どうしたら人と上手く話せるのか、楽しい会話ができるのかがわかれば、コミュニケーションが楽になりますよね?
とくに初対面の人や、あまりよく知らない人と話さなければいけないときは、悩んでしまうものです。
人と上手く話すことができないと、コミュニケーションが苦手だというコンプレックスを抱えてしまい、人間関係で悩んでしまうのです。
しかし、世の中は話が上手い人ばかりではありません。
むしろ、上手く話せないという悩みを抱えている人が思っているほど、ほかの人たちも話すことが上手いわけではないのです。
コミュニケーションのとり方が上手い、周りから好かれているという人たちをよく観察してみると、自分が話す時間は短い人が多いのです。
人の話を聞くのが上手い「聞き上手」が多いことに気づくはずです。
そして、聞き上手に欠かせないのが、「相づち」なのです。
ここでは、コミュニケーションが苦手な人でもできる裏ワザとして、相づちを使い分けて聞き上手になるコツを紹介します。
目次
① 第2のあいさつ
② 天気の話
③ 感謝の言葉
④ イメージコントロール
2. 基本的な相づちのコツ
⑤ 「さすが!」
⑥ 「知らなかった」
⑦ 「すごい!」
⑧ 「絶対!」
⑨ 「そのとおり」
⑩ 「それで?」
3. 人間関係を深める相づちのコツ
⑪ 「ありがたい!」
⑫ 「いいですね」
⑬ 「うんうん」
⑭ 「運が悪い」
⑮ 「いえいえ」
4. 共感を呼ぶ相づちのコツ
⑯ 「寂しいですね」
⑰ 「やりましたね!」
1. 声をかけるコツ
コミュニケーションの基本は、「声をかける」「意思の疎通」「気持ちよく別れる」という3つのステップです。
いくら聞き上手の人でも、会話をしようと思ったら、相手に声をかけなければコミュニケーションの扉は開きません。
コミュニケーションが苦手だと感じている人は、「自分から誰かに声をかけるのは勇気がいること」と思っているはずです。
ここでは「話し上手」になろうとしているわけではありませんから、難しく考える必要はありません。
相手と話せるための、きっかけがつくれればいいのです。
すれ違いざまに、相手の顔を見てニコッとほほえむだけでも、「ウェルカム」だという姿勢を表すことができます。
相手に話をさせるきっかけづくりの、簡単な方法をいくつか紹介しましょう。
① 第2のあいさつ
声をかけるときに、もっともシンプルで、誰もが普通にやっているのが「あいさつ」です。
しかし、「こんにちは」「おはようございます」といったあいさつには、あいさつを返すのが礼儀ですから、それだけではあいさつのやりとりで終わってしまいます。
雑談なり、何かのテーマをもった会話をしようと思ったり、あいさつより少し深いコミュニケーションをとろうと思ったりしたら、儀礼的なあいさつに続けて「第2のあいさつ」を入れてみましょう。
「こんにちは。クルマを新しくされたそうですね」
「おはようございます。昨日のゴルフはどうでした?」
第2のあいさつは、相手の関心ごとに触れて、話すことで相手に気持ちよくなってもらうことが目的です。
② 天気の話
コミュニケーションの入り口として、自分と相手の共有している話題を出すことは有効ですが、もっとも簡単で、どんな人とでも必ず共有している話題が「天気の話」です。
数秒程度の雑談であれば、天気の話だけでもってしまいます。
天気の話を切り出すときは、天候だけでなく、季節の移ろいなどの追加情報と、仕事や衣食住といった関連情報を考えておくのがポイントです。
「今日は気持ちいい天気ですね!」
「いい天気ですね」
そこから、「どうも今年の夏は暑さが続くらしいですよ」と季節の話題に広げます。
そしてさらに、「夏用のスーツは、やっぱり〇〇がいいですか?」とか、「生ビールが美味いってことですね」と、相手の関心がありそうな話に展開するのです。
③ 感謝の言葉
感謝の気持ちを伝えなければいけない相手に対しては、「ありがとうございました」「お世話になりました」など、ストレートな感謝の言葉から切り出すのがセオリーです。
しかし、決まり文句だけではなくて、もっと深く感謝の気持ちを伝えたいと思うこともあるでしょう。
そういう場合は、お礼の言葉に続けて「どのように助かったのか」という報告をし、「あんなすごいもの、どうやって見つけたんですか?」というように、質問をして相手に話させると、相手の満足感が高まります。
④ イメージコントロール
コミュニケーションのきっかけとして大事なのが、言葉以前の容姿や雰囲気といったイメージです。
とくに、初対面の相手に対しては、第一印象が大切です。
第一印象がいいというだけで、相手はあなたの言葉を安心して受け入れてくれる準備ができます。
知り合いの相手に対しては、第一印象でつくられたイメージが、服装や表情の変化によって、毎日新しく生まれ変わっていくものです。
人が変わったかのように、いきなりイメージを変えるのは、いわゆる「イメチェン」が必要となったときだけに限定すべきですが、その日によって、「明るく見せたい」「大人っぽく見せたい」「知性をにおわせたい」といった、イメージコントロールは有効です。
話すのが苦手だったら、相手が気持ちよく話せる態度やイメージを大事にしましょう。
2. 基本的な相づちのコツ
聞き上手に不可欠な要素である「相づち」の基本は、「さしすせそ」です。
「さすが!」「知らなかった」「すごい!」「絶対!」「そのとおり」「それで?」
これらの相づちは単体で使う機会も多いはずですが、組み合わせる裏ワザを身につけると、相手から好意をもたれる確率がグッと高まります。
中でも「さすそ」の相づちは基本中の基本で、たとえば、「そのとおり」と同意して「それで?」と先を促し、相手の話が終わったところで「すごい!」と称賛するのです。
さらに「さすが!」で閉めると、称賛がグレードアップします。
⑤ 「さすが!」
「さすが」は、相手をもっとも高く評価する相づちです。
目の前の成果だけでなく、その人の性格や才能までほめることになるので、言われた相手は、自分が高く評価されたことに満足します。
人は誰でも自尊心が満たされることを望んでおり、そのために努力や苦労をしています。
その結果、成果をあげたとしても自尊心は十分満たされず、他人から高く評価されて賞賛を受けることによって、はじめて満たされるのです。
「すごい!」に続けて「さすが!」の相づちを自然に入れられるよう、意識してトレーニングしましょう。
この裏ワザが自然に使えるようになると、その効果に驚くはずです。
⑥ 「知らなかった」
「知らなかった」は、相手に優越感を与える相づちです。
通常は、「へえー、知らなかった」「本当! 知らなかった」というように、驚きのリアクションと同時に発せられる相づちです。
単なる驚きではなくて、「知らなかった」が入ることにより、相手が情報通であることを評価し、その人のインテリジェンスをほめることになるので、誰でもうれしくなります。
この相づちを入れることによって、相手はもっと話したくなりますから、相手から情報を引き出したいときに有効な裏ワザです。
⑦ 「すごい!」
「さしすせそ」の中でも、もっとも適用範囲が広くて使いやすいのが、「すごい!」です。
「すごい!」は、評価の相づちの代表で、相手の気持ちを高揚させます。
自分を重要な存在だと感じていたいという自己重要感や、プライドは、なかなか自分では満たすことが難しいもの。
だからこそ人間は、それを満たしてくれた人を大切にしようと思うのです。
「すごい!」は、成果や業績などに対するストレートな評価ですから、素直に口に出しやすい相づちで、誰に対しても気にせず使えるという汎用さがあります。
たいていの相づちは繰り返すと嫌味っぽくなるのですが、「すごい!」だけは別です。
「すごい!」の後に「いや、すごい!」とダメ押しを入れても嫌味になりません。
最上級の評価である「さすが!」を加えるバージョンと、上手く使い分けましょう。
⑧ 「絶対!」
「絶対!」は、相手の是認欲求を満たす相づちです。
話し手は、いつも絶対の自信をもって話をしているわけではありません。
相手の反応をうかがいながら話している場合もあります。
そんなときに有効なのが、「絶対!」「絶対ですよ」という太鼓判の相づちなのです。
是認欲求とは、相手からの同意や承認によって満たされたいという、誰もがもっている欲求です。
是認を表すもっとも力強い相づちが「絶対!」なのです。
とくに話していることに自信がないときには、話し手にとって、これほどうれしいことはない賛意となります。
⑨ 「そのとおり」
「そのとおり」「そうです」といった同意の相づちは、コミュニケーションのベースをつくります。
話し手は、相手が自分の話に興味があるのか、同意してくれるのか、常に気にしながら話しているものです。
ですから、同意の相づちは、話し手を安心させて、話を続けさせるために不可欠な要素です。
問題は、話の内容に同意できない場合ですが、そういうときは真正面から反論するのではなく、「そうですね」と同意してから、一呼吸おいて「ただ、この件にかんしては」と自分の意見を伝えます。
この「イエス・バット法」は、全体的な同意を先にしてから、限定的な否定をするので、相手は不快感を抱きにくいのです。
⑩ 「それで?」
「それで?」は、相手を勇気づけて、話を促進する相づちです。
話し手は、相手の顔色をうかがいながら話していることも多いものです。
そんな場合、話が一段落したときに、「それで?」と話の続きを催促されたら、話し手はうれしくなって、もっと話したくなります。
SNSに代表されるネット社会となった昨今は、人と向かい合って会話をする機会が減っています。
そうした傾向の中で、自分の話に興味をもって「それで?」と積極的に聞いてくれる相手は貴重ですから、大切にしようと思います。
3. 人間関係を深める相づちのコツ
人間関係をさらに深める相づちは、「あいうえお」と記憶しましょう。
基本コースの「さしすせそ」に、状況に応じて加えれば、相づちはグレードアップして、より「聞き上手」になることができるはずです。
⑪ 「ありがたい!」
「ありがたい」「助かります」は、相手の自己重要感を満たす相づちです。
もともとが感謝の気持ちを表す言葉ですから、声のかけ方でも有効なコミュニケーションのきっかけとなり、人間関係を深めるのにも効果的です。
自己重要感は、周りの人から承認されることによって満たされます。
感謝されることは、ほめられることよりも難しいので、感謝の相づちは効きます。
「ありがたい」や「助かります」には、もう1つ効果があります。
「新しい駅ができるらしいですよ」
「ありがたいですね!」
「急行も止まるようです」
「助かりますね!」
このように感謝の対象が相手ではなくても、感謝の言葉は温かい感情をもたらすので、周りの人間から好意をもたれます。
⑫ 「いいですね」
「いいですね!」「それ、いいです」は、相手の話を評価する相づちです。
評価の相づちには、基本コースで解説した「すごい!」や「さすが!」がありますが、これらの相づちは効力が大きなだけに、多用するとウソっぽくなったり、話し手が気恥ずかしくなったりします。
それ対して「いいですね」は、ほどよい評価で、どちらかと言えば間接的な肯定というイメージになるので、どんな状況でも使いやすいのです。
とくに日本人に多い、奥ゆかしさや恥じらいをもっているタイプの相手に対しては、「いいですね」がハマることが多いでしょう。
まず、「いいですね」とソフトにほめて、それから「すごい!」「さすが!」「ありがたい」などを組み合わせていくのも効果的です。
⑬ 「うんうん」
「うんうん」は、目下の相手や友人に使えるもっとも簡単な相づちです。
「すごい!」や「さすが!」まで仰々しくないので、仲間意識を高めることができます。
ただし、この相づちは、目上の相手には厳禁。
先輩や上司に対しては、蔑視している感情を表すことになりますから、使ってはいけません。
⑭ 「運が悪い」
「運が悪かったですね」といった、運を語る相づちは、相手の気持ちを救います。
相手の話が、結果として上手くいかなかった話になったときに、「運が悪かったですね」「ついてなかったですね」と不運をねぎらう相づちで、落ち込んでいる相手の心は救われます。
失敗の原因を不運というどうすることもできないものにすることによって、話し手の自己責任を否定し、能力不足や努力不足ではないと暗に語るのです。
逆の「運がよかったですね」というプラスの相づちも有効ですが、この場合は、天性の幸運や一生続くような幸運をほめるのがポイント。
仕事に成功した話などでは不快に思われるので、その場合には、「すごい!」「さすが!」の出番です。
⑮ 「いえいえ」
「いえいえ」は、否定語であっても、結果的に相手を肯定する相づちです。
話し手の、自分を卑下した表現に対して使います。
「私の話は面白くないと思うので……」
「いえいえ、十分に面白いですよ」
というように、日本人特有の繊細な会話で有効になる相づちです。
このケースで、「そうですね」と同意の相づちをうつ日本人はいません。
自己否定表現を否定するという二重否定によって、相手はあなたに好意をもち、人間関係が深まることになるのです。
4. 共感を呼ぶ相づちのコツ
目上の相手が自分を卑下した話や、失敗した話をしたときに、同意や評価の相づちをうつことはできません。
このように相手が自分を高く評価することのできない話をしたときには、「いえいえ」で二重否定をしてから、共感的相づちをうつことで、人間関係を深めることができます。
共感的相づちにはポジティブ系とネガティブ系があり、多くの場合はネガティブ系の相づちが有効になります。
⑯ 「寂しいですね」
「自分はダメな人間だ」「どうしたらいいかわからない」といった、相手のネガティブな感情に対して共感的相づちをうつときに、「わかります」はNGワードです。
「誰もわかってくれない」「他人にわかるわけがない」と絶望感や自己嫌悪を抱いているときに「わかります」と相づちをうっても、「軽々しい発言だな」という感情で拒否されてしまいがちです。
そんなときに有効なのが、相手の感情を反復する「バックトラック」という手法です。
余計なことを口にせず、「本当につらいよ」に対して「つらいですよね」、「こんなに悲しいことはないよ」に対して「悲しいですよね」と、静かにただ反復して相づちをうつのです。
相手が慰めて欲しいと思っていても、なかなか適当な言葉が見つからない……。そんな時に使われる「寂しいですね」は、最強のネガティブ系共感的相づちです。
相手が悲観的な話を終えたときに、「寂しいですね」と、ただ一言の共感的相づちがあるだけで、相手の心は揺さぶられることでしょう。
⑰ 「やりましたね!」
ポジティブ系共感的相づちは、相手の喜びを倍増させるので、相づちをうった人間に対する好意が高まります。
楽しい話や、成功した話を聞いているときは、バックトラックの相づちを上手く使いながら、「やりましたね!」と場を盛り上げましょう。
もちろん基本コースの「すごい!」「さすが!」も、上手く組み合わせることを忘れてはいけません。
まとめ
会話が苦手な人でも、相手に話させるきっかけさえつくれれば、相づちを自然に使うことによって、コミュニケーションの達人になれるのです。
相づちは、とにかく場数を踏んで、組み合わせ方や「間」の使い方を自分のものにすることが大事。
意識して、どんどん使ってみましょう。
相づちと併用したいのが、「うなずき」や「アイコンタクト」という仕草です。
こうした仕草は、「あなたの話をしっかり聞いています」「あなたに好意をもっています」というサインになります。
相づちと自然に組み合わせて、聞き上手を極めてください。
【参考資料】
・『誰とでもラクに話せるコツ 101』 高橋書店 今井登茂子 2014年
・『超・相槌』 文響社 齊藤勇 2016年