プラス思考とは何でしょう?
「前向きな考え方」、英語にすると「positive thinking」というのが、一般的な答えになるのかもしれません。
しかし英語では、悲観に対する「楽観(optimistic)」、物事の悪い面ではなくて「良い面を見る(Look on the bright side.)」といった行為も「前向きな考え方(positive thinking)」の類語として使われます。
実はこの「楽観的」「物事の良い面を見る」という2つは、物事を自分に都合よく考えるための大事な要素。
究極にプラス思考な人とは、何でも自分に都合よく考えることができる人。
どんなことが自分に起こっても、良い面を見出して楽観的な思考ができる人です。
そんなプラス思考になるにはどうしたらよいか?
ここでは、そのヒントになる15の言葉を、本にある名言やことわざを参考にしてピックアップしました。
プラス思考のトレーニングには最適です。
目次
プラス思考がわかる15の言葉
① 人生たかだか100年
② 明日は明日の風が吹く
③ ピンチこそチャンス
④ 変わらないことでクヨクヨしていても時間のムダ
⑤ 自分のルールをつくるのは自分自身
⑥ まあいいか、それがどうした、人それぞれ
⑦ 現実を受け入れて最善の道を選ぶ
⑧ 平等な人生などありえない
⑨ 人生は楽しんだほうが得
⑩ 幸せを人と比べても意味がない
⑪ 道は百も千も万もある
⑫ どうせなるようにしかならないよ
⑬ 受け止め方を変えることで素晴らしいものが見えてくる
⑭ 山のてっぺんばかりを歩く人生は面白くない
⑮ 何より大事なのは人生を楽しむこと
まとめ
プラス思考がわかる15の言葉
プラス思考を理解するために、①から⑤はことわざや本のタイトルなどからえらんだ言葉、⑥~⑩はプラス思考の提唱者として知られる漫画家、弘兼憲史さんの言葉、⑪~⑮はプラス思考を実践した著名人の言葉をピックアップしました。
多少違う角度から同じことをいっているものもあるので、内容は重複する部分もありますが、それぞれの言葉に味わい深い意味があります。
① 人生たかだか100年
この言葉は、宗教的な側面からよく使われる言葉で、元は「人生たかだか80年」といわれていたのですが、近年は日本人の平均寿命が延びて「人生100年の時代」といわれるようになったことから、こういわれるようになりました。
人間は、オギャーとこの世に生まれて、最高に長く生きても100年程度。
人類の歴史600万年、地球の歴史46億年の中でみたら、ほんの点のようなものです。
今、この世の中で生きている大人は、100年経ったら確実に全員が死んでいるのです。
様々なことに悩むもの喜ぶのも、生きている間の話。
せっかく生まれたのだから、幸せな時間を過ごした方がいいですよね。
勉強も仕事も恋愛も趣味も、すべては生きている間に幸せになるための手段だと思えば、自分が進むべき道が見えてくるような気がしませんか?
② 明日は明日の風が吹く
このことわざは、「明日になればまた状況も変わってくる。くよくよ先のことを思いわずらっても仕方がない」という楽観性の重要さを表すものです。
本来は、悲しい事や辛い事があった人を慰めるときに使われる言葉ですが、「物事はなるようになるのだ」という思想が根底にあります。
「物事はなるようにしかならない」といえば、「あきらめ」に聞こえますよね。
この言葉の真意には、「あきらめ」というネガティブな感情はみじんもなくて、「今日の現実を受け入れて明日のプラスにつなげる」というポジティブな感情が込められているのです。
似たような言葉に、「江戸っ子は宵越しのカネをもたぬ」というものがあります。
これは、江戸の職人が気前のよさと粋な様を自慢するのに使った言葉ですが、江戸の町人がギリギリのところでやせがまんしながらも、人生を楽しんでいたことが伝わりますね。
③ ピンチこそチャンス
自己啓発本やビジネス書などには、必ずといってよいほど出てくる言葉ですね。
なぜピンチがチャンスなのかといえば、窮地に陥ってみなければ見えないものがあるからです。
窮地に陥らなければできない、大胆な決断もあるでしょう。
プラス思考の人は、「窮地に陥ったおかげでこの決断ができる」と考えて、ピンチをバネにする力をもっています。
窮地に陥ってもがきながら苦戦していても、どこかに楽観的な考え方をもっている人は、悲壮感を表に出しません。
悲壮感が漂っていたら人は寄ってきませんから、ますます出口が遠のくのです。
人生は山と谷の連続。
一度越えることができた谷の深さまでは、もう次からは大丈夫だと思えますし、一度越えることができた山の高さまでであったら、自分は越えていけると思えるようになるのです。
④ 変わらないことでクヨクヨしていても時間のムダ
「クヨクヨしていても時間のムダ」ということはわかっていても、クヨクヨしてしまうのが人間です。
悲しいことがあったらショックを受けない人はいません。
だから一時、足を休めて、涙しても温もりを求めてもいいじゃありませんか。
でも、仕事の失敗や失言など、自分に原因があることでクヨクヨするのは時間のムダです。
どんなに考えても悩んでみても、過ぎてしまった時間を変えることはできないのですから、1秒でも早く先のことを考えた方が、失敗を繰り返さず、失敗の経験を活かすことができます。
悲しみから立ち上がるのも、早い方が心身のダメージは少なくて済みます。
最後は勇気を出して歩きはじめ、乗り切るしかありません。
その経験が、またプラス思考を生む強さになるのです。
⑤ 自分のルールをつくるのは自分自身
人間が生きていれば、社会のルール、会社のルール、家庭のルールというように、いろいろなルールの下で生活を送ることになります。
これを、「ルールに縛られている」と考えるのは、マイナス思考の人。
どういう生き方を選ぶかは、その人間の自由。
今の自分は、これまで自分が選択してきた道の上にいるわけです。
法律や社会のルールにしても、日本が嫌で外国で暮らす人もいるわけですから、基本的には日本人なら誰でも生き方を自由に選択する権利があります。
自分の生き方は自分で決める。
自分が決めたことであったら、どのような結果が出ようと自分の責任ですから、泣き言をいえなくなるのです。
そもそも、そう考えている人は、自分の人生を大切にしていますから泣き言などはいいません。
⑥ まあいいか、それがどうした、人それぞれ
ここからは、プラス思考の第一人者として知られる漫画家、弘兼憲史さんの言葉から、プラスの思考がどのようなものかわかるものをピックアップしました。
「まあいいか、それがどうした、人それぞれ」は、弘兼さんが「自分はこうしてきた」と紹介するプラス思考の三段活用法です。
苦境に陥っても「まあいいか」と楽観的にとらえ、「それがどうした」と開き直ってエネルギーに転換し、人生は「人それぞれ」だと考えて他人と比較せず、自分の道を進んできたという言葉。
次からの4項目にある言葉は、このベーシックな考え方を具体的に展開したものです。
『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』を今も書き続ける弘兼先生の思想が、よく表れている言葉ですね。
⑦ 現実を受け入れて最善の道を選ぶ
「現実を受け入れる」ということは、プラス思考の原点にある行為です。
どんなことが起こっても、目の前のある現実を受けれる勇気をもつことが大事。
過去から今につながる現実を変えることはできないのですから、受け入れなければ現実の中で生きていくことはできません。
今の自分の現状をすべて受け入れて、今とることができる最善の方法を考える。
「今を生きる」とか、「今、目の前にあることに集中する」といったマインドフルネスの考え方にも通じるものですね。
弘兼さんは65歳になられた頃、高齢者と呼ばれることに抵抗を感じて「自分はまだ老人じゃない」と抗っている同年代の人たちにメッセージを送りました。
それは、「高齢者けっこう、老人けっこうじゃないか。そう呼ばれる年齢になったのは事実で、自分が成長した結果。社会に抗ってみても疲れるだけ。明日からは堂々、高齢者として楽しい人生を送ればいい」という言葉でした。
⑧ 平等な人生などありえない
「人類はみな平等」「民主主義社会は平等」などといわれますが、生まれながらにして平等などということはありえません。
貧しい家に生まれる子どももいれば、裕福な家に生まれる子どももいる。
発展途上の地域に生まれる子もいれば、モノが豊富な先進国に生まれる子もいます。
こうした環境は自分で選べるものではないのですから、現状の中でより幸福な人生を送る生き方を探すべきですよね。
走るのが速い子ども、絵を描くのが好きな子ども、算数が得意な子ども、物覚えが速い子どもなど、得意なことや苦手なことがあるのも、平等な能力とはいえません。
しかし、それが個性というもの。
教育の大事な目的は、その子どものよいところをいかに伸ばすかということじゃないでしょうか。
大人になっても、劣っているところを直そうと考えるより、自分のよいところを伸ばすことに力を注いだほうが幸福な人生を送れるはずです。
⑨ 人生は楽しんだほうが得
自分に残された時間を考えてみましょう。
年齢によって受け取り方は変わるでしょうが、どちらにしても、限りある時間しか生きていることはできないのです。
同じ時間を生きるのであれば、少しでも楽しい思いをした方が幸せな人生だと思いませんか?
だから、自分が楽しいと思えることは、ひとつでも多いほうがいいのです。
必ずしも多趣味になれということではありません。
いつも歩いている道を1本変えてみるだけで新鮮な発見があるかもしれないし、日頃から行っている作業でも、もっと効率化する方法を見つけるという楽しみ方があります。
歩き方を変えてみたら、健康になったという喜びがあるかもしれません。
身近な事や小さな事にも楽しさを見出すことで、人生がちょっと豊かなものになり、ストレスを忘れることもできて、心と身体の健康にもつなげることができるのです。
⑩ 幸せを人と比べても意味がない
人間はなぜ生きているのかといえば、幸せを感じるためじゃないでしょうか。
でも、何が幸せかということは、人それぞれ違います。
美味しい水が飲めることに幸せを感じる人もいれば、タワーマンションの最上階に住むことが幸せだという人もいます。
おカネがいくらあったら幸せかという問いに対する答えも、「いらない」という人もいるでしょうし、上限はキリがないところまでいくでしょう。
人間は、より幸福になりたいという思いから、条件が上の人と自分を比べがちですが、生きている環境も個性もみな違うわけです。
だから、自分の人生や幸福を他人と比べても、それは意味のないこと。
自分が楽しいことをして、生きがいを感じることができて、それを人の役に立てることができたら、それは幸福な人生じゃないでしょうか。
⑪ 道は百も千も万もある
ここからの5項目は、著名人の言葉からプラス思考を読み取っていきます。
「人の世に道は一つということはない。道は百も千も万もある」とは、幕末の志士、坂本龍馬の言葉。
人生で歩む道は、無数にあります。
日本人はひとつの「道」を追求することに美学をもっているので、ついつい、道を1本に絞ってしまうのですが、これは失敗したときにつぶしが効きません。
背水の陣は、負けたらそこで終わりですが、何かに失敗しても、人生を終わらせるわけにはいきませんよね。
障害物があったら少し戻って別の道を行けばいいし、寄り道や遠回りしても、その道のりはけっしてムダになることはないのです。
⑫ どうせなるようにしかならないよ
「やるだけのことはやって、後のことは心の中でそっと心配しておれば良いではないか。どうせなるようにしかならないよ」
これは、幕末から明治にかけての政治家であった勝海舟の言葉。
決してあきらめの言葉ではなく、儒教の言葉から生まれたことわざ「人事を尽くして天命を待つ」を自分なりに発言したものです。
この言葉の根底には、「やれることはすべてやる」という強い意志があります。
その上で、自分の意思でどうにもできないことは、悩んでもムダだといっているのです。
⑬ 受け止め方を変えることで素晴らしいものが見えてくる
女優として、またロッカー内田裕也さんの妻として、人生を全うした樹木希林さんの言葉。
「受け止め方」は樹木希林さんらしい受動的な表現ですが、能動的にいうのであれば「考え方」と置き換えてもいいでしょう。
考え方を変えると、素晴らしいものが見えてくるといっています。
考え方ひとつで、本当に人生は変わるのです。
コップに半分残っているワインを見て、「まだ半分ある」と受け取るか、「もう半分しかない」と受け取るかという話がありますよね。
楽観的に物事を受け取った方が、素晴らしい人生を送ることができるという言葉です。
⑭ 山のてっぺんばかりを歩く人生は面白くない
映画監督として数々のヒット作を残し、2011年に他界された森田芳光さんの言葉です。
人間観察の達人であった森田さんは、自分自身を映画の主人公に見立ててドラマチックな生き方をされた人といわれています。
「谷があってこそ山がある。味のある人生にするためには谷底を経験することが必要で、山のてっぺんばかりを歩く人生はドラマとして面白くない」
谷底にいても、「味のある人生」は幸福だと思っている人は、また山を登ることができます。
山を下るときも、不安になることなく谷へと向かうことができるのです。
谷底にも山下りにも、「味=楽しみ」を見出すことが「面白い=幸福な」「ドラマ=人生」だという言葉ですね。
⑮ 何より大事なのは人生を楽しむこと
“The most important thing is to enjoy your life – to be happy – it’s all that matters. ”
これは、ハリウッドの大女優オードリー・ヘップバーンの言葉で、和訳すると「何よりも大切なことは、自分の人生を楽しんで、幸せを感じること」という意味になります。
数々の名言を残しているヘップバーンが、人生でもっとも大事なことについて語った言葉です。
まとめ
苦境を乗り越える力を「レジリエンス」といいます。
1970年代に、ハワイのカウアイ島で、非行に走る子どもと走らない子どもは、どこに違いがあるのかという研究から生まれた概念です。
もともとは、「外力による歪み」を意味する「ストレス」に対して、「外力による歪みを跳ね返す力」として使われる物理学用語だったのですが、非行に走らない子どもは苦境を乗り越える力をもっていることがわかり、精神医学や脳科学の用語として注目されるようになりました。
このレジリエンスを構築するための秘訣とされているのが、ここで紹介してきたプラス思考なのです。
具体的には、「前向きに物事を考える」「自己信頼する」「自分では変えられないことを受け入れる」「良好な人間関係をつくる」「人生の目的をもつ」といったことなどがあげられていますが、ここで解説したことばかりですよね。
レジリエンスを高める方法として、もう一度読み返していただくと、より理解が深まることと思います。
【参考資料】
・『ピンチに強い脳の鍛え方 マイナス思考を断ち切る方法』 岩崎一郎 著 廣済堂出版 2016年
・『夢は9割叶わない』 弘兼憲史 著 ダイヤモンド社 2014年
・『50歳からの時間の使い方』 弘兼憲史 著 興陽館 2018年
・『きみを変える 50の名言』 佐久間博 文 汐文社 2019年