15分でわかる働き方改革 一億総活躍社会を目指した施策の概要

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「働き方改革」は、全貌を知っておきたいですよね?

2019年4月1日から順次施行される「働き方改革」ですが、「一億総活躍プラン」「働き方改革関連法」といった言葉はなんとなく耳にしていても、具体的に何がどう変わるのか把握できている人は少ないのではないでしょうか。

経営者や、人事、総務といった部署で働いている人は、法律が施行されるのですからそんなのんきなことは言っていられません。

しかし「働き方改革」は、働き方にかんする制度というだけでなく、日本の未来を大きく左右する改革ですから、すべての仕事に携わる人が知らなければいけないものなのです。

ここでは、働き方改革が進められることになった経緯と、3つの柱をもつ改革の概要をわかりやすく解説します。

目次

1. 働き方改革が推進される経緯
1-1. 2015年10月7日の総理発言
1-2. ニッポン一億総活躍プラン
1-3. 働き方改革実現会議
1-4. 働き方改革法の成立

2. 働き方改革関連法の概要
2-1. 時間外労働の上限規制
2-1-1. 「36協定」とは?
2-2. 有給休暇の確実な取得
2-3. 勤務間インターバル制度の促進
2-4. 残業の賃金率の引上げ
2-5. 産業医、産業保健機能の強化
2-6. 同一労働同一賃金
2-7. フレックスタイム制の拡充
2-8. 高度プロフェッショナル制度の導入
2-9. 待遇に関する説明義務の強化
2-10. 行政指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備
2-11. 労働時間の客観的な把握

3. 働き会改革関連法の施行時期
3-1. 長時間労働の是正と、多様で柔軟な働き方の実現
3-2. 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

まとめ

1. 働き方改革が推進される経緯

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「働き方改革」「ニッポン一億総活躍プラン」、これらの言葉が一般的に使われだしたのは、2015年10月からでした。

それから3年6カ月後となる2019年4月1日に、「働き方改革関連法」が施行されました。
働き方改革が誰の発案で、いつからどのようにして進められてきたのか、その経緯をさかのぼってみましょう。

1-1. 2015年10月7日の総理発言

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2014年12月24日に発足した第3次安倍内閣は、2015年10月7日に最初の改造内閣をスタートさせました。
この第三次安倍改造内閣の目玉として掲げられたのが、「一億総活躍社会」です。

安倍晋三総理大臣は、10月7日の記者会見において、こう発言しました。

「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口一億人を維持する。そして、高齢者も若者も女性も男性も、難病や障害のある方も、誰もが今よりもう一歩前へ踏み出すことができる社会をつくる。一億総活躍という輝かしい未来を切り開くため、安倍内閣は新しい挑戦をはじめます」

「戦後最大のGDP600兆円、希望出産率1.8、そして介護ゼロ。この3つの大きな目標に向かって新しい三本の矢を力強く放つ」

そして、この表明を推進するために一億総活躍大臣と一億総活躍推進室を設置、一億総活躍プランを策定するために、総理が議長となって各界の有識者で構成される「一億総活躍国民会議」を発足させました。

1-2. ニッポン一億総活躍プラン

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一億総活躍国民会議は、8回にわたって意見交換会などを行い、2016年5月に「ニッポン一億総活躍プラン案」をまとめました。

その後、与党の修正を経て6月2日に閣議決定されたのが、「ニッポン一億総活躍プラン」です。

このプランでは、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」という新たな3本の矢を設定し、第1の矢の実現に向けた取り組みによってもたらされる成長が、第2、第3の矢の基盤を強化するとしました。

そして、こうした一億総活躍社会を実現するために「働き方改革」が必要だとし、「働き方改革は最大のチャレンジであり、多様な働き方が可能となるよう、社会の発想や制度を大きく転換しなければならない」と表明したのです。

2016年8月3日に行われた、第3次安倍内閣第2次改造内閣発足の記者会見において、安倍総理は、「長時間労働を是正します。同一労働同一賃金を実現し、『非正規』という言葉をこの国から一掃します。最低賃金の引上げ、高齢者への就労機会の提供など、課題は山積しています」と発言しました。

さらに、働き方改革担当大臣を設けて「働き方改革実現会議」を開催、年内をめどに具体的な計画をとりまとめるとしたのです。

1-3. 働き方改革実現会議

働き方改革実現会議は、総理を議長とし、加藤一億総活躍大臣兼働き方改革担当大臣と塩崎厚生労働大臣が共同議長代理となり、各界の有識者を交えて9つのテーマを設定しました。

① 同一労働同一賃金など非正規雇用の処理改善
② 賃金引き上げと労働生産性の向上
③ 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
④ 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
⑤ テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
⑥ 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
⑦ 高齢者の就業促進
⑧ 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
⑨ 外国人材の受け入れの問題

働き方改革実現会議は、その後7回の議論を行い、2017年3月17日の第9回会議で骨子案を取りまとめ、3月28日の第10回会議で「働き方改革実行計画」が決定されました。

1-4. 働き方改革法の成立

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働き方改革実行計画において法改正が必要とされる事項は、厚生労働省が「働き方改革のための関係法律の整備に関する法律案要綱」をまとめ、2017年秋の解散後、2018年の第196回通常国会に、草案が提出されました。

厚生労働省が作成した資料においてデータに不備があったことや、企業の準備が間に合わないとする意見などがあって、最終的に修正を加えた「働き方改革法案」は2018年4月6日に閣議決定後、国会に提出され、6月29日に可決・成立しました。

 

2. 働き方改革関連法の概要

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働き方改革関連法は、少子高齢化などの人口問題、技術革新の欠如による生産性向上の低迷、技術革新への投資不足などを解消するために、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、働くということに対する意識の改革が目的です。

「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」という3つの柱を基軸として、働き方改革実行計画の法制化と労働基準法の改正を行いました。

以下、11項目の概要を簡単に解説していきましょう。

2-1. 時間外労働の上限規制

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日本が欧米諸国に比べて、労働時間が長く、長時間労働している人の割合も高いという現状を改革するためには、1日の労働時間を短くする、残業を少なくする、所定休日を増やす、年休取得日を増やすという4つの方法があります。

1日8時間労働、週休2日で、国民の休日や年末年始の休みを考慮すると、年間の労働時間は1960時間になり、平均的な年休18日を完全に所得すると1816時間になります。

リーマンショック以後、日本の一般労働者の年間労働時間は2000時間を切り、2016年現在ではアメリカの1787時間とほぼ並ぶ1724時間になっています。
しかし、イギリスは1660時間、フランスは1423時間、ドイツは1298時間とヨーロッパ諸国との比較ではまだまだ長いのです。

2-1-1. 「36協定」とは?

労働基準法では法定労働時間が1日8時間、1週間40時間と定められており、それを越えて労働者を働かせる場合には、「36協定」の締結と、所轄労働基準監督署長への届け出が必要です。

また、労働基準法は、法定休日として毎週1日または4週4日を義務づけており、この法定休日に働かせるためにも、「36協定」で定めなければいけません。
「36協定」に基づいて法定休日に働くのが休日労働で、時間外労働と休日労働を合わせたものが、一般的に残業と呼ばれています。

事業主は、労働者の過半数で組織する労働組合または、労働者の過半数を代表する者と労使協定を結ばなければいけないのですが、この協定の根拠が労働基準法第36条に規定されていることから「36協定」と呼ばれているのです。

労働組合などが「36協定」の締結を拒否した場合に、事業者は法定労働時間を超えて従業員を働かせることはできません。
労働基準法は刑罰法規なので、違反すると刑事罰が適用されます。

2-2. 有給休暇の確実な取得

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事業者は、年休付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、毎年5日、時期を指定して年休を取得させる義務を負います。

一般の労働者は、初年度の付与日数が10日なので労働者全員が対象となります。
1日の労働時間が短いパート労働者でも、年休付与日数が10日以上であれば対象となります。

事業者は労働者に時期の希望を聞いて、できるだけその希望にそうように、ほかの労働者や事業との関係を調整しなければいけません。

2-3. 勤務間インターバル制度の促進

事業者は、前日の終業時間と翌日の始業時間の間、一定時間の休息の確保に努めなければいけないとする努力義務があります。

厚生労働省は、過労死防止大綱の中で2020年の導入率10%以上という目標を設定しています。
厚生労働省は、勤務間インターバル制度の導入を推進するために、時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)を支給、2018年12月3日まで申請を受けつけていました。

2-4. 残業の賃金率の引上げ

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2010年の労働基準法改正によって1カ月あたり60時間を超える時間外労働に対しては、通常の労働時間の賃金額の50%以上で計算することになりましたが、中小企業主については当分の間、この適用が猶予されていました。

今回の改正ではこの猶予が廃止され、中小企業でも1カ月あたり60時間を超える時間外労働に対しては、通常の労働時間の賃金額の50%以上で計算しなければいけなくなります。
この施行は、2023年4月1日です。

2-5. 産業医、産業保健機能の強化

労働安全衛生法では、「事業者は事業場ごとに医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならない」とされています。

そして、「産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めたときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる」と定めていますが、実効性に乏しいのが現実でした。

そこで、働き方改革関連法によって労働基準法を改正し、産業医によって勧告がなされた場合に、「事業者は、当該勧告を尊重しなければならない」として、産業医の役割や機能を強化しました。

さらに、事業者と産業医との間で労働者の健康管理に関する情報提供を行うことを明示し、健康管理のための体制づくりが整備されます。

2-6. 同一労働同一賃金

非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)と正規雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止されます。

正規雇用労働者と職務内容や人事異動の範囲などが同一である場合は同じ待遇(均等)を、違う場合は、その違いに応じた待遇(均衡)を確保しなければなりません。

また、派遣労働者は、派遣先の正規雇用労働者との均等・均衡待遇、または、労使協定により同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上の待遇を確保する必要があります。

2-7. フレックスタイム制の拡充

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使用者は、労使協定で定めた、労働時間の調整が可能な清算期間を平均して、1週間あたりの法定労働時間(1日につき8時間、1週間につき40時間)を超えない範囲で、労働させることができます。
この清算期間の上限が、1カ月から3カ月に延長されます。

2-8. 高度プロフェッショナル制度の導入

年収1075万円以上の労働者を対象として、高度の専門性を有する労働者を労働時間規制の適用外とする「高度プロフェッショナル制度」が制定されます。

金融商品開発、コンサルタント、アナリストなどが想定されており、使用者との交渉力があることを前提とした制度です。

2-9. 待遇に関する説明義務の強化

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労働基準法では、使用者は労働契約を締結する場合に、労働者に対して賃金、労働時間などの労働条件を具体的に明示しなければならないと規定されています。

パートタイム労働者や派遣労働者が労働契約を締結するにあたっては、労働条件の明示が義務づけられていましたが、働き方改革関連法では、パートタイム労働法と労働者派遣法を改正し、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容や理由を説明することを義務化しました。

従来の「パートタイム労働法」は、「パートタイム・有期雇用労働法」と改名されます。

2-10. 行政指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

裁判外紛争解決手続(行政ADR)とは、訴訟手続きによらず民事上の紛争を解決しようとする当事者のため、公正な第三者が関与して解決を図る手続きです。

行政指導により、パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法では、正規雇用労働者との均等、均衡待遇に関する説明義務における紛争について、行政ADRの活用を促しています。

2-11. 労働時間の客観的な把握

働き方改革関連法では、すべての人の労働時間の状況が適切な方法で把握されるよう、法律で義務づけられます。

 

3. 働き方改革関連法の施行時期

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働き方改革関連法は、大企業と中小企業によって、施行時期が変わります。
また、項目によって時期が変わるものもあります。
いつから、何が施行されるのかまとめておきましょう。

3-1. 長時間労働の是正と、多様で柔軟な働き方の実現

・時間外労働の上限規制
・有給休暇の確実な取得
・勤務間インターバル制度の促進
・産業医、産業保健機能の強化
・フレックスタイム制の拡充
・高度プロフェッショナル制度の導入
・労働時間の客観的な把握

以上の項目について、大企業は2019年4月1日スタートとなります。
中小企業においては、「時間外労働の上限規制」が2020年4月1日、「残業の賃金率の引上げ」が2023年4月1日スタート、それ以外の項目は大企業と同じく2019年4月1日スタートとなります。

3-2. 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

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・同一労働同一賃金
・待遇に関する説明義務の強化
・行政指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法に関する以上の項目は、大企業が2020年4月1日スタート、中小企業が2021年4月1日スタートなります。

 

まとめ

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中小企業とは、資本金の額または出資の総額が3億円以下(小売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については5000万円以下、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円以下)の企業を指しています。

ここで解説した働き方改革関連法は、主な部分の概要だけですから、詳しい知識を求める場合は厚生労働省のサイトで確認してください。
また、内閣府大臣官房政府広報室のサイトでは、中小企業主を対象として事例をあげながらわかりやすく解説しています。

 

【参考資料】
・『働き方改革のすべて』 岡崎淳一 日本経済新聞出版社 2018年
・『よくわかる働き方改革 人事労務はこう変わる』 日野勝吾、結城康博 ぎょうせい 2018年
厚生労働省 サイト
内閣府大臣官房政府広報室

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