自分が知らない「人生の楽しみ方」には、興味がわきますよね?
幸せな時間を過ごすこと以上に、心と体を健全に保つ方法はありません。
「楽しみ」から連想されるのは、「趣味」や「気持ちのよいこと」でしょう。
趣味に没頭する時間や、美味しいものを食べること、マッサージといった快楽をともなう行為は、誰もがもっている楽しみ方です。
ここでは、「趣味」や「快楽」から少し切り口を変えて、人生の楽しみ方を考えてみます。
キーワードは「非日常」。
「非日常」という言葉を聞いただけで、ワクワクするような感覚を覚える人も多いのではないでしょうか。
非日常的な時間や空間に自分を置くことで、人生を享受することができます。
その楽しみ方は百人百様ですが、ここでは時間やおカネをかけて楽しむ「特別な非日常」と、アイデア次第でちょっとした楽しみに変わる「生活の中にある非日常」という両面から、10のファクターを紹介します。
目次
1. 特別な非日常
① ホテルライフ
② 別荘ライフ
③ クルーズツアー
④ エンターテイメント
⑤ アウトドアライフ
2. 生活の中にある非日常
⑥ 道や視点を変える楽しさ
⑦ 疑似体験
⑧ 創作活動
⑨ インターネット
⑩ 温泉
1. 特別な非日常
1980年代に「ハイソ」という言葉が流行したことがありました。
「ハイソサエティ」を略した言葉で、「高級」なことや、「上流社会」的な雰囲気を意味しています。
特別な非日常とは、「ハイソ」な人生の楽しみ方といってもいいでしょう。
こういう楽しみ方は、ごく一部のおカネもちにだけ許されるものではないかと思われるかもしれませんが、それは違います。
そういうごく裕福な人たちにとって、ここで紹介するような楽しみは、日常的なことですから「非日常」ではありません。
ここで紹介するのは、ごく一般的な生活をしている人が、ハイソな気分を味わう非日常。
「がんばった自分へのご褒美」、「やりくりして楽しむプチ贅沢」といった楽しみです。
どれだけ楽しめるかということは、金額で決まるものではありません。
いろいろな文化と接して、その中に身を置くことで得られる満足感や充実感が、特別なものであればあるほど、楽しみは深くなります。
① ホテルライフ
ホテルの文化は、ヨーロッパで生まれたものです。
高級なホテルは、本来、観光の宿泊施設としてではなく、そのホテルがもっているインテリアやサービスの中で、非日常を楽しむために存在しています。
ですから、ハイグレードなホテルとは、巨大な施設ではなく、サービスの行き届く範囲でつくられた小規模から中規模までのものです。
よく、一流のホテルを語るものとして、何気なくチェックインをすませて、翌日に外出しようとしたら、はじめての滞在なのにフロントのスタッフだけでなく、ベルボーイやドアボーイまでが、「いってらっしゃいませ、〇〇さま!」と静かに声をかけてくれて驚いた、というような話があります。
観光ホテルとの違いは、押しつけがましくないキメ細やかなサービスに身をまかせて、自宅のようにふるまえるところでしょう。
国内にもこうしたヨーロッパスタイルで高評価を得ているホテルもいくつかありますが、本格的なホテルライフを楽しもうと思ったら、海外に行ったほうがいいでしょう。
場所を訪ねるのが目的ではなく、そのホテルで過ごすことが目的です。
しかし、日本には旅館の文化があります。
日本の歴史ある高級旅館が続けているサービスは、ヨーロッパのホテルと通じるキメ細やかさがあって、世界的にも高い評価を得ています。
非日常としては、海外に行ってしまうほうがいいのですが、海外旅行だと疲れてしまうという人は、普段の旅行より予算をかけて、話題になっている高級旅館や、隠れた名旅館を訪ねてみましょう。
② 別荘ライフ
世界的な保養地で過ごすリゾートライフは、特別な非日常として魅力あるものですが、有名な場所ではなくても、自分が気にいった土地で過ごす別荘ライフは、また違う楽しさがあります。
別荘の存在価値は、日常生活を離れることにあります。
非日常の生活環境で、「普通に過ごす」ために滞在するのです。
都会生活をしている人であれば、豊かな自然に癒されるでしょうし、山地で生活をしている人であれば、海の近くに住みたいと思うでしょう。
別荘地というのは、そういった土地の中でも人気が集まる場所ですから、一軒家やマンションを購入しようとすれば、そうとう高額な買い物になります。
ここで求めている非日常としての別荘ライフは、住居を所有するかしないかは、あまり問題ではありません。
そこでおすすめなのが、賃貸物件です。
それも、別荘地ではなくて、あまり密集していない居住地が狙い目。
賃貸であれば、飽きたらほかの場所に別荘を移すことも容易です。
賃貸物件は、別荘として使用することなどに制約があるケースが多かったのですが、近年は全国的に空き家が問題視されていますから、気長に探せば、条件に合う物件が見つかるはずです。
仕事で疲れた週末、非日常でリフレッシュしに別荘へ行くというライフスタイルが、それほど難しいことではなくなっているのです。
その土地ならではの、人々との交流も大切にしたいものです。
③ クルーズツアー
最近は、リタイア後の高齢夫婦をメインの対象とした豪華客船クルーズが、日本でも知られてきました。
クルーズの目的も、ホテルライフ同様に、非日常を楽しむことです。
クルーズ客船は、サービススタッフひとりあたりの客数と、乗客ひとりあたりの容積によって、大衆向けの「カジュアル」、中間的な位置づけの「プレミアム」、最上級の「ラグジュアリー」に区分されています。
非日常を求めてクルーズツアーを計画するのであれば、ラグジュアリークラスを選びたいところですが、航海中に最低でも1回~2回はフォーマル(男性はタキシード、女性がイブニングドレス)な晩餐会が開かれ、通常のディナーでも着席でサービスを受ける場合にはセミフォーマル(男性はダークスーツ、女性はカクテルorイブニングドレス)というドレスコードがあるので、慣れていないと少々疲れるかもしれません。
その点、カジュアルクラスやプレミアムクラスは、フォーマルのシーンが減って少々気楽にはなるのですが、「カジュアル」「セミフォーマル」「フォーマル」というドレスコードは、たとえカジュアルクラスのクルーズでもあります。
「カジュアル」のドレスコードでも、ジーンズにTシャツという恰好はNGで、ジャケット着用が常識だということを覚えておきましょう。
日本船籍の豪華客船は、ヨーロッパクルーズのラグジェアリーとプレミアムの中間くらいのクラスとされており、言葉の問題がなく、食事が日本人向けというメリットがあります。
クルーズにはクラスごとに違った楽しみ方がありますから、気分や予算に合わせていろいろな非日常を楽しむことが可能です。
④ エンターテイメント
コンサートや観劇も、非日常を楽しむよい機会になります。
演出された空間に身を置いて、二度と同じものはないたった一度だけの体験を共有するのは、ライブに参加する醍醐味です。
できればひとりで楽しむよりも、感動を共有できる仲間がいると、楽しみの幅が広がります。
観劇後は食事をしながら、感想談義で大いに盛り上がりましょう。
普段からコンサートによく行く人であったら、伝統芸能である歌舞伎や能楽が、非日常としてはおすすめです。
400年の歴史をもつ歌舞伎と、650年の歴史をもつ能楽には、まったく違う楽しみ方があります。
江戸時代に庶民が飲食とともに芝居を楽しむものであった歌舞伎は、芝居茶屋がルーツですから、今でも幕間に食事をすることができます。
桟敷席で予約をすれば、食事やお茶、お菓子などが運ばれてきますし、一般席ではお食事処に行ってゆっくり食事することができます。
能楽とは、滑稽な演劇である「狂言」と、ストーリー性のある演劇「能」の総称です。
もとは猿楽と呼ばれる庶民の芸能でしたが、室町時代に観阿弥や世阿弥らが形式化し、江戸時代になると武家の公式芸能となりました。
能楽はひとつの演目が1時間半から2時間程度ですから、観たいものを1本観て、ほかの場所で食事をするのがおすすめです。
美術館でゆっくりとアートを堪能したり、博物館で見識を広めたりするのも、特別な非日常の過ごし方としてよいものです。
⑤ アウトドアライフ
アウトドア好きの人にとっては、あまり特別ではない非日常ということになるかもしれませんが、自然の中に身を置いて、星空の下で焚火をしながら過ごし、大地を感じながら眠るアウトドアライフは、生命の原点へと回帰する気分を味わうことができます。
自然や宇宙を感じると、日常の細々とした問題や悩みが小さなことに思えてくるでしょう。
綺麗な空気と美味しい水と、シンプルな料理で、心身ともにリフレッシュできます。
最近は、電源なども用意された便利なオートキャンプ場や、「グランピング」と称するラグジェアリーなアウトドアスタイルが話題になりましたが、非日常を楽しむのであれば「非効率」を求めましょう。
できればテントとシュラフ、ランタンやストーブなどを揃えて、あまりサービスの充実しすぎていないキャンプ場に行きたいものです。
川のほとりで昼間は釣りなども楽しめて、近くに温泉があり、薪くらいは購入できて、炊事場やロッジから適度に離れた場所にテントを張れるところ……、そんなところがあったら要チェック。
ひとりで自然と向かい合うソロキャンプは、究極の非日常を味わえることうけあいです。
2. 生活の中にある非日常
「特別な非日常」がスペシャルイベントであるのに対し、「生活の中にある非日常」は、何気ない行為の中にも楽しさを見出そうとする気持ちが生み出す「遊び」です。
「日常の中の非日常」といってもいいでしょう。
「どうぜ同じ時間を生きるのだったら、なんでも楽しんでしまったほうが得だ」
「一度しかない人生、楽しまなければ損だ」
そんな「超プラス思考」の人だったら、普通にやっていることばかりかもしれません。
それぞれ、考え方ひとつで、人生は楽しいものに変わるということが実感できるはずです。
⑥ 道や視点を変える楽しさ
散歩や散策は、非日常を楽しむもっとも簡単な運動です。
わざわざ散歩をしなくても、通勤で駅まで歩く道をいつもと変えてみるとか、いつも買い物に行くスーパーを違う店に変えてみるという「変化」も非日常をもたらします。
道が1本ずれるだけで、見える景色も、聞こえる音も、樹々の匂いも違うものになります。
また、同じ道でも歩くのと自転車に乗るのと、クルマで通るのとでは視点の高さが微妙に変わるので、見えるものが違うことに気がつくはずです。
そして、季節ごとに、街がまた違う表情を見せるのです。
A地点からB地点まで行く方法は、無限にあります。
道や視点を変えてみると、ちょっとした非日常が隠れているかもしれません。
いつもと違うところに立ってみる、反対方向から物事を見てみる、見えているものをちょっといじってみる、そうした工夫次第で見慣れたものに新鮮さを感じることすらあります。
サングラスをかけるだけでも、見えるものは変わってきます。
⑦ 疑似体験
読書で主人公に感情移入をしたり、シミュレーションゲームで疑似体験をしたりすれば、非日常を楽しむことができます。
多くの人が子どもの頃から本を読んだり、ゲームを楽しんだりして、普通にやっていることですが、こうした疑似体験を極めるのです。
読書だったら、集中できる環境をつくって徹底的に感情移入してみます。
邪魔になる余計な音は聞こえないような、無音の環境がベストです。
ゲームは、軽い気持ちで何度もゲームオーバーするのではなく、やり直しはできないつもりで、本気で臨みます。
ドライブゲームであったら、ムリな走りをしてクラッシュしてもまたやり直せばいいや、という遊び方ではなく、速度を落とすべきところはしっかり落とし、まずコースを完璧に覚えてから、ラップタイムを上げていくのです。
アクションゲームでも、主人公の命はひとつと考えて、絶対にムリはせずにゲームを進めていきます。
そういう楽しみ方ができるゲームソフトやハードウェアを揃えることも大事。
最近は映像の描写性能が飛躍的に向上していますから、可能であれば新しいハードウェアで楽しんだほうが、非日常に没頭できるでしょう。
⑧ 創作活動
小説家や漫画家は、非日常を演出する人たちです。
人生を楽しませてくれたり、感動をくれたり、考えさせてくれたりします。
ミュージシャンや画家、陶芸家などのアーティストも、表現するのは非日常であることが多いものです。
創作活動には、他人に影響を与える前に、自分と向かいあって、自分の内面を表現するという楽しさがあります。
漫画は相応のテクニックがなければ描けませんが、詩や小説、ショートストーリーだったら誰でもわりと気軽に書くことができます。
最初はショートストーリーを書こうとして机に向かっても、なかなか頭に浮かぶものではありません。
これはプロの作家や漫画家の人も同じですが、日頃からこまめにメモをとる習慣をつくると創作にむすびつきます。
ミュージシャンのジョン・レノンは、ビートルズ時代に、「ポケットの中にメモがたまると曲ができるんだ」と語っています。
今は、画像も音も言葉もすべて瞬時に記録できるスマートフォンというスゴイ道具があるのですから、いろいろな視点で見た物事を、浮かんだ言葉と一緒にメモしておきましょう。
⑨ インターネット
インターネットは、日常的な情報伝達やコミュニケーションの形をまったく変えてしまいました。
インターネット上の空間には、日常と非日常、正しい情報と間違った情報、リアルとアンリアルがごちゃまぜになって混在しています。
それだけに、自分に必要な情報を選ぶ目がなければ、振り回されることにもなります。
SNSやBBSでは匿名性を利用した犯罪も絶えません。
しかし、インターネット上に架空のキャラクターをつくり上げることは、悪いことではありません。
オンラインゲームでは、普通に行われていることですし、ライトノベルやコミックを真面目につくり込んで投稿している人はたくさんいます。
インターネット上にキャラクターをつくり上げて、自分を投影したり、理想を表現したり、ストーリーを編んだりして非日常を楽しむのも、「日常の中の非日常」といえます。
⑩ 温泉
温泉といっても、泊りがけで行く温泉ではありません。
いわゆる町の銭湯から、ちょっとつくり込まれたスーパー銭湯など、自宅からせいぜい20~30分で行くことができる「外風呂」です。
近年は、後継者問題などで廃業する銭湯が増える一方で、「非日常」をコンセプトとする「癒し型銭湯」も多くなっています。
1週間か2週間に一度、そう遠くない場所で、ゆったりとした大きな風呂や露天風呂につかって非日常を楽しむのは、プチ贅沢といえるでしょう。
マッサージやアカスリのオプションを楽しむのも、ちょっとした人生のうるおいになります。
歩いていける銭湯だったら、風呂の帰りに散策を組み合わせて、焼き鳥の美味しそうな居酒屋に入ってみたり、夏ならば甘味処でかき氷なんていうのも、粋な楽しみ方です。
まとめ
人生を楽しむ方法は、快楽ばかりとはかぎりません。
たとえば「ボランティア」。
週末の数時間を社会や人のために使うというのも、崇高な非日常の楽しみ方です。
ゴミ拾いから通訳、介護まで、ネット上には様々なボランティアの情報があります。
ムリなくできるのは、完全に無償よりも、交通費や弁当代程度が配給されるものかもしれません。
自分の特技をいかして人生を楽しみ、少しでも人の役に立てたら、よい生き方だと思いませんか?
【参考資料】
・『最上級のライフスタイル』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2013年
・『5分の使い方で人生は変わる』 KADOKAWA 2013年
・『人生は70歳からが一番面白い』 SBクリエエイティブ 2018年