誰とでも気軽に雑談ができたら、人間関係がラクになると思いますよね?
「相手を楽しませることができる話し上手になりたい」
「気のきいた切り返しができる会話術がほしい」
とくに、初対面の人と会話が進まなくて気まずい思いをすると、そう思うものです。
しかし、雑談の本質は、その場の空気をやわらげて、相手との距離感を縮めることにあります。
ですから、たくさん話せばいいというものではありませんし、難しいコミュニケーション術を必要とするものでもありません。
ちょっとした会話術さえあれば、雑談は誰にでもできるコミュニケーション手段です。
雑談が苦手だと思っている人は、そのちょっとしたテクニックを知らないだけなのです。
ここでは、雑談の苦手意識を解消できる、3つの会話術を解説します。
これらのテクニックを身につけて雑談のコツがつかめれば、初対面の相手とも軽快なコミュニケーションをとることができるでしょう。
目次
<1. 初対面でも距離を縮める「10秒雑談術」
1-1. 基本は2往復60文字の会話
1-2. 雑談力を高める基本の3ステップ
1-3. 10秒雑談を完成させる2つのルール
2. 相手を気持ちよくさせる「リアクション雑談術」
2-1. 8対2は「話させ上手」の秘訣
2-2. 相づちだけでも雑談は成り立つ
2-3. リアクション雑談の基本となる5つのサイン
2-4. 軽い質問で話題を広げる
3. 人を引きつける「話題選択術」
3-1. 意外なオチの面白さ
3-2. 誰でも好きな「おカネ」と「色恋」の話
3-3. 「不運な人」の話は共感を呼ぶ
3-4. 「凄い人」の話は前説が大事
3-5. 思わず耳を傾けたくなる「裏話」
1. 初対面でも距離を縮める「10秒雑談術」
たった10秒間で雑談が成り立つのか?
そう思う人が多いかもしれませんが、10秒という時間には案外いろいろなことができる長さがあるのです。
普段の生活の中を振り返ってみると、誰かとすれ違いざまに挨拶を交わすときには、2秒あればすんでしまいます。
「こんにちは」
「いい天気ですね」
これで2秒。
そう考えると、その5倍の長さがある10秒間という時間は、そこそこの会話ができる時間なのです。
逆に、気まずい沈黙が続く10秒間は、とても長く感じることでしょう。
このちょっとした10秒間を、心地よい時間に変える雑談術を紹介しましょう。
1-1. 基本は2往復60文字の会話
実は、10秒雑談は、挨拶を交わしながら誰もがやっているコミュニケーションです。
「これから買い物ですか?」
「はい。新しいスーパーに行ってみようと思って」
「けっこう品揃えがいいみたいですよ」
「それはうれしいですね」
これで10秒間。
「昨日は雨で大変でしたね」
「ええ、花火大会は来週になりました」
「僕も参加してもいいですか?」
「連絡まってまーす」
これで10秒間。
こうしたすれ違いざまのやりとりは、場の雰囲気をやわらげてお互いの距離が縮まる、立派なコミュニケーションになっています。
プロのアナウンサーは、10秒間で300文字の原稿を読むといいます。
普通の人の会話を考えると、2往復で50~60文字程度の会話が、だいたい10秒くらいの長さになります。
この10秒雑談が心地よくできるようになると、誰とでもコミュニケーションがとりやすくなります。
1-2. 雑談力を高める基本の3ステップ
雑談の基本スタイルは、3つのステップで考えます。
① 声をかけて相手の警戒心を解く
声をかけるきっかけとなるのは、やはり「挨拶」です。
「こんにちは」「おはようございます」「はじめまして」「お久しぶりです」と、相手によって適切な挨拶を選びます。
どんな挨拶がよいのか迷ったときには、「どうも!」でクリアです。
「どうも」が失礼にあたるような気がしたのなら、相手の目を見てニコッと微笑みながら会釈しましょう。
「あなたと打ち解けたい」「敵意はありません」「警戒しないでください」という意思表示が、雑談のきっかけに必要な要素なのです。
② 場の雰囲気をやわらげて意思疎通する
挨拶の言葉だけでは雑談にはならず、それは文字通り「挨拶」で終わります。
雑談の基本として次に必要なのが、「相手との距離を縮めて話す」というステップです。
挨拶だけでは「顔見知り」程度の関係に留まりますが、そこに短い会話がプラスされることによって意思疎通が可能になり、「よく知っている人」という関係にも発展します。
③ 後味をよくして雑談を終わらせる
最後のステップは、雑談を切り上げて気持ちよく別れるというプロセスです。
10秒雑談は、2往復の会話が基本形ですから、話の細かい内容や、次の約束などを話す必要はありません。
相手との意思疎通ができたら、「じゃあ!」「ではまた!」でサクッと切り上げます。
ダラダラと話すのではなくて、サクッと終わらせて気持ちよい空気感を残すことこそ、10秒雑談のよさなのです。
1-3. 10秒雑談を完成させる2つのルール
気軽に雑談ができるようになるためには、3つのステップを身につけることとともに、守りたい2つのルールがあります。
① 雑談に中身は必要ない
ビジネスにおける会話の多くは、用件や報告などの内容を聞いてやりとりする必要がありますが、用件だけを伝えればいい会話は、やりとりの必要がありません。
用件さえなくていいのが雑談。
雑談には、中身などいらないのです。
だからこそ、誰とでもすれ違いざまにできるのですから、中身を考える必要はありません。
② 雑談に結論はいらない
雑談は、空気感や感情を一瞬だけ共有することに意味があるのですから、話の中身が必要ないと同時に、結論も必要ありません。
「昨日の料理は最高だったね」
「僕は、あのスパイスは苦手だったよ」
たとえば、こうして意見が一致しなくても、議論ではないのですから、そこを掘り下げて結論を導く必要はないのです。
「そうか、じゃ今度は違う店で!」
「うん、またね」
と、サクッと切り上げて終わらせることが大事。
この3ステップと2つのルールさえわかっていれば、雑談に対する苦手意識が消えていくはずです。
2. 相手を気持ちよくさせる「リアクション雑談術」
雑談は、中身のある会話が求められるものではありませんから、トーク術を磨く必要はありません。
自分から雑談をしようと思った場合、きっかけとなる「声かけ」はする必要がありますが、その後は必ずしも中身のある会話をする必要はありません。
雑談の最初のステップである「声かけ」をしたら、その先の展開は相手に任せてしまい、気持ちよく話してもらって、最後のステップの「別れ」に進むのも、雑談の1つのスタイルです。
2-1. 8対2は「話させ上手」の秘訣
人間は自分の話を聞いてくれる相手に対して、好感を抱くものです。
ですから、「聞き上手」は、会話の基本とされるのです。
自分が話さず相手に話してもらう「リアクション雑談」は、口下手な人でも上手くなれる、「話さずにできる雑談」です。
リアクション雑談のベストバランスは、相手が8に対して自分が2。
ステップ①とステップ③はしなければなりませんが、ステップ②はすべて相手に主導権をとってもらってもいいのです。
「あ、どうも」とほほ笑みながら声をかけて、相手の話を聞き、「それじゃ!」と笑顔で別れるだけでも、立派な雑談として成立します。
2-2. 相づちだけでも雑談は成り立つ
リアクション雑談で、もっとも重要な要素が「反応」です。
何の反応もない相手と話すのでは、相手が苦痛を感じてしまい、場の空気は和むどころではありません。
雑談や会話に限ったことではなく、コミュニケーションはお互いに反応することによって成立します。
「聞き上手」といっても、ただ相手の話を聞いているだけでは「話させ上手」にはなれません。
反応とリアクションがなければ、相手は気持ちよく話すことができないのです。
雑談におけるリアクションの王道が「相づち」や「合いの手」です。
いいタイミングで相づちを打つだけでも、雑談は成立します。
相づちを一歩進めた「合いの手」は、相手の話を途中で遮らず、否定しないことがポイントです。
2-3. リアクション雑談の基本となる5つのサイン
リアクション雑談には、ボディアクションが必要です。
具体的には、「ほほ笑む」「うなずく」「乗り出す」「のけぞる」「手を打つ」といった動作が、話している相手を気持ちよくさせます。
日本人は、ボディアクションが地味な傾向があります。
大げさになりすぎてはいけませんが、小気味よいリアクションを意識しましょう。
「ほほ笑む」は、「あなたを受け入れています」というサイン。
「うなずく」は、「あなたの話をしっかり聞いていますよ」というサイン。
「乗り出す」は、「その話を聞きたい!」という興味を示すサイン。
「のけぞる」は、「へえー、本当ですか!?」という新鮮な驚きのサイン。
「手を打つ」は、「いいですね、それ!」という共感のサイン。
こうしたボディアクションを身につけることで、自分が話さなくても成立するリアクション雑談ができるようになります。
2-4. 軽い質問で話題を広げる
リアクション雑談のテクニックとして、相手の話を聞いてから、相手の話のキーワードをリピートしたり、相手の話を要約してリピートする方法があります。手の話に簡単な質問をして話を広げていく方法です。
上級テクニックといっても、もともと雑談には中身や結論が必要ないのですから、決して難しいことではありません。
「こんにちは。お買い物ですか?」
「ええ、新しくできたスーパーに行ってみようと思って。昨日行った〇〇さんに聞いたんですけど、野菜が安いらしくて、冷凍食品も半額みたいですよ」
「え! 冷凍食品が半額ですか?」
このリピートに加えて、質問を入れるのです。
「最近の冷凍食品は便利ですよね?」
すると相手の話は、新しいスーパーの話から、最近の冷凍食品の話に変わります。
このように、軽い質問で、話題の方向性を少しずらすことによって、雑談は転がっていきます。
3. 人を引きつける「話題選択術」
「人を楽しませたい」と思うことが、雑談の苦手意識を解消するエネルギーになります。
人を楽しませたいと思ったら、相手に話をさせて気持ちよくなってもらう「リアクション雑談」もいい手段になりますが、日頃から話題をストックしておくことも大切。
いわゆる「話のネタ」というやつです。
雑談のネタは、誰もが好きそうな雑学や業界裏話などで、あまり知られていない事実が隠されているものが適しています。
雑談の話題で一番面白くないのは、なんといっても自慢話でしょう。
よほど興味をもってくれている相手でなければ、自慢話を楽しいとは思いません。
人を楽しませたいと思っても、自慢話だけはやめておきましょう。
3-1. 意外なオチの面白さ
オチで場を盛り上げるのは、「エンターテイメント雑談」の王道です。
ただ、教養をひけらかすだけのウンチクは、「へえー」という感心はされてもそこで終わりますが、そのウンチクに意外なオチがあると、そこから話が広がります。
今は、雑学を集めた本やインターネット情報の中に、面白そうな話題がたくさんありますから、「これは使える」と思ったものは、記憶に残るようメモしておきましょう。
確かな事実かどうかということは、あまり問題ではありません。
事実であるという確証がもてないネタは、「らいしいよ」「みたいだね」としめくくればいいのです。
そういうネタこそ、そこから相手の意見や感想などがはじまって、かえって話が盛り上がるかもしれません。
3-2. 誰でも好きな「おカネ」と「色恋」の話
おカネにまつわる話は、多くの人が関心を寄せます。
しかし、誰もが知っている大金持ちの有名人の話や、アラブの大富豪など超大金持ちの話は、どこでも聞くことができますし、現実とかけ離れすぎていて、あまり楽しむことはできないでしょう。
多くの人の興味を引くのは、あまり知られていないけれど実はおカネをため込んでいる有名人の話や、金持ちなのにケチケチした人生を送っている人の話などです。
スケールが桁外れに大きな歴史上の浪費家や、巨額の私財を社会のために投じた慈善家の話なども興味を引きますが、歴史上の人物の話は誰もが知っていることが多いので、「掘り出し物」を見つける努力が必要です。
また、色恋の話題は男女ともに関心を寄せますが、男性はバカな話やエロチックな話を好む傾向があるのに対して、女性はロマンチックな恋愛話を好む傾向があります。
ですから、色恋の話題は場を考えて選択する必要があります。
3-3. 「不運な人」の話は共感を呼ぶ
「人の不幸は蜜の味」などと言いますが、「不運な人」や「悲運の人」の話は、成功をした人の話よりも興味を引くことが多いものです。
それは、世の中の人々の多くが、「自分の努力は正当に認められていない」という意識をもっているので、不遇な人生をすごした人の話に共感するからです。
この手の話題で気をつけなければいけないのは、宗教や政治など、思想や社会構造が絡んでいることが多い話です。そうした話題は場を考えなければいけません。
共感が得られるとわかっている場では、いい雑談のネタとなりますが、反感を受けてしまう可能性があるときには外すべき。
繰り返しますが、雑談の目的は、場をやわらげて相手との距離感を縮めることにあり、議論をすることではないからです。
3-4. 「凄い人」の話は前説が大事
とくに男性は、野球やサッカー、ボクシングや格闘技といったスポーツの話題を好む人が多いものです。
その中でも、「凄いスポーツ選手」の話は、場が盛り上がります。
今の野球界でいえば、さしずめ、メジャーリーグで注目されている大谷翔平選手ということになるのでしょう。
しかし、この手の話題が好きな人は、専門的な知識をもっている人が多いので、スーパースターのことは、自分より知っている人がきっといるでしょう。
雑談のネタとして面白いのは、あまり知られていない「隠れた超人」の話です。
隠れた超人の話をするときのポイントは、超人の凄さを話す前に、前提となる基礎知識を聞き手に与えることです。
時代設定や国民性、そのスポーツの意外なルールなどをサラッと説明してから、超人の話に移行すると、凄さがより感動を呼びます。
3-5. 思わず耳を傾けたくなる「裏話」
歴史上の人物や、業界などの意外な「裏話」も、多くの人の興味を引く話題です。
「ねえ、知ってる?」という感じではじめる裏話には、つい耳を傾けてしまうものです。
裏話には、流行的なものも多くて、よく知られていることが多いという欠点があります。
しかし、事実かどうかよりも話の面白さで楽しむのが裏話。
ですから、深く考える必要はありません。
誰かがその裏話を知っていたら、「ああ、知ってる? あれは面白いよね」と仲間に入れて話を盛り上げればいいのです。
むしろ、誰かが知っていてくれたほうが、その裏話の面白さが拡大されて、いい展開になるはずです。
まとめ
ここで解説した「10秒雑談術」「リアクション雑談術」「話題選択術」という3つのテクニックを身につければ、雑談は苦手どころか楽しいものに変わります。
もう、エレベーターの中で誰かと2人っきりになっても、「何か話さなければ」と気づまりな思いをすることはなくなるはずです。
雑談の目的は、相手の好きな話をすることでも、自分の主張を伝えることでもなく、相手との距離を縮めることだということを忘れないようにしましょう。
相手がラクな気分でいられるコミュニケーションは、自分もラクでいることが基本。
だから、雑談は決して難しい会話ではないのです。
【参考資料】
・『会話がはずむ雑談力』 ダイヤモンド社 齋藤孝 2017年
・『雑談力』 PHP研究所 百田尚樹 2016年