15分で理解する色彩と心理学の関係-色が人間の心に与える影響

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「色彩学」や「心理学」はよく目にすることがあっても、「色彩心理学」という言葉はあまり見ませんよね?

ごく一部の民間団体には、色彩心理学という言葉を使っているところがあり、2000年以降に登場した心理学の一分野とする見方もあります。
しかし、大学の学部や科目となるようなひとつの学問として、色彩心理学が確立されているわけではありません。

「色彩心理」とは、色が人間の心に与える影響を意味し、色彩学の領域でも心理学の領域でも重要な研究テーマとされてきました。
色彩心理については、様々な研究や実験が報告されていますが、科学的に解明されていない要素がいまだ多く、心理学のひとつの領域として構築されていないのです。

色の感じ方には個人差があるという点が大きな壁となっているのですが、大多数の人が同じように感じとるものがあるのも事実です。

ここでは、色彩と心理学のかかわりを歴史から簡単に説明し、色とは何かという基礎知識と、現在、主流となっている色彩心理について解説します。

目次

1. 色彩と心理学の歴史  
1-1. アリストテレスの『色彩論』
1-2. 色彩心理の基礎をつくったゲーテ
1-3. 色彩学と心理学がクロスした19世紀
1-4. カラーシステムが考案された20世紀
1-5. 現代の色彩心理を形成したアメリカのABC
1-6. 期待が集まる今後の色彩心理学

2. 色の基礎知識
2-1. 有彩色と無彩色
2-2. 色の三属性
2-2-1. 色相
2-2-2. 明度
2-2-3. 彩度
2-2-4. トーン
2-3. 色の見え方
2-3-1. 加法混色
2-3-2. 減法混色
2-3-3. 対比
2-3-4. 同化

3. 色彩の心理効果
3-1. 赤が与える心理効果
3-2. 橙(だいだい)が与える心理効果
3-3. 黄が与える心理効果
3-4. 緑が与える心理効果
3-5. 青が与える心理効果
3-6. 紫が与える心理効果
3-7. ピンクが与える心理効果
3-8. 白が与える心理効果
3-9. グレーが与える心理効果
3-10. 黒が与える心理効果

まとめ

1. 色彩と心理学の歴史

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色彩と心理学のかかわりについて、歴史を紐解いてみましょう。

1-1. アリストテレスの『色彩論』

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色の研究が始まったのは、古代ギリシア時代とされています。

芸術に否定的であったプラトンは、「混色して新しい色を作るのは神への冒涜行為」と述べましたが、弟子であるアリストテレスは「色は白と黒の間に生じる」とする『色彩論』を著し、有彩色の配列を白、黄、赤、緑、青、紫、黒の7色と考えました。

プラトンとアリストテレスの思想は、18世紀にイギリスの物理学者ニュートンが登場するまで、ヨーロッパのキリスト教社会における色彩文化に大きな影響を与えました。

1-2. 色彩心理の基礎をつくったゲーテ

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14~16世紀のルネサンス期には、レオナルド・ダ・ビンチを筆頭とする画家たちによって色の研究も行われましたが、1704年にニュートンが著した『光学』は、それまでの色と光にかんする常識を覆しました。

ニュートンは、スペクトルを発見し、太陽光などの白い光は様々な色の光が重なったものだという実験報告を発表したのです。

詩人として知られるゲーテは、アリストテレスに深く傾倒する哲学者でもあり、1810年に『色彩論』を発表して、ニュートンを批判しました。
ゲーテは、「色彩は、光と闇との相互作用によって生じる」と主張し、色の生理的作用や感覚的作用を述べたのです。

色が人にどのような影響を与えるかという点に注目したゲーテは、現在の色彩心理の基盤をつくったとされています。

1-3. 色彩学と心理学がクロスした19世紀

19世になると、心理学の前身である「精神物理学」や「感覚生理学」が成立し、色は視覚の現象ととらえられて、研究が進みます。

技術的な進歩によって色を扱う環境が整ってくると、色彩学も基礎が固まっていきました。
1839年にフランスの化学者シュブルールが、人の感覚から考えた色の配列である『色の同時対比の法則』を発表し、多くの芸術家に影響を与えると同時に、色彩学と心理学の関係が近づいたのです。

1-4. カラーシステムが考案された20世紀

20世紀には、アメリカのマンセルや、ドイツのオストワルトらが、色をとらえるためのカラーシステムを考案しました。
色彩学は実用的な分野で発展していきます。

1919年には、建築を含む美術、工芸の学校として世界的に有名なバウハウスがドイツに設立され、ここの教師であったスイスのイッテンが、色の効果と影響について学生に指導したのです。

マンセルのカラーシステムは、現在も広い分野で使用されており、ネット上でも画像データやpdfがダウンロード可能です。

1-5. 現代の色彩心理を形成したアメリカのABC

アメリカでは20世紀に、色の効果が経済活動や生活に与える影響など、実践的な研究がたくさん行われました。

アメリカの色彩学を代表するABCと呼ばれる、アボット、ビレン、チェスキンの3人は、「色彩における機能主義」を追求し、現在イメージされる色彩心理の原型を形成しました。

世界初のカラーコンサルタントとして活躍したビレンは、工場の生産性を高める色の指摘や、安全標識の色の開発が有名で、安全標識の開発は、1953年に国際標準化機構に「安全色彩」として採択され、全世界に推奨されました。
消化器や火災報知機の赤、注意喚起を表す黄と黒の縞などは、ビレンが考案したものです。

またビレンは、色が与える心理的影響や、色の好みによる性格判断なども発表しました。

1-6. 期待が集まる今後の色彩心理学

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人が色をどのように感じ、どのような影響を受けるのかという研究は、心理学では基礎心理学の分野に相当し、色による性格判断は、応用心理学の「色に対する心や行動のかかわり」に相当します。

このように色彩学と心理学が重なり、「色彩心理学」と呼ばれる分野が提唱されました。
しかし、心理学は脳の研究と切り離せない時代となり、科学的な検証が高いレベルで求められるために、色彩心理学は、いまだ確立に至っていないのです。

近年では心の治療や、心の健康を維持するために色彩は確実に役立っており、色彩心理にかんする本や論文も数多く発表され、大学では科目になっていなくても、色彩心理学の講座が開かれるようになっています。

ファッションや商品の売上向上だけでなく、鉄道各社が自殺防止のために青い照明を用いるなど、色と心理のかかわりには大きな関心と期待が寄せられており、さらなる研究と実験による色彩心理学の確立が待たれています。

 

2. 色の基礎知識

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人間が見分けることのできる色は、約800~1000万色といわれます。
これほどの色を使い分けるためには、共通の認識である基準が必要です。

一般的な基準による色の分類と、しくみや性質といった基礎知識を解説します。

2-1. 有彩色と無彩色

すべての色は、赤、青、黄などのように色味がある有彩色と、白、黒、グレーのように色味がない無彩色の2つに分類されます。

有彩色は、色相、明度、彩度をもち、基本の色相が明るさや鮮やかさで変化します。
無彩色は、明度だけをもち、明るさで変化します。

2-2. 色の三属性

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色を分類するための共通の認識基準となる特性が、「色相」「明度」「彩度」の3つです。
これらは、色の三属性と呼ばれます。

2-2-1. 色相

色相とは、赤、黄、緑、青、紫など基本的な色みの違いを表すものです。
すべての色相が連続的に変化して見える輪を「色相環」と呼び、10色相を表す「マンセルの色相環」などがあります。

色相環の向かい同士にある関係を「補色」といい、互いの色を引き立て合います。

2-2-2. 明度

明度は、色の明るさの度合いで、明るい色は「高明度」、暗い色は「低明度」、中間は「中明度」といいます。

明度がもっとも高い色は白、もっとも低い色は黒になります。
白と黒の間に明度の順にグレーを並べたものを「明度スケール(グレースケール)」と呼び、このスケールと比較して有彩色の明度を測ることができます。

2-2-3. 彩度

彩度は、色の鮮やかさの度合いを表し、色みが強く鮮やかな色は「高彩度」、ややくすんだ色は「中彩度」、色みが弱く地味な色は「低彩度」といいます。

同じ色相の中でもっとも高彩度の色は「純色」と呼ばれ、もっとも低い色は「無彩色」になります。

2-2-4. トーン

色のトーンとは、有彩色の明度と彩度を組み合わせた色調(色の範囲)のことです。

同じ範囲内の明度と彩度を集めたグループであるトーンには、高明度で中彩度な「ペール(うすい)トーン」が女性的でかわいらしいイメージ、低明度で中彩度な「ダーク(暗い)トーン」が大人っぽいイメージなど、それぞれのイメージがあります。

異なる色相を組み合わせるときは、同じトーンの中から色を選ぶと、調和がとれてまとまった感じになります。

2-3. 色の見え方

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次に、色の見え方についての基礎知識を解説します。
色には混ぜてもつくることができない3つの色があり、「三原色」と呼ばれます。

2-3-1. 加法混色

色を混ぜることで元の色よりも明るくなる混色を「加法混色」といいます。
加法混色の三原色は、赤(R)、緑(G)、青(B)で、光の三原色と呼ばれ、3色の配合で様々な色になり、すべて混ぜると白(W)になります。

2-3-2. 減法混色

色を混ぜることで元の色よりも暗くなる混色を「減法混色」といいます。
減法混色は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の三原色で、「色料の三原色」と呼ばれ、絵画や染色、印刷などに用いられます。

減法混色はすべて混ざると黒に近い色になりますが、印刷には黒(K)を加えたCMYKのインクが使われます。

2-3-3. 対比

近い色同士が影響を与え合い、色の違いが強調されて見える現象を「対比」といいます。
対比には、同時に見ているときに起こる「同時対比」と、直前に見た色が後に見た色に影響を与える「継時対比」がありますが、通常は同時対比を指します。

同時対比には、次の4種類があります。

① 色相が異なる2色配色で、背景の色の影響を受けて色相が変化して見える「色相対比」② 補色同士を組み合わせると、元の色より彩度が高く見える「補色対比」
③ 背景が明るい色だと暗く、暗い色だと明るく見える「明度対比」
④ 高彩度の色に囲まれると元の色よりもくすみ、低彩度の色に囲まれると彩度が高く見える「彩度対比」

これらの対比を示すイラストは、ネット上で簡単に確認できますので、画像検索をしてみてください。

2-3-4. 同化

ある色同士を組み合わせたときに、色の違いが弱まって近い色に見える現象が「同化」です。

赤いネットに入ったミカンが美味しそうに見えたり、緑のネットに入ったオクラが新鮮に見えたりするのは、この同化を利用したディスプレイです。

 

3. 色彩の心理効果

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色の感じ方には個人差がありますが、ここでは様々な実験やアンケートからまとめられた、各色がもつ一般的なイメージと、期待できる作用を紹介します。

3-1. 赤が与える心理効果

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一般的なイメージ
熱い、強い、危険、闘争、怖い、派手、情熱的、明るい、元気、興奮 など。

期待できる作用
・ 元気や、やる気を起こさせる
・ 興奮状態にする
・ 暖かいイメージを与える
・ 目立つ
・ リーダーシップを感じさせる

3-2. 橙(だいだい)が与える心理効果

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一般的なイメージ
暖かい、明るい、元気、友情、青春、希望、かわいい、楽しい、夏、希望 など。

期待できる作用
・ 食欲増進
・ 明るく陽気な気分にする
・ 元気になる
・ 親しみやすいイメージを与える
・ コミュニケーション力を高める

3-3. 黄が与える心理効果

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一般的なイメージ
明るい、元気、喜び、幸福、輝き、未来、優しい、夢、友情、危険、注意 など。

期待できる作用
・ 注目を集める
・ コミュニケーション力を高める
・ 知識欲を刺激する
・ 明るく若々しいイメージを与える
・ 場の空気を明るくする

3-4. 緑が与える心理効果

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一般的なイメージ
自然、安らぎ、落ち着き、安心、平和、生鮮、夏、若さ、成長、健康 など。

期待できる作用
・ リラックスさせる
・ 疲労回復
・ ストレスを軽減して心を穏やかにする
・ 安心感を与える
・ 落ち着いたイメージを与える

3-5. 青が与える心理効果

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一般的なイメージ
冷たい、冷静、悲しみ、涼しい、寒い、青春、広大、夏、誠実、平和、自由 など。

期待できる作用
・ 興奮を静めて気持ちを落ち着かせる
・ 集中力を高める
・ 食欲を抑える
・ 信頼感を高める
・ 冷静沈着なイメージを与える

3-6. 紫が与える心理効果

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一般的なイメージ
高貴、高級、大人っぽい、嫉妬、不安、セクシー、神秘的、和風、悪趣味、孤独 など。

期待できる作用
・ 疲労回復
・ 興奮を鎮める
・ 芸術的、美的な感性を刺激する
・ 特別な存在感を演出する
・ 大人っぽさや個性を感じさせる

3-7. ピンクが与える心理効果

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一般的なイメージ
かわいい、優しい、幸せ、恋愛、甘い、やわらかい、心、春、夢、明るい、わがまま など。

期待できる作用
・ 女性ホルモンの分泌を高める
・ 気もちを和ませてリラックスさせる
・ 優しい気持ちにして穏やかにさせる
・ 女性らしいイメージを与える
・ 恋愛感情を意識させる

3-8. 白が与える心理効果

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一般的なイメージ
純粋、清潔、神聖、清楚、無、天使、平和、自由、潔白、きれい、雪、うさぎ、天国 など。

期待できる作用
・ 緊張感を高める
・ 冷たく感じさせる
・ 重厚感がなく軽い感じにする
・ すっきりとしたイメージや生活感を漂わせる
・ 気持ちを切り替える

3-9. グレーが与える心理効果

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一般的なイメージ
不安、曖昧、暗い、悩み、迷い、控えめ、疑惑、不正、孤独、寂しい、悲しい など。

期待できる作用
・ 気持ちを落ち着かせる
・ 不安感を抱かせる
・ 目立たないようにする
・ 大人っぽい落ち着きを感じさせる
・ シックで洗練されたイメージを与える

3-10. 黒が与える心理効果

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一般的なイメージ
恐怖、孤独、闇、強さ、絶望、夜、静寂、高級感、シック、かっこいい、重い など。

期待できる作用
・ 感情を抑える
・ 気持ちを引き締める
・ モダンでスマートな印象を与える
・ 不安感や威圧感を与える
・ 神秘的な存在感を演出する

 

まとめ

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ここで解説した色彩の心理効果は、10の色相から解説しましたが、色の三属性によっても、与える心理作用が違ってきます。

似通った色相でも少し色が違うだけで、イメージはずいぶん変わってきます。
たとえば、緑とよく似た黄緑でも、黄のイメージが付加されるので、緑のイメージとは違うものになります。

同じ色相でも明度が高いほど軽いイメージ、低いほど重いイメージを与えます。
また、彩度が高くなるほど派手な色、低くなるほど地味な色とみなされます。

色彩心理にかんする資格は国家資格はなく、民間の団体が発行しているものがいくつかあります。

ネット上には、そうした団体が開催するセミナーや、資格を取得したレポートなどの情報もありますから、視覚に興味のある人や色彩心理の仕事にかかわりたいという人は、ぜひ参考にしてください。

【参考資料】
・『人生が豊かになる色彩心理』 宮田久美子(監修) ナツメ社 2015年
・『色の教科書』 桜井輝子(監修) 学研プラス 2015年
・『色彩心理のすべてがわかる本』 山脇惠子 ナツメ社 2010年

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