簡単に企画書を書ける方法があったら身につけたいと思いませんか?
「誰かになにかを提案する」という行為は、ビジネス活動の基本といってもいいでしょう。今や、「言われたことだけをやっている」だけの人間は、ビジネスマンとして失格とされてしまいます。
企業が必要としているのは提案力のある人材なのです。
提案内容を具体的に表すものが企画書。提案したいことがあっても、それをわかりやすくまとめることができなければ、相手には伝わりません。
ここでは、企画書を作るのが初めてという人も、社会人1年目の新人でもできる、わかりやすい企画書の書き方を解説します。15のステップで、企画書作成の基本的なスキルを身につけてください。
企画書の基本
今や、業種や職種を問わず提案力、企画力が求められています。
モノがあふれているこの時代、モノの良さだけでは売れません。企業が商品に付加価値をつけて差別化を図るためには、新しい価値観を生み出す企画力が不可欠となったのです。
正規雇用と非正規雇用、正社員とアルバイト、こういった二極化には、企画して行動を起こし、新しい価値観を作り出すことができる人間と、あまり人を選ばない作業的な仕事をする人間、という分化に要因があることは事実。
ビジネスマンとして生き残るための企画力を形にするのが、企画書の役目なのです。
企画書と提案書の違い
「企画書」は、ビジネスプランを提案し、その実施に同意してもらうための文書です。ビジネスプランとは、問題解決を図ること、または企業活動のプラスになること。
企画書には実施計画や収支計画といった予算も盛り込まれており、具体的な実施案が示されています。
一方の一般的な「提案書」とは、企画書ほど厳密ではありませんが、現状の問題点とその改善策となるアイデアなどが示された文書です。厳密な分類はなく、企画書のタイトルを「○○○○についてのご提案」とすることもよくあります。
通る企画書とは?
通る企画書とは、次のようなものです。
●最初のページの冒頭部分を読んで、読み進めたくなる
●思わず引き込まれて最後まで読んでしまう
そして
企画書の目的は行動を起こしてもらい、そのビジネスプランを実現させることにあります。
ひとつの企画書にはひとつの目的
ひとつの企画書に盛り込むビジネスプランはひとつに絞ったほうが、相手は行動しやすくなります。メリットを強調したいがために、あれもこれもと多くを並べたのでは、焦点がぼやけてしまいます。
「言いたいのはこれ!」
「提案したいのは、この1点です!」
1企画書には1プラン。これが原則です。
基本構成は「序」「破」「急」
企画書は「起承転結」ではなく、「序破急」の3構成を心がけます。一般の文書は「起承転結」の4部構成が必要とされますが、スピードを求められるこの時代の企画書には展開が長くなってしまいます。
「序破急」は、日本の伝統芸能である「能楽」の基本理念です。行動を起こさせることが目的の企画書は、この3構成で書くとメリハリがあって説得力につながります。
読み手に興味をもたせる「表紙」、「はじめに」「キャッチコピー」など
企画の内容を展開する「背景」「目的」「コンセプト」「実施案」など
企画を読んで行動してもらうための「要件」「スケジュール」「予算」など
1枚か複数枚か?
企画書は、用途によってA4の紙1枚と複数枚の構成を使い分けましょう。
A4の紙1枚にまとめたものが最高の企画書だと、よくいわれます。たしかに、社内文書で上司に何かを提案するような場合には、読みやすく要点が早く伝わる1枚企画書が効力を発揮します。
しかし、詳細なプランを提示するものや視覚的要素を多用するもの、社外向けの企画書などは、1枚にまとめようとすると、どうしても文字がぎっしり並んだ読みづらい企画書のなってしまいます。
表紙があって、数枚の内容で最後に「あとがき」があり、作成者の氏名と連絡先が表記されている。全体は綴じてカバーなどできれいに仕上げられている。このほうがイメージもいいですし、ページをめくるという記憶が残りやすい作業も付加します。
気持よくページをめくってもらえる企画書を作りましょう。
企画書の書き方15ステップ
ここらかは、企画書作成の具体的な手順を15のステップで解説します。初めて企画書を書くという人でも、手順とおりに進めていけば基本をおさえた企画書が作成可能です。
企画書の書き方ステップ1 スタイルを決める
企画書にはいくつかのスタイル(型)があります。まず、これから作ろうとする企画書は、どのスタイルが適しているのか決めなければいけません。
A4横サイズ
もっとも一般的なスタイルです。Wordで作成するときも、PowerPointで作成する場合でも基本となります。とくに指定がなければ、このスタイルで作成します。
A4縦サイズ
テキストメインの企画書や、1枚企画書でよく使われるスタイルです。コンテンツ業界では出版企画や番組企画といった企画書に用いられます。
A3横サイズ
「ワンシート」と呼ばれる1枚企画書に使用されるスタイルです。大手自動車メーカーなどでは、企画書をワンシートに統一している企業もあります。
B4横サイズ
A4サイズ企画書のビジュアル面を強化するために用いられたスタイルです。かつての広告業界はこのスタイルが多かったのですが、現在はA4サイズがビジネス標準となっているので、あまり使用されることはありません。
A4横サイズのスライド
PowerPointで作成したデータをスクリーンやパソコン画面上でプレゼンする場合の標準となるのがこのスタイルです。
ここではもっとも一般的なA4横サイズのスタイルを想定してステップを進めます。
企画書の書き方ステップ2 3大要素を理解する
企画書作成に不可欠な3大要素を理解して、常に意識しながら作成を進めましょう。
相手のメリット
企画を提案する相手は予算を投じて行動に踏み切るのですから、プランを実施すればこんなメリットがあるという提示が最大の説得材料です。
プラン実施にかかる予算
予算の明示がなければ決裁は下せません。プランの実施で得られる効果がわかったら、次はどれだけ投資すればいいのかということになります。
プラン実施にかかる期間
プラン実現に必要な期間や納期の時期を明示します。投資をしても、いつになったらメリットが得られるかわからない企画書では、説得力ゼロです。
以上の3項目が不可欠な要素となるのですが、逆に言えば、この3項目が明確になっていれば企画書の骨組みはできたも同然です。
企画書の書き方ステップ3 基本となるフォーマット
典型的な企画書の流れは、以下のようになります。
とくに重要なのは、「まえがき」「コンセプト」「スケジュール」「予算」の4項目です。相手のメリットを「コンセプト」で述べれば、3代要素と合致することがわかります。「要件」「想定仮題」などは必要に応じて挿入します。
それではひとつひとつの項目を解説していきましょう。
企画書の書き方ステップ4 「表紙とタイトル」の書き方
企画書の「顔」となる表紙は、次の項目を記載します。
(1) 先方の名前(クライアント)
(2) タイトル(提案内容)
(3) 提案期日
(4) 提案者の名前(所属名)
タイトルには相手の興味を引くサブキャッチをつけると「つかみ」の効果が上がります。表紙には、企画内容を明確に表して、読み手の興味を引くという需要な役目があるのです。
企画書の書き方ステップ5 「まえがき」の作り方
要点を先に述べてしまうのが企画書の鉄則です。
自分がこの企画にかける気持ちや思いのたけを自分の言葉で伝えましょう。ここは主観的な記述や、多少の感情的表現も許されるところで、個人的な体験などがよく用いられます。
具体的な個人的体験で「つかみ」を完全なものにして、本論に誘導するという意味において、三大要素に次ぐ重要な項目となります。
企画書の書き方ステップ6 「背景」の作り方
「背景」は、なぜこの企画を提案するのかという理由に説得力をもたせる項目です。
裏付けになるデータや資料を示して論理的な展開にもっていきます。「自分の思い込みではなく、実際にこのような傾向がみられます」という説明をするのです。
・消費者の動向や意識の移り変わり
といった内容が多く、引用するデータは信頼できる筋のものしか使用できません。
・信用できる民間企業の調査データ
・新聞やニュースなどのデータ
インターネット上の個人サイトやブログなでで得たデータは、十分な検証が必要となりますから、使うべきではありありません。
使用したデータの引用元は必ず明記します。
企画書の書き方ステップ7 「目的」の作り方
「目的」は、この企画が目指すところ、企画を実施して相手が得られるものを明示する項目です。事前のオリエンテーションやヒアリングに基づいて先方が望むものを示し、「この目的で間違いありませんね?」という確認をします。
「背景」 → 「目的」 → 「コンセプト」の流れは企画書の中核をなす部分です。
(2) 「目的」で「こういうことをお望みですよね?」と目的を確認する
(3) 「コンセプト」で「そのためにこのようなプランを提案します」という本題を述べる
この流れがスムースでインパクトがあれば企画は成功に近づきます。「背景」と「目的」は順序を入れ替えても問題ありません。
企画書の書き方ステップ8 「コンセプト」の作り方
「コンセプト」は、プランの提案をする企画書のメイン部分です。「プラン」や「企画内容」といった項目立てにする場合もあります。内容に不可欠な要素は、2点に集約されます。
・顧客がその商品やサービスを利用して喜ぶ姿が見えること
さらに、
を描けたら説得力は増大します。こうした「クライアントの成功ストーリー」を「6W2H」を意識しながら伝えるのです。
・誰が(Who)
・どこで(Where)
・何を(What)
・なぜ(Why)
・誰に向けて(Whom)
・どうようにして(How)
・いくらで(How Much)
必要の応じて図解やイラスト、写真なども挿入しましょう。
企画書の書き方ステップ9 「実施案」の作り方
「実施案」は、「それではどう進めるかを具体的に説明します」という項目です。ここからは「コンセプト」で述べたプランを具体的に展開していきます。「コンセプト」が総論であれば、ここからは各論にあたります。
「実施案」「要件」「組織図」などは、決定した予算やクライアントの要望に応じて変更が加えられることが多い項目です。あまり細かい部分に気をつかうよりも、3つのポイントを意識して手早く進めましょう。
「背景」「目的」「コンセプト」の流れを受け継いでいること
当然のことですが、ここまで述べてきた内容を反映していなければいけません。相反する要素はないか、不自然な表現などはないか、よく確認しましょう。
実現可能なプランであること
受注がほしいあまりに実現不可能なプランを提示するのは、絶対にしてはいけないことです。あくまでも実現可能な内容でなければ、企画として成立しません。
ある程度の変更や選択が可能な柔軟性をもたせること
どんなにいい企画でも、予算やスケジュールの都合で実施案に変更が入ることは、特別なことではありません。「このとおりでなければ企画が成り立ちません」というのではなく、多少の変更を見込んだ内容にし、オプションを設定するなど柔軟なプランにしたほうが、クライアントは賛同しやすいのです。
企画書の書き方ステップ10 「要件」の作り方
「要件」では、「実施案」で提示したプランをさらに具体的に述べていきます。具体的な戦略プランや、オプション案などは、ここで展開しましょう。必要がなければ省略してもいい項目です。
企画書の書き方ステップ11 「組織図・体制図」の作り方
「組織図・体制図」は、「このプランを実施するためには、こういう組織やフォーメーションが必要です」ということを示す項目です。
企画書は、相手のメリットを述べるのが重要なポイントであることを述べましたが、ここは提案者のメリットを盛り込む部分です。この企画を実施するためには自分(自社)が適任であることを組織図や体制図で示すのです。
組織図や体制図も後から変更して、より現実的、より効率的なものに落す項目ですから、あまり細かく設定せずに自分(自社)の位置を明確にしておくことがポイントです。
「弊社抜きでこの企画を実施するのは難しいですよね?」ということをわかってもらうのが目的です。
企画書の書き方ステップ12 「スケジュール」の作り方
必須項目のひとつである「スケジュール」には、「ラフスケジュール」と「詳細スケジュール」があります。
企画書の段階では、この点を明確にしたラフスケジュールを記載しましょう。ラフスケジュール表は、矢印や箱矢印を使用して視認性を重視します。
多少詳しいスケジュール表が必要なときは、線表を使用しましょう。
企画書の書き方ステップ13 「予算」の作り方
これも必須項目である「予算」は、企画書の実質的な「締め」となる項目です。予算の承認をもらうことが、企画書の最大の目標となります。
企画書内では、ひとめで予算額が把握できる大枠だけにして、詳細は別紙で見積書を作成しましょう。
予算を説明するときには、クロージングを意識した要素が必要です。クロージングとは契約の締結を意味し、企画書では受注の確定を指します。
クロージングを意識するテクニックとしては次のようなものがあります。
限定感を出す
いつまでに決定をもらえれば割引できる、初めてのお付き合いなので特別価格にする、金額内でのサービスを特別なものにする、といった特典でお得感を出します。もちろん自分の責任でできないことは、上司の確認が必要になります。
対外的に一般化したくないものは、文書として紙面に残さないケースもあります。その場合はあくまでも特別の措置という事情を説明して口頭で伝えます。
オプションを提示する
基本予算を低く抑え、いくつかのプランの組み合わせによって数とおりの予算額が選べるように設定します。
企画書の書き方ステップ14 「想定仮題」の作り方
「想定仮題」は、プランを実施するために解決しなければいけない問題など、仮題を正直に正確に述べる項目です。
マイナス要素や障壁が出てきますが、現実を見据えた説明は企画書の信頼性を高めます。
具体期には次のようなことがあります。
プランの実施にともなうリスク
天候など不可避の条件が影響する場合には、順延、代替え案などの対応策を示します。
法改正などの社会的条件の変更
事前にわかっている場合は問題ありませんが、予期せぬ法改正などが影響する場合にはオプションを設定して対処しましょう。
業者やキャラクターが手配できない
本来は契約解消や違約金という問題に発展する事柄ですが、不慮の事故や予期せぬ出来事が原因である場合を想定してオプションを設定しましょう。
企画書の書き方ステップ15 「あとがき」の作り方
「あとがき」「おわりに」は、プレゼンの機会を与えてくれたことへのお礼と、最善を尽くすという姿勢を簡潔な文章で述べて、次のような事務的要素を記載する項目です。
・提案者の所属組織
・共同で企画立案をした者がいればその紹介
こうした事務的要素が表記されていれば、項目としては省略してもかまわないところですが、最後に礼を尽くす姿勢はプラスに働くことはあっても、マイナス要素となることはありません。
まとめ
以上が基本的な企画書作成の流れです。初心者はもちろん、企画書作成の達人でもこの基本は変わりません。
あとは他人が書く企画書と、どう差別化が図れるかというテクニックを極めるのみです。そこに必要とされるのは、パソコンのスキルであり、プレゼンテーションのテクニックです。
この基本を身につけたら、次にはそうしたテクニックを学んでスキルアップを図りましょう。
【参考資料】
『最新企画書の作り方と見せ方がよ~くわかる本』(秀和システム・2011年)
『企画書・提案書の書き方がかんたんにわかる本』(日本能率協会・2009年)