変化が激しい不確実性の高い現代社会を生き抜くには、生涯に渡って自分自身に投資をすることが最大のリスクヘッジと言えます。
しかしながら、大人になって勉強しようとしても、すぐ忘れる。記憶できない。そんな場合どうすればいいのでしょうか?
そこで今回、脳科学など様々な分野の研究が進んだからこそ出来る、脳の特性から記憶力をアップさせて、仕事や勉強に効率的に取り組める記憶術や勉強方法をご紹介します。
【目次】
1 記憶力アップに不可欠な脳の特性を知る
1-1 記憶力アップの基本はドーパミンの分泌
1-2 自発的に学習するほど記憶力アップにつながる
1-3 記憶力アップと負荷のかけ方
2 脳の特性から記憶力をアップさせる20の勉強方法
記憶力アップの方法1|五感を駆使する
記憶力アップの方法2|脳のゴールデンタイムを活用する
記憶力アップの方法3|情報の分割と組み立てをする
記憶力アップの方法4|「引っかかり」には速攻で対応する
記憶力アップの方法5|アウトプットの機会を増やす
記憶力アップの方法6|睡眠をしっかり確保する
記憶力アップの方法7|あくびと背伸びで脳を覚醒させる
記憶力アップの方法8|計算された復習時間を入れ込む
記憶力アップの方法9|勉強する場所を変える
記憶力アップの方法10|思い立ったらその場でパッと学習する
記憶力アップの方法11|重要なことは最初と最後に集中させる
記憶力アップの方法12|体を動かす
記憶力アップの方法13|勉強の合間にブレイクを挟む
記憶力アップの方法14|香りを活用する
記憶力アップの方法15|脳に栄養を与える
記憶力アップの方法16|関連付ける
記憶力アップの方法17|マインドマップを活用する
記憶力アップの方法18|語呂合わせに頼る
記憶力アップの方法19|感情を込める
記憶力アップの方法20|とにかく楽しむ
1 記憶力アップに不可欠な脳の特性を知る
「勉強するのが苦痛」「記憶力に自信がない」と悩む人は少なくありません。
学校のテストや受験で勉強にネガティブな感情を持つ人が多いのですが、それは脳を活かして記憶力をアップさせる学習をしていないからです。
実は、脳は学習することに喜びを感じるように設計されています。
そこでまずは、脳の力を最大限に活かした記憶力アップするために、下記の脳の特性を知っておくことです。
1-1 記憶力アップの基本はドーパミンの分泌
何か難しい挑戦に成功した時、「やったー!」「嬉しい!」という感情と共に、私たちの脳の中にはドーパミンという物質が分泌されています。
ドーパミンとは快感を生み出す脳内物質のことです。人間の脳はドーパミンが分泌された時にどのような行動をとったかを記憶します。
そして、もっと快感を得ようとドーパミンを分泌させるために、繰り返しその行動をとるという性質があります。
このように、脳の働きかけによって二度、三度と繰り返すことでその行動が上手になっていく状態にすることが記憶力アップのコツです。
1-2 自発的に学習するほど記憶力アップにつながる
例えば、親から「勉強しろ」と強制される子どもよりも、何も言われなくても自ら勉強している子どものほうが、実は成績が良かったりします。
これは、脳の働きの「自発性」によるものです。
脳に何かを強制することは難しく、脳が喜びを感じるのは「強制されたのではなく、自ら積極的に選んで行動を取る」時です。
学習で記憶力アップを促すためには、強制されたという意識を捨てて、自分が選んでこの行動を取っているのだという意識を持つことです。
1-3 記憶力アップと負荷のかけ方
人間の脳というのは貪欲に出来ていて、同じことや既に出来ることをやっても喜びません。
逆に、出来そうもないことを達成すると、脳は喜びます。脳は、負荷をかけて苦しみを感じた後、達成することで喜びを感じるという特性があります。
つまり、脳にドーパミンを分泌させて学習効果を出すためには、単に同じことを繰り返していてもダメだということです。
よって、自分に負荷をかけて出来そうもない課題にチャレンジしつづけるということが大切なのです。
記憶力アップにつながる具体的な負荷のかけ方を2つご紹介します。
1-3-1 記憶力アップへの負荷1:時間
脳は常に刺激を求めています。脳の働きを活用して学習効果を高めるためには、「時間」の制限を設定することです。
学生時代にクラスでいっせいに計算ドリルや問題を解き始め、早く出来た生徒から順に先生のところへプリントを持って行くという経験をしたことはありませんか。
これが得意な子どもはゲーム感覚で競争を楽しんでいたと思います。
これは大人も同じで、「時間制限」で記憶力アップを促す負荷をかけることができます。
スマホのタイマーやストップウォッチを使って、仕事や勉強をする時には、必ず時間制限を設定することです。
1-3-2 記憶力アップへの負荷2:量
次に、学習の作業量をどんどん増やして負荷を作ることです。脳は刺激を求めるのに「量」という負荷も喜びます。
例えば、学生時代に、算数が苦手でも繰り返しドリルを解いていくことで、いつの間にか以前は解けなかった問題がスラスラ解けるようになったという経験はありませんか?
このように、とにかく他のことを考える隙を与えないくらいにどんどん学習作業をこなして、制限した時間内で出来る分量を増やしていくことが大切です。
勉強をする時には、「ちょっと多いかな」と思うくらいの量を頑張ってこなすことです。
2 脳の特性から記憶力をアップさせる20の勉強方法
1章では、脳の特性を知っていただきました。この次は、その特性を活かして記憶力をアップさせる実際の記憶術や学習方法をご紹介します。
「もう年だから」とか「勉強は昔から出来ないから」と勝手に決めつけて諦めてしまうのはもったいないことです。
脳は、何歳からでも鍛えることは可能です。
記憶力アップの方法1|五感を駆使する
脳には、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚という五感から働きかけることで、記憶が定着しやすくなるという特性があります。
例えば、英単語を覚える時。ただ英単語を黙読して記憶しようとするよりも、英単語を目で見て、耳で聞いて、声に出して読み、手で書くというように五感を総動員した方が記憶力はアップします。
記憶力アップの方法2|脳のゴールデンタイムを活用する
睡眠には記憶を整理するという働きがあります。
そのため、朝の脳の方が睡眠中に記憶がしっかりと整理されていて、一日の中で一番クリアな状態になっています。
朝の脳はパワーに溢れているので、まさに脳のゴールデンタイムです。
記憶力アップさせるには、朝起きたらすぐに重要な仕事をしたり、勉強をして、勉強したことをクリアな脳に叩き込むことが効果的です。
記憶力アップの方法3|情報の分割と組み立てをする
あまりに多くの情報を詰め込みすぎると、脳はパンクしてしまいます。
そこで、情報をインプットする時には、情報を細かく「分割」してから「組み立てる」という作業が効果的です。
例えば、長い英単語を覚える時には、「internationalism」と一気に覚えようとするよりも「inter」「nation」「al」「ism」と分けて覚えると意味も紐付けしながら覚えることが出来て、記憶力アップにつながります。
記憶力アップの方法4|「引っかかり」には速攻で対応する
「分からない」とか「ど忘れした」というように、脳が「引っかかり」が生じた時には、それを放置するのではなく速攻で調べて、脳に「答え」という報酬を与えてあげることです。
それを放置すると脳の感度が悪くなってしまいます。
ですから、すぐにネット検索して「あー、なるほど」と喜びを与えたり、脳の鮮度が高いうちに、脳が引っかかりを解消してあげることが脳の記憶力アップを最大にするコツです。
記憶力アップの方法5|アウトプットの機会を増やす
記憶するには、情報をインプット(入力)するだけではなくアウトプット(出力)することも大切です。
脳は、「これだけ入ってきたから覚えよう」というよりも「これだけ使うのだから覚えよう」と情報を選んで記憶する性質があるからです。
何かを学んだら、それを自分の言葉でノートに書き記したり、誰かに話したりして自分の形にしてアウトプットの機会を増やしましょう。アウトプットの機会が増えた分だけ記憶力がアップします。
記憶力アップの方法6|睡眠をしっかり確保する
睡眠は脳を休める働きと共に記憶した情報を整理するという働きがあります。
勉強したことを記憶させるには、しっかりと睡眠時間を確保して、脳の疲れを取って勉強した内容を整理する時間を確保することです。
ダラダラと勉強して睡眠時間を削るよりも、短時間でも良いのでしっかりと集中して勉強をして夜にはしっかり眠るほうが遥かに効率的です。
記憶力アップの方法7|あくびと背伸びで脳を覚醒させる
勉強をしているとダレてくることもあります。思わず、あくびが出てしまうこともあるでしょう。
あくびは脳の働きが鈍くなった時に出てしまいますが、実は、あくびをした後の脳はスッキリと回復していると言われます。
また、脳に起きたぞというサインを送る背伸びにも、あくびと同様の効果があります。
勉強していて、ちょっと脳が疲れてきたなと感じたら、そぶりだけでも良いのであくびと背伸びをすることです。
脳がスッキリ回復して、またバリバリと活躍してくれるようになります。
記憶力アップの方法8|計算された復習時間を入れ込む
人間の記憶がどのように忘れられていくかを実験した結果、得られた「エビングハウスの忘却曲線」によると、人は20分後に42%を忘れ、1時間後には56%を忘れ、1日経つと74%も忘れてしまうそうです。
つまり、一度勉強したことは、出来るだけ早くに復習することが記憶力をアップさせるコツとなります。
例えば、1時間の勉強時間が確保出来るとしたら、最初の50分間は勉強時間として残りの10分間を復習時間に費やすというように、都度復習出来るように最初から復習時間を取り込んでおくことです。
このような記憶力をアップさせる時間の使い方を習慣化させると効果が倍増します。
記憶力アップの方法9|勉強する場所を変える
脳は「刺激」を好みます。毎日同じ場所で勉強するのではなく、週に1回くらいはいつもと違う場所で勉強することです。
それが脳への新しい刺激となって効率良く記憶力をアップさせてくれます。
その際に注意する点が場所選びです。なるべく周囲の人も学習している環境を選ぶことです。
人間の脳には、一緒に時間を過ごしているうちにお互いが似たような行動を取るようになるという「共感回路」が備わっています。
ですので、出来るだけ図書館や自習室、静かなカフェなど周囲の人が学習しているような環境を選ぶほど、記憶の効率化が図れます。
記憶力アップの方法10|思い立ったらその場でパッと学習する
脳は「自発性」を好むという特性がありました。
つまり、「あと5分経ったら勉強を始めよう」とか「キリよく19時から勉強をしよう」というように時間をベースにした勉強の仕方ではなく、たとえ5分10分などの細切れの時間でも良いので脳が「勉強しよう!」と思い立ったその場でパッと学習することが効率良く記憶するためには重要です。
そのためにも、いつでもどこでも勉強出来るように肌身離さず、一つ勉強道具を持っておくと仕事や勉強が効率良く進められます。
記憶力アップの方法11|重要なことは最初と最後に集中させる
脳の記憶のメカニズムとして、最初と最後に覚えたことが記憶に定着しやすくなっていると言われます。
この脳の仕組みを活かして、どうしても覚えておきたいことや覚えるべき重要項目がある時は、特に最初と最後に集中して勉強することです。
TODOリストをつける人もいるかと思いますが、勉強を始める際にも、最初と最後に何を仕事するか、勉強するかを決める習慣をつけておくと良いでしょう。
記憶力アップの方法12|体を動かす
海外の映画やドラマを見ていると、登場人物がジムで運動をしながら勉強している場面が時々出てきます。
実は、これは「シンクロ・マッスル学習」と言って理にかなった学習法です。
体を動かすことで脳に刺激を与えると脳は記憶しやすくなるのです。
近くを散歩したり、部屋の中をぐるぐると歩き回ったり、ジムで運動しながら体を動かす勉強も記憶力アップさせるのに効果的です。
記憶力アップの方法13|勉強の合間にブレイクを挟む
社会人で仕事をしながら勉強をしていると、どうしても時間が出来た時にまとめて勉強するということになりがちです。
その時に意識したいのが、1時間勉強するとしたら次の1時間の勉強時間の前に、全く別の行動を挟むということです。
合間に別行動を入れることで、脳に刺激を与えて飽きることなく集中させることが出来て記憶力アップに繋がります。
目を瞑って瞑想して脳を空っぽにしたり、軽くストレッチをして体をほぐしてあげたり、コーヒーやお菓子で一息入れるといったブレイクを挟んでみましょう。
記憶力アップの方法14|香りを活用する
アロマオイルやお香などの「香り」で脳に刺激を与えると、記憶に定着させやすくなります。
集中力を高める効果があると言われるペパーミントやレモンの香り、記憶力アップの手助けとなると言われるティーツリーやローズマリー、リフレッシュ効果があるとされるベルガモットやユーカリなどのアロマオイルなどが有効です。
出先でも、ハンカチやティッシュに1、2滴アロマオイルをたらして鼻にあててスーッと息を吸い込むと脳がシャキっとするので記憶の効率化に繋がります。
記憶力アップの方法15|脳に栄養を与える
勉強をしていると口寂しくなる人も多いと思います。そんな時には我慢せずに、積極的に「脳の栄養となる食べ物」を摂ることです。
記憶力や思考力、集中力を高めると言われるテオブロミンが豊富なチョコレート
- 記憶力向上、忘却防止に効果があると言われるレシチンが多く含まれるピーナッツ
- 記憶力アップに役立つとされるブルーベリーなどのベリー類
などがおすすめです。
「60分集中したら食べる」とか「ここまで問題を解いたら食べる」というように、脳へのご褒美にすると脳への刺激にもなるので、更に効率良く勉強することが出来るようになります。
記憶力アップの方法16|関連付ける
ただ単に丸暗記をするのではなく、理解しながら覚えたり、周辺の情報も併せて覚えたり、既に知っていることに置き換えたりして紐付けて覚えると覚えやすくなります。
頭の中に仕入れた情報は、取り出す時にヒントが多ければ多いほど取り出しやすくなります。
ちょっとど忘れしたという時でも、関連するワードを徐々にイメージしていけば芋づる式に思い出せるようになるので、記憶する時は独立して覚えるのではなく必ず関連付けして覚えることです。
記憶力アップの方法17|マインドマップを活用する
記憶力アップの方法として、脳を上手に活用するためのツールである「マインドマップ」を活用するのも一つです。
マインドマップはトニー・ブザンが考案した思考ツールです。紙の中央にイラストやキーワードなどを書いて、そこから四方八方にツリーを広げていき、中央に書いたものに関連するイラストやキーワードをどんどん書いていくという手法です。
関連付けることで物事を忘れにくくすることが出来ますし、イラストやキーワードで図式化することで「イメージ」としての記憶力アップにつながります。
記憶力アップの方法18|語呂合わせに頼る
学生時代の頃のように「いい国(1192年)作ろう、鎌倉幕府」や「スイヘイリベボクノフネ(化学の元素周期律表)」と言ったような語呂合わせで覚えるのも記憶の定着に一定の効果があります。
記憶を取り出しやすくするためには、内容を理解して記憶するという正攻法で記憶するのがベストですが、
「どうしても理解が出来ない」
「あまり興味が湧かない」
「どうやっても記憶できない」
そういう時には語呂合わせに頼るのも一つの手です。
記憶力アップの方法19|感情を込める
感情移入しながら勉強すると記憶力アップに効果的です。
脳には「感情」を伴う記憶を優先的に記憶するという性質があります。
例えば、歴史や経済の勉強をする時に、「酷い話・・・」とか「これは使えるネタだな」というように自分の感情に蓋をせずに勉強することです。
記憶力アップの方法20|とにかく楽しむ
勉強をしていると、「今日は3時間、勉強しなくちゃ」と自分にプレッシャーをかけたり、「今日は1時間しか出来なかった」というように自己否定をしたりとネガティブな発想になりがちです。
ですが、脳は基本的に「楽しい」とか「嬉しい」というようなポジティブな発想をした時に活性化されるため、出来るだけポジティブな気持ちを持つことが大切です。
「今日は新しいことを5つ覚えた」というように、マイナスの逆部分を見て、そこをプラス面で表現するようにします。褒められると脳も伸びます。
まとめ 日頃から脳の特性を意識して学習すること
大人が記憶力をアップさせて勉強するには、日頃から脳の働きを無視せずに、大人に合った脳の特性を活かすことが一番の近道です。
勉強がキツい、苦しいと思い悩んでいる人は、一度、ちょっと意識してみて視点を変えてみることです。今までの勉強の仕方を変えて成果が出ていくと、楽しくなって勉強の質も量も増えていきます。
参考図書:『奇跡の記憶術~脳を活かす奇跡の「メタ記憶」勉強法』出口汪著(フォレスト出版)、『脳を活かす勉強法』茂木健一郎著(PHP文庫)