「自分にもう少しひらめきがあれば……」と思うことありませんか?
「自分の考えをうまく組み立てられない」
「いくら考えてもいいアイデアが浮かばない」
こういった悩みをかかえる人は多いでしょう。「ひらめき力のある人」になるためには、どうすればいいのでしょうか。
「ひらめき」とは、頭の中に蓄積されている情報から、普段思いつかないようなすごい情報がアウトプットされた状態です。そのために必要とされるのが、「論理的思考力」という考える力なのです。
ここでは「ひらめき」を生み出す思考力を4つのステップに分けて考え、ビジネスシーンに求められる思考力を解説します。
目次
1 考える力を高める4つの扉
1-1 考える力を高める1 「現象」の扉-情報の量と質を高める
1-1-1 現象には必ず理由がある
1-1-2 情報を正確にインプットする
1-1-3 関心をもって仮説を立てる
1-1-4 関心を高めるカギ
1-1-5 関心の幅を広げるコツ
1-2 考える力を高める2 「仮説検証」の扉-情報を整理整頓する
1-2-1 感覚を数字に置き換えて検証する
1-2-2 分析・検索ツールを活用する
1-2-3 整理整頓のための4つの習慣
1-3 考える力を高める3 「本質」の扉-情報を分析する
1-3-1 「なぜ?」「ほんとう?」「それから?」
1-3-2 丁寧な仮説検証で本質に迫る
1-3-3 数字を関連づけて本質に迫る
1-3-4 「What」を知り「Why」を深める
1-4 考える力を高める4 「ひらめき」の扉-情報を関連づける
1-4-1 対極的な視点を組み合わせる
1-4-2 立体的に物事を考える方法
1-4-3 最初は関連づけを意識する
2 ビジネスに求められる論理的に考える力
2-1 上司を満足させる考える力
2-1-1 まず結論をひと言で述べる
2-2-2 事実と意見を分けて説明する
2-2 相手を納得させる考える力
2-2-1 具体的な根拠を示す
2-2-2 問題点を解決策を対応させる
2-3 上司に求められる考える力
2-3-1 部下にとってのメリットを示す
2-3-2 図を示して論理展開を教える
2-4 わかりやすく説明するための考える力
2-4-1 まず全体像を示す
2-4-2 相手に合った情報を提示する
あとがき
1 考える力を高める4つの扉
「ひらめき」とは、脳になんらかの情報がインプットされたときに、関連する情報がサッと引き出されることです。そのためには、
② 頭の中の情報を整理整頓する
③ それらの情報を使って分析しながら物事の本質を考える
④ 複数の情報を関連づける
という4つの扉を経る思考力が求められます。
1-1 考える力を高める1 「現象」の扉-情報の量と質を高める
思考を深めるためには、まず身の回りの現象を正確にとらえることが必要です。最初の扉を開けましょう。
周囲にあふれる情報を正確にとらえるということは、具体化することでもあります。印象や思い込みで現象をとらえず、事実を正確にとらえてより具体的にすることが重要です。
1-1-1 現象には必ず理由がある
「What(現象・情報)」を正確に観察し、その「Why(理由・本質)」を考えることが、思考力アップにつながります。身の回りで起こる現象には、理由のないことなどありません。
最初から「Why(理由・本質)」はわからなくても、現象を正確に見ることによって「なぜそうなのだろう?」という疑問をもつことができます。
1-1-2 情報を正確にインプットする
「Why(理由・本質)」を知るためには、観察力が必要です。観察力は、日頃から物事を正確に見ようとする習慣づけによって養われるものです。
現象を正確に見て、それを具体化したり、分析したりすることで原因がわかることも多いのです。情報を正確にインプットできればできるほど、頭の中の情報の量と質は充実していきます。
1-1-3 関心をもって仮説を立てる
関心があると物事は見えてきます。関心がないと、なかなか物事の実態はつかめないものです。関心をもつことによって、頭に中に情報のファイルが作られ、関連する情報がそれぞれのファイルに収められるようになっていくのです。
関心をもったことに「なぜ?」という疑問をもったら、自分なりに仮説を立ててみて、その仮説を検証、確認します。
仮説を立てることで、さらにファイルが増えて情報は整理されていきます。ファイルが増えると、見ている現象がどんどん具体化するようになります。この仮説検証の繰り返しが思考力を高めるのです。
1-1-4 関心を高めるカギ
物事に関心をもつきっかけはいろいろなところにあります。いくつかのカギを紹介しましょう。
仕事などで責任を与えられると、関心をもたざるを得なくなります。責任感の強い人は、物事に関心のある人なのです。
好きなことには自然と関心が高まります。
目標が意欲を高め、関心も高まります。関心を維持するためには、小さな目標を繰り返し設定しましょう。
SNSやブログで情報をアウトプットすると、表現を工夫するようになり、関心を高めます。
興味のあることについて話ができる友人がいると、「もっと知りたい」という気持ちが高まります。
少しだけでも幅広い情報をもつことによって、関心をもつきっかけが格段に増えます。
1-1-5 関心の幅を広げるコツ
日常生活の中にも、ちょっとした工夫で関心の幅を広げ、ファイルの数や中身を充実させられることがあります。
どこかへ行くときに、知っている道と通ったことのない道があったら、通ったことのない道を選びましょう。新たな情報のインプット量が格段に増えます。
チャンネルを変えるときには、すぐに目標のチャンネルへ飛ばずにいろいろなチャンネルを見るようにします。意図しないインプットを得られることがあります。
新聞や、テレビのニュース番組、インターネットのニュースサイトなどは、各社のものを見るようにしましょう。同じ情報でも視点が異なるのでインプットのされ方が違います。
日記やメモは記憶を高めるので、情報がファイルに定着する度合いが高まります。
1-2 考える力を高める2 「仮説検証」の扉-情報を整理整頓する
頭の中のファイルの数を増やして、量や質を高める方法が理解出来たら、次は「仮説検証」の扉を開けましょう。
検証によって仮説と事実を見極めるのです。「仮説検証」によって情報を整理整頓することは、論理的思考力を高めるために重要なプロセスです。
1-2-1 感覚を数字に置き換えて検証する
情報に関連する数字を組み合わせることによって、より具体的な事実が見えてきます。「なぜ?」という疑問をもったら、数字レベルまで具体化して考える習慣をつけましょう。
スマートフォンの普及により、どこにいてもインターネットが使えるようになりました。感覚的な情報を数字に置き換える検証は、誰もがいつでもできるようになったのです。
1-2-2 分析・検索ツールを活用する
「5つのP」などといったマーケティングツールや、経営戦略に応用されるフレームワーク、インターネット検索などは積極的に活用しましょう。
しかし、ツールは単なる「道具」ですから、重要なのはいかにそれを使いこなして実践に活かせるかという思考力。その思考力をもたないままツールに頼っていても、知識が知恵になることはありません。
1-2-3 整理整頓のための4つの習慣
頭の中のファイルを整理整頓するために習慣化したい4つのことがあります。
関心の幅を広げるのと同様に、メモや日記をつけてそれを読み返すことで、頭の中の整理ができます。脳の活性化にも効果的です。
興味のある事柄や数値などは、観測や観察を繰り返すと、変化や本質、ほかの情報との関連性が見えてきます。
比較(対比)は検証のもっとも簡単な方法です。物事を比較することで両者の違いがはっきりして、ファイルの中身が整理整頓されます。
文章の熟読は、思考力を高めるための整理整頓術として非常に効果的な手段です。1行も飛ばさず、1文字ずつ理解すことによって、文章を書いた人の論理や思考を自分のものとすることができます。
1-3 考える力を高める3 「本質」の扉-情報を分析する
3つ目に開くのは、頭の中のファイルに入った事実や数字を活用して「Why=理由・本質」を見つけ出す扉です。
1-3-1 「なぜ?」「ほんとう?」「それから?」
会話や発言に「なぜ?」「ほんとう?」「それから?」といった言葉を使うと本質に近づくことができます。
関心をもっていると「What(現象・情報)」が増えて、その量や質が上がることはすでに述べましたが、「What(現象・情報)」を分析し、掘り下げていくことによって本質に迫るのです。
会話ばかりでなく、自分の頭の中で自問することでも思考を深められます。日頃から3つのキーワードを意識するようにしましょう。
1-3-2 丁寧な仮説検証で本質に迫る
本質にたどりつくためには、このステップを丁寧に積み重ねることがポイントです。
「事実を正しくとらえる」
「仮説を立てる」
「検証する」
これまで解説した2つの扉で経てきたプロセスの積み重ねによって、分析に必要な情報が蓄積されるのです。
1-3-3 数字を関連づけて本質に迫る
頭の中のファイルにある数字を関連付けて「What=現象・情報」をとらえます。
数字は現象の分析ツールとしてもっとも簡単で正確なものです。数字と現象を関連付けてインプットする習慣をつくりましょう。
「What=現象・情報」を蓄えるファイルが増えて充実すれば、より早く「Why=理由・本質」にたどりつけるようになります。
1-3-4 「What」を知り「Why」を深める
思考力のステップはスキップすることができません。「What=現象・情報」を正確に知り、「Why=理由・本質」に結びつけて深めるのです。
感覚的にとらえた「What=現象・情報」はそのままにせず、仮説検証と分析をして事実にまで掘り下げる。そして、「なぜ?」「ほんとう?」「それから?」というキーワードで、「Why=理由・本質」を見つけ出す。そのステップを経て、本質をつかんだり、問題を解決することができるのです。
1-4 考える力を高める4 「ひらめき」の扉-情報を関連づける
「関連づけ」は「Why=理由・本質」をつかむ基本テクニックのひとつです。「Why=理由・本質」を見つけ出す過程で、ほかのファイルと開かれると「ひらめき」が出てくるのです。
1-4-1 対極的な視点を組み合わせる
「マクロ」と「ミクロ」、内的要因と外的要因といった対極にある視点を組み合わせて考えることにより、「ひらめき」が生まれます。
会社を経営していたら、自社や業界の数字を把握するだけでなく、日本や世界の経済状況も組み合わせて考慮し、戦略を立てるといったことです。
ファイルの対極性や分野が違うほど、「ひらめき」は大きなものとなります。
1-4-2 立体的に物事を考える方法
普段から情報収集に励んでいると、なにげなくファイルに入っていた情報が思いがけない別の事実と関連づけられることで、新たな「What」が生み出されて、「Why」につながることもあります。
最初はひとつのファイル、つまり「点」の情報でもかまいません。毎日、欠かさず新聞を読む、必ずニュースを見るといったことで、新しい情報をファイルに入れるという作業を繰り返すことにより、いろいろなファイルを関連づけることができようになっていきます。
「点」でしかなかった情報が関連づけられて「線」となり、さらに関連付けられて「面」となって、立体的に物事を考える力が身につくのです。
1-4-3 最初は関連づけを意識する
最初は、意識していろいろなファイルを開くようにしましょう。その結果、ファイルの中身が充実してくると、関連づけられるファイルが自然と開くようになります。
「ひらめき」を得るためには、「関連することを知ろう」という意識が大事です。
意識せずにできるよう、「関連することを知ろう」とする習慣をつけるためには、普段から良質の正確な情報をインプットすること、言わば「思考をとめないこと」が必要なのです。
2 ビジネスに求められる論理的に考える力
ここからは、4つの扉というステップで得た思考力を活用する具体例を解説します。ビジネスにおいて論理的思考は、コミュケーションの基礎を支えて仕事を活性化させる大きな力となります。
2-1 上司を満足させる考える力
上司への報告は、「客観的な事実を正確かつ簡潔に」が基本です。会社の仕事は上司の「指示、命令」に始まり、上司への「報告」で終わると言ってもいいでしょう。
2-1-1 まず結論をひと言で述べる
上司の質問に対する答えや、上司への報告は、まずひと言で結論を述べて相手を満足させることが大切です。
上司の知りたいことを満たしてから詳細を整理して述べましょう。整理整頓された情報は相手の頭の中にも整理整頓された形でファイリングされます。
2-2-2 事実と意見を分けて説明する
報告は、「事実 → 意見 → 根拠」という論理展開で行います。言い換えれば「検証 → 分析 → 関連づけ」です。
事実と意見がごちゃ混ぜになった報告をすると、上司はあなたの意見を事実と勘違いしてしまう可能性があります。そうなれば、上司に誤った行動をとらせてしまうことにもなります。事実と意見をはっきり分けることで、上司は正しい判断ができるのです。
2-2 相手を納得させる考える力
いくら優れた意見や企画でも、相手が内容を理解できなければ意味がありません。
ここでも重要なのは、最初に話のテーマを簡潔に述べることです。まず、何についての話なのか知ることによって、相手は話を聞く準備ができます。
2-2-1 具体的な根拠を示す
数値データや、効用などの具体的な根拠を示すことによって、説得力は格段にアップします。
数値を示して検証し、分析して関連づけるのです。
数値化(具体化)、比較(対比)、根拠(関連づけ)というテクニックをフル活用しましょう。
2-2-2 問題点と解決策を対応させる
報告書や提案書は問題点と解決策の断層を揃えて、読み手が理解しやすいようにしましょう。
1-1. 〇〇〇〇
1-1-1. ××××
1-1-2. △△△△
2. 解決策
2-1. 〇〇〇〇について
2-1-1. ××××について
2-1-2. △△△△について
2-3 上司に求められる考える力
上司の立場では、部下に、読み手が理解しやすく、目的に合った文書を作成させなければいけません。文書作成能力が高い部下ばかりではありませんから、指示のしかたにも論理的思考が求められます。
2-3-1 部下にとってのメリットを示す
部下にとってのメリットを示して、「やる気」を起こさせます。
会社員であれば上司の指示に従って仕事をするのは当然のことですが、自分にメリットがあるとやる気がアップして、高い成果を生み、さらに次の仕事にも好影響を与えます。
「この資料作りは、〇〇さんの著書を読むことになるから、君にとって大きなプラスになるよ」
部下が頭の中で有利な関連づけができるようにしてやるのです。
2-3-2 図を示して論理展開を教える
文書を書く前に相関図やフローチャートを示して、何をどの順番で説明するのか指示します。図やフローチャートといった情報から文書を関連づけるのです。
いったん文書になってしまうと、論理展開の問題点を見つけるに時間がかかります。設計図を作ってから文書にしたほうが、狙い通りの論理展開ができるのです。
図を作るときは部下と相談しながら進めると、論理的思考を育てることができます。
2-4 わかりやすく説明するための考える力
顧客や取引先に手順や方法を伝えるときには、相手に正しく理解してもらい、かつ満足してもらう説明テクニックが求められます。基本は、相手が必要としていることをわかりやすく説明することです。
2-4-1 まず全体像を示す
説明の最初で、「これから何を説明するのか」「なぜ説明するのか」といった全体像を述べて、相手に的確な「期待や予測」をもってもらいます。
人間は、これからどんな展開になるかわからなかったり、なにをどこまで理解すれがよいのかが明確でなかったりすると、不安に陥るものです。
心の準備をさせると同時に、安心してもらうのです。
2-4-2 相手に合った情報を提示する
相手と目的に合わせて、話の内容を決めましょう。
ビジネスコミュニケーションには、どんな場合にも相手と目的が存在します。話をする場合も文書を書く場合も、常に相手と目的を念頭に置くことが重要です。
相手に関係のないこと、興味ないことをいくら力説しても、目的を達成することはできません。的確な情報をアウトプットするためには、普段からインプットを充実させて立体的な思考力を身につけることが大事です。
あとがき
「ひらめき」を生む論理的思考力は、よい仕事につながるものです。
そこで重要なのは、普段から小さなインプットを積み重ねること。「学問に王道なし」と言われますが、日々の積み重ねがものを言うのです。
よい仕事は新たな思考を生んで、さらに考える力が高まることになるでしょう。思考を止めずに「ひらめき」を生む思考力を高めてください。
【参考資料】
『本質をつかむ思考力』(中経出版・2012年)
『わかりやすく説明する技術』(実業之日本社・2005年)