仕事に疲れた時は、職場に行きたくなくなることもありますよね?
日本人のおよそ60%は何らかの疲れを感じているといわれ、その中でも「仕事の内容と人間関係によるストレス」によって自律神経のバランスを崩し、心身ともに疲れを訴えている人がとても多くなっています。
仕事に疲れた人は、「今日の仕事は精神的に疲れたから、帰りにジムで汗をかいてリフレッシュしよう」というように、精神面と身体面を分けて考えがちです。
しかし、医学的には身体的疲労を感じているときも、精神的疲労を感じているときも、早く帰宅してリラックスタイムをつくり、質のよい睡眠をとったほうがいいのです。
最新の疲労医学では、精神的疲労も肉体的疲労も、脳の自律神経中枢が疲労することによって感じるものであることがわかっています。
自律神経のバランスが崩れることで、疲労感を覚えるのです。
そして、自律神経とストレスはとても深い関係にあります。
ここでは、疲れとストレスのしくみを解説しながら、仕事に疲れた時の癒しネタ6選と、20代から50代までの女性に多い仕事の疲れと、その対処法をピックアップします。
目次
1. 仕事に疲れた時の癒しネタ
1-1. 仕事に疲れたら映画館に入る
1-2. 仕事に疲れたらカラオケルームに入る
1-3. 仕事に疲れたら一人旅に出る
1-4. 仕事に疲れた時は童話の本を読む
1-5. 仕事に疲れた時に役立つ名言
1-6. 仕事に疲れたらカフェインナップ
2. 年代別にみる仕事の疲れ相談と対処法
2-1. 仕事に疲れた20代の女性
2-2. 仕事に疲れた30代の女性
2-3. 仕事に疲れた40代の女性
2-4. 仕事に疲れた50代の女性
1. 仕事に疲れた時の癒しネタ
ストレスとは、身体の五感で受けた刺激に対する脳の反応です。
ストレス反応が起こる経路は、自律神経系の働きと、ホルモン分泌系の2つがあり、ともに脳の自律神経中枢がコントロールしています。
ストレスの情報が脳に伝えられると、自律神経中枢は交感神経を優位にし、ストレスに対抗するホルモンの分泌を指示します。
自律神経は、心拍、呼吸、血液循環、体温調節、消化吸収といった生命維持に欠かせないいろいろな機能をコントロールしている神経システムです。
交感神経と副交感神経が常に40~60%の割合で働き、活動モードである交感神経が優位になると、心拍や呼吸が増えて血圧が上がり、瞳孔は開いて消化吸収機能は低下します。
副交感神経が優位になると、その逆の状態になって、リラックスモードになるのです。
仕事に疲れた時は、強いストレス反応が起こっている状態ですから、副交感神経を優位にしてリラックスすることと、ストレスを軽減することが対処法のポイントになります。
1-1. 仕事に疲れたら映画館に入る
人間が五感で受ける刺激には、マイナスの刺激とプラスの刺激があります。
マイナスの刺激とは、痛い、つらい、悲しいといった感情を生むもの、プラスの刺激とは、心地よい、うれしい、楽しいといった感情を生むものです。
マイナスの刺激は自分の意思とは関係なく降り注ぐものであるのに対し、プラスの刺激は意識して増やすことができるという特徴があります。
主にストレス反応の原因となるマイナス刺激は、勝手に降り注ぐものですから、なくすことはできません。
ストレスを消そうと思ったり、ストレスに勝とうと考えたりすると、余計にストレスを溜めることになってしまうのです。
ストレスを軽減するためには、プラスの刺激を増やして、マイナス刺激による感情を忘れるしかないのです。
簡単にいえば、好きなことや気持ちよいことを積極的に行えばOK。
マイナス感情を意識的に忘れることはできないので、何かに没頭することによって忘れるという方法をとるわけです。
さて、映画鑑賞が趣味だという人は、好きな映画に没頭することによって、ストレスを軽減することができます。
とくに映画が趣味ではなくても、ゆったりとしたシートの映画館に入って2時間ほど過ごすことによって、副交感神経を優位にすることができます。
疲労回復が最大の目的ですから、もしも映画の途中で寝てしまってもよしとしましょう。
映画のよいところは、2時間程度の決まった時間で完結できることにあります。
2時間の余裕ができたら映画館に飛び込んでしまうのも、いい疲労回復の手段です。
1-2. 仕事に疲れたらカラオケルームに入る
最近は、昼休みに会社から出て、カラオケルームやインターネットカフェを利用する人が増えています。
ビジネスパーソンは、朝、家を出てから帰宅するまで、ずっとストレスの中にいるといってもいいくらいです。
満員電車、上司や部下との人間関係、取引先との交渉、目を酷使するデスクワーク。
どれも会社で仕事する以上は、避けて通れるものではありませんから、マイナスの要素は受け入れて、プラス刺激を増やすことや自律神経を整えることを考えなければいけません。
そうした意味で、昼休みにひとりになる時間をつくることは、ストレス軽減に大きな効果があります。
会社内の使用していない会議室や屋上などでも、ひとりになることができるかもしれませんが、やはり落ち着くのは他人が入ってくる心配がないパーソナルスペースです。
外に出ることによって、気持ちのリフレッシュにもなります。
他の人間と行動するということは、協調したり自衛したりする必要がありますから、それだけで交感神経は緊張します。
ですから、疲れているときは仲間とワイワイランチに行くのはやめて、カラオケルームやインターネットカフェなどに入ってひとりになり、ゆったりした音楽でも聴きながらランチを食べて、30分間の休息をとりましょう。
1-3. 仕事に疲れたら一人旅に出る
旅行は、プラスの刺激をたくさん得ることができます。
仕事に疲れた時におすすめなのが、週末を利用した一人旅です。
ただし、疲れの度合いによって行先を考える必要があります。
人間関係のわだかまりやモヤモヤした気分を吹き飛ばしたいという、アクティブで元気がある状態でならば、「金曜日の夜に出発してタイのリゾートでリフレッシュ」なんていう海外旅行もいいでしょう。
しかし、疲れた心身を癒したいと思うような時には、あまり遠出はせずにお気に入りの場所へ行く方が疲れを癒すことができます。
土曜日の夜に一泊し、日曜日は早めに帰宅して、家でリラックスする時間をつくりましょう。
行先は、温泉などよりも、森林浴のできるキャンプ場などが適しています。
そよ風にゆれる木漏れ日や小川のせせらぎなど、自然が生み出す「ゆらぎ」の中に身を置くことによって、副交感神経を優位にして自律神経を整えることができます。
自律神経がコントロールしている生体リズムは、正確に一定ではなくて「ゆらぎ」があります。
疲労医学では、体内環境にある「ゆらぎ」と、自然環境にある「ゆらぎ」が同調することによって、リラックスできるのではないかと考えられています。
1-4. 仕事に疲れた時は童話の本を読む
本を読むことの楽しさのひとつに、疑似体験があります。
小説の登場人物に自分を重ね合わせてみたり、料理の本で美味しそうな料理の味や香りを想像してみたりして、人は本を楽しみます。
疑似体験に没頭することは、ストレスを軽減する手段のひとつです。
仕事に疲れたら、静かな環境で、好きなジャンルの本にしばし没頭することにより、マイナスの刺激を忘れて自律神経を整えることができます。
仕事に疲れた時に読む本は、何でも好きなものでいいのですが、最近は童話や絵本を好む大人が増えています。
古くから多くの人々によっていい伝えられてきた童話には、人間社会を生き抜くための教えが散りばめられているので、あらためてじっくり読んでみることをおすすめします。
誰もが知っている「ウサギとカメ」を例にとると、この話には、競争社会を疲れずに生きる教えが隠されています。
ウサギはレースに勝つことだけを考えていたのに対し、圧倒的に不利な状況であったカメは、ウサギに勝つことよりも自分のベストをつくすことがテーマで、いいかえれば、自分と戦っていたのです。
競争社会で最後に勝つ人は、カメタイプの人だということなのです。
周囲からどう見られようが、人と比べることはせずに、自分の道を進むことができる人は、余計なストレスを溜めることがありません。
1-5. 仕事に疲れた時に役立つ名言
「経営の神様」といわれた松下幸之助さんの言葉には、ビジネスで成功するヒントや、仕事と幸福の関係を表す名言がたくさんあります。
仕事に疲れた時に思い出したり、仕事に疲れた人にかけてあげる言葉として、とても味わい深いものですから、名言や金言が好きな人は、ぜひ押さえておくべきです。
仕事に疲れた彼女にかける言葉としても、彼氏にかける言葉としても役に立つはずです。
数ある名言の中から、3つほどピックアップして紹介しましょう。
・雨が降れば傘をさす
自然の理法にしたがえば、(経営は)必ずうまくいく。
・すべてに学ぶ心
学ぶ心がなければ、何を見ても、何をしても、ただそれだけで終わってしまう。人と会って話をしてもそれだけで終わり、人々の姿、世の動きなどを見てもそれだけ。
常に自分は不十分だと思って、学ぶ気持ちをもち続けることが大事なのだ。
・真剣勝負
「真剣」とは、本物の剣のこと。
真剣を使った勝負では、勝ったり負けたりなどというのんきなことはいってられない。
一太刀が命にかかわるのだ。
負ければ命がなくなる。
そのくらいの気持ちで日々の仕事に取り組む人が、成功する。
1-6. 仕事に疲れたらカフェインナップ
昼休みにとる30分以内の仮眠を「パワーナップ」といいます。
米コーネル大学の社会心理学者であるジェームス・マース教授が提唱したパワーナップは、1995年にNASA(アメリカ航空宇宙局)が有効な疲労回復法であるという研究結果を報告してから、一般的になりました。
午前中の仕事でたかぶった交感神経を鎮めて、副交感神経を優位にすることでリラックスし、昼食の消化吸収も促すのです。
一般的な人間の体内時計では、朝起きてから6~8時間程度で眠気が起こるようになっており、それが午後1時から2時くらいになるので、午後の仕事で眠気を覚えるのはごく自然なこと。
その仮眠をちょっと前にとってしまうのです。
「カフェインナップ」とは、コーヒーなどでカフェインを摂ってからする仮眠のことです。
カフェインの覚醒作用は、体内に入ってから15~20分で現れるので、寝すぎないためと、スッキリした頭で午後の仕事をはじめるために、効果的なのです。
先に紹介したカラオケルームなどのパーソナルスペースでは、寝すぎないためにカフェインナップがおすすめです。
2. 年代別にみる仕事の疲れ相談と対処法
仕事の疲れをとる疲労回復の方法は千差万別です。
仕事をする環境や立場、個人の趣向などによって、何が効果的な対処法かということが変わってきます。
ここでは、働く女性を20代、30代、40代、50代の年代に分けて、よくある仕事疲れの相談とその対処法をピックアップしてみました。
2-1. 仕事に疲れた20代の女性
PROBLEM
会話をするのが下手で、人と接することに疲れてしまいます。
(22歳 メーカー勤務)
APPROACH
会話では、多くを話そうとする必要はありません。
会話が上手い人には聞き上手が多いものです。
聞き上手になるコツは、まず相手の話を途中で遮らずに最後まで聞くこと。
そして、うなずいたり相づちを入れたりして、「私はあなたの話を聞いていますよ」というアピールをすると、相手は安心できます。
会話が上手い人とは、相手を楽しい気分にさせる人です。
自分がいいたいことを全部いえると、誰でも気持ちがいいものです。
「聞き役七分」という言葉があります。
会話うち7割は聞き役に回るということ。
これが、相手を楽しい気分にさせて、しかも疲れない会話のコツです。
2-2. 仕事に疲れた30代の女性
PROBLEM
家に帰っても患者さんのことばかり考えてしまい、疲れがぬけません。
(35歳 看護師)
APPROACH
仕事に一生懸命なのは悪いことではありません。
でも、仕事とプライベートの切り替えができないと、ストレスを溜め込んでしまい、いずれは精神が折れてしまいます。
あなたが勤務時間外で患者さんの心配をしても、何も状況は変わらないのです。
ですから、勤務を離れたら患者さんのことは忘れた方がいいのですが、真面目に仕事に取り組む人ほど、心配が頭から離れないものです。
心配や不安な気持ちといったマイナスの感情は、消そうとすれば、またそのことを考えてしまうので、さらにストレスを溜めることになってしまいます。
マイナス感情を忘れるためには、プラス刺激を自分に与えることです。
仕事に疲れた看護師さんの心を癒す処方箋は、難しいものではありません。
好きなことや気持ちのよいことを積極的にすればいいのです。
家で趣味を追求するのもいいでしょうし、ショッピングや疲れない程度の運動で脳をリフレッシュするのもいいでしょう。
小さいことでも楽しみの数を増やすことがポイントです。
2-3. 仕事に疲れた40代の女性
PROBLEM
忙しくて仕事を休むことができません。なにかよい疲労回復法を教えてください。
(40歳 出版社勤務)
APPROACH
疲れて休みたいのに休めないという人は、休息の取り方が下手な人だといえます。
ピンと張った緊張が慢性的になると、精神も身体も、ある日突然ガラスが割れるように崩れてしまいます。
まず、「自分は休むことができない」という強い思い込みを捨てましょう。
いくら忙しい状態であっても、休息は必要ですし、工夫次第でいろいろな疲労回復法が考えられます。
自分に合った休み方を覚えることは、ストレス社会を生き延びる秘訣です。
休日など、まとまった休みとは別に、短くても気持ちいい、心地よいといったプラスの感情が得られるひとときをつくりましょう。
昼休みにひとりになる時間をつくったり、カフェインナップをとったり、公園へ行ってゆらぎの中に身を置いたりして午前中の疲れを癒し、自律神経を整えてから午後の仕事をはじめるだけでも、疲労感はかなり軽減されます。
また、休日は、「とれるとれない」ではなくて、仕事をする以上は必要なものと考えなければいけません。
2-4. 仕事に疲れた50代の女性
PROBLEM
若い部下にイライラしてしまい、ストレスが溜まります。
(50歳 サービス業管理職)
APPROACH
イライラしているときは、交感神経が興奮状態にあって、継続すれば脳の老化が加速して体調不良も起こします。
ですから、人間の身体は、イライラしたり誰かを怒ったりすると「疲労感」というサインを出して興奮を抑え、脳疲労をやわらげようとします。
そして、興奮状態にある交感神経と、副交感神経とのバランスをとろうとするのです。
部下にイライラしたり、怒りたくなったりしたら、まずその場を離れて間をおきましょう。
コーヒーを飲みに行く、外に出て深呼吸をする、緑があるスペースに行って「森林の香り」をかぐというように、意識して副交感神経が優位になる行動をとるのです。
冷静になったところで、もう一度、部下の問題を考えてみましょう。
部下のことを変えようとするのではなく、部下に対する期待値を下げるとか、わかりやすく説明するというように、自分を変えることで、ストレスを軽減することができます。
まとめ
仕事の疲れは、人間関係にかんする問題が大きな割合いを占めます。
どこの職場でも仕事の悩みを調べると、人間関係はだいたい1位か2位にランクインし、転職や退職まで考えたという人も少なくありません。
疲れた自分を癒す手段が大切であると同時に、できるだけ人間関係でストレスを抱えないようにすることも重要です。
人間関係の疲れは、ストレスの元が外部にあるのですから、なくすことはできませんし、相手のことを変えることもできません。
なくすことはできないのですから、その現実を受け入れてしまって、自分が少しでも楽になるような対処を考えるべきです。
仕事をする以上、最初からある程度の理不尽はあるものなのだと考えて、人間関係に求めるハードルを下げる、ムリな理想を追い求めない、といったことも、疲労を軽減するためには大切です。
【参考資料】
・『すべての疲労は脳が原因3 』 梶本修身 集英社 2017年
・『働く女性のための「心のサプリメント」』 ピースマインド マガジンハウス 2017年
・『仕事の答えは、すべて「童話」が教えてくれる。』 千田琢哉 朝日新聞出版 2013年
・マイナビ看護師 web site