何かをやろうと思ったとき、最初に必要になってくるのが目標設定です。
しかし、
「どうやって目標設定したらいいかわからない」
「どういう目標なら達成できるのかわからない」
と悩んでいる人は多いと思います。
確かに、
「目標設定したのに、結局行動できなかった…」
「目標達成できたけど、本来の目的からズレていて、がんばった意味がなかった」
など、適切な目標設定は難しいですよね。
このように悩み続けていると、「そもそも目標設定する必要なんてないのでは?」という気持ちも出てきてしまうかもしれません。
しかし、あなたの目的を叶えるためには、目標設定を行うことが必要です。
ですから、この記事では、本当にあなたが達成したいと思えて、且つ達成可能性が上がる目標設定の方法をお伝えしていきます。
【目次】
1.目標設定するために必要な2つの視点
2.正しい目標設定の仕方
2−1 抽象的な目標設定から行う2つの理由
2−2 具体的な目標設定への落とし込み
3.正しい目標達成の例
3−1 抽象的な目標の例
3−2 具体的な目標の作成シミュレーション17ステップ
3−3 とにかくやればいいだけという状態にする
3−4 できない理由ではなくできる方法を探す
3−5 目標設定が難しいときにチェックする3つのポイント
3−6 新規事業のついて
4.更に上のレベルに行くための目標設定
4−1 理想が先、方法論は後
4−2 やるか、やらないか
4−3 PDCAサイクルによる微調整
5.期限の設定
5−1 期限を区切る基準
5−2 途中でヤル気がなくなってしまう理由
5−3 外部環境変化を考慮する
1.目標設定するために必要な2つの視点
目標設定には、2つの視点が必要になります。それは、
①抽象的な目標設定
②具体的な目標設定
の2つです。
これらの片方だけが良い方法というわけではなく、本当に良い目標設定をするためには、2つの考え方を両立させることが必要です。一見真逆の方法のように思えますが、しっかりと繋がっているのです。
2.正しい目標設定の仕方
正しい目標設定の仕方は、「抽象的な目標設定」を行ってから、「具体的な目標設定」という順序で行うことです。
2−1 抽象的な目標設定から行う2つの理由
抽象的な目標設定を先に行う理由は2つあります。
① 本当に成し遂げたい目標にするため
1つ目の理由は、本当に成し遂げたいことを目標として設定するためです。たとえ、目標を達成できたとしても、そもそもその目標が心から成し遂げたいことでなければ、それを目標として掲げることは本末転倒です。
② 高いレベルに到達できる目標にするため
2つ目の理由は、高いレベルに到達できるようにするためです。具体的な目標設定を先に行うと、現状から見て妥当な目標設定をしてしまいます。
しかし、現状から考えてできそうなことを目標にしてそれを達成するより、本当に成し遂げたいことを目標にすることの方が大切です。
現状に囚われず、できるだけ大きな目標設定をしてください。とても達成できそうにないと怖い気持ちが出るくらいで調度良いです。それを達成するための方法は、後から見つかるものです。
2−2 具体的な目標設定への落とし込み
抽象的な目標設定ができたら、それをどんどん具体的な目標設定へと落としこんでいきます。抽象的な目標から、アクションプランレベルまで抽象度を落としていきます。
1つの抽象的な目標を頂点として、いくつもの具体的な目標群が生まれることになります。ウィンドウズのフォルダ分けのような階層構造をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
① 抽象度とは
抽象度とは、抽象的なほど高く、具体的なほど低い一つの評価軸です。
② 抽象度の開きを大きくする
抽象的な目標はより抽象度を高く、具体的な目標はより抽象度が低くなるように設定しましょう。この抽象度の落差が大きいほど、実現可能性を高く維持しながら大きな目標を持つことができます。
3.正しい目標設定の例
3−1 抽象的な目標の例
まずは抽象的な目標を設定していきます。「目標は具体的に設定しろ」と言われたことがあるかもしれませんが、まだこの段階では具体的にする必要はありません。むしろ、思いっきり抽象的な方が望ましいです。
① サイバーエージェントの例
例えば、サイバーエージェント藤田晋社長が最初に打ち立てた目標は、「21世紀を代表する会社を創る」でした。とても抽象的な目標ですよね。今ではサイバーエージェントのビジョンの一部になっているこの言葉ですが、最初はここからスタートしたのです。
これくらい抽象的で大きな目標を立ててみてください。実際にそれを達成できるイメージが全く湧かなくても構いません。そのイメージさえできない壮大さとあなたの現在の能力の差が、発展可能性そのものなのです。
② A社営業部長の例でシミュレーション
サイバーエージェント創業者の例だと、自分自身に当てはめて考えにくいので、A社営業部長の例でシミュレーションしながら、正しい目標設定ができるようになっていきましょう。
③ A社の状況設定
現在、年商10億円、営業利益1億円の企業の営業部長だとします。
④ A社営業部長の抽象目標
この営業部長は「社員全員が豊かなライフスタイルを送れること」という抽象的な目標設定をしました。
ここから抽象的な目標をどんどん具体的に落としこんでいきます。営業部長は、抽象的な目標を達成するためには、会社に大きな利益を残す必要があると考えました。そこで次に、「来期年商100億円、営業利益20億円」という目標を立てました。
売上は10倍、利益は20倍ですので、一般的に考えると業界的なバブルでも起こらない限り非現実的な数字です。しかし、大きな目標を立てるときには、現状から考えてはいけません。理想から考え始めるのです。
また、この時点では期限を区切らずに考えてみます。いきなり「来年までに〜」というような期限を設けると、それが思考のストッパーになってしまうからです。
※「社員全員が豊かなライフスタイルを送ることができる給料を支払えるだけの利益」の算出ロジックは省略します。今回の記事で紹介する考え方をマスターできれば、この部分も同じ考え方で正しい目標設定ができるようになります。
3−2 具体的な目標の作成シミュレーション17ステップ
抽象的な目標を因数分解するようにして、具体的な目標へと落としこんでいきます。アクションプランレベルの抽象度になるまで因数分解し続けます。
① 売上を因数分解
A社営業部長の例を使い、今回は便宜上、売上のみを因数分解していきます。
既存事業のみでいきなり売上を10倍にするのは非現実的ですので、新規事業を開発する必要があります。
年商100億円=既存事業売上+新規事業売上
② 売上比率
次に割合を考え、
既存事業売上:新規事業売上=20:80
とします。
この割合の根拠が気になるかもしれませんが、感覚的なものです。仮でもいいので、どんどんと数字を当てはめていきます。
目標ができた後、実際にアクションしていく過程で検証を繰り返し、数値は微調整していけばいいのです。
営業部部員が全体で10名だとすると、の割り振りは
既存事業担当:新規事業担当=8名:2名
とします。
③ 既存事業の売上目標
既存事業では売上20億円が必要です。すると、一人あたり売上は2億5000万円となります。ここでは便宜上8名全員が同じ能力だと過程して、均等に割り振りましたが、個別能力が異なる場合がほとんどだと思うので、ケースによって傾斜をかけてください。
④ 既存事業の月次売上目標
次に、これを12ヶ月で割ります。すると、一月当たりの個人売上目標は2084万円となります。
千の位以上は切り上げています。目標を分割するときの端数は、基本的に切り上げで考えましょう。どんなプランを立てても不足の事態は発生するので、誤差は多めに見積もっておくのです。
また、季節変動要因などを考慮する必要がありますが、便宜上均等割を行いました。
⑤ アクションプランまで因数分解する
ここまでの因数分解はやっている人や会社が多いと思います。しかし、アクションプランとして機能させるためには、その目標を読むだけでどんな行動を取ればいいか分かるレベルまで因数分解する必要があります。ここが正しい目標設定をするためのポイントです。
⑥ 既存事業の日次売上目標
次は、2084万円を営業日数で割ります。20営業日だとすると、1営業日当たり105万円の売上が目標になります。
通販でもない限りは、1時間が当たり売上などとこれ以上細かくすることに意味はないので、ここで因数分解を一度止めます。
⑦ 因数分解を止める基準
どこまで因数分解するかという基準は、「これ以上細かくしたら行動が明確になるか?」です。細かくする意味は日々の行動を明確にするためなのです。
⑧ 売上を因数分解
次に、売上という概念自体を因数分解します
売上=客数×客単価
客数=既存客+新規客—流出客
客単価=購入頻度×購入点数×購入単価
これを繋げると、
売上=(既存客+新規客−流出客)×購入頻度×購入点数×一点当たり単価
となります。
⑨ 営業マンが行う5つの施策
ですので、営業マンは
1_既存客の流出を防ぐ
2_新規客を増やす
3_購入頻度を上げる
4_購入点数を増やす
5_購入単価を上げる
という5つの施策を行うことによって売上を上げることにします。
そして、この5つの施策を行動レベルまで因数分解します。
1_既存客の流出を防ぐ
・訪問頻度
・成約率
2_新規客を増やす
・訪問頻度
・成約率
3_購入頻度を上げる
・フォローメールシステムの導入
4_購入点数を増やす
・セット販売プランの増加
5_購入単価を上げる
・プレミアムバージョンの検討
ここであげたのは、5つの施策のもとになるプランの例です。あくまで例なので、あなた自身のビジネスに当てはめて具体的に考えてみてください。
⑩ 重点目標を決める
定量的な目標を設定しやすい
1_既存客の流出を防ぐ
2_新規客を増やす
について考えてみます。
1_既存客の流出を防ぐ:80%
2_新規客を増やす:20%
と設定します。
⑪ 1_既存客の流出を防ぐ
既存客に対しては「予材管理」という考え方を用いて、やるべき行動を数値化して目標設定してきます。
⑫ 予材管理とは
「予材」とは予定している材料のことです。「予材」は、「見込み」「仕掛り」「白地」の3種類で構成されています。この「予材」を目標予算の2倍見積もることで管理していく手法が、「予材管理」です。
「見込み」……ほぼ受注が確定しているもの
「仕掛り」……受注へ向けて具体的な商談が進んでいるもの
「白地」……「予材」−「見込み」−「仕掛り」
となります。
「見込み」と「仕掛り」を仮置きして、数値に落としこむと、
「予材」={2084万円×80%}×2=3334万円
「見込み」=1000万円
「仕掛り」=2668万円
「白地」=3334万円−1000万円−2668万円=334万円
となります。
⑬ 白地の重要性
「見込み」と「仕掛り」については具体的な案件化しているので、日々のタスクベースに落とすことは簡単だと思います。営業マンのポテンシャルが左右するのは「白地」の部分に対するアクションです。
正しい目標設定をすれば、「白地」部分の目標を達成するための行動が明確になり、営業成果の最低ラインが担保できます。そのために、この「白地」部分を全営業マンが悩まず行動できるレベルまで落とし込みます。
⑭ 白地の算出
平均購入単価が30万円だとすると、12名分の白地を案件化させる必要があります。5回訪問すると1回案件化するとしたら、60回の「白地」訪問が必要ということになります。これを1営業日当たりで割ると、1営業日当たり既存客に対する「白地」訪問は3件必要ということになります。
1日3件訪問という目標を設定すると、ネタがないのでそんなに訪問できないという営業マンがいるかもしれません。しかし、一度目標として設定したら、ネタがなくてもとにかく訪問してください。ネタがあるから訪問するのではなく、訪問するからネタができるのです。
⑮ 2_新規客を増やす
月間売上目標2084万円を上げるために、2割を新規客で獲得する必要があるので、新規客からの売上目標は417万円になります。
⑯ 新規客獲得目標数の算出
平均購入単価を30万円だとすると、
417万円÷30万円≒14名
となるので、14名の新規客を獲得する必要があります。
⑰ 架電目標数の算出
営業マンのアポ1件当たりの平均成約率を30%とすると、47件のアポを取得する必要があります。新規客へのアポをテレアポで取るとすると、50架電に対して1件のアポを取得する必要があるとすると、2350回の架電が必要になります。よって、1営業日当たり118回の架電が目標ということになります。
3−3 とにかくやればいいだけという状態にする
この1日当たり架電回数118回という目標こそがアクションレベルの目標設定になります。これは単純に新規客に対して電話を架けるだけなので、外部要因に関係なく、営業マンがとにかくやればいいだけです。
※分かりやすいのでテレアポという手段を例示しましたが、セミナー集客など、新規客と初回接点を持つための施策はいくらでもあるので、あなたのビジネスに適したもので考えてみましょう。
3−4 できない理由ではなくできる方法を探す
一度目標設定したら、とにかく目標設定した行動を実施することが必要です。すぐに効果が出ないことがほとんどですので、そういう意識で腐らず行動してください。
訪問先で何を話していいかわからないという悩みや、仕掛り案件が発注までいたらないという悩みは、成約率という別の問題になるので、また別途目標設定する必要があります。
3−5 目標設定が難しいときにチェックする3つのポイント
また、物理的に目標設定された数の行動をするのが無理な場合は、以下の3つをチェックし、実施してください。
①既存作業でムダなものを削除する
②社内に任せる、外注する
③短くする、省略するタスクを決める
上記3点を整理するための優先順位は、抽象的な目標に対するインパクトで決めていきます。
3−6 新規事業について
また、新規事業80億円部分に関しては、思考の自由度が広いので、割愛します。しかし、一度理想を掲げた後に、数値化してアクションプランまで落としていく方法は同じです。
※これまで出てきた数値を表にまとめました。整理して見てください。
4.更に上のレベルに行くための目標設定
4−1 理想が先、方法論は後
現状から抜け出し、理想へ近づくためにするのが目標設定です。それなのに、現状から考えて目標を設定しては本末転倒です。
目標設定の流れのポイントは、最初の大きな目標をつくるときに、理想から考えていくことです。思考のフレームを外して、大きく考えてください。理想が先、方法論は後なのです。
4−2 やるか、やらないか
そうすることで、理想へと近づく成長可能性を持ちながら、実現可能性も担保できます。実現可能性を担保できる理由は、外部環境に左右されない個人の行動レベルまで落とし込んだものを目標とするからです。ここまで落とし込めば、後は「やるか、やらないか」の世界になってきます。
正しい目標設定方法は以上ですが、その目標を確実に達成していくためには、マインド・スキルなどの数値化しにくい定性面が大きく影響します。
4−3 PDCAサイクルによる微調整
そのため、一度目標設定できたとしても安心せずに、毎日PDCAサイクルをチェックして、数値の微調整や定性的なメンテナンスを行う必要があります。こまめにPDCAチェックするために、目標数値を1日当たりまで因数分解しているので、できる限り毎日チェックするようにしましょう。
5.期限の設定
5−1 期限を区切る基準
ここまで具体的に落とし込めたら、ようやく最後に期限を区切ります。アクションプランとして出てきた数値を実現可能だとコミットできる期限を設定してください。
「ここまでならできそう」という気持ちではなく、「この日までには理想状態になっていたい」と強く思える期限を区切るようにしましょう。ここまでにやらなければならないという強い動機こそが、目標を達成していくための強いエネルギーになります。
5−2 途中でヤル気がなくなってしまう理由
「ここまでならできそう」という気持ちで設定すると、期日が迫るに従って、「やらされている」という義務感が大きくなってくるので、目標達成のためのエネルギーが減少してしまいます。
5−3 外部環境変化を考慮する
とはいうものの、5年以上で設定してしまうと、あまりにも目標設定時と外部環境が変わってしまうので、不確定要素が大きくなりすぎてしまいます。不確定要素が大きすぎると、もちろん実現可能性も低下します。
「このときまでには理想状態になっていたい」けど、「できるかどうか怪しい」くらいの期限がちょうどよいと思います。現時点でできるかどうか怪しくても、思考のリミッターを外した期限で目標を設定することにより、目標達成に向かって動き出した後に、新しい方法論が見つかり、予定より早く目標達成できそうな状態になるということは多々あるからです。
まとめ
目標設定のポイントは以下の2つです。
①理想が先、方法論は後
②抽象的な目標から具体的な目標へとアクションレベルまで落としこむ
この2つのポイントを意識しながら、理想をアクションプランへと因数分解する癖をつけていってください。そうすれば、しっかりと目標達成し続け、本当にやりたいことをやれている状態になっているはずです。