがあります。
自分なりのテーマを設定し、街に出て自分の目で店やモノや人を観察して、考察の結果をレポートにまとめるという研修です。
レポートをつくる必要はありませんから、これを意識的にやってみましょう。
1日休みを使って、たとえば「渋谷のファッション動向」「銀座の消費動向」「浅草の外国人観光客事情」という漠然としてテーマをもって、街を散策するのです。
時間がなかったら、話題になっているスペースに出かけるだけでもいいでしょう。
アクティブに刺激を受けにいくところがカギなのです。
自分を置く環境を積極的に変え、五感に新鮮な刺激を与えて、想像力を鍛えるのです。
7. ホワイトペーパー発想法
白紙を使う発想法は、いろいろな分野で活用されています。
ディズニーテーマパークのアトラクションを企画製作している「ウォルト・ディズニー・イマジニアリング社」には、「イマジニア」と呼ばれるクリエイター集団が約1500人います。
彼らは、常に白紙から発想をスタートさせるといいます。
「何でもいいから書く、違っていてもかまわない、とにかくはじめる」というスタイルで、ウォルト・ディズニーの夢を実現してきたのです。
手を動かして書くという作業は、脳を活性化させるので、想像力を高めるにはとても効果的。
デスクの上には、いつもA4の白紙を置いておき、見たこと聞いたこと感じたこと、何でもいいから書いてみるという習慣をつけてみましょう。
羅列された文字から想像が広がるはずです。
8. 3回3ラウンド発想法
白紙を使うトレーニングにも、大手広告代理店で行われているものがあります。
そのひとつが「3回3ラウンド発想法」と呼ばれるもの。
① 頭の中にあるアイデアや発想を思いつく限りキャッチフレーズにして、紙に書きだします。
② 書き出したフレーズをA4用紙(個人で行う場合は付箋紙でいいでしょう)1枚に清書してボードなどに貼り出します。
③ 貼られたたくさんのフレーズを客観的に眺めて、取捨選択します。
そして、1度頭をリセットしてから、①~③を3ラウンド繰り返すことによって、あいまいな発想だったものが、次第に具体化していきます。
これは、想像力を鍛えるためにも使えるトレーニング。
モヤモヤしていた想像が、次第に輪郭を表して形になっていくはずです。
9. 頭の中に絵を描くトレーニング
断片的な想像を組み立てるときに有効なのが、頭の中に絵を描くこと。
何の絵を描くかといえば、「ゴールのイメージ」を描くのです。
「何をしたいのか」「どうなりたいのか」といった目標がしっかり定まっていないと、想像も企画も前に進めることができません。
日頃から、何をするにしても、完成予想図を頭に描く習慣をつくりましょう。
そこでキーワードとなるのが、「こんな〇〇」というイメージ。
「アジアンリゾートのような部屋にしてみたい」「ヨーロッパのような街並みをつくりたい」「食べた人を幸せにするような料理を考えたい」というように、どんなことでも「こんなイメージ」というゴールをまずは頭の中で絵にするのです。
想像を実現する作業では、次に、頭の中にあるゴールのイメージを具体化していくことになります。
写真、イラスト、文章、音楽など、いろいろな表現方法があります。
10. ファミレスウォッチング
これは、漫画家の弘兼憲史さんが行ってきた方法として知られています。
弘兼さんは今も、よく昼間のファミレスで、ネームという漫画の下書きをするそうです。
それは、ファミレスに集まる客が多彩で、人間観察ができるからだといいます。
ママ友の集団、仕事をさぼっている営業マン、訳あり風の中年カップルなどなど、漫画のアイデアとなりそうなキャラクターをそれとなく観察して、頭の中で想像を膨らませるのです。
車イスに乗った高齢の女性と、中年男性の2人組を見て、「ああ、これは母親の介護のために介護離職をしてしまった男だな」とか、「母親の年金に寄生して生きている無職の男だな」などと考え、キャラクターをつくり上げていくのです。
島耕作シリーズや『黄昏流星群』などの大ヒット作品にも、ファミレスでアイデアが生まれたキャラクターがけっこういるそうですよ。
タウンウォッチングと違って、こちらは人間観察に特化した想像力トレーニング。
くれぐれも、じろじろと注目するのではなく、あくまでも「それとなく」が大事です。
11. いろいろなことに興味をもつ
ここからは、萩本欽一さんが出演した多くの番組をはじめ、近年では「笑っていいとも!」「ごきげんよう」「王様のブランチ」「SMAP×SMAP」といった大ヒット番組の放送作家を担当し、数々の企画を成功させてきた鶴間政行さんがすすめる方法をいくつか紹介しましょう。
想像力を鍛えるためには、まずいろいろな物事に対して起こる好奇心を抑えつけず、興味をもち続けることが大事です。
子どもは何に対しても興味をもちますが、物心がついてくると、多くの人はそうしたピュアな感性にフタをしてしまうようになっていきます。
好奇心をくすぐる2大要素とは、「感動や驚き」と「ワクワクドキドキ」。
この2つの感情を日頃から意識して、抑え込まないようにしましょう。
12. 雑学を高める
想像とは、記憶を組み合わせる作業です。
そこで役に立つのが、日頃からインプットしていた雑学。
想像力が豊かだということは、「雑学が豊富」ということでもあるのです。
雑学を高める方法は、毎日、新聞を読んだり、ネットでニュースを見たり、テレビを観たり、ラジオを聴いたりする中で、「これは!」と思ったことを記憶に刷り込んでおくことです。
たとえば2020年の東京オリンピックの公式キャラクターになった、藍色の市松模様とピンクの市松模様のキャラクターがいますが、あの名前です。
藍色の方が「ミライトワ」、ピンクの方は「ソメイティ」といいますが、こういうことは、生きて行く上ではどうでもいいこと。
しかし、こういう「ちょっと話題になったこと」や「時代の流れ」などを押さえておくのが、雑学を高める方法なのです。
13. 空想してIFを楽しむ
想像力の深さは、空想や妄想を自分の中で膨らましていけるかどうかで変わってきます。
日々の生活の中で、普通はスルーしてしまうことにも好奇心をもち、自由に空想を広げることが、想像力を鍛えます。
日常的なことを「こんなだったら」と空想して面白がることは、誰もがやっていることでしょう。
これをもっともっと意識して遊んでしまうのです。
鶴間さんは、喫茶店でコーヒーを飲んでいるときにカップの取っ手を見て、「この取っ手がカップの中にあったらどうだろう?」というIFを想像したといいます。
取っ手がないカップを「熱い、熱い!」といいながらコーヒーを飲むと、中から取っ手が現れる。
そんな取っ手をもっても、意味がない。
もう、どうしようもなくくだらなくて、おかしい。
こんな空想の遊びが、想像力を鍛えてくれるのです。
14. 観察だけではなくて体験する
観察は想像力を高めるよい方法ですが、さらに一歩踏み込んで、自分で体験して五感で感じることによって、想像は飛躍的に広がります。
「百聞は一見に如かず」といいますが、とにかく自分で体験してみることを意識しましょう。
鶴間さんは、テレビで「目黒のサンマ祭り」が多くの人を集めているのを観て、「楽しそうだな」「美味しそうだな」と思い、自分の五感で感じるために実際に会場へ行って3時間半も並び、焼き立てのサンマを食べたといいます。
サンマを焼いている煙と香ばしいニオイがだんだん近づいてきて、もうすぐ自分の番が来るという高揚感は、体験しなければわからないものだと語っています。
体験して五感で得た情報が増えると、想像にリアリティが生まれるのです。
15. 98:2を意識する
鶴間さんが提言する、「98:2の論理」というものがあります。
100人の人間がいたら、98人が属する「普通」ではなくて、2人の方にいくことを意識しようというものです。
「なんで、サンマをたべるためにわざわざ3時間半も並ぶのか」、または「あそこに並ぶなんてすごいね」などと考えて行かないのが98人の人たちで、実際に行くのは多くて2人でしょう。
想像力を鍛えるのだったら、その2人の方に入ることを意識するわけです。
普通という枠からは「はみ出す」存在です。
「いいはみ出し方」とは、体験したことが想像力を高めて、発想が豊かになることだといいます。
そのためには、日頃から好奇心や体験することを大事にして、雑学を高めておくことが必要なのです。
まとめ
優秀な作家でも、企画の達人でも、毎日泉のようにアイデアが湧き出てくる人などいません。
みな、自分の五感を磨いたり、好奇心を追い求めたり、日頃から雑学を取り込んだり、IFの空想で遊んだり、はみ出すことを意識したりして、想像力を鍛えているのです。
最初にも書きましたが、「やわらかアタマ」をつくるためには、ここで紹介したような方法を習慣化することが大事。
その根本は、「面白い」「楽しい」「気持ちいい」といった自分の感情に素直になって、自由な想像の障害となっている潜在意識を取り払うことなのです。
やわらかアタマを作る方法についてもっと知りたい方は、こちらでも登場されている鶴間政行さんのお話が参考になるかもしれません。
鶴間さんが講師としてお話されているフォレスタのコンテンツをぜひチェックしてみてくださいね。
フォレスタアプリ>ビジネス>企画力
【参考資料】
・『理系の企画力! ヒット商品は「現場感覚』から』 宮永博史 著 祥伝社 2009年
・『高橋宣行の発想筋トレ』 高橋宣行 著 日本実業出版社 2016年
コメントをどうぞ