「会社設立」を検討中だけど、いざ手続きをするとなったら、何をすべきなのか、何から手を付けるべきなのかわからないものです。
情報はたくさんあったほうがいいけれど、会社設立の手続きに関して、最低限の必要な情報をわかりやすく知りたいという声もよく耳にします。
ここでは「株式会社」を例にして、会社設立の手続きについて、シンプルにその流れをご紹介していきたいと思います。
目次
1 会社設立はこうやって行う!
1-1 会社設立の準備に必要なこと(印鑑、項目)
1-2 名前を決める
1-3 本店所在地を決める
1-4 構成を決める
1-5 公告の必要性
1-6 設立年月日
1-7 定款
1-8 事業内容を決める
1-9 登記申請中に行うこと
2 会社設立|書類作成で必要なこと
2-1 定款とは
2-2 登記申請をする
2-3 会社設立後の書類作成
3 会社設立の手続きにかかる費用
3-1 自分で会社設立の手続きをした場合
3-2 司法書士、税理士など専門家に外注した場合
4 株式会社設立のメリット・デメリット
4-1 知っておきたいメリット
4-2 知っておくべきデメリット
5 まとめ
1 会社設立はこうやって行う!
会社設立の流れをザックリと説明すると、下記のようになります。
↓
■会社設立に必要な手続きをチェックする(自分で行う?専門家に依頼する?)
↓
■登記申請をする
↓
■登記完了する
↓
■法人設立届出書を提出や銀行口座開設を行う
全体で見れば、会社設立はとっても簡単なのです。
実際の登記申請にかかる日数は1週間から10日程度と言われています。つまり、会社設立を決めて、すぐに書類作成をはじめとする手続きを開始、それを1週間程度で行うことができれば、最短2週間程度で会社設立まで完了させることも可能なのです。
思い立ったら、モチベーションをキープしつつスピーディーに進めていきたいもの。一気に進めるとこんなに短期間で完了できるということも、知っておくと良いかもしれません。
1-1 会社設立の準備に必要なこと
会社設立にあたって決定すべき設立項目(2−2以降でご紹介します)の他に、印鑑の作成があります。
会社設立時に最低限必要となるのは、代表者印と銀行印の2種です。
インターネットで検索をすると、「会社設立セット」というスタイルで販売しています。会社の住所が入ったゴム印や、請求書などに使用する角印なども入った便利なものもあるので、せっかくならまとめて準備しておくことをおすすめします。
1-2 名前を決める
まずは、会社の名前です。名前はとても重要です。ずっと付いて回るものなので、納得いくまで考えましょう。
その際に気を付けるべきことは、競合他社で同じような名前はないか、インターネットでの検索で簡単に探せるか、分かりやすいか、などがポイントとなります。
商号の付け方で注意すべき点に使用文字の制限などもあるので、詳しくは、法務省ホームページで確認することをおすすめします。ローマ字表記の名前を検討中という人は、特に必見です。
1-3 本店所在地を決める
名前が決まったら、次は住所です。本店所在地、つまり会社の本社の住所をどこにおくかを決めなければなりません。
まずは、自宅からスタートという場合、オフィスを賃貸する場合、そして、バーチャルオフィスを選ぶことも最近では珍しくありません。手軽で便利ではあるのですが、デメリットが多いのも特徴の1つです。
会社設立の際に必要となる住所、電話番号、FAX番号などがレンタルできるサービスですが、あまりおすすめできるとは言えないでしょう。
オフィスの賃貸の予算も予定もなく、自宅住所も知られたくないということであれば、以下のデメリットを知った上で、検討してみるのもいいかもしれません。
銀行口座の開設が難しくなる
●バーチャルオフィスのデメリット②
許認可取得が難しい
●バーチャルオフィスのデメリット③
社会保険、雇用保険の申請が難しい(できないことが多い)
●バーチャルオフィスのデメリット④
①にも絡んできますが、創業融資が受けにくい(事業の実態がないと見なされる場合が多い)
●バーチャルオフィスのデメリット⑤
他の会社と住所が重複する
1-4 構成を決める
会社の人員構成を考えます。機関設計と呼ばれるものです。
会社の組織の中にどのような機関を置くべきか、最初に全体イメージを作っておくことが大切です。設計パターンは様々ですが、ポイントは下記の4つです。
■会社の運営方針の決定をする「取締役」
■会社の運営が適切に行われているかどうかをチェック・監視する「監査役」
■会社の会計周りを担当する「会計参与」
代表取締役の選定には、2つのケースがあります。取締役会が設置されている会社の場合には、取締役会で、設置されていない会社の場合には、定款、定款に基づいた取締役の互選、または、株主総会による選定となります。
役員の人数は、最低1名の取締役が必要になります。役員の任期は最長で2年です。役員の変更には法務局での変更手続き(費用)も必要になります。この費用も手間もバカにならないので、役員の選定には手を抜かないことをおすすめします。
1-5 公告の必要性
会社の情報を公開する、一般的にお知らせすることを指します。方法としては、「官報」「新聞」への掲載、電子公告などがあります。
1-6 設立年月日
会社設立日にこだわりたい!という方は、しっかりとチェックしておく必要があります。登記の申請日=会社設立年月日となるので注意しましょう。
1-7 定款
定款の作成は、「手間がかかる」「時間がかかる」「大変そう」といったイメージも強いかもしれませんが、インターネットなどで簡単にフォーマットなどを入手できるので、すべて自分で作る必要がありません。必要事項を順番に入力するだけで、思った以上に簡単に作れるものなのです。
コストを抑えたい場合には、電子定款という方法もあるので、あわせてチェック、検討するようにしましょう。
1-8 事業内容を決める
会社がどんな事業を行っていくのかを決めることです。それはいちばん最初に決めるべきでは?と思う方もいるかもしれません。
しかし、ここで言う事業内容とは、定款に記載するものです。
今は、この事業をやる目的で会社を立ち上げることにしたけれど、いずれはこのような事業もやりたい、メインの事業から派生する可能性のある事業などをここに記載しておくと、後々変更の手間が省けるので便利です。
1-9 登記申請中に行うこと
登記完了後に、銀行口座を開設します。その際に必要になるものは下記の通りです。
②銀行印/代表者印(法務局へ届出済みのもの)
③印鑑証明書
④定款
⑤登記簿謄本のコピー
⑥身分証明書のコピー(実際に申請に行く人のものです)
銀行口座を作る前提で、登記申請中に考えておきたいことが、財務管理や申告の方法です。
現預金の管理はどのようにしていくのか、請求書はどうするのか(こちらも簡単にインターネットでフォーマットをダウンロードできるので、時間を書けずに作成することが可能です)など、お金まわりの管理については、会社が動き出してからではなく、登記登録完了時には、いつでもスタートOKとなるように、決めるのがポイントです。
また、登記申請中に、会社のホームページ、名刺などのデザインを考えておくことをおすすめします。登記完了時点でホームページ公開というのがいちばんスムーズな流れです。デザインやホームページのコンテンツは作成には、少なからず時間がかかるので、比較的時間がある登記申請中に目処を付けておくようにしましょう。
2 会社設立|書類作成で必要なこと
書類は、作成するだけでなく、認証を受ける必要があるものも存在します。会社設立においては、様々な登録・申請段階で書類の作成が必要になってきます。作成にあたり、注意すべき点などに触れながら紹介していきたいと思います。
2-1 定款とは
会社設立に欠かせないのが「定款」です。定款とは、会社の法律、会社の憲法などと言われることがあります。内容は、会社の内容、基本規則などを記載したものです。
書面定款、電子定款の2種類があります。
定款は、公証人役場で「認証」をしてもらう必要があります。定款の認証には、9万円の費用がかかります。内訳は、収入印紙4万円と、公証人への支払手数料5万円となります。
2-2 登記申請をする
登記申請に必要な書類は下記になります。
■定款
■発起人による決定書
■役員の就任承諾書(設立時でOK)
■印鑑証明書
■印鑑届出書
登記申請の方法は3種類あります。先ほどから少し触れていたのは直接法務局に行く方法ですが、実は選べます。
■郵送
■オンライン(法務省:商業・法人オンライン申請について)
郵送で行う場合には、普通郵便でも問題はないのですが、おすすめは、郵便の所在がわかる書留などです。直接法務局に出向く時間がない人には、おすすめの方法なのですが、会社設立日にこだわる方は、注意しなければなりません。
郵送の場合には、申請書類が届き、法務局が受付をした日が会社設立日となります。つまり、郵送の状況によっては、誤差が出る可能性もあるのです。
法務局窓口は何かといつも待たされるから・・・と時間削減を優先したいところですが、大切な会社の設立日なので、自分で出向くのもモチベーションを高めるためにも良いかもしれません。
2-3 会社設立後の書類作成
法務局で登記が完了しても、まだあともう少し、書類作成が必要になってきます。提出先としては主に4ヶ所あります。
②都道府県/市区町村(地方税に関するもの)
③労働基準監督署/ハローワーク(労働保険に関するもの)
④年金事務所(社会保険に関するもの)
他にもいくつかありますが、まずこの4つを完了させたら、「株式会社設立しました」と胸を張って告知できるようになるわけです。スタート地点と言ってもいいでしょう。
届出書類としては下記のようなものがあります。
■青色申告の承認申請書
■給与事業所等の開設届出書
■源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
※下記は任意です。
■棚卸資産の評価方法の届出書
■減価消却資産の償却方法の届出書
これら、フォーマットなどもダウンロードできるので、目を通すことをおすすめします。
新規法人の届出書類について(国税庁ホームページより)
そして、作成が必要になってくる書類としては次のようなものがあります。
■事業概況書
■賃金規定
■就業規則
ホームページなどで検索すれば、フォーマットなどが簡単に取得できるので、自分で作ることも可能です。フォーマットでイメージを掴み、実際の作成には、専門家に相談というのも1つの方法です。
3 会社設立の手続きにかかる費用
会社手続きの際の初期費用はなるべく抑えたいものです。しかし、コストを抑えることばかり考えて、自分で何でも処理しようとすると手間と時間がかかってしまい、肝心の事業の方に時間が費やせないというデメリットに繋がってしまうこともあります。
経費、時間、オプションなどを見比べて、会社の状況に一番ピッタリハマる方法で手続きする方法を選びましょう。
3-1 自分で会社設立の手続きをした場合
自分でできることは、なるべく自分でというコストを抑えることに重きを置きたいという場合には、全部で約24万前後の費用が必要になります。内訳は・・・
定款認証手数料・・・50000円
印紙代・・・・・・・40000円
【登記申請】
登録免許税・・・・・150000円
(資本金額によって変わりますが、ここでは一番安い金額を記載します)
3-2 司法書士、税理士など専門家に外注した場合
自分で行わずに、専門家に依頼した場合には、報酬費用がプラスされると考えましょう。報酬額は、依頼する事務所によって異なりますが、大体10万円くらい見積もっておけば安心です。
なので、全体で10万円プラスの約34万円が、専門家に依頼した際の費用と考えておくと良いでしょう。
司法書士、税理士など・・・100000円
【定款認証】
定款認証手数料・・・・・・50000円
印紙代・・・・・・・・・・40000円
【登記申請】
登録免許税・・・・・・・・150000円
(資本金額によって変わりますが、ここでは一番安い金額を記載します)
4 株式会社設立のメリット・デメリット
会社設立においても、メリット、デメリットがあります。すべての人が会社設立に向いているわけではありません。
株式会社を設立する理由としては、会社をはじめて立ち上げる、個人事業主や合同会社からの移行をするなど、いくつかあると思います。
現状と、「株式会社」にすることとどちらが良いのか、判断材料になるメリット、デメリットをまとめておきたいと思います。
4-1 知っておきたいメリット
社会的信用度が高くなる
●株式会社設立のメリット②
節税効果がアップする
●株式会社設立のメリット③
責任が有限になる
個人事業主に比べて、会社形態の方が一般的には信用されやすいとされています。
また、合同会社と比べると、「株式会社」の方がさらに信用度が高くなります。社会的信用度がアップすると、銀行をはじめ金融機関とのやりとりもスムーズになり、資金調達や融資の選択肢が広がります。資本金が増えれば、売上アップに向けてさらに資金を投入することができます。売上が上がり、資本金も増え、信用度がアップするという良いループにハマっていくというわけです。
経費処理の幅はグッと広がります。個人事業主では、経費計上できるものが限られています。法人という形態になれば、事業にかかる費用は“すべて”経費と見なされます。生命保険、損害保険なども経費として計上できるメリットがあります。家族経営という場合でも、法人にした方が良いポイントがあります。それは、給与を経費とすることができるのです(ただし、条件あり)。
経費の計上が関わってくることですが、費用計上が増えることで、課税対象額を抑えることも可能です。所得税から法人税に変わることで、税率は低くなるのです。節税が実現すれば、会社のキャッシュフローについても考える幅が広がります。
金融機関からの借入は、会社経営では重要なポイントです。株式会社では、そこにメリットが発生します。返済責任は、資本金の範囲内でのみ発生します。つまり、資本金を超える金額については、返済する必要がないのです。有限責任と呼ばれるものです。ただし、注意が必要です。債務の連帯保証人が経営者個人になっている場合には、負債をすべて負う必要があります。
4-2 知っておくべきデメリット
社会保険料の事業主負担が増える
●株式会社設立のデメリット②
会社設立時、設立後にも費用が発生する(役員変更手続きなどは定期で)
●株式会社設立のデメリット③
法人税7万円は、赤字でも納める義務がある
従業員が何人であっても、社会保険に加入する必要があります。会社が負担する社会保険の金額は、給与の10〜15%ほどになります。
会社設立の流れでも説明したように、「株式会社」設立時には、定款の作成から、登記申請まで様々なコストが発生します。登記の手続きには、代表印、銀行では銀行印なども必要になるうえ、ホームページ、名刺、会社案内などの作成にも費用がかかることは避けられません。
個人事業主であれば、赤字=利益なし、課税対象額はないと判断されるので、税金の支払は発生しません。しかし、法人の場合には、会社が赤字であっても、7万円程度の法人税が発生します。会社の規模により、税額は変わってきますが、7万円という数字は、予定に入れておきましょう。
会社設立に関しては、「株式会社」だけが選択肢ではありません。法人という括りには、「株式会社」をはじめとして、合同会社、合資会社、合名会社、そして、非営利法人である一般社団法人、一般財団法人、NPO法人なども存在します。
会社設立=株式会社というイメージが強いかもしれませんが、すべての会社が「株式会社」という形態に向いているわけではないことをしっかりと理解しておきましょう。
5 まとめ
会社設立は、スピード重視で行えば、登記申請の1週間から10日を含めても2週間程度で完了することが可能です。
難しいイメージがある手続きも、実は専門家に頼まなくても自分でできるものもたくさんあるのです。もちろん、手間はかかります。ですが、順を追って手続きしていけば、誰にでもできるというわけなのです。
会社設立の際に、どの手続きを自分でやるのか、専門家に頼むのか、その決め手となるのは、費用と時間です。安くしたいばかりに、書類作成や細かい作業が苦手な方が自分で手続きをするとなると、本業に支障が出るケースも少なくありません。本末転倒にならないように、専門家やインターネットを上手に組み合わせて進めていきましょう。
会社設立の手続きでかかった費用はすべて会社の経費となりますので、領収証などはきちんと保管しておくようにしましょう。会社設立の手続きが完了する前から、会社経営がスタートしているという心がけを忘れずに。
【参考図書】
らくらく株式会社設立&経営のすべてがわかる本(あさ出版)
オールカラー 一番分かる会社設立と運営のしかた(西東社)
ダンゼン得する 知りたいことがパッとわかる 会社設立のしかたがわかる本(ソーテック社)