定年後の生き方を考える3つのヒント-日本の現状と仕事の種類

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定年後の生活に不安を抱える人は増え続けています。

いわゆる「老後の不安」の大部分は、おカネの問題が占めていますよね。
おカネの心配がなくなれば、定年後の不安はほぼ解消するわけです。

「老後のお金問題」と密接な関係にあるのが「仕事」。
自分は何歳まで、どういう仕事をして生きるのかということです。

もちろん、定年後は仕事をしないという選択もあります。
かつては「隠居生活」と呼ばれた生き方で、趣味を楽しんだり、ボランティアなどで社会貢献しながら余生を送るというライフスタイル。

しかし、定年後も働き続ける人が大多数となっている現在、こんな生き方を選ぶ人はとても少なくなっています。
ここでは、定年後の生き方を考えるヒントとして、日本における定年をめぐる現状や、60歳以降の仕事の考え方を解説します。

目次

1. 定年制の現状を知る
1-1. セカンドライフと呼べなくなった現在
1-2. 死ぬまで仕事をしていたい理由
1-3. 定年退職か早期退職か?
2. 自分の経済状況を把握する
2-1. 年金はいつからもらうか?
2-2. 夫婦二人でいくら必要か?
3. 60歳からの仕事の考え方
3-1. 雇われる仕事
3-1-1. 再雇用・雇用延長
3-1-2. 再就職
3-1-3. 業務委託契約
3-1-4. 人材派遣
3-1-5. パート・アルバイト
3-2. 雇われない仕事
3-2-1. 起業
3-2-2. 個人事業主
3-2-3. フリーランス
まとめ

1. 定年制の現状を知る

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実は、「定年」を義務化した日本の法律はありません。
それなのになぜ定年制度が存在するのでしょう。

従来、日本の企業では、よほどのことがない限り解雇されることはありませんでした。
終身雇用の中で、立場の弱い従業員は法律によって守られていたからです。
しかも、毎年、新入社員が増える「新卒採用」という制度があるのです。

この状態では、社員の数が膨らむばかり。
その解決策が、新卒採用に相対する定年制度だったのです。
しかし、バブル期が終わった1990年代から、長らく日本の企業で守られてきた終身雇用や年功序列というシステムが崩壊してきました。

高齢化がますます進む中で、2013年には「高齢者雇用安定法」が施行されて、希望すれば誰でも65歳まで働けるようになり、2019年からは少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少という問題を解決すべく、働き方改革が推進されています。

今、60歳以降の生き方が、大きく変わろうとしているのです。

1-1. セカンドライフと呼べなくなった現在

55歳であった定年が60歳に変わったのは、1980年代から90年代にかけてです。
それ以前、昭和の時代には終身雇用が当たり前で、定年後は退職金と年金で悠々自適な第二の人生を送る、というライフスタイルがサラリーマンの主流でした。

しかし、90年代からはじまった「失われた20年」と呼ばれる長期にわたる不況で、日本の企業ではリストラの嵐が吹き荒れ、終身雇用が維持できなくなってきます。
外資系企業が増えて、スキルアップのための転職やヘッドハンティングなどが珍しいことでなくなります。

今、十分な退職金をもらって老後を過ごせるのは、一部の大企業に限られ、退職金など出ない会社も増えています。
そうなれば、65歳以降も働かなければ生きていけない人が増えるわけで、2020年の現在、70代でも仕事をする人が普通の存在となりました。

ですから、かつてのように「第一の人生」「第二の人生」などと定年を機に人生を分けて考えることはできなくなっているのです。

1-2. 死ぬまで仕事をしていたい理由

60代70代でも仕事を続けていたい、死ぬまで仕事をしていたいと考える人が多くなったのは、「退職金も出ないし、年金も減額されるとなれば、働かなければ生きていけない」という理由だけではありません。

適度なストレスによって達成感や充実感を感じながら生きることが、「生きがい」にもなり、健康で長生きできる秘訣でもあるからです。
何もやることがなくなって時間をもてあますのでは、脳機能も低下していきます。

だから、人生を豊かなものにしたくて、生きている間は自分にできるペースで仕事を続けたいと希望する人が増えているのです。

1-3. 定年退職か早期退職か?

60歳の定年後も企業に義務づけられた65歳まで会社に残り、仕事を続けながら次の職場や職業を探す人もいれば、定年を待たずに早期退職の道を選んで、60代以降の準備をはじめる人もいるでしょう。

かつてはできる限り会社に残りたいと考える人が多かったのですが、シニア転職や「第4新卒」の求人が増えてきた今、退職金が上積みされる早期退職をして、早めに60代以降の仕事にシフトする人も少なくありません。

「第4新卒」とは、「大学を卒業したばかりの新卒」、「新卒で企業に就職したものの、3年以内に退職した第2新卒」、「大学院博士卒で未就労の第3新卒」に対し、社会人として長年の経験を積んだシニア人材を指して、森下仁丹株式会社がつけた名称です。

2. 自分の経済状況を把握する

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定年後の人生を考える前に、自分の経済状況をしっかり把握しておくことは必須事項です。
60代は終活をはじめる人も多い時期。
まず、自分の資産や貯蓄などをよく調べて整理しましょう。

2-1. 年金はいつからもらうか?

通常、「年金」と呼んでいるのは、老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金のこと。
かつてはどちらも25年以上の加入期間が必要でしたが、2017年8月以降は国民年金の保険料を10年以上支払っていれば、受給資格があります。

ともに原則として65歳からの支給で、希望者は減額して60から繰り上げ受給が可能、65歳以降70歳までに開始を遅らせて増額になる繰り下げ受給もあります。

以前は、60歳の定年で働かなくなってから、年金受給が開始される65歳までの5年間をどうするかということが問題視されました。
しかし、誰もが65歳までは働くようになった現在、減額になる繰り上げ受給は、熟考する必要があります。
繰り上げ受給で決まった支給額は、一生変わりません。

自分がもらえる年金額は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で知ることができるので、50代のうちから確認しておきましょう。

2-2. 夫婦二人でいくら必要か?

60歳以降の人生で、いくらあったらおカネの不安がなくなるのでしょう?

「年金だけでは老後30年で2000万円不足する」という金融庁の発言が問題になりましたよね。
この数字の根拠は、夫婦の年金が月に22万円ある高齢者無職世帯で、月の支出を27万5000円と設定すると、毎月5万5000千円足りなくなり、それが1年で66万円、30年間で1980万円になるという試算です。

60歳から90歳までの30年間、まったく収入がないという前提なのです。
仮に75歳まで働き、男性の平均寿命である80歳程度で亡くなるとしたら、資産はまったく変わってきます。

自分が何歳まで生きるかということはわかりませんし、生きている間、ずっと同額の生活費が必要かという疑問もあります。
定年後に必要な金額を一様に決めることはできないのですから、自分の人生をよく考えてムリなく用意できる金額を算出し、その中で生きていくというのが現実的な選択でしょう。

3. 60歳からの仕事の考え方

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定年後にどのような仕事をして生きていくか。
まず、その事実をどうとらえるかで、人生の在り方が変わってきます。

「定年後も働き続けなければいけない」と考えれば、仕事は楽しいものでなくなり、ストレスもたまります。
これでは、心と身体を健全に保つことができなくなり、長生きするのは難しいでしょう。

「第二の人生」とはいわないまでも、定年がひとつターニングポイントであることは間違いありません。
ですから、これを好きな事をして人生を楽しむ方向に向ける機会ととらえれば、60代からの人生が豊かなものになるはずです。

「生きがい」を見つける指針として、「好きなこと」「得意なこと」「人の役に立つこと」という3項目が重なる部分ということがよくいわれますが、自分の仕事として、この3つを当てはめて考えてみることをおススメします。

3-1. 雇われる仕事

定年後の仕事を考えるとき、まず「雇われる仕事」と「雇われない仕事」に大きく分かれます。
定年を迎えるということは、「雇われる仕事」をしてきたということになりますよね。
定年後も「雇われる仕事」を続ける場合、5つの形態に分類することができます。

3-1-1. 再雇用・雇用延長

これから60歳で定年を迎える人は、今、所属している会社に制度があれば、「再雇用」や「雇用延長」を選んで65歳まで働くことができます。
現在、政府は雇用年齢の70歳引き上げを進めていますので、将来的には70歳までこの形態で働けるようになるかもしれません。

厚生労働省が発表した2018年6月の集計では、従業員31人以上である全国15万6989社のうち65歳までの再雇用及び雇用延長を導入している企業は15万6607社で、99.8%に達しています。

65歳定年を採用している企業は2万5217社で16.1%、66歳以上で働ける制度がある企業は4万3259社で27.6%、70歳以上でも働ける制度がある企業は4万515社で25.8%となっており、この数は今後も増えていくことでしょう。
再雇用や雇用延長をした場合の給料は、定年前の6割程度といわれています。

3-1-2. 再就職

再雇用や雇用延長を選ばない人、65歳を過ぎた人でフルタイムの社員として働きたい人は、ハローワーク(公共職業安定所)や人づてに再就職できる企業を探すことになります。

2018年、全国の主要ハローワーク180カ所に55歳以上を対象としてできた「生涯現役支援窓口」では、とくに65歳以上の再就職支援に力を入れています。

2018年における65歳以上の新規求職者は49.6万人で、そのうち就職したのは10.1万人ですから、再就職が簡単ではないことがわかります。
しかし、通常窓口での就職率が17%であるのに対し、生涯現役支援窓口では61%の達成率がありますから、この窓口があるハローワークを探した方がいいでしょう。

専門職、経営管理職、事務職を希望する人のシニア再就職は厳しい状況にあるようですが、清掃業務、警備員、駐車監視員、施設管理職、介護施設といった職種の募集は多いといわれています。

3-1-3. 業務委託契約

企業側が、65歳を過ぎても後進の指導などのために残って欲しいということから、それまでの雇用契約を業務委託契約に切り替えて仕事を続けるケースがあります。

形式としては個人事業主ということになり、収入も給料ではなくて原則として事業収入になりますから、確定申告の必要が出てきます。

政府が70歳まで働ける環境整備を進める中で、この形態は増えていくと考えられています。

3-1-4. 人材派遣

人材派遣会社に登録して派遣で働く高齢者も増えています。
正社員やアルバイトなどのように、仕事をする会社と雇用契約を結ぶのではなく、派遣会社と雇用契約を結んで派遣会社の社員という立場で企業に出向き、給料は派遣会社から支給されます。

派遣社員には年齢制限がなく、会社とのトラブルがあっても派遣会社が交渉にあたってくれるため、定年後の再就職では正社員という労働形態よりも、派遣の方が何かと有利だと考える人が多くなっているといいます。

労働基準法では、5年以上継続して働いている派遣社員を企業側は雇用する義務があります。
ですから、60歳から65歳まで、もしくは65歳から70歳までの5年間を派遣社員として働き、雇用を求めることも考えられますが、65歳までの雇用を行っている企業が多い現状では、まだ難しそうです。

3-1-5. パート・アルバイト

65歳を機に、今までのような拘束の多い働き方をやめて、適度に働き、そこそこの収入を得て、自分や家族のために費やす時間を増やしたいと考える人は、ライフワークバランスが自由になるパートやアルバイトという労働形態が適しています。

近年、今までよりも短い日数や勤務時間のアルバイトを募集する企業が急増しました。
1人の従業員がフルタイムでこなしていた仕事を何人かで分け合う「ワークシェアリング」という働き方が増えているからです。

働く方は、自分の都合のよい時間を有効に使うことができて、企業側は人手不足の解消と社員の負担を軽減することができるわけです。

ワークシェアリングでは、シニア世代や子育て中の主婦の参加が期待されていますから、60代であったらまず問題なく、70代であっても健康であったら高い確率で雇ってもらえるでしょう。

3-2. 雇われない仕事

60代からも仕事を続けるけど、「雇われない」で働くという形態もあります。
スキルや資格を活かして自分の思うような仕事がしたい、アイデアを仕事として形にしたいという人に向いています。

3-2-1. 起業

法人として登記し、会社を興して事業をはじめるのが「起業」です。
「起業」や「会社」というと、大げさに聞こえるかもしれませんが、要は法人登録をするということにあり、自宅をオフィスにするSOHOや、店舗を事業の本拠地として仕事をはじめるのも立派な起業です。

かつて、有限会社は300万円、株式会社は1000万円以上の資本金が必要でしたが、現在は新たに有限会社を設立することはできなくなり、資本金1円でも株式会社が設立できるようになったので、起業のハードルは低くなりました。

とりあえず会社を設立して、それから資本金を増やすということが可能になったのです。
とはいえ、現実的な設備投資や運転資金の確保が必要になりますから、本当に法人を設立する必要があるかどうか、よく考えなければいけません。

3-2-2. 個人事業主

法人を設立せずに個人で仕事をする場合でも、従業員を雇ったり複数の店舗をもったりすることが可能です。

売上の金額や仕事の規模、授業員の人数、扱う商品の内容などを考えて会社を設立する必要がないのであれば、個人事業主として仕事をはじめた方がいいでしょう。
より軽い責任とフットワークで、自分で思うように仕事をすることができます。

ピアノ教室やパソコン教室など月謝を稼ぐ仕事から、物を売る店舗、動画や音楽の制作、ライターなど、リアルかネットかを問わず、家業から趣味を活かす仕事まで、あらゆる職種で生きる人がここに含まれています。

個人事業主になるには、開業してから1カ月以内に「開業届出書」を税務署へ提出する必要があります。
「青色申告承認申請書」も同時に提出すれば、帳簿をつけて申告することで、基礎控除や側別控除、赤字を3年繰り越せるといった優遇策を受けることが可能になります。

3-2-3. フリーランス

「フリーランス」という労働形態は、近年増えているのですが、まだ明確な定義はありません。
現状では、開業届を出していても、従業員を雇っていないとフリーランスに分類されることが多いようです。

個人事業主と同じように個人で様々な仕事をしていても、開業届を出していない場合はフリーランスに分類されます。

もっとも柔軟で新しい働き方といえ、政府は働き方改革の一環としてフリーランスの支援に力を入れはじめています。
現在、フリーランスの人口は1000万人を越えているといわれ、経済産業省もフリーランスの減税策を検討すると発表しました。

まとめ

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定年後の生き方を考えるとき、最優先したいのは残りの人生を幸福なものにすることでしょう。

何が幸福かということは個人差がありますから一様に語れるものではありませんが、「生きがいの見つけ方」で解説したように、「好きなこと」「得意なこと」「人の役に立つこと」の3つが重なる部分が明確になったら、それは幸福な人生を過ごす指針となるはずです。

それが仕事であっても趣味であっても、一番大切にしなければいけないことだといえるでしょう。

【参考資料】
・『定年後も働きたい。 人生100年時代の仕事の考え方と見つけ方』 松本すみ子 著  ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019年
・『IKIGAI 日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』 茂木健一郎 著 恩蔵絢子 訳  新潮社 2018年

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