5つのステップで活用するKPIとは?-PDCAのマネジメントサイクル

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今さらKPIとは、古いビジネス用語だと思ってしまう人もいますよね?

KPIとはなにか?

「KPI(Key Performance Indicator)」は、「重要業績評価指標」などと訳され、「目標達成のために最も重要とされるプロセスの数値」という意味で使われています。

元々はバブル期に流行した言葉で、当時は独立事業部や社内カンパニーなどが多くなり、そうした組織に対する費用対効果の指標として用いられました。

しかし、今またKPIが話題にあがるのは、企業の経営目標を明確にして、全社員が事業成功のために努力できる指標とするためです。
目標達成のためにKPIを活用するマネジメントが、注目されているのです。

ここでは、PDCA(Plan – Do – Check – Action)というサイクルで運用する「KPIマネジメント」の概要を解説します。

ひとつのサイクルは、step1からstep3までが「Plan」のフェーズ、step4が「Do」のフェーズ、step5が「Check」と「Action」のフェーズという、5つのステップから成り立っています。

目次

step1. 組織の目標を明確にする
1-1. 「なぜ」の共有がポイント
1-2. KGIの設定
1-3. 現状とのギャップを確認する

step2. プロセスを検討して絞り込む
2-1. 企業戦略で考えるCSF
2-2. ボトルネックを改善するCSF
2-3. クリティカルパスを短縮するCSF

step3. 重要成功要因を数値に置き換える
3-1. KPI設定のポイントはSMART
3-2. ボトムアップも取り入れた水準
3-3. アクションに落とし込む

step4. コンセンサスと運用
4-1. 関係者のコンセンサスを得る
4-2. データ収集と「見える化」

step5. 振り返りと改善
5-1. 達成度合いの評価
5-2. 改善の方策を決定して次のサイクルへ

まとめ

step1. 組織の目標を明確にする

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「Plan(計画)」の内容によって、PDCAのマネジメントサイクルが上手く回せるかどうかは90%決まるといわれます。
ここでもPlanフェーズは重視して、3つのステップから解説します。

どのような企業や組織でも、目的があってつくられ、目標達成を目指して運営されます。
まずは目的や目標が明確になっていなければ、それを達成することはできません。

1-1. 「なぜ」の共有がポイント

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最初のステップは、自分のいる企業や組織が「どうなりたいのか」ということの確認からスタートします。
企業理念などに示されていることも多いでしょう。

たとえばアパレルメーカーであったら、「人生経験豊かな人々の生活を彩るファッションと、時代にマッチしたライフスタイルを提案する」という理念のもと「高年齢層の男女に人気No.1のアパレルメーカーになる」という目標。

ホテルであったら、「常にお客様との出会いを一番大切にし、日本の『おもてなし』をベースに置いたサービスを提供し続ける」という理念のもとに、「訪日外国人から支持されるホテルNo.1になる」という目標などが考えられるでしょう。

組織の目標は、所属する人間全員が共有していなければいけません。
そこで大事になるのが、「なぜ」なのです。

先ほどのアパレルメーカーの例でいえば、「なぜ、高年齢層の男女に人気No.1のアパレルメーカーになりたいのか?」ということ。
「ますます増えていく高齢者層が、人生を楽しめる世の中にしたいから」などということがあげられるでしょう。

企業において、この「なぜ」が明確になっていると、目標の意味や意義がわかりやすくなるために、全社員が目標を共有しやすいのです。

1-2. KGIの設定

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「どうなりたいのか」が確認できたら、次は「何をどれだけ」という具体的な達成目標を設定します。

「何をどれだけ」の「何を」は「指標」という言葉でも表され、成果を測定する数値を意味します。
「どれだけ」は、「どこまで達成するか」という水準のことで、この2つを明確にしたものが、「KGI(Key Goal Indicator)」です。

KGIは、“Goal”という言葉でわかるように、最終的な数値目標を意味します。
企業では多くの場合、営業利益や利益率といった数値になり、年次で設定することもあれば、四半期ごと、さらには数年間の中長期で設定する場合もあります。

また、企業全体のKGIから、部門別のKGIへとブレイクダウンされるケースもあります。
企業全体の売上高が100億円で、A部門で20億円、B部門で30億円、C部門で50億円という売上高が設定されるようなケースです。

KGI設定で大事なポイントは、成果を測定できる単純な数値であり、実現可能なものであることです。

1-3. 現状とのギャップを確認する

KGIが設定されて目標が明確になったら、現状とKGIとのギャップを確認します。
現状のまま期末を迎えた場合に、KGIの数値が達成できるのであれば、新たなアクションを起こす必要はありません。

しかし、ほとんどの場合は、現状から算出した予測数値とKGIとのギャップが生まれることになり、KPIとは、そのギャップを埋めるために設定するものなのです。

例にあげたアパレルメーカーでいうと、今年度の営業利益20億円というKGIを設定したとして、現状のまま年度末を迎えた場合には16億円程度の営業利益しか見込めず、そのギャップとなる4億円を埋めるマネジメントが必要とされる、ということになります。

Webマーケティングの分野でいえば、「〇〇サイトの4半期ページビュー数を100万以上にする」というKGIが設定されたとして、現状のままでは60万ビューという予測数値が算出されるので、40万ビューのギャップを埋めるマネジメントを検討するということです。

 

step2. プロセスを検討して絞り込む

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第1のステップでKGIとギャップが明確になったら、第2のステップでは、KGIを達成するためにどうすればよいか、という具体策を考えます。

この具体策は、KGIを達成するための「プロセス=経過」という言葉が使われます。
利益を上げるというKGIを達成するためには、「売上を増やす」か、「費用を削減して利益率を上げる」というのが基本です。

しかし、それを実現するためのプロセスは業種や部門によって変わり、いくつも考えられるはずです。
いくつもある成功のためのプロセスから、もっとも重要なものとして絞り込んだ要素を「CSF(Critical Success Factor)」と呼びます。

例にあげているアパレルメーカーでいえば、4億円の営業利益アップを実現するために、アイテムの数を増やす、逆にアイテムを絞り込んで費用を削減する、流行のリゾートファッションをメインのラインとするといった商品展開から、店舗の増設や整理、ネットショップの充実といった販売展開など、いろいろなプロセスが考えられるはずです。

その中から、最重要プロセスとして絞り込まれたひとつの方策が、CSFです。
CSFの絞り込み方は、企業や組織の在り方によって様々ですが、ここでは代表的な絞り込み方を3パターン紹介します。

2-1. 企業戦略で考えるCSF

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アパレルメーカーであったら企業戦略として、他社商品との差別化を図る差別化戦略や、低価格を売りにするコストリーダーシップ戦略、特定の顧客のニーズに絞る集中戦略などが知られています。

どのような戦略をとるかによって、CSFは変わってきます。
差別化戦略を採用するのであれば、差別化した商品を発表し続けるためのデザイン部門強化や、店舗ディスプレイの改革などがあるでしょう。

コストリーダーシップ戦略をとる企業であれば、生産、販売、流通面での徹底した効率化が重要な要因となるでしょうし、集中戦略であれば、ターゲットとする層にアピールする広告やイベント展開が考えられることでしょう。

2-2. ボトルネックを改善するCSF

企業レベルでのCSFは、総合戦略から考えるのがKPIマネジメントの王道といえます。
これに対して、ツリー構造でいうとひとつ下になる部門レベルでのCSFは、その部門がもつ機能や現場のオペレーションによって、絞り込み方が変わってきます。

部門レベルでも、とくに現場のオペレーションが関与するCSFの設定方法として有効なのが、ボトルネックを改善することです。

ボトルネックとは、目標を達成するにあたって、マイナスの影響を与えてしまっているプロセスや業務を指します。

アパレルメーカーの例えでは、開発、生産、流通、販売という工程の中で、費用の削減が難しい海外工場での生産システムがあるとします。

日本国内で販売されるアパレルは、ほとんどが中国や東南アジアなどで生産されていますが、従来の生産業者をカットして工場に直接発注するというCSFも考えられます。
また、ICタグや生産管理ソフトウェアの導入といったITの活用で費用削減をするというCSFも考えられます。

2-3. クリティカルパスを短縮するCSF

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部門レベルのCSF設定で、クリティカルパスの短縮も有効なCSFとなり得ます。
クリティカルパスとは、全体の工程を組んだときに、もっとも時間がかかって困難な部分のことです。

アパレルメーカーの例では、海外工場で生産した製品を各店舗に配送するまでの流通が、クリティカルパスになっていたとしましょう。
時間がかかっても費用が安い船便から、航空便に変更することがCSFになるかも知れません。

また、国内に送られてから倉庫で行っていた仕分け作業などをカットして、海外の工場から直接店舗に送るというCSFも考えられるでしょう。

 

step3. 重要成功要因を数値に置き換える

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日本語では、「重要成功要因」などと訳されるCSFが絞り込めたら、次のステップでは、そのCSFを具体的な数値目標に置き換えます。

このように、KGIを達成するためのCSFを数値目標にしたものが「KPI(Key Performance Indicator)」なのです。

KPI設定時のポイントを3つ解説しましょう。

3-1. KPI設定のポイントはSMART

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目標を設定する際のポイントを頭文字で並べたものが「SMART」で、KPIの設定にも当てはまります。

① S(Specific)=具体的であること

KPIは、全社員の誰にでも理解できる具体性が必要です。
誰が見ても同じ解釈をする明確さが求められます。

② M(Measurable)=測定可能であること

KPIとは、成功の度合いを測定する指標ですから、変数でなければいけません。
たとえばCSFが「品質向上」であったとすれば、新商品の受注率や顧客の満足度などが考えられます。

③ A(Achievable)=達成可能であること

KPIは実現可能な目標でなければいけませんが、簡単に達成できる目標という意味ではありません。
業界によっては競合先に勝てる目標であるとか、社内における過去の最高実績などを参考にした目標というように、現時点の自社のパフォーマンスよりも優れていて、実現している例があることがポイントになります。

④ R(Relevant)=関連性があること

企業全体のKGIを達成するための数値目標として、部門レベルや現場活動レベルで設定されるKPIは、ともすれば全体KGIとの関連性が薄れてしまうことがあります。
現場レベルに近づけば近づくほど、上位概念との整合性を確認する必要があります。

⑤ T(Timely)=時間軸があること

KPIは達成期限を明確にしなければいけません。
いくら高い目標を掲げても、時間がかかりすぎていては意味がありません。
通常は、KGIが設定される四半期や年次が期末となり、1カ月ごとの評価ということになります。

3-2. ボトムアップも取り入れた水準

KPIの「どのくらい」という水準は、KGIが設定されている期間内で、見直しをしながら適切なところに修正することが可能です。

また、CSFはブレイクダウンによって決まるものであっても、KPIは現場活動からのボトムアップが重視されるケースも多くなります。

現場からの声を取り入れてKPIの水準を決めることは、達成可能な水準を知る上で大きな意味をもちますし、そうすることによって、現場の達成意欲が上がるというメリットもあります。

部門別に現場活動を知っている責任者がPDCAを管理することによって、全体のPDCAの推進力を高めることができるのです。

3-3. アクションに落とし込む

「Plan」フェーズの最後には、経営レベルでのKGIが設定されるところからはじまり、事業部、部門目標とKPIがブレイクダウンされていき、個人レベルのKPIまで設定されることになります。

こうして設定されたKPIに則して、「いつ」「誰が」「何を」「どのくらい」実行すればよいのかというアクションが明確になります。

経営レベルから、事業、部門、個人にまでアクションを落とし込んでいくことによって、個人の活動がどのくらい経営に貢献しているかという指標にもなるのです。

 

step4. コンセンサスと運用

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「Plan(計画)」が決定したら、「Do(実行)」のフェーズに移行します。

KPIマネジメントを運営するにあたっては、「Plan」の段階で、マネジメントの最終決裁者、部門レベルの責任者、現場レベルの担当者、すべての関係者が明確になっていなければいけません。

4-1. 関係者のコンセンサスを得る

運用を開始するときは、社内報やトップからのメッセージなどで、KPIマネジメントの開始を宣言します。

その前に、最終決裁者、部門レベルから現場レベルまでの責任者や担当者に対して、「Plan」フェーズで決定した内容を確認して、コンセンサスを得る必要があります。

この時点で、たとえばある部門のKPIに問題が発覚すれば、「Plan」を修正してから運用を開始します。

経営レベルのKGIは、多く場合、社員全員が把握しているはずですが、確認は必要です。
最終的な目標となるKGI、自分が属する組織や部門のCSFとKPIが、関係者全員に伝わっていなければいけません。

4-2. データ収集と「見える化」

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KPIマネジメントは目標達成のために運用するものですから、管理者は常にデータ収集ができていないと達成状況が把握できません。

データ収集の方法も各現場、各部門において「どういうタイミングで」「どの範囲の」「何を」「どういう単位で」「どう測定するのか」といったことが明確になっている必要があります。

データ収集が定常業務に組み込まれることで、現場活動のレベルから測定データが各部門へとフィードバックされることになり、スムーズな管理体制が整います。

また、KPIマネジメントの運用では、関係者全員にわかりやすく進捗状況が伝わることが重要です。
そのためには、収集されたデータを表計算ソフトで管理するだけでなく、グラフなどにして公表し、「見える化」することも有効です。

 

step5. 振り返りと改善

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5つめのステップは、運用における「Check(確認)」と「Action(改善)」のフェーズです。

KPIマネジメントは、運用しながらきちんと振り返ることが重要です。
KGIは、四半期や年次などの中長期目標として設定されるものですから、KPIの達成度を短期的、定期的に評価することによって修正や改善を行い、目標達成に近づくことができます。

5-1. 達成度合いの評価

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データを収集した管理者は、振り返りのタイミングで、目標達成度の評価を行って関係者全員にわかりやすく伝える必要があります。

シンプルな評価方法の例として、「Check」時の実績から予測した期末時の達成見込みを「Green」「Yellow」「Red」のシグナルで表す3段階評価があります。

Greenは、当月までの実績は計画どおり達成しており、期末時の目標も達成する見込み。
Yellowは、当月までの実績は計画を達成していないが、期末時の目標は達成する見込み。
Redは、当月までの実績は計画を達成しておらず、期末時の目標は達成できない見込み。

たとえば、このような設定にしておくことをあらかじめ関係者に伝えておき、月ごとの実績を評価するのです。

5-2. 改善の方策を決定して次のサイクルへ

達成度合いの評価が「Yellow」や「Red」になったら、管理者は達成できなかった要因を明確にしなければいけません。

「コンセンサスが不十分だった」「目標水準が高すぎた」「人員や時間が不足」「しっかりとアクションに結び付けられなかった」「外部環境に変化が生じた」といった、諸々の原因です。

原因が明確になったら、改善の方策を決めます。
いくらKPIが達成できないからといって、KGIを変更するのは本末転倒です。
場合によっては、早急に「Plan」の変更が求められる場合もありますが、さかのぼったとしても事業、部門レベでの配分を見直すところから再検討しましょう。

改善の方策が決定したら、「Action(改善)」のフェーズへと移行して改善策を関係者に伝え、次のPDCAサイクルがスタートします。
こうして、振り返りながらPDCAサイクルを回し、組織を目標達成へと導くのがKPIマネジメントなのです。

 

まとめ

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顧客に対する電話対応を専門に行う部門であるコールセンターの運用には、とくにKPIが活用されるケースが多くなっています。

コールセンターは、コストだけが集計されて収益は集計されない「コストセンター」と位置付けられて、徹底したコスト削減が求められてきました。
顧客満足度がある水準を上回れば人員が削減され、下回れば増やされるという部門であることが多かったのです。

しかし、1本のコールに費やした時間(AHT)の短縮や、応答率のアップなどをKPIに設定することによって、会社全体の収益に貢献できる部門として認識されるようになってきました。
顧客との接点であるコールセンターは、企業の総合戦略において重要な位置を占めるようになってきたのです。

これはひとつの部門の活用例ですが、KPIとは、組織の存在価値をも変えてしまうような変革をもたらすことさえある、共有目標なのです。

KPIマネジメントについて、もっと詳しく学びたい方は、こちらもぜひご覧ください → 数字でビジネスを最大化し続けるリクルートでKPI講師を務めた現場のプロが実践してきたノウハウを公開!『最高の結果を出すKPIマネジメント』

 

【参考資料】
・『最高の結果を出すKPIマネジメント』 中尾隆一郎 フォレスト出版 2018年
・『KPIで必ず成果を出す目標達成の技術』 大工舎宏、井田智絵 日本能率協会マネジメントセンター 2015年
・『2時間でわかる 図解 KPIマネジメント入門』 堀内智彦 あさ出版 2016年
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