「朝、スッキリ目覚めて1日のスタートをきりたい」誰もがのぞんでいることですよね。
朝、気持ちのよいスタートをきれると、イキイキとした1日を送ることができます。ところが、気持ちのよい早起きというものは、日頃から習慣になっていないと急にできるものではないのです。
気持ちのよい早起きは、快適な睡眠によってもたらされます。「ぐっすり眠ってスッキリ起きる」これこそが「よい睡眠」のあり方です。
ここでは、よい眠りを手に入れて、気持ちのよい早起きができるようになる方法(生活習慣)を「就寝前」「睡眠中」「起床時」「覚醒時(昼間)」の4シーンに分けて解説します。
目次
1 早起きする方法 | 就寝前編
早起きする方法1 ぬるめの入浴でクールダウンする
早起きする方法2 トリプトファンやメラトニンをとる
早起きする方法3 アルコールは3時間前までにする
早起きする方法4 強い光を見ないようにする
2 早起きする方法 | 睡眠編
早起きする方法5 寝室にはモノを置かない
早起きする方法6 カーテンは緑か黄色
早起きする方法7 自分に適した寝具を選ぶ
早起きする方法8 2周期の睡眠の質を上げる
3 早起きする方法 | 起床編
早起きする方法9 4周期か5周期のレム睡眠で起きる
早起きする方法10 自己覚醒を習慣化する
早起きする方法11 目覚ましライトを使う
早起きする方法12 朝食は必ずとる
4 早起きする方法 | 昼間編
早起きする方法13 決まった時間に食事をする
早起きする方法14 15分の仮眠をとる
早起きする方法15 運動は夜にする
早起きする方法16 夕食は軽くする
まとめ
1 早起きする方法 | 就寝前編
眠りを誘うホルモンであるメラトニンは、起床してから14~16時間後に分泌が始まります。つまり、朝6時に起きた人は、午後8時~10時くらいから身体が眠りの準備を始めるということです。
早起きを習慣化するためには、この時間帯の過ごし方がとても重要なのです。いかにして、メラトニンの分泌を妨げずに「よい眠り」に入るかがポイントになります。
早起きする方法1 ぬるめの入浴でクールダウンする
入浴時にはぬるめのお風呂に入って、深部体温(体の中心部の温度)を下げましょう。人間は深部体温が下がると眠気が強くなるからです。
お風呂で体温を下げるということに矛盾を感じる人も多いでしょう。しかし、血行をよくして(手足に流れる血流の量を増やして)皮膚体温を上げ、その結果、自動車のラジエーターのように身体の中から熱が外に逃げていけば、深部体温が自然と下がるのです。
つまり、皮膚体温と深部体温は、どちらかが上がればどちらかが下がり、どちらかが下がればどちらかが上がるという反比例の関係にあるといえるでしょう。
人間の体温は体内時計によって管理され、昼間は高くなって夜は低くなるリズムを刻んでいます。昼間はブドウ糖などを燃料とするエネルギーが生産されて活動を支えるので、体温が上がります。その熱が夜になっても残っていると、眠りにつくことができません。そこで、深部体温を下げる必要があるのです。
この、深部体温を下げるシステムを簡単に補強するのが、ぬるめのお風呂なのです。具体的には、就寝1時間前に20分間、38~40度のお湯につかるのが効果的です。熱いお風呂に入ると深部体温が上がってしまうので、気をつけましょう。
早起きする方法2 トリプトファンやメラトニンをとる
夕食には、トリプトファンやメラトニンを積極的に摂取しましょう。
睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となるのが、アミノ酸の一種であるトリプトファンです。トリプトファンは体内で生産されないので、食べ物や飲み物から摂取する必要があります。
トリプトファンはチーズなどの乳製品、肉類、魚類、豆類などに含まれていますが、寝る前に効果的なのは、ホットミルクです。
眠れないときにホットミルクを飲むと、精神を安定させるカルシウムも同時に摂取でき、身体は熱を手足から逃がそうとするので、深部体温を下げることができるのです。
青汁の原料として知られるケールや、アメリカンチェリーは、メラトニン自体を含んでいる食べ物として知られます。夕食後に青汁やアメリカンチェリーをとることで、安眠を得やすくなります。
早起きする方法3 アルコールは3時間前までにする
アルコールを飲むのは、就寝3時間前までにしましょう。アルコールには体温を下げる働きがあるので、飲んだ直後は眠くなりますが、すぐに目が覚めてしまいます。
アルコールは体内に入って3時間ほどすると、分解されて「アセトアルデヒド」という毒が生まれます。アセトアルデヒドは交感神経を刺激して体温や心拍数を上げるので、寝てもすぐに起きてしまうのです。
ですから、アルコールを飲んで眠くなってもすぐ眠らずに、3時間ほど待ってアルデヒドが分解を始めてから眠るようにすれば、交感神経が刺激されることはありません。
早起きする方法4 強い光を見ないようにする
夜9時以降は、蛍光灯やLEDの強い光を浴びないようにしましょう。
光は体内時計に影響を与えるばかりでなく、メラトニンの分泌を抑制してしまいます。とくに蛍光灯やLEDなどは注意が必要です。
夜9時を過ぎたら、部屋の灯りはオレンジ系などの優しい間接照明にします。また、天井の蛍光灯を消して、スタンドの光を壁にあてるだけでも効果があります。
部屋の照度を落すことも大切ですが、テレビやパソコンの液晶モニターもメラトニンの分泌を妨げてしまいます。しかし、現代人にとって夜9時以降にテレビもパソコンも使わず、スマートフォンでメールのチェックもしないというのは、現実的ではありません。
液晶モニターの照度をできるだけ落して脳への刺激を少なくし、せめて就寝1時間前からは見ないように心がけましょう。
2 早起きする方法 | 睡眠編
人間の睡眠は、ノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)が約90分でワンセットになり、数回繰り返します。
この周期は個人差がありますから、自分の睡眠リズムを把握しておくことが、快眠習慣の基本となります。
早起きする方法5 寝室にはモノを置かない
寝室は眠るだけのスペースにします。ベッドや布団は眠るためだけに使い、布団に入ったままテレビを見たり、読書をしたりすることはやめましょう。
「布団」=「睡眠」という条件反射をつくるのです。
それができれば、布団に入ると副交感神経が優位になり、心身ともにリラックスすることができるようになります。眠くなってから布団に入ることも大切です。眠くないのに眠ろうとしても、「布団」=「睡眠」という条件を壊してしまいます。
そこで眠れないときは、必ず布団を出て別の部屋へ行って読書やストレッチなど、頭を使わない単純作業をします。
寝室を眠るだけのスペースにするためには、余計なモノを置かないことです。
早起きする方法6 カーテンは緑か黄色
視覚で得る情報は、五感で得る情報の8割を占めるといわれています。そこで、寝室のカーテンや寝具は、色の効果を考えて決めましょう。寝室のカーテンや布団などの色には、落ち着いたり興奮したりする作用があるのです。
寝室にもっとも適した色は「緑」です。緑には、興奮を鎮めて副交感神経を優位にする効果があり、リラックスさせてくれます。イライラや不安な気持ちを切り替えることもできます。眠れないときに過ごすリビングルームなどには、緑の観葉植物を置きましょう。
「黄色」も適しています。黄色は思考力や判断力を高める色とされますが、メラトニンの分泌を促す効果があるので、寝室に取り入れると効果的です。
布団カバーや枕カバーは、季節に合わせて取りかえるのも効果的です。夏は、気持ちを静める効果があって体感温度を下げる「青」を取り入れるといいでしょう。
早起きする方法7 自分に適した寝具を選ぶ
寝具を選ぶことも、「よい眠り」には重要な要素です。
まず、マットレスや敷布団を見直しましょう。仰向けに寝たときに、立った姿勢と背骨のラインが同じになるような硬さが基本です。
柔らかくて身体が沈みすぎたり、硬くて肩や腰に身体の重さが集中したりすると、肩こりや腰痛の原因となり、安眠はできません。
マットレスは、天反発素材や高反発素材など、いろいろな製品が出ているので、自分が一番楽に眠れるものを選びましょう。
安眠の重要なアイテムである枕も、マットレスや敷布団と同じで、立っているときの頭部と首のラインを維持できるものが基本です。マットレスや敷布団とセットで考えなければいけません。
気持ちのよい高さには個人差がありますが、平均すると6~10センチ程度が快適だといわれています。枕も、いろいろな素材の製品がありますから、使ってみて自分に合わないと思ったら違うものに替えてみましょう。
早起きする方法8 2周期の睡眠の質を上げる
90分周期でレム睡眠とノンレム睡眠を交互に2回繰り返す、最初の3時間の睡眠の質を高いものにすると、快眠できます。
そこで、エアコンを積極的に使用しましょう。寝る1時間くらい前からONにして室温を調整し、就寝後3時間で切れるようにタイマーをセットします。
寝具の温度が体温より少し低い33度くらいだと、もっとも快眠できるといわれます。そうするために効果的な室温は、夏は27~29度、冬は15~18度くらいです。
湿度は40~60パーセントが快適とされるので、とくに乾燥する冬は加湿器も併用しましょう。
3 早起きする方法 | 起床編
1日のスタートを切る朝は、体内時計の遅れを調節するという、生きる上で重要なルーティンワークがあります。
人間の体内時計は脳内にあって、睡眠や体温といった生体リズムを制御していますが、実は地球の自転時間である約24時間よりも長いのです。
平均すると25時間程度といわれる体内時計の遅れを24時間に合わせるのが、朝の光です。朝日を浴びることによって、体内時計の遅れは毎日リセットされるのです。
早起きする方法9 4周期か5周期のレム睡眠で起きる
90分周期を4回繰り返した6時間後か、5回繰り返した7時間半後のレム睡眠で目覚めるようにしましょう。
熟睡しているノンレム睡眠中、脳は脈拍、血圧、体温を下げてエネルギーを脳に集中させます。なにをするかというと、脳を縮ませ、できたすき間に脳細胞の老廃物を輩出させて体外に出そうとするのです。この脳細胞の修復がしっかりできなければ、脳は順調に機能しません。
しかし、脈拍や血圧や体温を下げたままでは生命維持にかかわってきますので、レム睡眠でそれを戻して休憩を入れるのです。身体の機能が起きている状態に近くなっているので、このレム睡眠中に目覚めるとスッキリ起きることができるのです。
眠りに入って1周期目のレム睡眠は5分間程度ですが、2周期目には10分、3周期目には20分、4周期目には30分というように増えていきます。
快適な早起きができる睡眠時間には個人差があり、もっとも多いのは5周期の7時間半です。
早起きする方法10 自己覚醒を習慣化する
目覚ましを鳴らす前に自然に目が覚める「自然覚醒」を習慣化しましょう。
寝る直前に、自分が起きるイメージと起床時間を何度も頭に思い浮かべるのです。思ったとおりの時間に起きられたら、なにかいい事がある想像をするのも効果的です。口に出して自己暗示をかけてもいいでしょう。
ただし、「○時に起きなければいけない」と念じるのは強迫観念となって、予定よりも早く起きてしまうことがあるので、「私は○時に起きられる」と、プラス思考の暗示にします。
この自然覚醒が機能するのは、身体が自然に起きる時間です。2~3時間だけ眠ろうとする場合にはうまくいきません。
早起きする方法11 目覚ましライトを使う
「目覚ましライト」を常備して習慣化しましょう。
朝の光は、体内時計をリセットして、睡眠ホルモンのメラトニンを排除する効果があります。しかし、太陽光は天気によって変わります。
雨の日など暗くなりますから、「朝の光」に一定の効果を期待するのであれば、目覚ましライトを使用したほうが効果的です。
「光目覚まし」という名称で商品化されていますが、家にあるスタンドライトとタイマーを組み合わせて、起きたい時間の15~30分前に点灯するようにすればいいのです。
蛍光灯やLEDなどの昼白色のライトが高い覚醒効果をもっています。
早起きする方法12 朝食は必ずとる
朝食は必ずとって、脳のエネルギーであるブドウ糖を供給しましょう。
寝ている間にはコルチゾールというホルモンが分泌されて、脂肪やブドウ糖のかたまりである「グリコーゲン」をエネルギーに変換しています。このホルモンは、寝ている間も生命を維持するために必要なエネルギーで、起きると分泌量が減るので、まだその効果が残っているうちに次のエネルギーを補給しなければいけません。
そこで朝食をとってエネルギーを補給し、脳を活性化させると、スッキリ目覚められるのです。
コルチゾールは午前3時くらいから大量に分泌されて、次第に減っていきます。この周期と朝食によるエネルギー補給を考えると、午前5時半から午前8時半の間が起床のゴールデンタイムとなります。
また、朝食では、脳の覚醒を促すホルモン「セロトニン」の原料でもあるトリプトファンをとることも、スッキリ目覚める秘訣です。それには、トリプトファンを多く含む牛乳とバナナの組み合わせが効果的です。トリプトファンは昼飯でとっても効果があります。
4 早起きする方法 | 昼間編
ぐっすり眠ってスッキリ起きるためには、眠りとその前後だけでなく、覚醒している昼間の習慣も重要です。
適度な運動、バランスのよい食事、仮眠など、健全な心身の維持に必要とされることばかりですが、快眠と早起きという観点から考えると、いくつかのポイント見えてきます。
早起きする方法13 決まった時間に食事をする
毎日決まった時間に食事をする習慣をつけると、体内時計のリセットが容易になり、コルチゾールが正しく分泌されるようになります。
食事のリズムは、睡眠や体温のように体内時計に依存していません。一説には体内時計とは別に、脳内に「腹時計」のようなものがあって食事のリズムを管理し、体内時計に影響を与えているといわれます。
体内時計が毎朝しっかり24時間にリセットされると、コルチゾールだけでなく睡眠ホルモンのメラトニンや、覚醒を促すホルモンのセロトニンなど、多くのホルモンのバランスがよくなります。
早起きする方法14 15分の仮眠をとる
昼休みに15分の仮眠を習慣化しましょう。
人間には体内時計の大きな周期の中に、夜の睡眠と昼の覚醒という2つのリズムがあります。
一般的に昼の周期では、午後2時~4時くらいに眠気が訪れます。自然なリズムに従えば、スペインのシエスタなどのような午睡をとるのが理想的です。
しかし、日本で普通の生活を送っていたらそれは難しくなります。そこで、昼休みの昼食後にイスやソファーで15分間の仮眠をとるのです。
ここで軽い睡眠をとっておくと、午後の眠気を軽減できて体内時計のズレを抑制することができます。ただ、仮眠は長くても30分を超えてはいけません。それ以上眠ると、体内時計を狂わせることになります。
早起きする方法15 運動は夜にする
夕食後の午後8時から9時くらいに、散歩やウォーキングなどの軽い運動を習慣化しましょう。
午後7時~9時くらいは体温がピークを迎えて身体がもっとも活動的な状態になるので、寝てはいけない「睡眠禁止帯」と呼ばれます。
この睡眠禁止帯を過ぎると体温は下がり始めます。そこで、睡眠禁止帯に軽い運動をして体温を少し上げておくと、その後の体温下降がスムーズになるのです。
外に出られない日は室内でストレッチをしましょう。15分程度の運動でも十分効果があります。
早起きする方法16 夕食は軽くする
夕食は軽くして、睡眠中は消化機能も休ませてあげましょう。
満腹状態だと、寝ていても胃は消化活動で忙しくなるので、眠りは浅くなってしまいます。寝る前にたくさん食べることは、不眠の原因にもなるのです。
そこで、昼食を多めにして、夕食では炭水化物をとらないといった工夫をしましょう。
仕事が長引いて夕食が遅くなりそうな日は、夕食を分割します。午後6時頃に軽く食べ、遅い時間に帰宅したら、肉や脂肪など消化に時間がかかるものを食べないようにしましょう。
まとめ
ぐっすり眠るためにリラックスする方法は、ここで挙げたもの以外にも、アロマテラピーやツボ刺激、音楽鑑賞、ストレッチ、シャワーなど、いろいろなものがあります。
自分に合ったものを組み合わせて、気持ちのよい早起きができる習慣をつくってください。
長い睡眠時間をとっているのに、熟睡感がなくてスッキリ起きられないという人は、思い切って睡眠時間を短縮してみましょう。たとえば、今までよりもワンセット減らして7時間半を6時間にしてみるのです。
最初は起きるのがつらいでしょうし、睡眠不足を感じるかもしれませんが、脳は次第にその睡眠リズムに身体を合わせようとしますから、少しすると快適に起きることができるようになるかもしれません。
【参考資料】
『毎日ぐっすり眠れる5つの習慣』(三笠書房・2013年)
『朝5時半起きの習慣で人生はうまくいく!』(フォレスト出版・2010年)