経営者として、起業前には、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」などについての理解はきちんとしておきたいもの。
なんとなく分かった気になっているけれど、人に説明できる?と訊かれたら、自信を持ってハイとは言えないという人も少なくないかもしれません。難しく考えたり、苦手意識は一旦よけて、分かりやすい基礎から頭に入れていくことをおすすめします。
今回は、どのような流れで損益計算書が出来上がっていくのか、そして出来上がった損益計算書からは何が分かるのか、何のために使うのかなどを見ていきたいと思います。
目次
1 損益計算書とは
2 損益計算書の5つの利益
利益1 売上総利益
利益2 営業利益
利益3 経常利益
利益4 税引前当期純利益
利益5 当期純利益
3 損益計算書の見方
3-1 同業他社と比較
3-2 予算実績で比較
3-3 期間で比較
4 損益計算書の読み方
4-1 限界利益の絶対値
4-2 経営安全率に注目
まとめ
1 損益計算書とは
「損益計算書」が示すもの、それは一会計期間にどれだけの利益をあげたのか、または損失を出したのかという経営成績です。シンプルにまとめると、収益から費用を差し引き、その値がプラスになれば利益、マイナスになれば損失となります。
会計期間が終了した後に決算を行なうのは、その会計年度における利益の計算をするためです。「損益計算書」は利益の計算をする役割を担っています。
「損益計算書」は経営者が見るためのものという訳ではなく、投資家に対して、そして金融機関に対して、さらには、取引先などに対しての提出が求められることがあります。それは「損益計算書」が、正確な利益を計算した決算書であることを意味しています。とても重要な決算書なのです。
2 損益計算書の5つの利益
損益計算書では5つの利益の計算をします。
利益1 売上総利益
基本的な利益、それが「売上総利益」です。「粗利」と呼ばれることもあります。売上高から売上原価を差し引いた利益を指します。
売上高とは、本業として商品や製品、サービスを販売した金額を指します。
売上原価とは、仕入や製造にかかる費用のこと。つまり売上を上げるためにかかった費用を指します。
利益2 営業利益
営業利益は、営業活動で得た利益を指します。売上総利益から、販売費及び一般管理費を差し引いた利益のことです。
販売費及び一般管理費は、売上を上げるために直接かかった費用のことではなりません。人件費、広告費といった間接的にかかった費用を指します。この計算でマイナスが出たら、営業損失があるということ。つまりこのままの状態では企業としての存続は難しいので、速やかに原因を追求し、解決策を考える必要があります。
利益3 経常利益
ケイツネと呼ばれるものです。営業活動により得た営業利益と営業活動意外で得た利益及び費用を調整した利益になります。
営業外収益とは、営業以外で得た利益。一般的には有価証券などの資産売却益、受取利息や受取配当金などがこれに当たります。
営業外費用とは、営業外収益の反対で、有価証券等の資産売却損、支払利息などを指します。
利益4 税引前当期純利益
読んで字の如くの意味なのですが、単語が長くなるとちょっと不安になるもの。しかし、難しいものではありません。税金を支払う前の最終的な利益を指します。
特別利益とは、固定資産売却益など特別に、臨時に発生した利益を指します。
特別損失とは、特別利益とは反対に、固定資産売却損などの損失を指します。この気だけに発生してしまった費用などを指します。災害による損失などもこれに当たります。
利益5 当期純利益
最終的に残った利益を指します。
法人税等は、国に納める国税、地方に納める住民税、事業税を指し、これらの税金の合計が会社の利益に対して35%程度となっています。税金の割合、高く感じますが、これは会社を経営していく上で避けられない数字になります。
ここまで紹介してきた5つの利益。すべて繫がっているので、しっかりと抑えておきましょう。内容を理解しながら覚えれば、すんなり頭に入ってくるのではないでしょうか。
3 損益計算書の見方
損益計算書を見るときの有効的な使い方は、比較する方法です。どんな形で比較するのかを見ていきましょう。比較方法は3つあります。
3-1 同業他社と比較
同業他社の損益計算書は、比較することで問題点や課題点、優れている点を見つけるのにとても有効的です。会社の規模に大きな差がある場合にはそのまま比較するのでは意味がありません。
大きな誤差が出てしまいます。売上総利益率や、営業利益率などの比率を使って、比較することではじめて有効活用ができます。
現在ライバル的な存在となっている会社や、目標とする会社などの損益計算書と比べることをおすすめします。経営の中身が話題になっているといった会社も要チェックです。
3-2 予算実績で比較
事業年度開始時には、1年間の経営計画を作成します。いわゆる予算というものです。それと実績を比較する方法です。
年間経営計画は、毎月の経営計画の積み上げです。予算と実績の比較を毎月きちんと実施していくことで、計画と実績に大きく差が出てしまっていれば原因を追求し、対策法を考えなければなりません。
3-3 期間で比較
1年前、2年前と数年分の自社の損益計算書を並べて比較することも大切です。売上高、営業利益の成長の様子(その逆の場合もあります…)や、長期的に見た事業活動の推移の評価にとても有効的です。
先ほど示した5つの利益、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」に目立った増減がある場合には、その原因を探し出す必要があります。当年度のみの発生なのか、過去にも事例があるのか、将来的にも発生する可能性があるなど、いろいろな見極めに有効活用することができます。
4 損益計算書の読み方
実際に4つの会社の損益計算書を読み比べていきましょう。
限界利益…100
固定費…90
経常利益…100-90=10
経営安全率
10/100×100=10%
限界利益…250
固定費…230
経常利益…250—230=20
経営安全率
20/250×100=8%
A社とB社を比較すると・・・
この数字をベースにしてどちらの会社が実際に儲かっているのかを考えてみてください。答えは、「A社」が正解です。経常利益はB社の方が大きいのにと思った方は見直しが必要です。
4-1 限界利益の絶対値
限界利益の絶対値だけを見てB社が儲かっていると判断するのは間違いです。売上の内容が異なる場合の異業種企業を比べる際には、限界利益で見れば会社の事業規模の比較が可能です。
4-2 経営安全率に注目
経常利益の絶対値が大きいことは何を意味しているのか。手元に残る利益が大きいということに繫がっています。しかし、それだけではありません。経常利益が多くても限界利益に対する割合が小さいときには、売上が少し下がることですぐに赤字に転落ということも普通にあります。儲かっていて余裕のある会社であるとは言えないのです。
経営安全率を見てみましょう。A社は経営安全率が10%。もし、売上が10%落ち込んだとしても損益はプラマイゼロの状態になります。対してB社の場合には、売上が10%落ち込めば、赤字に転落してしまいます。経営に余裕がある会社とは言えないのです。
A社は経常利益はB社の50%しかありません。しかし、経営安全率でB社を上回っているA社の方が経営的には余裕があるという状況なのです。本当に儲かっている会社は数字だけでは分かりません。数字を元に計算をすることで、正しい判断ができるわけなのです。
補足になりますが、「損益計算書」を下から見てみてください。「当期純利益」は下の方に記載されているのです。計算して導き出した当期純利益なので、順番的には後ろにくるという理由はわかりますよね。
と同時に重要な数字であるとうことはみなさんすでに理解していただいていると思います。何より見たい項目は「当期純利益」。つまり、損益計算書は、下から読むのが正しい、というより効率的なのです。
まとめ
会社経営においてとても重要な借入、借入に必要な銀行審査、審査に必要な決算書ということで、「損益計算書」の基礎知識をまとめてみました。会社を立ち上げて経営者になるからには、「損益計算書」を含めた「決算書」については、しっかりと“読める”ようにしておくことが必須です。
【参考図書】
「ポケット図解 キャッシュフロー計算書がよ〜くわかる本」(秀和システム)
「実学入門 経営がみえる会計―目指せ! キャッシュフロー経営」(日本経済新聞社出版社)
「図解と設例で作成法を学ぶ これならわかるキャッシュ・フロー計算書」(日本実業出版社)
「マンガで入門! 会社の数字が面白いほどわかる本」(ダイヤモンド社)
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