慢性の肩こりや腰痛は辛いですよね?
肩や首のこりといった症状は、筋肉が緊張して収縮し、血行不良のために老廃物が排出されなくなってしまうことが原因です。
また、悪い姿勢を続けることは、背中や腰といった体幹部分のこりや痛みの原因となります。
ストレッチは、筋肉を伸ばして血行を改善し、関節の可動範囲を修正することが目的です。
全身の関節が正常に動くようになると、血液やリンパの流れが改善されるので、肩こりや腰痛だけでなく、内臓の活動を促し、リラックスできるようになることによって、便秘や不眠といった症状の改善も可能になります。
消化吸収機能や代謝機能が高まるので、結果としてダイエット効果も現れるのです。
ここでは、すべてのストレッチの導入部にあたる5つの準備体操と、症状別に選べるストレッチの方法を紹介します。
血行不良や悪い姿勢を治したいという人も、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 3つのコアを意識する準備体操
1-1. 体幹の曲げ伸ばし
1-2. 骨盤の前傾後傾
1-3. 肩甲骨の開閉
1-4. 前屈後屈
1-5. 側屈
2. 10種の症状を改善するストレッチ
2-1. 肩こり
2-1-1. アームトゥチン
2-1-2. ショルダーダウン
2-2. 首のこり
2-2-1. イヤートゥショルダー
2-2-2. チントゥチェスト
2-3. 背中のこり
2-3-1. ニーハング
2-3-2. ラティスミスストレッチ
2-4. 前腕のこり
2-4-1. リストフレクション
2-4-2. リストエクステンション
2-5. 腰痛
2-5-1. マーメイド
2-5-2. ラウンドプレッツェル
2-5-3. オブリークリーチ
2-6. ふくらはぎのむくみ
2-6-1. バトラー
2-6-2. アイソシリストライアングル
2-7. 足の裏のだるさ
2-7-1. トーエクステンション
2-7-2. ニーリングダウン
2-8. 便秘
2-8-1. ロングディープブリーズ
2-8-2. ウォーシップ
2-9. 不眠
2-9-1. ニートゥチェスト
2-9-2. クロスレッグツイスト
2-10. 悪姿勢
2-10-1. ルッキングアップ
2-10-2. ハンドダウン
2-10-3. ニーインサイド
2-10-4. バタフライ
2-10-5. セミレッグストラドル
1. 3つのコアを意識する準備体操
ストレッチは、運動前に行うウォーミングアップとしてよく知られ、体育の授業などでも二人組で筋肉を伸ばすストレッチをやった覚えのある人も多いでしょう。
それなのに、「ストレッチをする前の準備体操?」と、不可解に感じるかもしれません。
ストレッチは、身体のコア(深層部)から身体を動かすことによって、筋肉をしっかり伸ばすことができます。
とくに、「体幹(背骨)」「股関節」「肩関節」という3つのコアを意識して動かすことが、ストレッチの効果を上げるポイントとなります。
ストレッチを行う前に、これから紹介する5つの準備体操で、身体のコアが動くようにしておきましょう。
1-1. 体幹の曲げ伸ばし
背骨を意識して、身体の中心軸をしなやかにします。
① 立って足を肩幅に開いた状態で、両手をクロスさせて手のひらを胸に当て、みぞおちを支点にしてゆっくり上体を前傾させて背中を曲げます。
② その姿勢から背中をゆっくり後ろへ反らしていき、骨盤を固定したまま背骨だけを動かして限界になったら元の姿勢に戻し、10~15往復させます。
1-2. 骨盤の前傾後傾
骨盤の動きを意識して、固まりやすい骨盤をほぐします。
① 立って足を肩幅に開いた状態で両手を腰の脇に当て、胸を張って背中を反らし、お尻を後ろに突き出しながら骨盤を前傾させます。
② 背中を丸めながら骨盤を後傾させ、前後交互に10~15往復行います。
1-3. 肩甲骨の開閉
肩甲骨の動きを意識して、両腕が滑らかに動くようにします。
① 頭から背中にかけて丸めながら、両腕を前に出して背中の肩甲骨を開きます。
② 頭を起こして胸を張り、両ヒジと肩を後ろに引いて肩甲骨を閉じ、前後交互に10~15往復行います。
1-4. 前屈後屈
全身の大きな曲げ伸ばしで、体幹と股関節の連動を高めます。
① 足を肩幅より少し開いて立ち、手のひらを下に向けて腕を前に伸ばします。
② 伸ばした腕を振り下ろしながら勢いよく上体を前屈させ、脚は伸ばしたまま体幹を丸めて両腕を脚の間に入れます。
③ その姿勢から腕を振り上げて、勢いよく上体を反らします。
④ 体幹と骨盤(股関節)の2カ所から動かす意識で、前後交互に10~15往復行います。
1-5. 側屈
左右方向への大きな曲げ伸ばしで、体幹、股関節、肩甲骨の連動を高めます。
① 足を肩幅より少し開いて立ち、左手を腰に当て、右腕を振り上げて上体を左に倒していきます。
② 体幹、股関節、肩甲骨の3カ所から大きく動く意識で、上体を側屈させ、反対側も同様に、それぞれ10~15往復行います。
2. 10種の症状を改善するストレッチ
5つの準備体操で3つのコアが動くようになったら、症状に合わせたストレッチを行ってみましょう。
理学療法で行われるストレッチは、関節の可動域を改善して基本動作の回復を目指すものですが、筋肉の緊張をほぐして血流を改善することも、ストレッチの効果のひとつです。
悪い姿勢や運動不足によって筋肉が収縮し、十分な酸素や栄養素が行き届かないために起こる様々な症状は、ターゲットとする筋肉のストレッチを習慣化することで改善し、予防することが可能なのです。
これから紹介する部位別ストレッチは、そのときどきで自分の症状に合ったものを組み合わてください。
カッコ内はターゲットとする主な筋肉です。
2-1. 肩こり
2-1-1. アームトゥチン(三角筋、棘上筋)
① イスに座って左腕を右斜め下に手の先まで伸ばし、右手でヒジを下の外側から支えます。
② 左腕の上腕部を身体から離さずに、右手で左ヒジを引き上げて10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-1-2. ショルダーダウン(僧帽筋上部)
① 大きく脚を開いてイスの右半分に座り、左手でイスをつかみ、右手は右の太ももに置きます。
② 左腕を伸ばして、上半身を右に傾けて肩回りを伸ばしたら10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-2. 首のこり
2-2-1. イヤートゥショルダー(頭板状筋、頸板状筋)
① イスに座って両脚を肩幅に開き、背筋を伸ばして両手は太ももの上に置きます。
② 頭の重さを利用するか、右手を頭に置き、頭を右斜め前に倒して10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-2-2. チントゥチェスト(頭板状筋、頸板状筋、僧帽筋上部)
① イスに深く座って背筋を伸ばし、両手を後頭部で組みます。
② 背中の肩甲骨が背もたれから離れないようにし、ヒジを前方に締めて、頭を前傾させて10秒キープ、3回繰り返します。
2-3. 背中のこり
2-3-1. ニーハング(僧帽筋、菱形筋)
① 床に座って左ヒザを立て、つま先を伸ばした右脚のヒザの下に入れ、両手を組んで左ヒザを抱えます。
② 背中を丸めて少しずつ上体を後傾させ、両足を床から浮かし、ヒザにぶら下がるイメージで10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-3-2. ラティスミスストレッチ(広背筋、大円筋)
① 床にヒザをついて四つん這いになり、両手をやや斜め左前に置き、右手で左手の甲を押さえます。
② 手の位置はそのままでお尻を左斜め後ろに引き、体重を利用して背中を伸ばし10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-4. 前腕のこり
2-4-1. リストフレクション(前腕伸筋群)
① イスに浅く座って、右手で左手の甲を包み、左手首を曲げて指も軽く曲げます。
② 右手で左手の甲を押さえたまま、左手首を下に折るようにして左腕を斜め下に伸ばし、ヒジを伸ばして10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-4-2. リストエクステンション(前腕屈筋群)
① イスに浅く座り、右手で胸の前に立てた左手の指先4本を人指し指側からつかみます。
② 左前腕の内側が伸びるように、斜め下に左腕を伸ばして10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-5. 腰痛
2-5-1. マーメイド(腰方形筋、脊柱起立筋)
① 床に座って右ヒザを立て、伸ばした左脚のヒザの外側に足を置き、右腕は伸ばして右ヒザに、左手は身体の後ろについて上体を支えます。
② 右手で右ヒザの内側をもって押し、右のお尻を浮かし腰回りを伸ばし、頭から、胸、お腹、骨盤までをすべて左に向けて10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-5-2. ラウンドプレッツェル(横突棘筋、脊柱起立筋)
① 床に座って両ヒザをつけて立て、上体を少し前傾させて左手は身体の後ろにつき、右手で左ヒザの前下をつかみます。
② 左手で身体を支えながら、背中をまるめて左にねじり10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-5-3. オブリークリーチ(横突棘筋、脊柱起立筋、腰方形筋)
① ヒザを曲げた右脚を後方に、左脚のヒザを曲げて前にして横座りになり、左足の裏を右のももにつけて骨盤を固定します。
② 右手で左手首をつかんで額の前に置き、右斜め前に左手を引っ張りながら背中を丸めて10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-6. ふくらはぎのむくみ
2-6-1. バトラー(下腿三頭筋、とくにヒラメ筋)
① 左ヒザを立て、右ヒザをついて背筋を立ててしゃがみ、両手を左ヒザの上に重ねておきます。
② 左足のかかとを床につけたまま上体を前傾させて、左ヒザを押してふくらはぎを伸ばし10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-6-2. アイソシリストライアングル(下腿三頭筋、とくに腓腹筋)
① 床に四つん這いになり左右の手は肩の下、両ヒザは骨盤の下に置き、足首は右を上にしてクロスさせます。
② 左ヒザを伸ばしてお尻を上に突き上げ、左ヒザが少し曲がった状態で、左のつま先は体の中心線と同軸上でかかとを床につけて10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-7. 足の裏のだるさ
2-7-1. トーエクステンション(足趾屈筋群、足底筋膜)
① 床に座って左ヒザを立て、右足を左脚の下に入れて右ヒザを外に倒し、両手で左足を左右からつかんで足首を手前に曲げます。
② 次に両手で左足の指全体を上からつかんで手前に引き寄せて指を反らし10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-7-2. ニーリングダウン(足趾屈筋群、足底筋膜)
① 両足を肩幅程度に開き、つま先を立ててお尻の横につけるように座り、左右の手はそれぞれ足首を上から握ります。
② そのまま上体を後ろに傾けながら、両ヒザを前にずらし、体重をかけて足の指と足の裏を反らせて10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-8. 便秘
副交感神経を優位にしてリラックスできるので、消化吸収機能が高まり、便意が促されます。
2-8-1. ロングディープブリーズ(腹横筋、横隔膜、内肋間筋、外肋間筋)
① 仰向けに寝て両ヒザを立て、両手を組んでヘソの下に当て、4秒かけて鼻から息を吸ってお腹をふくらませます。
② 口からフーッと6秒かけて息を吐ききり、お腹を限界までへこませます。
③ この呼吸を10回繰り返したら、両脚を伸ばして同じように10呼吸します。
2-8-2. ウォーシップ(腹横筋、横隔膜)
① 床に両ヒザを立てて四つん這いになり、両ヒジを床につけて両手の上に額をのせ、胃や小腸の圧迫から大腸を解放し、4秒かけて鼻から息を吸ってお腹をふくらませます。
② そのままの姿勢で口からフーッと6秒かけて息を吐ききり、お腹を限界までへこませます。
③ この呼吸を10回繰り返して、大腸の動きを活性化させます。
2-9. 不眠
心地よい刺激を得ることで、自律神経を整えて不眠を改善します。
このストレッチは、とくに弱い刺激で行うようにしましょう。
2-9-1. ニートゥチェスト(大臀筋、ハムストリングス)
① 床に仰向けに寝て枕やクッションに頭をのせ、右ヒザを立てて左の足首を上にのせます。
② 両手で左のふくらはぎを抱えて左脚を上げて手前に引き寄せ、左ヒザは軽く曲げたまま20秒キープ、反対側も同様に行います。
2-9-2. クロスレッグツイスト(横突棘筋、腹斜筋)
① 床に仰向けに寝て枕やクッションに頭をのせ、右ヒザを立てて左の足首を上にのせ、両手は自然に伸ばして手のひらは床につけます。
② 左足は右ヒザにつけたまま、左ヒザをゆっくり外側に倒して床につけて20秒キープ、反対側も同様に行います。
2-10. 悪姿勢
2-10-1. ルッキングアップ(胸鎖乳突筋、大胸筋、腹直筋)
首と胸とお腹を伸ばして猫背を改善します。
① 足を前後に開いて両手を腰に当て、背筋を伸ばします。
② アゴを上げて上体を後ろに反らし、後ろにある足のかかとを床から浮かせて10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-10-2. ハンドダウン(腰方形筋、中臀筋)
左右の腰とお尻を伸ばして、左右の歪を改善します。
鏡の前で行うと身体の状態がよくわかります。
① 両足を広めに開いて立ち、両手は伸ばして身体の脇につけておきます。
② 右手の指を滑らせながら上体を右に倒し、左のお尻を横に突き出して腰とお尻を伸ばし10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-10-3. ニーインサイド(中臀筋、深層外旋六筋)
お尻の横を伸ばして、O脚を改善します。
① 床に座って右脚は伸ばしたまま左ヒザを立て、右腕を左ヒザの上にのせて伸ばし、左手は身体の後方について支えます。
② 左手はしっかりふんばったまま、右手で左脚のスネを外側からつかんで内側に倒し10秒キープ、反対側も同様に各3回行います。
2-10-4. バタフライ(股関節内転筋群)
内ももを伸ばしてX脚を改善します。
① 床に座って左右の足裏を合わせ、両手で下から足の甲を包んで指を組みます。
② 両手でつま先を引っ張りながら上体を前傾させ、左右のヒジでそれぞれふくらはぎを押して10秒キープ、元の姿勢に戻って2回繰り返します。
2-10-5. セミレッグストラドル(脊柱起立筋、横突棘筋)
骨盤を後ろに倒したまま、腰を軸に前傾することで、反り腰を改善します。
① 床に座ってヒザを開き、両足の裏を向い合せ、左右の手はヒザの前下をつかみます。
② 足の甲まで両手の指を滑らせて、背中を丸め、おへそを覗き込むようにして10秒キープ、元の姿勢に戻って2回繰り返します。
まとめ
ストレッチの注意点としては、3つのコアから意識して動かすこと、継続すること、痛くない関節可動域で行うことの3点があります。
ストレッチは3日に1度、長い時間をやるより、1~2分でも毎日続けた方が有効です。
また、通常の関節の可動範囲を越えるような刺激は、逆効果になるので、あくまでも痛くない範囲で行いましょう。
ここでは、それぞれのターゲットとなる筋肉の一覧を掲載していませんので、ネット上のイラストやpdfをダウンロードするなどして参照してください。
【参考資料】
・『硬い体がみるみるほぐれる 世界一効くストレッチ』 荒川裕志 (著)、石井直方 (監修) PHP研究所 2017年
・『最新 ストレッチの科学』 坂詰真二(監修) 新星出版社 2017年