8部門のKPI活用例と設定のポイント-PDCAで目標を達成するしくみ

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KPIマネジメントを実践しようとしてKPIを設定しても、本当にそれが適正なものなのか、なかなか自信がもてないものですよね?

「本当にこれでいいのだろうか?」
達成状況を管理する立場にある人間がそんな不安を抱えていたのでは、目標達成を目指す以前に、KPIマネジメントの運用を開始すべきではありません。

適正なKPIは、どうすれば設定できるのか?
効果的なKPIマネジメントを運用するにはどうすればよいのか?

ここでは、こうした疑問を解消するために、PDCAサイクルを回してKPIマネジメントを運用する方法と、部門ごとのKPI活用例を紹介します。
KPIマネジメントは、正しいステップを踏んでこそ、最強の目標達成手段となります。

目次

1. PDCAで回すKPIマネジメントの概要
1-1. “Plan”- 計画
1-1-1. KGIの設定
1-1-2. CSFの絞り込み
1-1-3. KPIの設定
1-2. “Do”- 実行
1-3. “Check”- 振り返り
1-4. “Action”- 改善

2. 8部門のKPI活用例と設定のポイント
2-1. 営業部門①
2-2. 営業部門②
2-3. 営業部門③
2-4. 製造部門
2-5. 開発部門
2-6. 購買部門
2-7. 間接部門
2-8. 人事部門

まとめ

1. PDCAで回すKPIマネジメントの概要

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KPIマネジメントは、設定された期間内に目標達成度を何度もチェックして、必要であれば早急な改善策を実施しながら、進めていくものです。

「KPIマネジメントを回す」という表現は、この繰り返しが重要であることを表しています。
そして、繰り返しの基本となるのが、PDCAというサイクルなのです。

PDCAとは、「Plan(計画)- Do(実行)- Check(確認)- Action(改善)」の略で、4つのフェーズを繰り返して状況を改善しながら業務を進める手法です。

KPIマネジメントでは、管理者がPDCAサイクルをしっかりと回していくことが、目標達成のカギとなります。
前半は、管理者がそれぞれのフェーズで行わなければいけない基本事項を解説します。

1-1. “Plan”- 計画

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まず、この例文を読んでください。
「KGIを達成するためにCSFを絞り込み、数値目標としたものがKPIです」
これが理解できれば、PDCAの「P」を説明する必要はないかも知れません。

Planフェーズのポイントは、KGI、CSF、KPIという3つの重要事項をしっかりと理解して設定することです。

1-1-1. KGIの設定

KGIは、“Key Goal Indicator”の略で、「重要目標達成指標」などと訳されます。
“Indicator”は「表示するもの」という意味ですが、マーケティングやマネジメントで使用されるときは「数値」を意味します。

直訳すれば、「最終的なカギとなる数値」、要するに「最終的な数値目標」ということです。

企業や組織で、四半期、年次、中期、長期などの期限を決めて目標とする数値は、営業利益や売上高、利益率などがありますが、これがKGIです。

企業でKPIを設定する際には、まずその企業が「どうなりたい」のかという存在目的を確認し、そのためには、「いつまでに」「何をどのくらい」という経営レベルの指標と水準を決定します。

たとえば、「当社は、この第1四半期で500億円の営業利益を目標とします」という設定がKGIということになります。
KGIは、全社員にわかりやすい単純な数値が望ましく、全社員が最終的な目標を共有することで、目標を達成する推進力が高まります。

1-1-2. CSFの絞り込み

経営レベルのKGIが決定したら、現状で期末を迎えた場合の予測数値を算出して、KGIとのギャップを確認します。
そして各部門は、そのギャップを埋めるために何をすべきかという「プロセス(過程、手段)」を検討します。

多くの場合は、経営レベルのKGIをもとに各部門の数値目標が設定され、現場レベルの数値目標、最終的には個人の数値目標というようにブレイクダウンされます。

各部門では、現場活動からの声も取り入れながら、割り振られた目標を達成するためのプロセスをできる限りたくさん考えるのです。

そのプロセスの中からもっとも効果的なひとつを絞り込んだものがCSFです。
CSFは“Critical Success Factor”の略で、「重要成功要因」などと訳されますが、わかりやすくいえば、「最重要プロセス」という意味です。

KFS“Key Factor for Success”やKSF“Key Success Factor”も、CSFと同じ意味で使われる言葉です。

1-1-3. KPIの設定

CSFが絞り込まれたら、そのプロセスを数値に置き換えた目標を設定します。
KPIは、“Key Performance Indicator”の略で、「重要業績達成指標」などと訳されますが、簡単にいうと「最重要プロセスの目標数値」という意味です。

ゴールを数値で表したものがKGIで、最重要プロセスを数値で表したものがKPIなのです。
KPIが達成されればKGIも達成されることになります。

KPIを設定するには、SMARTがよく活用されます。

S(Specific)=具体的であること
M(Measurable)=測定可能であること(変数であること)
A(Achievable)=達成可能であること
R(Relevant)=整合性があること(KGIとの)
T(Timely)=時間軸があること(期限はKGIと同じ)

たとえばある部門で、売上高10億円が期間目標額として設定され、「新規顧客の開拓による受注額アップ」がCSFとして設定された場合、過去の様々なデータや競合他社の状況などを十分に分析して、10億円の売上高を実現するためには具体的に「何をどのくらい」という指標と水準を設定するのです。

10億円の売上高を得るためには、受注率が30%と高い新規顧客に対して500件の営業が必要とされたのなら、この「500件」がKPIということになります。

KPIを設定する際には、関係者のコンセンサスをとる必要があります。
管理レベルで達成可能だとされていても、現場レベルでは不可能という判断があるかもしれないからです。

1-2. “Do”- 実行

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KPIの設定ができたら、いよいよ運用開始という運びになりますが、その前にやっておかなければいけない事前準備が2つあります。

まず、管理者が現場活動からのデータをスムーズに収集できるシステムが、定常業務の中にできているかどうかの確認です。
通常、KPIマネジメントの管理者には、部門の責任者やプロジェクトの担当者がつくことになりますが、常にデータ収集ができていなければPDCAを回すことができません。

もうひとつは、Check時のKPI達成度が計画より低かった場合の対処です。
具体的な数値を決めておいて、それより低かった場合には、必ず原因を明らかにしてからKPIの水準を落としたり、CSFの再検討を行ったりという改善をします。

事前準備の確認ができたら、関係者全員にKPIマネジメントの運用を開始することを伝えてから、実行フェーズがスタートします。

1-3. “Check”- 振り返り

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冒頭では“Check”の意味に「確認」という言葉を使っていましたが、KPIマネジメントにおいては、「振り返り」という言葉がよく使われます。

通常は1カ月ごとに収集したデータを整理、分析して、目標達成度を評価します。
よく使われるのは、「青、黄、赤」や「〇△×」などの3段階評価です。

この評価は、関係者全員が進捗状況を知るためのものですから、あまり複雑なものではなくて3段階程度のわかりやすいものの方がいいのです。

この評価で赤や×の評価になったら、アクションを起こします。
この「振り返り」がしっかり機能すれば、中間評価が低くなっていても、決してあわてることなく軌道修正をして、目標達成へと近づけることが可能なのです。

1-4. “Action”- 改善

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振り返りで、目標達成度が計画より低く、そのままでは期末のKGI達成が不可能と管理者が判断した場合は、改善策を検討します。

基本的には、事前に決めてあった方策を実行することを関係者にアナウンスするのですが、状況に応じた策でなければ意味がありませんから、想定外の状況であったら新たな改善策を検討する必要があります。

この場合も、KPIの水準を調整するとか、CSFを再検討するケースが多くなります。
目標達成度が想定外に低いからと、KGIの設定まで変えるのは考えもの。
現場のKPIに合わせたKGIを設定するという本末転倒になる可能性がありますから、もう一度、プロセスの検討とCSFの絞り込みから見直すようにします。

関係者全員に次のサイクルの目標や改善策が伝えられて、新たなPDCAサイクルがはじまります。
期末までこのサイクルを繰り返しながら目標達成するのが、KPIマネジメントの大きな特徴です。

 

2. 8部門のKPI活用例と設定のポイント

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後半は、KPIの活用例を紹介しましょう。
部門ごとに業務も生産性も違いますから、設定のポイントも変わってきます。

 

 

2-1. 営業部門①

企業が売上を拡大するためのプロセスには、特定商品や特定サービスの販売強化、特定ユーザー層の増強、特定エリアの営業強化などが考えられます。

営業組織の売上は、「営業活動量 × 受注率 × 平均単価」で表されます。
ですから、営業部門が売上を向上させるプロセスは、「営業活動を増やす」「受注率を上げる」「平均単価を上げる」という3つの選択が考えられるのです。

ここでどうやってCSFを絞り込むかということは、ケースバイケースになりますが、ある企業の営業部では、単価にかかわる値引き率などは現場でコントロールできないので除外し、「営業活動量を増やす」か「受注率を上げる」かという選択になりました。

受注率を上げるためには、受注件数を増やすか、営業件数を減らすか、ということになります。
営業活動量を増やすためには、人員を増やすか、1件当たりの営業活動にかかる時間を短縮するか、ということになります。
営業件数を減らす必要はありませんし、人員を増やすにはコストがかかります。

そこで、この営業部では、1件当たりの営業活動にかかる時間を短縮して営業活動量を増やすことをCSFに選択し、1カ月の営業目標300件というKPIを設定しました。

2-2. 営業部門②

売上をエリアで分けて考えるビジネスケースもあります。
個人向けのサービスを提供する企業などでは、生活圏を分類して情報提供のスタイルを変えます。

多くの場合は、「住居エリア」と、会社や学校がある「就業就学エリア」の2つを考えることになりますが、東京や大阪など大都市の場合は人口が多く、「遊ぶエリア」などを追加して考える必要が出てきます。

ある情報サービス企業の営業部では、都市部の「遊ぶエリア」で20代の男女をターゲットとした情報サービスの強化をCSFに設定し、「住居アリア:就業就学エリア:遊ぶエリア」の売上比率1:2:3をKPIに設定しました。

2-3. 営業部門③

商品の特性から、特定のユーザー数をKPIに設定するケースもあります。
数%のユーザー数で50%以上の売上をあげているような場合には、とくに有効な方策となります。

まず、売上上位の顧客に共通点がないか分析します。
特定の業界、特定のエリア、特定の企業規模(会社の売上高や従業員数)などです。
その結果から、特定の共通点をもつユーザーにターゲットを絞った営業活動をCSFに設定するのです。
KPIは、ユーザー全体に占める特定ユーザーの比率や、特定ユーザーの売上高などが設定されます。

B to B(企業対企業)の営業においては、取引額の大きな企業を対象にしたCSFなどが考えられます。
その場合に気を付けなければいけないのは、取引額が大きくても利益率が低いケースです。
とくに取引額が大きい顧客に対しては、値引き率も大きくなりがちですから、そういう場合には、値引き率の改善をCSFに設定すべきです。

2-4. 製造部門

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製造部門では、生産の三要素とされるQCD「“Quality(品質)”の良い製品を、“Cost(コスト)”を安く、“Delivery(納期)”の達成」が、CSFを絞り込むポイントとなります。

ですから、この三要素に基づいた品質管理の人員や時間、原価、納期などが、KPIに設定されるケースが多くなります。
製造の現場は数字で管理されている要素が多いので、KPIの設定は比較的絞りやすいのです。

製造部門の使命は、仕様のとおりの製品を「速く、安く、安全に」必要量つくることにあるので、この3点を目指す業務の改善がCSFに設定されることも多くなります。

2-5. 開発部門

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製造部門や開発部門では、ABC“Account Based Costing”が活用されます。

これは、原材料などの原価だけでなく、工場の人件費も生産された商品の利益から回収するという考え方で、開発部門では、商品開発にかかった経費だけでなく、人件費の総額も研究開発費とし、商品化された新商品の利益から回収するということになります。

研究開発を開始してから商品化するまでには時間がかかるものも多いので、顧客のニーズを探るマーケティングと、新たな市場を開拓するイノベーションを追求するのですが、製品のライフサイクルをしっかりと把握することも重要です。

開発に3年間かかったとしても、2年後にはライバル商品の出現で次の新商品が必要とされる場合もあるからです。

こうした点を考慮して、新商品の開発コストの回収期間をKPIに設定し、開発期間をコントロールするケースがあります。

2-6. 購買部門

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調達、購買部門は、資材の発注などをメイン業務とする部門で、生産、製造部門に「必要なものを必要な量、必要なときに供給する」ことが使命です。

製造業がより多くの利益を上げるためには、「販売価格を上げる」「売上数を増やす」「原価を下げる」の3つが基本となります。
一般的に、販売価格や売上数のコントロールは、開発部門や営業部門の役割となり、原価を落とすのは、購買部門や製造部門の役割です。

一般的な製造業では、コストの約85%が購買部門と製造部門で発生しているので、KPIマネジメントでも、徹底したコスト削減や原価の低減が目標とされ、コスト削減額、資材別購買比率、ソース別購買比率などがKPIに設定されることが多くなります。

2-7. 間接部門

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一般的に事務と呼ばれる総務、財務、経理といった間接部門では、目標達成度の数値化が難しいとされます。

たとえば経理部門で、「給与計算のミスをゼロにする」というKPIを設定したとすれば、他部門から「当たり前のことだ」と批判されてしまうことでしょう。
KPIは指標ですから、必ず数値化して、現場の努力で変わる変数でなければいけません。

こうした場合にひとつのポイントとなるのが、目標にコストを入れることです。

同じ人員数であれば、一定の作業にかける時間がコストにつながるわけですから、「給与計算コストを10時間以内に抑える」というように、具体的な数値目標にコストを入れるのです。
こうすることによって、目標が明確になり、他部門から見ても達成度合いがわかりやすくなります。

間接部門は、直接部門の支援が任務ですから、各部門の要求を情報としてしっかり収集することも重要です。

2-8. 人事部門

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人事部門では、優秀な人材を得るための採用活動などに、KPIが活用されます。

採用数は、「応募数 × 通過率」で表されます。
必要とする人材の応募数を上げることをCSFにした場合、自社が必要とする職種の紹介を得意とする人材派遣会社を5社開拓といった数値がKPIになります。

通過率は、「合格率 × 承諾率」で表されますから、合格率を上げるプロセスと承諾率を上げるプロセスが考えられ、より効果的なのは、内定者の承諾率を上げることです。
そのためには、他社よりも早く内定を出すことが重要。

そこで、採用選考の時間短縮をCSFとして、1週間の期間短縮をKPIに設定という方法が考えられるのです。

 

まとめ

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ここで紹介したKPIの活用例は、いずれも前半で解説したPDCAサイクルで回すことによって、目標達成に近づくことができるのです。

最後にPDDSというサイクルも紹介しておきましょう。
これは、2018年に『最高の結果を出すKPIマネジメント』を出版した、元リクルートワークス研究所副所長の中尾隆一郎氏が考案したサイクルです。

PDDSは「Plan(計画) - Decide(絞り込む) - Do(実行) - See(振り返り)」の略で、「よく考えて」「すばやく絞り込んで」「徹底的に実行して」「きちんと振り返る」という4つのサイクルで、マネジメントを回すという意味の略語です。

「マネジメントレベルを進化させ続けている企業の共通点は、改善活動にこそある」という考え方がベースになっています。

PDCAを基本として、振り返って計画へと戻ることに重点を置くという、より実践的なサイクルになっていますので、ぜひ参考にしてください。

KPIマネジメントについて、もっと詳しく学びたい方は、こちらもぜひご覧ください → 数字でビジネスを最大化し続けるリクルートでKPI講師を務めた現場のプロが実践してきたノウハウを公開!『最高の結果を出すKPIマネジメント』

【参考資料】
・『最高の結果を出すKPIマネジメント』 中尾隆一郎 フォレスト出版 2018年
・『KPIで必ず成果を出す目標達成の技術』 大工舎宏、井田智絵 日本能率協会マネジメントセンター 2015年
・『2時間でわかる 図解 KPIマネジメント入門』 堀内智彦 あさ出版 2016年

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